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裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/天体編・17

2023年08月20日 08時18分06秒 | 世界のつくり

17・ブラックホール、って

重力崩壊に至るチャンドラセカール限界をはるかに超え、太陽の何十倍もある超巨大天体を想像してみて。
その質量たるや、途方もない。
そんな星の最期は、想像を絶する爆縮だ。
芯部には、全質量にのしかかられた圧力で、重たい重たい中性子の塊ができていく。
・・・と、ここまでは前回に見たプロセスだ。
ところがこの大質量星は、芯部に質量を集中させればさせるほど、のっぴきならないほどの強い重力源をつくってしまう。
その反動の超新星爆発で飛び去ろうとする陽子たちをも引きつけるほどに。
そんなわけで、超新星爆発は起きず、大質量は収縮をつづける。
芯が全質量を飲み込んでしまうまで、それはつづく。
果てしなく縮みつづける、とまで言っていい。
超巨大天体が、点になるまで、だ。
「点」の数学的な定義は、「大きさがなくて位置だけがある」というものだけど、言葉通りにその姿になる。
ビッグバンを思い出すかもしれないけど、あれは物質の吐き出し口だった。
今度は、飲み込み口の特異点だ。
この猛烈重力の穴こそが、ブラックホールだよ。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園


世界のつくり/天体編・16

2023年08月19日 15時53分08秒 | 世界のつくり

16・超新星爆発、って

おびただしい量の中性子が、ギュギュッと押し詰まってできた超流動(摩擦係数ゼロでトゥルントゥルン)天体。
この、ドでかい原子核とも言えそうな物体が、重たい重たい中性子星だ。
なにしろこの天体ときたら、とてつもない高密度のために、スプーン一杯で小山ほどもの重さがある。※1
だけど、かつて巨大天体を構成してた質量のすべてがここに固められたわけじゃない。
電子を捕獲しそこなって中性子になりきらなかった陽子たちは、爆縮の終局に、電荷の反発力やらなんやらで、膨大なエネルギーを放出する。
縮みきったバネが、次の瞬間に伸びきるように、大・大・大爆発を起こしたんだ。
核融合なんてまるで目じゃない、とんでもないカタストロフィだ。
ぽんっ!
これが、超新星爆発だ。
新しい星が生まれた!と昔のひとが勘違いをしたほど、夜空の一点を強烈に(ほとんど月のように!)輝かせるこのエネルギーによって、ついに鉄以上の元素の原子核が生成され、周囲にばらまかれる。
金、銀、プラチナ、ナントカニウム、カントカニウム・・・宇宙空間には、こうして100種類もの元素が散りばめられるわけだ。
そして再びそれらが万有引力で集まり合い、天体を構成し、核融合活動をはじめ、元素を練り上げていく。
ぼくらの世界は、こうして彩り豊かになっていったんだよ。
さて、その結果として取り残された中性子星だ。
この「巨大天体の生涯の末路」とも言うべき原子核現象の残渣は、その密度に比例して、強い強い重力源になった。
さてきみは、SF映画なんかに出てくる、これとよく似た存在を知ってるはずだ。

つづく

※1 この星にひとが降り立てば、じゅんっ!・・・一瞬にして地面に向かって蒸発してしまうだろう。そして中性子に解体されて、星の内部に溶け込むだろう。

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世界のつくり/天体編・15

2023年08月18日 15時19分56秒 | 世界のつくり

15・中性子星、って

巨大天体の全質量は、深層部の中心一点に集中する。
その芯部にかかる強大な圧力・・・すなわち外→内のエネルギーが核融合活動をうながし、また核融合活動によって生み出される爆発力・・・すなわち内→の外のエネルギーが圧力を押し返し、双方向のカウンターバランスは一定に保たれる。
ところが、天体の中心で、ついに超安定の元素である鉄の生成がはじまってしまった。
超安定とは、要するに核融合活動をしない(それっぽっちの温度と圧力じゃ極めて困難)ってことだ。
中心から外向きの抵抗力が失われると、天体は自重によって内向きにつぶれるしかない。
体積が信じ難いほど収縮する、重力崩壊がはじまった。
その勢いは劇的で、「爆縮」と称されるほどのスペクタクルだ。
星一個が、まさしく一瞬にしてくしゅくしゅに丸められるんだ。
天体内の空間という空間に原子核が押し詰まり、その超高密度が、核融合を超えた現象を引き起こす。
陽子(つまり原子核)と陽子が触れ合えば、核融合爆発をして両者は一体化し、新しい原子核を形成するはずだった。
ところが、この爆縮の過程では、天体外層部の電離層で待機してた電子たちまでがおしくらまんじゅうに加わる。
すると、どうなるか?
陽子に電子がくっつけば、「原子ができんじゃね?」と思うでしょ。
ところがこの劇的なステージでは、核子たちのあまりの超絶的密度に、両者はひとつに混じり合ってしまうんだ。
この「陽子の電子捕獲」により、電荷をチャラにするベータ崩壊が起き、陽子は中性子に姿を変える。※1
電荷が0の中性子は、お互いに反発し合うことなく(つまり核融合を起こすことなく)、隣り合わせることができる。
こうして太陽の8倍もの巨大さだった天体は、驚くばかりの小ささ(きみの住む街くらいのコンパクトさだ)に丸め込まれ、中性子の稠密な塊である超流体の姿になるんだ。

つづく

※1 前にも書いたが、中性子とは、電子をはらんだ陽子なんだった。


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世界のつくり/天体編・14

2023年07月24日 06時05分09秒 | 世界のつくり

14・αプロセス、って

さて、水素→ヘリウムという核融合活動によって、熱と輝きを発しはじめたファーストスターだ。
天体中心部の超高密度の環境で、水素原子核はガンガンとぶつかり合い、どかんどかんと景気よく爆発し、天体にヘリウム原子核の芯をつくっていく。
が、いつか燃料は尽きるものだ。
いや、素材となる水素はふんだんにあるんだけど、密度が芯部に集中するほど、天体外縁部は希薄になり、中心への圧力が失われていくんだ。
現代の太陽サイズの天体だと、数十億年もたつ頃には燃料の枯渇がはじまり、ぼんやりとほどけて巨大化をはじめ、図体だけがやたらとでかいぼんぼりのような姿になってしまう。
芯部の高密度なヘリウム塊は独立して残されるものの、周囲が散り散りになって、天体の生涯はおしまいだ。
これがもっと大きな質量の天体・・・例えば太陽の8倍というチャンドラセカール限界を超えるほどのものになると、様相が違ってくる。
ヘリウムの芯ができたところで、さらに外からの圧力が掛かり、水素に代わってヘリウム原子核が核融合をはじめるんだ。
こうして炭素、酸素、ネオン、マグネシウム・・・と、要するに元素の周期表のいっこ飛ばしに(ヘリウムの陽子数が2なので)反応が進んでいく。※1
前に注釈で、ヘリウムは特別にアルファ粒子という名前を与えられてる、と書いたけど、アルファ先生が関わるこれらの核融合反応を「アルファ(α)プロセス」という。
そうしてついに、元素たちの最終目標である鉄を生成する核融合がはじまる。
天体の活動がここに至るまで、わずか数千万年。
天体は、質量が大きいほど、短命なんだ。
そして、その命の終わりは壮絶だ。
それが、最期に打ち上げる花火とも言うべき、超新星爆発だ。

つづく

※1 炭素だけは、ヘリウム原子核三個がトリプル合体して生成される。ヘリウムからいっこ飛ばしのベリリウムは不安定で、ヘリウムふたつがぶつかって生成された瞬後に崩壊するが、崩壊寸前にもうひとつのヘリウムがぶつかることで×3=原子番号6の炭素が生成される。

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世界のつくり/天体編・13

2023年07月23日 11時24分01秒 | 世界のつくり

13・核分裂と核融合、って

各元素の原子核には、陽子と中性子が何個かずつ入るわけだけど、その個数は、常に安定を目指していちばん居心地のいい割り合いを求める。
放射性の崩壊(半減期ってやつ)で、ほっといても勝手に別の元素に姿を変えちゃうメカニズムもあるけど、熱や圧力でストレスを加えてやることで、元素の生成はコントロールできる。※1
水素原子核(陽子1個)同士をぶっつけ合わせて少し大きめのヘリウムをつくったり、ヘリウム原子核(陽子2個)同士をぶっつけ合わせて炭素や酸素をつくったりと、小→大をつくるのが核融合だ。
こうして雪だるま式に融合を進めると、元素の中で最も安定した鉄(陽子26個)に行き着く。
それ以上の陽子を持つ元素は、超新星爆発などのとてつもないエネルギーイベントが必要となるが、それはまた後述する。
さて、鉄よりも大きな原子番号を持つ(陽子が多い)元素は、逆に核分裂をして陽子を減らそうとする。
いちばんシンプルな原子力発電(原子爆弾も)は、ウランを分裂させて、その際に生じる熱エネルギーを頂戴しようというもの。
ウランの原子核には、陽子が92個と中性子が140個ばかり入ってて、このままならそこそこ安定してんだけど、こいつに中性子いっこを撃ち込んで不安定な状況をつくり出し、分裂させる。
核爆発をともなう分裂の結果、また中性子いっこが余るわけだが、こいつがまたお隣のウラン原子核に働きかけ、分裂をうながし、そこから出た中性子いっこがまたまたお隣に・・・と際限なく連鎖していく核反応が、臨界状態だ。
ちなみに、核分裂は放射能の放出でひどい汚染をともなうが、核融合は汚染物質を出さない。
なので、未来のエネルギー源として期待される核融合発電は、クリーンな技術と言っていい。
一方で、核融合爆弾である水素爆弾(スイバク)は、それを包むゲンバクの爆発力からストレスを与えられて起爆するため、結局は放射能をまき散らすことになる。
もちろん、こんなものは使っちゃダメだ。

つづく

※1 とは言え、実際にはコントロールしきれてない。オリンピックを自国で開きたいばかりに「福島のデブリはアンダー・コントロール」なんてうそをついたバカがいるけど、どうかしてるよなあ。デブリはほぼ永遠に熱を発しつづけるため、一度しでかしたら、人類がつきっきりになって数万年規模で面倒を見てやるほかはない。

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世界のつくり/天体編・12

2023年07月22日 08時20分26秒 | 世界のつくり

12・世界で最初の星、って

水素原子核ふたつが、エネルギー障壁を越えて接触し、核融合を起こして、ひとつにまとまった。
これがよく耳にする「太陽は、水素同士の核融合でヘリウムをつくり、そのエネルギーで熱く燃えさかる」というメカニズムだが、正確には少し違う。
水素原子核、すなわち陽子ふたつが核融合でひとつになると、片方の陽子はベータ崩壊を起こして中性子※1となり、残った陽子とくっついて「重水素」原子核になるのだ。
元素は、陽子の数のみで名称を決定され、陽子がひとつなら、中性子を原子核内に何個含んでいようと「水素」と名乗る。
そして中性子は、原子核内にわりとテキトーな個数が含まれる。
多くの陽子を原子核内に同居させる(つまり原子量が大きな)元素がこれ以降に現れるが、陽子たちが+電荷同士でケンカしないように、電荷のない中性子は緩衝材としてすき間に詰め込まれるんだ。
そして、そんな原子核ユニットの周囲を電子がめぐると、晴れて原子となるわけだ。
電子の数はというと、これまた原子核内の陽子の数のみによって決定される。
こうすることで、原子核内の+電荷と、周回する電子の-電荷が相殺されて中性を保ち、安定した形を取ることができる。
話はそれたが、陽子と中性子が1対1で同居する重水素原子核ができたんだった。
さらに、重水素原子核が、別の陽子・・・つまり水素原子核にぶつかって核融合を起こす。
ここで晴れて「ヘリウム3」に昇格することができる。
が、ヘリウムは陽子ふたつと中性子ふたつの「ヘリウム4」になって安定なので、もう一度核融合を進めたい。
ここでなんとヘリウム3は、同じヘリウム3とぶつかり合い、陽子2・中性子2の構成ユニットをつくりつつ、メンバーのセレクションから外れたふたつの陽子を吐き出して、ようやくヘリウム4の姿になる。※2
なんとめんどくさい手順だろう。
しかし、こうして次から次へと核融合が起き、巨大ガス塊は圧力による収縮と釣り合いを取るように中心部からエネルギーを発し、つまり内側からふくらむ力を発揮しはじめ、天体全体が輝いて、ファーストスター、つまり宇宙最初期の太陽が出来上がる。

つづく

※1 陽子⇄中性子が姿を変えるベータ崩壊には、電荷の問題から電子やニュートリノ、さらにそれらの反物質が関わってくるが、ここでは割愛する。
※2 ヘリウム4はとても重要な原子で、核融合、核分裂、放射性崩壊など、あらゆる状況で立ち現れる大忙しさんなので、特別に「アルファ粒子」という別名を与えられてる。

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世界のつくり/天体編・11

2023年07月21日 15時31分48秒 | 世界のつくり

11・核融合、って

水素分子がおびただしく集まった巨大なガス塊は、今やぼんやりとひとつの天体を形づくるほどの規模だ。
その奥深くにある中心部の一点は、刻一刻と密度を増す。
ガス塊全体の質量が集中してのしかかり※1、圧力と温度がとてつもないまでに高まってる。
そんな環境で、電離してむき身にされた陽子・・・いや、ここではあえて「水素原子核」と呼ぶけど、それらは激せまのエリアを強振して飛び交い、今にも衝突し合いそうだ。
しかし、電子を手放した水素原子核たちは、本来の+電荷を帯びてるせいで、お互いにクーロン斥力によって接触を回避し、すんでのところですれ違う。
ところが、ここでまた量子の持つ波動関数、すなわち確率の問題が浮上する。
電磁気力の壁に跳ね返されるふたつの水素原子核だけど、そのエネルギー障壁を乗り越えるトンネル効果・・・つまり、ふたつが触れ合えないはずの位置にも存在確率を持ってるために、果てしない回数をすれ違ううちに、たまに触れ合うものが出てきてしまう。
たっち!
ついにふたつの水素原子核が触れ合うと、今度は例のグルーオン、つまり超近距離にしか効力を発揮しないがとてつもなく強い引力が、相手のクォークを引き寄せ、絡め取る。
重力<電磁気力<グルーオンの引力、なんだ。
するとどうだろう、触れ合ったふたつの水素原子核は、ころりとひとつにまとまってしまったではないか。
同時に・・・
どかーん!
これこそが、すさまじい爆発をともなう核融合だ。
読んで字のごとく、原子核同士が融け合い、新しい原子核をつくったわけだ。
こうして、陽子ひとつの水素(原子番号1)から、陽子ふたつのヘリウム(原子番号2)に変身!
・・・かと思いきや、ややこしい話がまだある。

つづく

※1 重力とは、質量が物質中心部へ加速するベクトルを言うのだから、その芯は、物質本体を構成するすべての質量をかついでるに等しい。

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世界のつくり/天体編・10

2023年07月19日 08時33分34秒 | 世界のつくり

10・天体の形成、って

万有引力は、グラビトンという量子場が物質(この場合は水素分子)に働きかける相互作用によって生じる。
この別名「重力」って現象の根本構造は現在もまだ未解明なんだけど、一般相対性理論が記述するところによれば、それは「質量を持つものの周囲に発生するゆがんだ時空間に落ち込む加速度」みたいなことになってる。
水素分子たちは、小さいながらも素粒子に比べれば大層な質量を持ってるわけで、グラビトン場に小さなデコボコ、すなわち時空間のゆがみをつくる。
そのへこみへの落ち込みを拒んでた電磁気力の問題も、陽子と電子が同数のチームをつくることでクリアとなり、中性の水素分子たちはどんどんと大きなへこみに集まっていく。
水素分子が集団を大きくすればするほど、グラビトン場のへこみは深い谷となっていき、そこへ落ち込ませようという加速度(重力)は強大なものとなり、さらに多くの水素分子を引き寄せ、束ねていく。
こうして、集団形成は倍々ゲームで加速し、影響は広域化し、分子の固まりは巨大化かつ高密度化し、やがて熱を帯びるようになる。
物質とは、思い返せば量子の振動そのものなんで、振幅できる領域が狭まれば狭まるほど強く振動し、それはすなわち熱くなるということなんである。
今や水素分子の集団は、星雲と名乗れるほどの規模のガス塊にまで成長を果たした。
その押し合いへし合いの深層部の密度、そして温度ときたら、尋常ならざるものとなってる。
なにしろその芯には、天体一個分もの重量が集中してかかってるんだから。
そんな水素分子の大集団の奥深くで、例のプラズマ状態が発生しはじめる。
これはまるで、あの高温・高圧状態だったビッグバン直後の環境へと時間が巻き戻されたかのようだ。
せっかく原子という形で物質になった水素だけど、あっちっちになって再び電離・・・つまり水素原子から電子が剥がされていく。
水素原子核・・・つまり陽子は、以前にそうだったように、単体のむき身にされた。
密度はますます高まり、陽子たちは集団の中心の牢獄のように小さなエリアでお互いに強烈に振動し、あっちっちでむぎゅむぎゅの超緊密な裸祭をはじめた。

つづく

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世界のつくり/天体編・9

2023年07月14日 07時33分56秒 | 世界のつくり

9・原子から分子に、って

物質をつくるには、+電荷の陽子だけじゃ絶対ムリだった。
だって、陽子同士お互いに結びつこうったって、近づけば近づくだけはじき合ってしまうんだから。
触れ合うなんて、ほぼムリ!※1
結局、陽子たちは宇宙空間中にくまなく展開しながら、隣近所のご同類と反目し合い、それぞれに断固として孤立を貫きつづけるしかなかった。
ところがなんという幸運か、陽子は−電荷の電子を自分の引力圏に引き込むことに成功したんだ。※2
これならふたりでプラマイゼロ・・・セットで中性のテイを取ることができる。
引力も斥力(はじく力)も完全に相殺され、今やあらゆるくびきから解放されたフリーランス状態だ。
こうなると、これまでクーロン斥力の影響の裏で存在感の薄かった万有引力、すなわち「質量を持つもの同士は引き合う」法則が効力を発揮しはじめる。
陽子いっこと電子いっこが結び合った水素原子は、お隣の同じく水素原子を引き寄せ、同時に引き寄せられ、距離の逆二乗則に従って、近づけば近づくほど引き合うわけだ。
ちょん・・・
ふたつの水素原子は、ついに触れ合う。
触れ合った途端に、こっちの電子はあっちの陽子の引力圏に捕らえられ、こっちの陽子はあっちの電子を引力圏に捕らえ、一体化する。
ぺたーん!
なんという精妙な引力の絡み合い。
陽子ふたつと電子ふたつが、あっちの子とこっちの子とで両手をつなぎ合う、平和極まるダブルデート状態だ。
ふたつの水素原子は、チームとしてひとつになった。
すなわち、「水素分子」の誕生だ。

つづく

※1 実はムリでもない。核融合という手がある。
※2 陽子が電子の波動の中に抱え込まれた、と見ることもできる。質量比で1800対1という体格差がある陽子と電子だけど、力関係においては「+1」と「-1」とでまったく対等だ。

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世界のつくり/天体編・8

2023年07月12日 08時23分42秒 | 世界のつくり

8・原子の姿、って

逆電荷が引きつけ合い、同電荷がはじき合うという、電気による磁石のような効果を、クーロン力という。
陽子(+)と電子(-)はクーロン力でお互いに引き寄せられ、くっつき合う・・・かと思いきや、まんま磁石のようにはくっつかない。
電子は、ほぼ光速というとんでもないスピードで飛びつづける定めなので、陽子の引力圏に取り込まれながら、角運動量による遠心力で、陽子の・・・つまり水素原子核の周囲をぐるぐると回る軌道に安住の地を見出す。
元素周期表の筆頭、輝かしい背番号1をつける水素原子の出来上がり!というわけだ。
こんな様式で、原子核の外側を(惑星をめぐる衛星のように)周回するのが、原子の古典的なモデルだ。
ところが、例によって量子的な実相はそうじゃない。
量子物理学の説明によれば、電子は原子核の周囲を「回る」ことはしない。
確率的な軌道上のあちこちいたるところに分身したかのように同時にいるし、どの位置にも姿はないとも言える。
つまり、運動量があるためにそこに存在してるとは言えるんだけど、肝心の実体はどこにもなく、いる場所を特定しようとすると運動量が無限大となってパンクしてしまう。
素粒子とは、不確定性原理と波動関数という純粋数学上の存在なんだ。
無、なんであり、そこには計算式があるばかりなんだ。
が、確かに電子は実在する。
エネルギーという形式で質量が割り出せるので、そのへんにはいる、とするしかない。
そこで仕方なく、最近の原子モデルでは、電子は原子核を取り巻く雲として視覚化される。
この雲の形は、波動方程式の解を座標化して集合させたものなんで、「電子がいると思われる場所」を確率的に表すには正確なんだけど、言ったようにそこに電子はいるともいないとも言えないわけで、まあこの先は哲学の領分に入るんである。
とにかく、そんな形の水素原子ができたんだった。

つづく

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