「美味しんぼ」の件で双葉町が小学館に抗議

先日の「美味しんぼ」について、福島県双葉町が小学館に抗議文を出しました。

双葉町というと、その「美味しんぼ」にも登場して、
鼻血が出る人はたくさんいるが言わないだけ、
との発言をした井戸川氏が元町長だったところです。

井戸川氏は放射能の危険性についてずっと訴えていた人でして、
彼の言うことを信頼する人もいれば、デマだと切り捨てる人もいます。


で、その双葉町が抗議ということで、これは、

　「今の双葉町 vs 前の双葉町長」

そんなふうに見えなくもないワケです。


さて、双葉町の抗議文とは、このようなものです。


　小学館への抗議文

　平成26年4月28日に貴社発行「スピリッツ」の「美味しんぼ」第604話において、
　前双葉町長の発言を引用する形で、福島県において原因不明の鼻血等の症状がある人が
　大勢いると受け取られる表現がありました。
　双葉町は、福島第一原子力発電所の所在町であり、事故直後から全町避難を強いられて
　おりますが、現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという
　事実はありません。第604話の発行により、町役場に対して、県外の方から、
　福島県産の農産物は買えない、福島県には住めない、福島方面の旅行は中止したいなどの
　電話が寄せられており、復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を
　生じさせているほか、双葉町民のみならず福島県民への差別を助長させることになると
　強く危惧しております。
　双葉町に事前の取材が全くなく、一方的な見解のみを掲載した、今般の小学館の
　対応について、町として強く抗議します。

　平成26年5月7日
　福島県双葉町


と、いうことで。

別に、作者が個人的に取材して体験したことをそのまま表現しているのなら、
それをとやかく言うことはないと思うのですけどね。


福島に行って原発事故を取材した、鼻血が出た、を安易に関連づけられませんが、
いくつか症例があったなら疑う態度と想像力はあったっていいと思います。

というか、それがなければ、放射能のリスクに、原発事故のリスクに、
向き合っていることにならないと思うのですよ。

ただし、そうした症状と放射能汚染が関連あるというエビデンスもないので、
それを誤解させるミスリードにならないよう配慮しなければいけないのですけど、
その意味では第604話の「美味しんぼ」には批判される余地はあったと思います。


ところが、まるで作者がウソを書いていて、差別や風評被害を招いている、
といった評価はいかがなものでしょう。

どこかの誰かが知り得た事実からリスクを疑うべきところを、
思考することを放棄し、のっけから否定すべきなのでしょうか。

ただの体験を口にするだけでそれが差別だ風評だと圧殺される風潮だからこそ、
一部であっても断片的であっても事実が提示されることは必要であって、
受け入れることも必要ではないかと思うのですが。

なぜなら放射能汚染の影響など、正確なところは誰もわからないからです。


もちろん、鼻血などの症状は単にストレスなどに起因するものかもしれないのですけど、
わからないのですから、差別だ風評被害だと決めつけて切り捨てるのではなく、
放射能の影響と考えられないか記録し調査することが必要なのではないでしょうか。

なんちゃって、御用病院・御用クリニックで診察・調査のアリバイだけ作られて、
「問題ない」判定にされちゃうかもしんないですけどもねえ。


とにかく、漫画のたかだか1話だけでデモだウソだと決めつけ、
その作品や作者、コミック誌や出版社の社会的抹殺や言論圧殺を図るかのような、
そんな「みんなの声」のドス黒いベクトルこそが怖ろしいと思います。

差別だ風評だと判断するのも勝手ですし批判したければ批判すればいいですが、
少なくとも、作者が取材で得たことを表現する機会を奪ってはいけないと思います。

別に作者が取材で知り得たことが全てでは当然ありません。
でも、作者が見た真実、それは膨大な真実の一部、それでいいんじゃないでしょうか。


ところで、上の抗議文でも、

　症状を訴える町民が大勢いるという事実はない

ってなワケですから、ひょっとしたら、大勢じゃなくて少数はいるか、
訴えていないだけで症状のある町民はいるかもしれない、ってことですよね？

そりゃ、鼻血が出たと言えばこんな大騒ぎになって叩かれるんですから、
出たものも出たとは言えなくなりますよ。