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裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/天体編・7

2023年07月11日 06時57分32秒 | 世界のつくり

7・物質の誕生、って

ビッグバンによって、特異点から素粒子とともにとんでもない熱が放出され、膨張をつづける宇宙空間に拡散していく。
超高温下では、電子は激しく震えてプラズマ状態※1をつくり出し、要するに電子レンジの中のような大暴れをして光の直進を妨げる。
「光」とは、光子という素粒子が収縮して位置を取ったやつの航跡の、ぼくら観測者サイドの脳内における見え方だ。
が、この頃の光は少し様相が違ったようだ。
ビッグバン直後の煮えたぎった光のスープは、この航跡が電子とこんがらかった状態なんだ。
それを観測者は、「光がつくりだす曇り空」という矛盾したデッサンしかできない。
こんがらかりすぎて、光の波を検出することができないから、曇り空というわけだ。※2
しかし、スペースが広大になるにつれて光の波長は間延びし、電子は落ち着き、温度は下がり、プラズマ状態がそろそろ解消されつつある38万年後、という頃合い。
ついに光は電子から放免され、直進を開始し、すっきりと晴れ上がった宇宙空間をつくりだす。
これをわれわれ観測者は、そのまま「宇宙の晴れ上がり」事件と呼ぶ。
光がもつれ合いから解放されたということは、すなわち、電子側も自由を獲得したことを意味する。
ぼくら人類は、このイベントに興奮すべきだろう。
なぜなら、宇宙空間に、陽子と電子が出会う舞台が整ったのだから。
こうして、+1電荷を持つ陽子は、-1電荷という奇跡の相性を持つ電子と、運命的に結ばれるに至った。
この世界で最初の物質となる「水素」が誕生した瞬間だ!

つづく

※1 逆かな。プラズマ状態が電子を振動させて陽子から剥ぎ取る(電離)、という順序の方が自然かも。
※2 138億光年先にある138億年前の光景を見たいがために、人類は遠くまで見える望遠鏡をつくる努力を重ねるが、ビッグバン直後の光、すなわち最初期の宇宙の姿は、素粒子たち(場)がごちゃごちゃに入り組んでることから、カオスとしてしか見ることができない。そこで、光子の波とは別ものである重力の波、すなわち「重力波」を捉えてその頃の様子をのぞき見ようとしてるのが、最新の宇宙物理工学なんである。ビッグバンの特異点は、以降に宇宙中の物質を構築する全質量の塊なので、とてつもない重力を持っており、検出するにはおあつらえ向きなのだ。

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世界のつくり/天体編・6

2023年07月10日 09時00分25秒 | 世界のつくり

6・宇宙の大構造、って

ぼくらの物質世界は、ぼくらの観測によって成立してる。
思慮深き量子力学が描く(ぼくらの世界の裏に隠れた)実相の世界は「無」みたいなものであり、マボロシのような「場」の交差であり、その綾たる相互作用をぼくが「観測」することによってぼくの脳内に世界が立ち上がる・・・という層構造になってるんだった。
とにかくこの世界は、ぼくらが「見る」ことによってはじめて、物質としての形を獲得するのだ、とそろそろ納得しようではないか。
というわけで、できたての宇宙空間に展開する、おびただしい陽子群だ。
(観測上の現象として)膨張をつづける宇宙空間に、碁盤の目のような区画を引いてみる。
そのひとつひとつのエリアに、ひとつひとつの陽子がきれいに並んでる。
インフレーションによって発生した最初期世界は、無限に小さく、無限の圧力に満たされていたため、素粒子は超絶正確な隊伍に整列(エントロピー最小状態)させられた。
万有引力による全方向がんじがらめの上に、陽子の持つ+電荷がお互いを斥力で遠ざけようとするため、この方陣は永遠に乱れることがない・・・はずだ。
ところが、その裏側に控える量子場では、素粒子たちが波間に浮かぶうたかたのようにかつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし。※1
引かれた方眼のバックヤードで起こってるのは、不確定な出現確率であり、コヒーレントなもつれと重ね合わせであり、要するに素粒子たちの気まぐれによって、わずかながらも激しい揺らぎが発生するんである。
こうして、万有引力と電荷の斥力の均衡を破って不安定になった隊伍は、たぶんファンデルワース力※2なんかによって密度の偏りを増幅させ、あっちで固まりをつくり、こっちでスカスカの部分をつくり、やがて大きなチーム同志に分かれ、対抗戦のような宇宙の大構造をつくっていく。
さあ、そこでついに現れるのが、電子だ!
うわはー、世界が形づくられていく予感がしてこないか?

つづく

※1 「方丈記・鴨長明」は、動的平衡の古典表現。
※2 電荷が偏ると、その偏りを修正しようとするカウンターの電荷の振る舞いが発生するせいで、余計に電荷が偏ってく感じのやつ。

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世界のつくり/天体編・5

2023年06月30日 13時44分25秒 | 世界のつくり

5・平衡宇宙、って

何度も言うけど、ぼくらには、量子の振る舞い(現実の世界)は「人類の感覚と神経系が独自に解釈する画づら」、すなわち自分の脳内につくりだすオリジナル世界の範囲でしか理解できない。
ぼくらの外側(ぼくらの肉体も含めた)には、実体のない「場」があるばかりなのに、ぼくらの生物としての身体機能(を総合する脳)はそこに三次元空間を立ち上げ、素粒子というつぶつぶを見出して・・・というよりは、想定してるだけだ。
まあ主観的で一方的な事実として、ぼくらはそこに色と形と手触りを感じてるんだからなんの問題もないわけだけど、そのバックヤードが「無」であることは、風景想起の根底に納めておこう。
さて、ビッグバン後の宇宙空間がひろがってきた。
そこには波動関数が規則正しく波打ち、のちの人類が観測するところの陽子(水素原子核)が完全に等間隔な隊伍を組んで展開してる。
慣性の法則によれば、動きはじめたものは動き出した方角に向かって等速直線で永遠に動きつづける。
つまり陽子の隊伍がそのまま放射状に行進をつづければ、世界は陽子を正確な三次元方眼状に並べた平衡状態を保ったままひろがっていくはずだった。
そして、物質の誕生はおろか、わずかな変化をも含めた何事も起こり得ないはずだった。
が、慣性の法則には、ただし書きがある。
「他から力を加えられないかぎり」という。
その「他からの力」というのが、万有引力だ。
陽子は、小さいながらも質量を持ってるのだ。
とは言え、「質量を持つもの同士は引き寄せ合う」というこの法則は、パーフェクトな平衡状態においては、力を相殺されてしまう。
個別の陽子は、全方向から等しい万有引力の効果を求められており、奇しくもニュートンさんが第三法則に組み込んだ「作用と反作用」が完全な形で機能したかのように、陽子の隊伍は平衡状態に固定されてしまうわけだ。※1
ところが、量子場は確率の存在であり、永久不変を許さないゆらぎまくりの性質を持ってるんだった。

つづく

※1 相対性理論によれば、宇宙はがんじがらめな平衡状態を維持できず、素粒子間の引力が宇宙の膨張を収縮へと逆転させ、やがてビッグバン時の特異点に収斂(しゅうれん)させる「ビッグクランチ」に向かうはずだ。※2
※2 が、「平衡じゃない宇宙なんていやだ!」とアインシュタインさんは考え、重力理論の計算式に宇宙定数というものを組み込んだが、宇宙膨張の証拠を突きつけられて「しまった、余計なことをした」と悔やんだんだった。※3
※3 が、最新の宇宙空間加速膨張の観測と、当時知り得なかった宇宙中にひろがるダークな質量の存在が明らかとなり、「アインシュタインの宇宙定数、ファインプレイじゃね?」という空気になってるようだ。

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世界のつくり/天体編・4

2023年06月28日 10時00分10秒 | 世界のつくり

4・わかりやすく、ったって

よめはんが「じぇんじぇんわからにゃい」「ねむくなった」と言うんだけど、そうだろうなと思うので、もう少し噛み砕いて説明を試みるものなり。
というわけで、ビッグバンに先立つインフレーションでできたのは「現世」という針の先ほどの穴で、その一点に突如として、素粒子を生み出す量子場が折り畳まれ、充填されたのだった。
量子場には、質量というエネルギーがみなぎり渡ってるんで、それのつくり出す重力が出来たての小さな小さなピンポイントの位置情報をゆがめ、世界の容積を膨張させていく。
そしてついにビッグバンがポンと爆ぜるわけだが、ここで魔法のカーペットたる量子場がひろげられる。
生まれたての宇宙空間全体に、ミストの噴出口のような量子場がすみからすみまで張りめぐらされて、いつどの位置から素粒子が出現しても不思議でないつくりとなった。
その出現確率こそが「波動関数」というやつで、波を打った関数のピークから素粒子は(反素粒子と対となって)吐き出されるが、ピークでない場所から不意に吐き出されることもある(なにしろ確率なもので)。
かくも量子とは、われわれ人類には抽象的に思えるからくりなんだが、こいつをどう観測して概念化するかで、受け取る側にとっての世界の形は変わってくる。
たまたまわれわれ人類の感覚受容と神経系はこれを「時間と三次元空間」と解釈し、クォーク場とグルーオン場の相互作用を「物質」ととらえて、目に見え、手に触れられるように機能を進化させたわけだ。
ところがそのバックヤードにまわると、舞台上で目に見えてたものは、一箇所に偏った素粒子の塊にエネルギーがどう吸収されて反射されてるかの道すじを感覚器がどう受け取るかの問題であり、その手に触れて実体と思えてたものは、手に取ったものの素粒子間の電磁気力と自分の手の平の持つ電磁気力との間に発生する反発力の問題であったのだ、とわかる。
要するに人類は、「量子場の振る舞いを感知できるように自分サイドの感覚機能を操作した」のであり、したがって脳内に立ち上がるその世界は、自分だけが感じ取れる(あるいは勝手につくり上げてる)幻想なんだった。
さて、出来たての宇宙空間に戻るが、そんな量子場が・・・まだ誰にも観測されることなく、解釈をされたこともない、実体を伴わない素粒子たち(波動関数の波)の大集団が、のちに人類が宇宙空間と呼ぶことになる幻想界に、広々と展開をはじめたんであった。
・・・やはりじぇんじぇんわからにゃいか・・・

つづく

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世界のつくり/天体編・3

2023年06月27日 12時43分11秒 | 世界のつくり

3・量子場の展開って

ひろがりつづける宇宙空間に、おびただしい陽子が大展開・・・と、われわれ人類の感覚器は情報を受容し、脳機能で描写(解釈)するが、実際の画づらはどういうものなんだろう?
最先端の科学が言うところでは、インフレーションの特異点の中にあらかじめまるめられ、宇宙開闢の際にひろげられたのは、量子場だ。
つまり、はたくと素粒子を飛び出させる、実体のない魔法のカーペットだ。
クォーク場、グルーオン場、ヒッグス場にボソン場に電磁場にグラビトン場・・・様々な素粒子と「力」を生成・消滅させるカーペットが、三次元の綾として時空間内に織り込まれ、多様な相互作用を起こすことで、物質世界が築かれていくわけだ。
誕生したての時空間には、まだ物質は存在していない。
場の正確な方眼に区切られた各エリアに、ひとつひとつの素粒子を生み出す波動関数のピークが設定されてるだけだ。
が、このおびただしい関数が炸裂することで、きれいに目のそろったハニカム構造のような陽子の隊伍が組み上がる。
この最初期の状況が、エントロピーの最小値の姿と言える。
さて、タテ・ヨコ・奥行きに一定の距離を置き、一様に並んだ隊伍は、空間膨張の勢いに乗って展開しても、なにも仕事はできないはずだった。
同じ比較距離のまま相似形にひろがり、散開し、遠い未来には離れ離れになるはずだった。
どのタイミングでも物質は構成されず、天体は形づくられず、生命も永遠に生まれ得ないはずだった。
が、幸運なことに量子とは、もつれ、重なり、揺らぎ、ラプラスの悪魔※1を笑いのめす「確率論」の存在だ。
そんな確率が、われわれの宇宙をつくった。
つまり、各自に放射状に進むはずの陽子たち・・・すなわち水素原子核たちだが、お互いに離れ合いつつも、どこかにおいてはくっつき合うという可能性、すなわち確率も持ち合わせてたのだ。

つづく

※1 質量、位置、方向と速度の初期値が未来を決定づける、という運命論。

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世界のつくり/天体編・2

2023年06月25日 06時17分31秒 | 世界のつくり

2・時空間の誕生って

針先ほどの特異点から広大な時空間をこじ開けるのは、質量を得た素粒子にそそのかされた重力場だ。
一般相対性理論によると、質量を持った物質の周囲の時空間はゆがみ、そのゆがんだ座標から正常な座標への加速こそが重力・・・というものなんだった。
わが推し説は、これを逆に解釈する。
つまり、時空間があらかじめそこにあって、その環境内に重力という現象が存在するんじゃなく、重力という「質量が生む違和感」こそが時間と空間の正体なのかも、と。
この自説によると、物質を生み出すクォーク場に、質量を生み出すヒッグス場が絡めば絡むほど、特異点はねじくれ、違和座標から正規座標への乖離は甚大なものとなり、その容積に等しい時空間が開かれていく、ということになりそうだ。
一方で、クォーク場はグルーオン場と相互作用して、陽子・中性子を産み落とす。※1
これは正確には、クォーク・反クォークとグルーオン・反グルーオンが、陽子・反陽子と中性子・反中性子を産み落とし、すぐさま相互作用して対消滅する、ということだ。
が、前回に書いたように、反物質を漉し取って物質のみをこちらサイド(われわれの世界の宇宙空間)に余らせるボソン場の振る舞いがある。
このために対称性は破られ、物質であるところの陽子と中性子のみが、耕された時空間に大展開していくわけだ。
ところが、中性子の半減期は15分と短く、そのほとんどが崩壊して陽子に変身し(ついでに電子とニュートリノを放出)、この世界は陽子・・・すなわち、水素原子核で満たされるんである。

つづく

※1 クォーク三つがグルーオンの核力で接着されたものこそが、陽子と中性子だ。

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世界のつくり/天体編・1

2023年06月20日 10時11分25秒 | 世界のつくり

1・ビッグバン直後って

ビッグバンが起きて、すさまじい高温の「点」から素粒子が・・・ここではクォーク(物質の種)とグルーオン(クォーク同士を接着する係)が飛び出したんだった。
さらにヒッグス粒子がこれらと相互作用して質量を与えると、相対論(重力理論)的な時空間がゆがみまくる。※1
そんな特異点のゆがみそのものが「未来へ向かう時間の一方通行ベクトル」をともなう「宇宙空間のひろがり」となって、シン世界を耕しはじめる。
宇宙の創生、ってわけ。
さて、膨張を開始した直後の小さな小さな宇宙空間は、煮えたぎる素粒子のスープだ。
超高温で、超高密度。
だけどここで「温度が高い」と表現する事象は、もちろん空気があたためられてアチーということじゃない。※2
波動関数の弦がギンギンに震えまくって、時空間が途方もないエネルギー塊になってる、って意味だ。
その中で、おびただしい素粒子が反素粒子と対になって生成されたり消滅したりしてる。
ところが、ここで鏡映しになるはずの(パリティ)対称性は、「弱い力(粒子を崩壊させる)」によって破られるようだ。
素粒子は、各自に右巻き、左巻きという「スピン」なる性質を持ってるんだけど、弱い力には好みがあって、この両方を均等に扱うというリベラルさに欠けてるんだな。
その結果、世界に運命づけられたはずの「物質と反物質とはピッタシ同数で」「どちらか片方のみが世界に居残ることはできず」「したがって生成されたすべての素粒子は必ず反素粒子と対となって消滅し」「原理的に宇宙は永遠に無の状態である」という約束ごとが破られたんだ。
かくて、100億個に1個という割り合いで物質がこちらサイドに取り残され(物質100億個のうちの99億9999万9999個は、反物質99億9999万9999個と反応して消えてしまい、残りの1個が物質世界を構成しはじめた)、晴れて「形ある世界」が誕生する運びとなるんである。
計算違いで渡されるおつりの小銭を集めたら、チリツモで家が建った、ってところか。

つづく

※1 重力とは、相対性理論によれば、質量の周囲の時空間がゆがむ、という現象だ。
※2 空気そのものがまだないので。

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世界のつくり/宇宙編・おしまい

2023年05月29日 07時31分04秒 | 世界のつくり

おしまい・エントロピーの最小・最大値って

小さな小さな時空間に、完全に均等な配置にセットされた素粒子たち。
封を切りたてで数字順にきれいに積み上がったトランプが、エッヂをきりりとそろえ、ゲームのスタートを待ってる状態だ。
これを、エントロピーの最小値、と表現する。
ビッグバンによって、このカードは広い宇宙空間に散り散りに配られ、ランダムに展開し、局所的に集まり、固まり、シャッフルされ、また散らかり・・・をくり返し、エントロピーの値を増大させていく。
つまり、配置と集団の構造を複雑化させていく。
素粒子は確率の存在で、ある瞬間に再び「カード順が正確に並び」「エッヂがぴたりとそろう」瞬間が訪れる可能性もなくはないが、10の97乗個が偶然に宇宙開闢の瞬間に戻るのは、52枚のトランプがそろうのとは訳が違う。
エントロピーは増大をつづけ、宇宙は冷えつづける。
熱とはすなわち素粒子の振動であるので、ビッグバン時の高熱の広域への放散は、素粒子の振動が弱まっていく(伸長になる)ことを意味する。
宇宙は、素粒子が震えることをやめる絶対0度(摂氏-273・・・度)へと一直線に向かう。※1
宇宙全体、つまり一切の素粒子が凍りつくこの状態を、エントロピーの最大値、と表現する。
混沌が極まると、その先に待ち受けるのは皮肉なことに、完全な平衡状態だ。
極限まで複雑化した素粒子の配置は、文字通りに「波のない」フラットな光景を呈する。
どこにも突出した部分のない、そして動きもない、無の世界だ。
宇宙の最後の姿は、広い広い時空間に散らかった素粒子たちの永遠の沈黙、なんだった。

おしまい

※1 もちろんこれは、素粒子が震えることをやめると絶対0度になるという意味の言い換えだ。

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世界のつくり/宇宙編・20

2023年05月22日 20時18分49秒 | 世界のつくり

20・関数の波って

量子場の波とは、何度も言うけど、実体が小分けにされてひろがる濃淡のそよぎじゃない。
波動関数そのものの高低差であり、方程式の解の三次元グラフみたいなものだ。
素粒子は、波(純粋な数字の大小)の高いところに高確率で出現し、波の低いところでは低い確率で出現する。
この波は、インフレーション時(世界のはじまりの瞬間)には、ほとんど偏りのない・・・つまり高低差のないフラットなべた凪状態だったようだ。
なので、ほとんど・・・いや、パーフェクトと言っていいほどの均一、一様な濃度で、素粒子はばらまかれた。
「運命論」の真の意味を知ってる?
これは「運動ベクトルの初期値によって、そのゆく末は完全に予測できる」というもので、つまりビリヤードの白球を小突く方向とスピードが決まっていれば、その後に多くの色玉間にどれほど複雑な連鎖反応が起きようと、最終的なビリヤード台上の玉の配置は決定済みということだ。
このことから、世界創成時のこのフラットさは、138億年たった今の宇宙の姿にも影響してて、宇宙空間のどこを切り取ってもほぼほぼ同じ風景、ということになってる。
大きな空間における天体の配置もそうだけど、極めて小さな空間における素粒子の濃度もほぼ偏りなし!という奇跡のような測量結果になってるんだ。※1
・・・が、量子力学によると、素粒子は決定されることを決定的に嫌い、シュレディンガー方程式の確率のみに身を置いて振る舞うので、すなわち、完璧な運命論(初期値が未来を決定づける)というのはこの世界には実在しないんだった。
さて、話はそれたが、こうして宇宙空間に一様に素粒子がばらまかれた。※2
が、対称性というものはどこかで破られるものなのだ。
なにしろこの世界は、決定論を忌避する波動関数に従ってるので。

つづく

※1 「宇宙マイクロ波背景放射」というビッグバンの残渣となった電波が、宇宙空間上にほぼ均一に散りばめられてる。
※2 ばらまかれた素粒子が一様な宇宙空間をつくった、と言うべきかもしれない。

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世界のつくり/宇宙編・19

2023年05月20日 08時31分58秒 | 世界のつくり

19・不思議なカーペットって

結局、宇宙の創世によって生まれたのは、素粒子じゃない。
素粒子を生む、量子場が生まれたんだ。
量子場から素粒子が生まれ、さらに素粒子から時空間が生まれたんだ。
ビッグバンに先立つインフレーションが開いたのは、場というカーペットなんだ。
この、はたくといろんな素粒子が飛び出してくるカーペットが、幾重にも重なり合ってひろげられ、その結果として、宇宙に素粒子が満ちることになった。
話をさかのぼって考えてみる。
特異点がちょんとうがたれた。
この「異世界とつながる四次元ポケット」から吐き出されたのは、小さく丸められた量子場だ。
量子場は、何種類もの波動が縦糸横糸に織り込まれたカーペットだ。
この沸騰したカーペットは、ふつふつとあぶくの立つ地点(波動関数の高い部分)をはじけさせて、確率的に素粒子を生み落とす。
この素粒子というのは、実体を持つ何者かではなく、場における一時的な現象で、素粒子自体も他の場と相互作用し合って、新しい現象を起こす。
場は、高エネルギーでものすごく煮えたぎる。
ビッグバンほどの超絶的なエネルギーの環境では、チョー張りきっちゃう。
張りきる、という表現は言い得て妙だ。
思い出してほしいんだけど、場とは、波なんだった。
場(カーペット)が震えて、波打って、波頭の高いところで素粒子が発生する。
だけどこのレトリックはある意味では逆で、エネルギーの強いところは波長が短く(つまり低く小刻み)になり、さらにボリュームを上げると、ピンと張り詰めるのが実際だ。
こうして張り詰めきった一点=運動量無限大によって得た位置こそが、素粒子(という現象)だ。

つづく

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