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みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

悩みのるつぼ:上野千鶴子さん「壊れず」にきた自分をほめて!/政治にモノ申す・辛淑玉さん

2009-11-01 14:28:00 | ジェンダー/上野千鶴子
毎月一回、上野千鶴子さんに回答がまわってくる「悩みのるつぼ」を楽しみに読んでいます。
 
今までは、月初めの回答だったのですが、10月は最終週の昨日31日の、
朝日新聞「be」の、回答者が上野さんでした。

10月の相談者は、39歳のOL。質問は「貧乏生活で友だちもいません」。
対する、上野千鶴子さんの回答は、「壊れず」にきた自分をほめて!

〔悩みのるつぼ〕 貧乏生活で友だちもいません
(相談者 OL 39歳)
 
 39歳、入社20年目の貧乏OLです。辞めたい辞めたいと思いながら勤めてきました。会社の業績も厳しく、正社員とはいえ手取り月16万2千円のボーナスなしです。親元から片道1時間40分かけて通勤しています。
 貧乏なので毎日の通勤服も着たきりすずめです。だからロッカールームで着替えるのが苦痛でたまりません。のびきったブラジーにすり切れパンツを見られるのがイヤで、人気のない時間帯を狙って着替えるありさまです。冬場はコートの下は制服を着て通勤します。
 昼の弁当も粗末です。おかずのない日の丸弁当を見られるのがいやで、休憩室でも自分の席でも食べられず、晴れた日は真夏でも真冬でも外で、スズメを相手に、雨の日は欠食します。・・・・・

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(回答者) 社会学者 上野千鶴子 
「壊れず」にきた自分をほめて!


 あなたはちっとも「壊れて」なんかいません。
 辞めたいと思うような会社に長い時間をかけて20年間も通いつづけ、質素な暮らしをして衣類にも食べものにもおカネを使わず、まじめに忍耐強く生きているあなたは、いまどき珍しい立派なかたです。
 高度成長期以前の日本なら、あなたのようなひとはけっして珍しくなかったでしょう。格差が拡大し、『蟹工船』がブームになる昨今。あなたの反時代的な生き方は、一周遅れのトップランナーかも知れませんよ。
 給料が悪くても正社員なら、派遣切りのように職を失うこともないでしょう。夜勤・残業なしで手取り16万あまりは介護職の労働条件よりまし。 親にパラサイトできるなら、母子家庭のシングルマザーより有利。
 下を見て現状で満足しなさい、とお説教しているわけではありません。
 あなたのほんとうの悩みはいったい何? 貧乏なこと? 人並みでないこと? 仕事がつまらないこと? 毎日が楽しくないこと? 結婚できないこと? 他人とコミュニケーションがとれないこと? 
 ご自分で、「こじゃれた服を身につけて人並みのお弁当を・・・買ったり」したほうがとありますが、「貧乏」ならその選択肢はないはず。それともその気になれば使えるおカネがあるのに、ケチケチ暮らして貯金でもしているのですか?
 できることとできないこととを腑分けして考えましょう。
 おしゃれがしたかつたらリサイクルでもファストファッションでも工夫次第でチープシックは可能です。いまどき梅干し一個の日の丸弁当とは驚きましたが、晩のおかずを詰めたり、いくらでも工夫できるでしょう。
 あなたは他人の目を気にしながら、その他人に合わせる気持ちがないのですからすでにじゅうぶんに「強い精神力」の持ち主です。
他人とコミュニケーションする手段は服装や弁当ではありませんから、きっと本気でコミュニケーションしたいとは思っていないのでしょう。なくてもすんできた職場なら、あなたにうってつけ、と思えます。
 仕事はやりがいのためでなく収入のため。今より有利な転職がなければ、いやがられても職場にしがみつきましょう。20年間「壊れず」に続けてきた自分をほめてやりましょう。
(2009.10.31 朝日新聞)


「悩みのるつぼ」~働かない夫を更正させたい:
上野千鶴子さん「家長」と「主婦」を両方続けますか」(2009.10.7)



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上野千鶴子さんの「悩みのるつぼ」を紹介する前に、今朝の新聞を開いたら、
中日新聞の二面の「万機創論 政治にモノ申す」に、辛淑玉さんの大きな写真。

【政治】弱者の視点 明確に示して 人材育成コンサルタント 辛 淑玉さん
2009年11月1日 中日新聞朝刊
政治にモノ申す 「まだ何もかわっていない」

 政権発足後、初の国会論戦に臨んでいる鳩山由紀夫首相。所信表明演説では「友愛政治」を掲げ「政治には弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されなければならない」と宣言した。本当に「弱者」に温かい政治になるのか-。野中広務・元自民党幹事長との対談「差別と日本人」がベストセラーになった在日コリアン三世で、人材育成コンサルタントの辛淑玉さんに聞いた。

 鳩山政権には自民党政権にない色気がある。口説けば落ちるかもしれないという色気。違う言葉で言えば不安定さ。あっちにも行くし、こっちにも行く。だから、ひょっとすると、頑張れば、こっちを向いてくれるかもしれないと思わせる。

 《政権発足から間もなく五十日になる》
 期待していなかったので予想通りかな。沖縄の普天間飛行場の移設問題では「県外移設」を打ち出していたのに、踏ん張れない。公立高校の無償化や私立学校に通う世帯への支援の対象に、外国籍住民の学校を入れることも、最初は政策に掲げていたのに外された。
 一方、予算規模が大きくなって国債を増発するのは、他国に借金するのでなく自国の民が買うなら、不平等に税金を取られるよりまし。新しい世代のために貸し付け、次の世代が果実をもらえるなら悪いことではない。

 《政治は変わったか》
 少なくともマイノリティーから見ると、まだ何も変わってない。本気で変えるなら法律を変えないと。女性に対する賃金格差をしたものは罰するとか。来年の参院選で民主党が単独過半数を取れば社民党はお払い箱。それまでが民主的な方法で法律を通すチャンスだ。

 《麻生太郎前首相と比べると》
 世襲の政治が継承され構造的には同じ。下品な金持ちから上品な金持ちに変わったくらい。
 米国でプレスリーを歌った小泉(純一郎)さん、政権を投げ出した安倍(晋三)さん、「あなたとは違う」と言って辞めていった福田(康夫)さんと、みんな品がなかった。やっと一応は格好のつく人になって、ほっとした部分はあるかも。

 《鳩山政権は生活者重視を打ち出している》
 自民党政権は産業で国を興していくという戦前の発想でやってきた。生活者から見て必要なものをつくり出していく考え方は、まともな資本主義の国では当たり前だ。
 ただ、小泉政権以降、格差が進み、カネのある生活者とカネのない生活者がいる。生活者の前に弱者の視点をはっきり打ち出さないと。資本主義経済を維持するのであれば、政治は弱者救済でなくてはならない。自民党政権はそれを忘れた。

 《鳩山政権に弱者の視点を感じるか》
 亀井(静香金融相)さんの言い出した中小企業の借金返済を猶予する法案は正しい。カネを払えなくなったら、担保まで奪うというのは前近代的。いま払えないのなら、払えるようにするという発想は評価できる。
 問題は政権の中に弱者と交わってきた政治家がいないこと。前原(誠司国土交通相)さんの八ッ場ダム問題の対応は典型だ。国家に翻弄(ほんろう)されてきた住民に詫(わ)び、建設中止に反対する住民を叩(たた)くのは許さないと言うべきなのに、それができない。

 《鳩山政権になり、永住外国人に地方参政権を与える法律の制定が再び注目されるが》
 最大の難関の一つになるだろう。これで足を引っ張られ、こける可能性もある。許さない勢力や力が日本社会には現存する。斬(き)り込むには相当の覚悟がいる。軽い感じでいくと、痛い目に遭う。その結果、民主党の一部のナショナリストが巻き返し、逆ぶれする恐れがある。
 (聞き手・清水孝幸、写真・市川和宏)
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 しん・すご 東京都生まれ。在日コリアン3世。人材育成コンサルタント。1985年に香科舎を設立し、講演や企業内研修、人材育成のコンサルティングを行う傍ら、弱者救済や差別撤廃の活動に取り組む。神奈川県人権啓発推進会議委員。50歳。著書に「差別と日本人」「いじめるな!」「ケンカの作法」(いずれも共著)「怒らない人」「悪あがきのすすめ」など。
(2009.11.1 中日新聞)


辛淑玉さんとは、上野さんのご縁で何度かお会いしたことがあります。

浅野さんの選挙のときは、着物の着付けをしてあげましたが、
とっても素敵な女性です。

辛さんの本はだいたい持っているのですが、なかでも7月に紹介した、
野中広務さんとの対談『差別と日本人』は、こころに残る一冊です。

     

歴史と向き合う~・在日『差別と日本人』
『和解のために』『対話の回路』『<民主>と<愛国>』(2009.7.8)


   
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