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裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/天体編・27

2023年09月14日 18時12分59秒 | 世界のつくり

27・宇宙の観測問題、って

結局、われわれの持つ目という装置は、なにかが放った光を時間差で捉えるという機能の限界からして、過去を観測することしかできない。
さて、ここのところ、宇宙を「観測」と何度となく繰り返してるわけだけど、優秀なきみは、素粒子世界における「観測問題」を忘れてないだろう。
こうして議論は、量子力学の問題に戻らなければならない。
素粒子の揺らぎと重ね合わせ、波動関数と不確定性原理にデコヒーレンス・・・思い出すとげんなりするかもしれないが、ここがまたしても最終的な着地点だ。
ざっと観測問題を思い出しておくと、「素粒子は場において波のように振る舞っており」「何者かに観測された途端に一点に収縮して位置を得る」というものなんだった。
つまり、量子場をそよがせる波動関数が、ひとに見られたまさにその瞬間にエネルギーを集中させて質量を獲得し(E=mc2)、物質化するのだ。
そんな素粒子(=場)の振る舞いが、宇宙観測においても起きてる・・・のかもしれないというのが、わが説だ。
われわれが観測するのは、宇宙の過去であり、観測された世界が形として確定してることは自明だ。
ところがこれは、われわれの観測が宇宙の過去を確定する・・・すなわち、「観測収縮によって宇宙の様相を実体化させたわれわれはその形式を過去と呼ぶ」と言い換えることができる。
われわれの前にひろがる宇宙は、すみからすみまでが過去という確定様態であり、「現在の姿」と言えるものはどこにもない。
現在の宇宙の姿がないのは、われわれが観測できない・・・つまり確定させてないからなのだ。
それはまだ誰に観測されることもなく、実体化を免れてるわけだ。
現在の宇宙の姿は、まだ波動関数の様態を保ったまま、観測可能宇宙の裏側に隠されてる。
時空間ですらないそれは、人智を超えた抽象的概念であり、文字通りに果てしない無限であり、鏡の向こうに(今度こそ)永遠に連なるパラレルワールドとして存在する。

つづく

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世界のつくり/天体編・26

2023年09月13日 10時50分54秒 | 世界のつくり

26・本当の宇宙の広さ、って

観測の外にあるという宇宙の大きさは、いったいどれほどのものなのか?
実は、観測できる宇宙の最大端は138億光年先・・・と書いたけど、この世界が時空連続体であるというややこしい現実まで踏まえると、ずいぶんと様相が違ってくる。
138億年間、ずっと時間は一定のリズムで動いてた、ってのが幻想であることは、すでにきみは相対性理論によって理解してる。
時間と空間とはひとつながりの「相対的時空間」なんであり、あっちが圧縮されればこっちが伸びる、という性質のものだ。
世界のオープニング時、点がおもちのように膨らむ爆発的なインフレーション後、ビッグバンという炸裂が起こり、宇宙空間の膨張は開始された。
弾けた勢いに乗った慣性による等速膨張と思われたこのひろがりは、どういうわけかいったんスローダウンし、現在また加速してるわけだけど、そんな光速度周辺のギアチェンジの影響で、宇宙は時間も空間もぐにゃぐにゃに曲がり、定常状態を保つことができない。
要するに、138億年前から138億年かけてやってきた情報を観測しても、それはかつて138億光年彼方の定点で起きた事件とは、正確には言えないんだった(ある意味では整合的と言えるが、すべては相対的なのだ)。
宇宙の膨張によって、今なお天空の星々は地球から遠ざかりつづけており、その度合いは、遠くの星ほど大きな比率で・・・すなわち、速いスピードで離れていく。
観測上で確認できるいちばん遠い星は、ほとんど光速に達するか、というほどのすっ飛び様だ。
そんな加速度と、それに伴う時間のゆがみまで加味して計算すると、宇宙の(ある意味、観測の限界の)広さは460億光年先あたり、という結果が出るようだ。
これは、宇宙の最遠方に見える星の過去から、さらに先の未来(つまり現在位置)までの動きを割り出して距離を推定する、という方法から導き出せる。
つまり、宇宙の広さの最下限は、460億光年、ということになる。
が、さらにその奥には未知のからくりがありそうだ。

つづく

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世界のつくり/天体編・25

2023年09月10日 08時28分43秒 | 世界のつくり

25・タイムマシーン、って

「138億光年先が宇宙の果て」というロジックは、ちょっと考えると、なんか変だぞ?と気づく。
ビッグバン以降の宇宙空間の膨張スピードは、ちょうど光速!ってわけじゃないからだ。
138億年間、光速でひろがりつづけてきたのなら勘定は合うが、そんなわけがない。
人類が光速の原理を利用して観測したのは「ビッグバンまでの時間的距離」なんであり、ビッグバンは過去の出来事であるため、本当の(つまり現時点での)138億光年先には、観測とはまったく別の光景がひろがってることは自明だ。
現在のその場所を観測するには、実際にいってみるしかないが、もちろんそこにいってもビッグバンには立ち会えない(もう終わってるんで)。
例えば、光速度を出せるロケット(アインシュタインさんはそれを許さないが、この世界が単純なニュートン力学系として)で138億年かけてそこにたどり着く頃には、138+138=紀元276億年になってるんで、その場所の現在の姿ってものがそもそも観測できない。
だったら、光速度ロケット上から138億光年先を観測(精度のいい望遠鏡で)しつづけながらビッグバンに向かえば、138÷2=69億年後にちょうど現在の映像が手に入れられる。
光と光がカウンター方向にぶつかって相乗になるニュートン系では、その映像は二倍速で見えるはずだからだ。
そうすることで、目的地到着時に138億年のちょうど二倍分の映像分を消化でき、紀元276億年時点での現実世界に追いついてつじつまを合わせることができる。
同様の思考法で、光速度ロケットから振り返って背後の地球を観測すると、望遠鏡の映像(地球上の出来事)は止まって見える。
光を発する情報源から光の速度で遠ざかるために、両者は相殺され、動きが一時停止状態に陥るのだ。
さらに、ロケットのスピードがついに光速度を超えると、進む先を観察する望遠鏡は、情報を受け取る量が供給される情報量を上まわるので、未来の光景を映しはじめる。
観測者は、光速を越えることで、未来をのぞき見ることができるなんて!
・・・というのが、ぼくが23歳の頃に独自の思考実験によって到達したタイムマシーン理論で、当時はそのロジックのどこにも破綻が見つからないため、無邪気な大発見に胸ときめかせたものだ。
が、光速はその加速系の時空間を押しつぶし、質量を無限大へと導くため、その壁を越えることは一般相対性理論が禁じてる・・・と後年に知ることになるんだった。
話はそれたが、では宇宙の広さとは、実際にはどれほどのものなのか?
観測できない宇宙とは、どこにあるのか?

つづく

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世界のつくり/天体編・24

2023年09月09日 08時44分05秒 | 世界のつくり

24・138億年前の地平、って

前段までの章は、奇妙にわかりやすい内容になってて、この複雑怪奇な読みものにしては直感で受容できたかも。
それは、文脈がニュートン力学から相対性理論あたりの古典物理学に限定されてるからなんだった。
だけどここからは徐々に量子力学と最新科学の知見を投入するんで、思考を再びオカルトチャンネルに・・・おっと、哲学チャンネルに切り替えてちょうだい(その摩訶不思議な思考反転こそが、純粋科学の帰結なのだ)。

さて、138億光年先にある138億年前の世界は、宇宙のどこにあるか?を問うたところなんだった。
実はそれって、全天のどの方向にもあるんだ。
「観測できる宇宙空間」の最も遠い端っこにあるのは、広々とひろがる宇宙空間を内包する特異点だ。
その点から見る未来の宇宙は大きなひろがりだけど、未来(現在)から過去へと時間をさかのぼれば、全天にひろがる宇宙は点へと収縮する。
その先にある点に行き着いて、そこで、宇宙はおしまい。
宇宙の広さは、半径が138億光年なんであり、果てしない無限空間なんかじゃなかった!
・・・かと思いきや!注意深いきみにはお見通しの通りに、それは宇宙空間の「観測できる」部分にすぎない、と筆者は記すことを忘れてなかった。
だとしたら、この論考が「宇宙の果て」とする138億光年の彼方の、さらにその向こうに「観測できない宇宙」はあるのか?
ある。
ビッグバンの向こう側にも・・・いや、裏側と言っていいかもしれないが、そこにも宇宙が存在する。
きみは、鏡を持った自分を鏡にうつすと、鏡の中の永遠の奥の奥の奥にまで自分の相似形が連なる・・・という経験をしたことがあるだろう。
あのパラレルは実は、無限に並んでるわけじゃない。
鏡がきみの姿をコピーしつづけるスピードは、光速で頭打ちだからだ。
また、永遠の彼方にまでつながりそうな最奥部のきみを、きみの目は光以上のスピードで捉えることができない。
光速が有限である以上、鏡はコピーを無限につくることはできず、「アキレスと亀」のパラドックス※1と同様に、「無限の先っちょを見る」というこの追いかけっこにきみが勝つことはできない。
なにが言いたいのかというと、次章へ。

つづく

※1 足の速いアキレスは、先行する足の遅い亀を追いかけるが、アキレスが亀の位置に至ったとき、亀はすでにその位置から進んでいる。また亀の位置に至っても、再び亀は進んでる。その差は無限に小さくなるが、アキレスは絶対に亀に追いつくことはできないのだ。

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世界のつくり/天体編・23

2023年09月08日 05時17分38秒 | 世界のつくり

23・138億年かけてたどり着く、って

138億年前、ビッグバンという世界のオーニングベントの際に、大量の電磁波が放出された。
その波は休むことなく光速で飛びつづけ、138億光年を旅した今、時空間の膨張によって波長がだらだらに引き延ばされた「宇宙マイクロ波背景放射」として、宇宙空間を隈なく埋める雑音電波となってる。※1
それを観測することは、ビッグバンの残滓を見る行為でもあるんだけど、ビッグバン直後(38万年後)の様子まではたどれても、そこから先はすべての光がこんがらかったカオスなので、ビッグバンそのものの瞬間を見ることはできないんだった。
さて、138億年前、電磁波と同時に、強力な重力波もまた放出された。
途方もない質量塊が猛烈に時空間をゆがめ、そのゆがみが波となって光速でひろがり、138年の歳月を経た今日、われわれの元にたどり着く。
質量は、相対論的重力論によって実際に時空間をゆがめるので、その波が地上に流れ着くと、本当に地球がゆがむ。
ノーベル賞を獲ったリーゴチームは、わりと近い宇宙空間にあるふたつのブラックホールがお互いに向かってらせんに落ち合う、というまがまがしいイベントが引き起こす、アメリカの大地の東西と南北の距離の狂いを、量子単位で検出したんだ。
そんな観測装置を138億年先の宇宙空間に向ければ、138億年前の様子がわかるわけだ。
ところで、肝心の「138億光年先」ってのは、いったい空のどの方向にあるんだろう?
観測装置は、全天上のどのポイントに向けるべきなんだろう?
そのカギもまた、ビッグバンが握ってる。

つづく

※1 実際に、ブラウン管テレビで観られる放映後のザーザー画面は、背景放射を地上のテレビアンテナが拾ったものだ。

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世界のつくり/天体編・22

2023年09月07日 14時18分48秒 | 世界のつくり

22・ビッグバンを見たい、ったって

光の正体である電磁波は、当然ながら、光速というスピードで進む。
どの電磁波も、天体で生成されてから人類の観測の網に掛かるまでの間に、距離÷速度という時間がかかる。
地球から1光年離れた天体を飛び出したとして、地球に到達するまでには1年がかかるので、その電磁波を観測することは、1光年先の宇宙の1年前の出来事を見ているということになる。※1
10万光年先の電磁波を観測しても、それは10万年前の宇宙の姿なのだ。
ということは、138億年の彼方の電磁波を観測できれば、ビッグバンの姿を拝めることになる。
理論上は、実際にそれを見ることは可能だ。
ところが、ある理由から、それは絶対に見られない。
その理由とは、前にも説明したところの、ビッグバン直後のプラズマ状態だ。
宇宙開闢から、陽子が電子と結ばれる38万年後の「宇宙の晴れ上がり」まで、この世界は素粒子が入り乱れる光と熱のエネルギースープ状態だったために、そこをのぞき込んだところで、どんな電磁波も単独で抽出できない。
なので、ビッグバン直後、あるいはビッグバンイベントそのものの様子を電磁波で見ることは、決してできないのだ。
だったら、電磁波でない波を観測すればいい。
そこで、重力波の出番!というわけだ。
ビッグバンは、その後の世界を構築するすべての物質が「点」にまで純化された、いわば超密度を超えた無限密度の質量塊なので、時空間のゆがみたるや途方もない。※2
そんな特異点が発する重力波を検出しよう・・・すなわち、「重力波でもってビッグバンの姿を明らかにしよう」というのが、最新の人類の宇宙観測における企てなんだった。

つづく

※1 よく例えられるところでは、「地球上で見る太陽の光は、8分前に太陽から放たれたもの」というやつ。7分前に太陽が爆発しても、情報の到達に8分がかかることから、ぼくらはその間は平気でゲームをして過ごせる。
※2 逆に、このゆがみのことをわれわれは「時空間」と呼んでるのだが。

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世界のつくり/天体編・21

2023年09月05日 08時44分06秒 | 世界のつくり

21・電磁波、って

宇宙観測とは、宇宙空間を漂う電磁波をつかまえることと同義だ。
それが「宇宙を見る」って意味なんだ。
電磁波とは、光の波(光子という素粒子の振動)のことで、波の質や強弱によっていろんな種類に選り分けられる。
ぼくら人類は、そのうちの「可視光」というレンジを視神経で捉え、脳に「外世界の風景」として解釈させる。
だけど、物体の情報を教えてくれる波・・・つまり見える光線は可視光だけじゃない。
可視光は、電磁波のうちで波長の長いものから短いものまである中での、ちょうど中間あたりのバンドだ。
その他にも、可視光よりもエネルギーが弱い赤外線、電波や、逆に強い紫外線、X線、ガンマ線なんてものがある。
そんないろんなタイプの波を、人類の目を超越した機能を持つ装置に分析させれば、天体の外観だけでなく、温度や構造、環境からの生成物、さらには営みそのものまで、より多面的に天体を理解できる。
波は、情報のかたまりなんだ。
見た目だけじゃなく、いろんな種類の電磁波が教えてくれる多様な要素を総合し、よりリアルな宇宙の形を得ようとするのが宇宙観測、ってわけだ。
が、電磁波ではどうしても見られないものがある。
それが、ビッグバンの姿だ。
そして、それを見せてくれる波がある。
それが、重力波だ。

つづく

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世界のつくり/天体編・20

2023年08月29日 05時08分33秒 | 世界のつくり

20・重力波、って

質量を持つ物体の周囲の時空間はゆがむ・・・って、そろそろこのフレーズは読み飽きてきたかもしれないけど、この部分は(そしてここ最近書いてる章は)シンプルな古典物理学なんで※1、直感的に理解しておいてほしい。
質量が大きければ大きいほど、周囲の時空間は大きくゆがむ・・・ってルールも、もう頭に叩き込まれてるはずだ。
大質量星が点にまで押しつぶされたブラックホールの周囲ときたら、途方もないゆがみ方をしてる・・・ってことも、前提となる知識から自然に導き出される。
そのゆがみが、現代物理学で言う素粒子=「場」の偏在だ。
その場のへこみに落ちる加速度こそが、重力の正体なんだった。
さて重力は、ニュートンさんが数式で示した「その力は距離の二乗に反比例する」ことからも導かれる通りに、果てしない遠くにまで影響を及ぼす。
重力は、とても弱くても、その威力の届く距離は無限なんだ。
これは、ひとつの物体の存在は宇宙の裏側の形をも少しだけ変える、ってことを意味する。
質量が周囲の時空間に対して与えるゆがみ(場の偏在)は、べた凪状態の湖の中心に石ころを投げ込んだときに立つ波がはるか離れた岸辺にまで及ぶように、宇宙の隅々にまで達する。
アインシュタインさんの予言したこの現象こそが、重力波だ。
重力波は、夜空を彩る天体の(すなわち物質の質量)の分だけ※2、宇宙空間を飛び交ってる。

つづく

※1 グルーオンで結びついたクォークがヒッグス粒子の媒介で重力場(まだ未確認のグラビトン場)と相互作用し、ぼくら人類が感覚するところの時間と空間を相対的に伸び縮みさせる・・・というのが、現代科学における言い回しだ。
※2 ただ、物質の総量と重力波の総量とは等量ではない。宇宙に存在する質量は、目に見える天体の分の他に、「暗黒物質(ダークマター)」という未解明の質量が大量にある。

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世界のつくり/天体編・19

2023年08月22日 08時30分40秒 | 世界のつくり

19・破壊と創造、って

大質量を無限密度の点にまで煎じ詰めたブラックホールは、アインシュタインの重力マットモデルにおける谷底の存在だ。
そのモデルでは、物質の周囲の空間は質量の大きい小さいに応じてゆがみ、初期値において平面と想定した場にへこみをつくるんだった。
その意味で、ブラックホールはへこみじゃなく、果てしなく深い穴だ。
シュバルツシルト半径「ギリ」のラインでは、その勾配は緩やかだが、脱出速度の綱引きに負けてその力に引きつけられたが最後、深みに向かって限りなく加速させられ、時間ごと引き延ばされ、無限の降下らせんを片道切符で進まされる運命となる。
素粒子も、ちりも、隕石も、星も・・・運悪く周辺に位置取ってしまったすべてのものが、穴に飲み込まれる。
ひとつの星がブラックホールの重力圏に入ると、例(ニュートンの力学)によって軌道は放物線を描き、特異点に向かうらせんを遠回りに落ち込みはじめる。
さらに、その星の重力の影響下にある別の星もまた、らせん軌道に追随する。
その別の星の重力もまた、別の別の星ぼしの運動との相関関係にある。
こうしてブラックホールの支配図は広大なものとなり、宇宙空間のそのエリアに存在するあらゆる天体が、壮大なダンスホールをめぐる回転運動をはじめる。
特異点に近いものは速く、遠く離れたものはゆっくりと。
こうしてついに「銀河」が形成される。
ブラックホールは、一切を粉砕して畳む破壊活動と表裏一体で、こんなにも壮麗な創造活動をしてるんだった。

つづく

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世界のつくり/天体編・18

2023年08月21日 07時25分02秒 | 世界のつくり

18・光まで飲み込む、って

巨大天体一個分もの質量を「毛先ほどの点」に丸め込む、というこのオーダーは、小山をスプーン一杯分に圧縮、なんてレベルじゃない。
無限の高密度だ。
ブラックホールには大きさがないんだから、数式上では、単位あたりのポテンシャルエネルギーは無限大、ってことに実際になるんだ。
そのポテンシャルとは、重力だ。
ただ、ブラックホールが生み出す(消し去る、か)仕事は、現実には無限ってわけじゃない。
ブラックホールにも大小があって、それは「点の重力が影響を及ぼす半径」と定義でき、その広さは、かつて星の姿だったときの質量に伴う。
具体的には、「このラインから奥に踏み入ると必ず深みに落ち込みますよ」「そして、決して抜け出せませんよ」というシュバルツシルト半径が、そのブラックホールのサイズってことになる。
この立ち入り禁止ラインを越え、重力圏に捕らえられれば、物質はおろか、光でも逃れることはできない(光も粒子なのだ)。
その理屈は、こうだ。
万有引力の法則では、大質量を持つ物体(例えば星)の重力圏から飛び出すには、質量の大きさに応じた脱出速度が定められてて、単純な言い方をするなら、「地球から宇宙空間に飛び出すには、鳥や飛行機のスピードじゃ無理で、ロケットの高速度が必要」という。
星の質量・・・つまり重力が大きければ大きいほど、脱出速度は高く設定される。
その脱出可能速度が、計算上で光速を越えると、光も自分の飛ぶ速度(つまり光速)では重力を振り切れなくなる。
つまり、光も特異点に飲み込まれる、ということになる。
だからブラックホールは、純粋な闇なのだ。

つづく

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