ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

迷走する高速道路料金割引

2010年12月17日 | 高速道路
どうやら高速道路2000円上限は、一転してETC限定とするようだ。

報道によれば、「通勤割引などを継続することから料金が複雑になり現金収受では料金所が対応できないから」と書いてあるがこれは本当なのか。

ETCで入場・退場するときには料金計算ができるのに、通行券発券ではその計算が自動で出来ないとはとても思えない。
たしかに現行の通行券の計算システムは改修する必要があるだろうが、それにそんなに費用がかかるのだろうか。

上限2000円をETCに限らず適用するとなると、費用をかけてETCを付けた利用者の納得が得られないだろう。
いまやETC装着車は圧倒的マジョリティである。
また、現在国交省は多額の税金を投入してITSスポットを整備しているが、その受信はETC機器で行う。
ETCがなくても割引可能というETCが後退するような施策はなんともちぐはぐな印象を受ける。

さらにちぐはぐなことに首都高、阪神高速は逆にETCがないと割高になるような料金制度が検討されている。

また、割引の適用が微妙な時間差で出来たり出来なかったりすると料金収受員との現場でのトラブルも予想される。

もうひとつ言えば、ETC限定の中止はETC車載器製造メーカーにとって大きな痛手となる。

この辺を総合的に判断してETC限定を継続する、というのが本当のところじゃないかと思う。

バンコク

2010年12月14日 | 雑記
バンコクに出張中。

土曜の深夜に入り、昨日までのモーターショーを見て、今日から取引先めぐり。
アジアのモーターショーは大商談会みたいなものなので、カーメーカーも市内のディーラーの営業マンを大量に配置している。
ピックアップ主体のマーケットから小型セダンに需要が移りつつあり、また庶民がクルマを持つことが出来るようになってきていることから、モーターショーも非常に熱気がある。
日産マーチは飛ぶように売れているらしい。

今回市内を走るクルマが大体新しくきれいになっているということに驚いた。
あと、ドライバーがほとんど警笛を鳴らさない。今まではどうだったかあまり記憶にないが、他のアジア圏とは格段の差がある。
クルマ社会がだんだんと成熟してきているのかもしれない。

アメリカは後方カメラを法制化へ

2010年12月11日 | 雑記
数年前から検討が進められていた後方カメラの法制化が2014年から実施される公算が強くなってきた。NHTSAのアナウンス

アメリカでは、車道から自宅車庫への引き入れ路(ドライブウェイ)で我が子を轢いてしまう死亡事故が年間約300件発生している。

車庫入れ時には前から、車庫出しはバックでというやり方が欧米では一般的だが、それがために出かけるときに子供が轢かれる事故が発生する。
安全面では、日本人が大好きな「バック駐車」が勝っているように思う。

法案では、2012年から段階的に引き上げ、2014年末から全ての新車に100%装着という事になるようだ。

カメラ+モニターというコンポはコストで100ドルはかかるので、アメリカの新車販売を年間1500万台として、1000億円以上の市場になる。
(というか、それでも1000億円。ITSは「兆円」を気軽に言うが、それがいかに大変か)

それ以上に筆者が注目するのは、車載モニターだ。

この法案が実は意味することは、2014年以降アメリカの全ての新車に車載モニターが搭載される、ということなのだ。
これはカーエンタメ市場にとっては、大きな転換となる。

主力はルームミラーに組み込む小型モニターになる、という観測もあるが、しかしモニターを装着しそれをバック時にしか使わないのではあまりにもったいない。
車両情報表示やカーナビへのグレードアップ、スマートフォンとの連携など、様々な可能性がある。特にカーナビへのグレードアップはカーメーカーの美味しいビジネスになるだろう。

また、アメリカの決定が欧州や日本に波及する可能性もある。
遅かれ早かれ、いずれは全ての車がモニターを装備することになるだろう。

ITSスポット対応ナビ

2010年12月07日 | ITS
ITSスポット対応ナビが5年で1000万台普及って、全くあり得ないと書いたが、ちょっと訂正しておく。

ITSスポット対応機能自体は、カーメーカーの上位機種や市販の上位機種に採用され、1000万台はありえないが、それなりの数は普及すると思われる。
ただし、それはあくまでナビの機能が一つ追加されるだけのことであり、「カーナビ」が「ITSスポット対応ナビ」というものに変身するわけではない。

問題は、これに対応したETC。すでに高速道路料金収受機能だけのETCは実売1万円を切っているが、ITSスポット対応のETCは3万円はする。
ITSスポットの情報表示はこれとセットでなければ機能しない。

これはほとんど売れないだろう。

馬淵大臣のHP

2010年12月05日 | 高速道路
くどいけど、政策コンテストで高速道路無料化を8割の人が否定した。
一方で、馬淵国交相はそのホームページに、いまだに高速道路無料化を「実現させる政策」として載せている。

国民の8割が否定する政策を「実行する」と宣言している大臣ってのは一体何なのだろうか?

8割の反対ってのは、国民が望んでいないのか、もしくは国の説明が不足しているのか。

いずれにしても、馬淵氏はキチンと議論をやり直し、何がベストなのかを明らかにして欲しい。

高速道路無料に関する世論

2010年12月04日 | 高速道路
先日報道で知ったが、政策コンテストの項目に高速道路無料化が入っていて(これを知らなかった)パブコメでは支持が政策の中で最低、8割が反対だったという。
この政策コンテストにゆだねるってのは、世論を尊重するように見えるが、実際は政治主導の放棄じゃないの?官僚が恣意的に活用しているようにも思える。

さて、興味深いのはこの世論の移り変わりだ。
民主党は山崎養世氏の「日本列島快走論」に乗っかって完全無料を打ち出した。それに対抗して、当時の政権は土日1000円を実行。
選挙では民主が圧勝。これに高速道路無料がどれだけ影響したかはわからないが、民主が勝ったのは事実。
その後、完全無料は出来ない~一部しかできない~その他上限2000円などと変遷し、結果的にマニフェスト実行を放棄した。

で、政策コンテストでは高速道路無料化に8割が反対。各種調査でこの数値は多少ぶれるが、それでも反対が賛成を上回っているのは間違いなさそうだ。
しかし、別の調査では8割の人が民主党が高速道路無料化のマニフェストを実行できなかったと批判している。

高速道路を無料化しても、財政はOK,渋滞も問題なし、全てが上手くいくと言ったから賛成した

しかし、財源は不明確。しかも土日1000円でもあれだけ渋滞するのに無料は無理だろ?

現実を知った国民は無料化反対

ぬるい検討で甘いマニフェストを掲げて実行できなかった事に対して批判

ということだろうか。

必要なことは無料か有料かという2者択一ではなく、最適化だと思う。
無料にしなければ利用が増えない道路は無料化すればいい。インフラとして存在するものが使われないのはばかばかしい。そういう意味で現在の無料化実験は正しい判断だ。
その他の道路は、適切に利用されるまで価格を見直せばいい。
適切とは、渋滞によって利用価値が損なわれない範囲、ということになる。上限2000円はそうしたシミュレーションのもとに決定されたと信じたい。そうであればこれは賛成。
むしろ値上げをして渋滞を緩和したい、という道路があるなら、それは道路整備が優先課題であるということを認識しなければならない。

外環道大泉以南などのミッシングリンクの整備を最優先するべきだ。これは工費がかかるだろうが、同じく巨額投資案件である第二東名を静岡県内だけに作るよりプライオリティが高いように感じる。きちんと合理的な判断のもとに進められているのだろうか?

高速道路2000円

2010年12月04日 | 高速道路
高速道路料金の今後について、今朝の新聞各紙で報道がなされている。
はたしてこれが最終的な姿になるかはまだわからないが、長いことかかって検討した割には疑問の残る内容だ。

軽自動車は1000円、普通車は2000円を上限。ETCの有無にかかわらず適用。中型、大型は従距離制を継続。料金は未発表。現在のETCによる各種割引は原則として廃止。ただし一部継続はありうる。
首都高と阪神高速は従距離制を採用する。

昨日から今朝にかけて各紙の報道に若干の差異があるが、概ねこんなことらしい。

まず、中大型に従距離制を残すとなると、運輸業界は踏んだり蹴ったりかもしれない。軽・普通車で平日も渋滞し、かつ割引がなくなる。

次に、なぜETCでなくても割引を適用するということにこだわるのか?
これは全く理解できない。
私は我が国のETCについては仕組や仕様に対して極めて批判的な意見を持っているが、だとしても、ここまできたなら初志を貫徹するべきだ。出来る限りETCを普及させて有人料金収受コストを下げるべきだろう。さもなければ、今までの努力や補助金が全く無駄金になる。
ETCには確かに天下り団体の利権のような疑問の残る側面があるが、それは感情論であり、ORSEの体制や手数料を適正化すればいいだけの話だ。

もし本当にETCはいらないというのなら、ETC車載器を前提としたDSRCのITSスポット整備(250億円)はいまからでも中止するべきじゃないのか?
もう設置は終わっているのかな......。

さらに矛盾するのは、首都高や阪神高速の従距離制。出口料金所がないから、ETCでなくては従距離料金収受はできない。ETCがない車は最高料金となる。
だから、ETCをつけたくない、もしくは与信が受けられないユーザー向けにプリペイドタイプの簡易車載器をコンビニなどで貸与することになるようだが、これは非常にまどろっこしい話だ。

かつ、最大900円というのはどうも実質値上げとしか思えない。
首都高は土日の割引もいつの間にかやめちゃったし、なんか値上げの方向に走っている。

前回前原前国交相が上限2000円を言ったときは民主党内で反対論が噴出し、棚上げになった。しかしそれは参院選挙が近かったからにほかならず、今回は多分このままずるずる行くんだろうな。

ITSスポット対応ナビが5年で1000万台?

2010年12月02日 | ITS
昨日、国交省ITSホームページのITSスポットに関する記載について書いたが、その中で、ITSスポット対応ナビの普及について
「5年間の累計で、約1,000万台の普及が予測されています。(NPO法人ITS Japan 試算)」
と記されている。

いま、我が国のカーナビ販売総需要は400万台/年。
この数年は微増傾向にあるが、今後5年間で販売されるナビゲーションは2000万台前後だと見ていいだろう。
1000万台ということは、2台に一台ということになる。

ITSスポット対応ナビが2010年に何台売れたかという統計はないので不明だが、多くとも数万台だろう。
2011年にITSスポットが整備されても、直ちにITSスポット対応ナビが消費者に認知されるわけではない。おそらく2011年はほとんど売れない。

また、ITSスポット対応ナビはITSスポット対応のETC車載器が必要で、今使ってるETCでは機能しない。ETCは新しい機種でも効用に差がないので、車を買い替えた時には外して乗せ換える人が多い。
はたして今後ITSスポット対応機能の付いたナビが増えたとしても、ナビと一緒にETCまで買い替える人がどれだけいるのか。

さらに、最近のデータではメモリータイプの廉価機種が販売の半数を占めている。こうした機種はコスト優先で機能が絞られており、ITSスポット対応なんていう機能が盛り込まれるとは到底思えない。

ということで、5年で1000万台なんてほとんど寝言レベル。

ITSスポットサービス

2010年12月01日 | ITS
国交省道路局のITSホームページに、ITSスポットサービスというページが出来た。これを読めば、私がこのところ記事にしているITSスポットについての理解が深まると思う。

この中に、ITSスポットサービス対応カーナビというページがある。
ここで、三菱電機、パナソニック、三菱重工のITSスポット対応機器が紹介されているが、これらはほとんど売れていない。
この3社は路側機のビジネスにも関与している、ということに注目しなければならない。
売れようが売れまいが車載器を販売することはある意味義務のようなものなのだろう。

まあ、インフラが整わない限り売れないという意味で、路側機と車載器はチキンエッグであり、今回国交省が1600基の路側機を整備したのは、チキンエッグを打破するという意味では間違っていない。少なくとも、そのサービスに需要があればね。

一つだけ突っ込んでおく。
上記のITSスポットサービス対応カーナビのなかに、5年で1000万台普及と言及した後で

「機器とコンテンツビジネス等で、100兆円の市場規模との予測もあります。(三菱総研 試算)」

という記載がある。
100兆円という数字がいかに荒唐無稽か。日本の国民総生産だって500兆円レベルだ。100兆円=1億人x100万円。
確かに三菱総研は2007年に、「2020年までの累計でITS関連市場は100兆円」と発表した。しかし、それはITSに関連する市場を全てひっくるめて、しかも13年間の合計だ。私はそれでも大ボラだと思っているが。(多分、ETCで決済される通行料も計算に入っているのだろう)

それを、あたかもITSスポットサービス単独で市場があるような書き方をするという神経がわからない。