ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0に乗り換えたほうが良いのか?

2021年08月19日 | 中国生活

久しぶりにETC2.0関連の自動車雑誌記事がネットに上がっている。

ベストカーWEB「ETCはあるけど、そろそろETC2.0に乗り換えたほうが良いのか
正直何が言いたいのかよくわからない記事。ライターさんもその辺わかっててはっきりとはかけない大人の事情なのかもしれない。

先に結論を言っておけば、2.0に乗り換える必要は全くないし、何らかの事情で買い替えるとしても割高の2.0を買う必要はない。(のぞく圏央道常用者)
いまでもETC1.0車載器は販売されている。

では、記事を見てみよう。
まず、ETCの規格変更による問題に言及している。
これは2つの話があってとても分かりにくいのだが、簡単に要点だけを説明しよう。
先に承知しておいてほしいことは、この2つともETC1.0、2.0の規格とは別の問題だということ。

1.スプリアス問題
  電波法を国際規格へ合わせるため、基準に合致してない無線機器の使用を禁止するというもの。
  ETCとしての機能上は全く問題ないので物理的には使えるが違法状態になる、ということ。
  非適合のETCはごくごく初期の一部しかなく、なおかつ法規制は当面延期になっているので忘れていい。

2.セキュリティ対策
  現在ETCにセキュリティ問題が発生しているわけではないが、どうやらセキュリティホールがあったようで数年前からその対策がされている。
  これは不正利用防止関連だろう。
  で、今販売されているもの(古い在庫品はわかりませんが)はETC1.0でもETC2.0でも対策済。
  2030年以降セキュリティ未対応ETCは使えなくなる、とアナウンスされているが2030年時点では相当数の未対応ETCがあるはずで、
  ゲートが開かないことによる事故発生を考えれば絶対に実施できない。とくにその理由であるセキュリティの問題が発生していないのであればなおさら。
  いずれにしても今買い替える必要なまったくない。

ということで、規格の話は忘れていい

では、ETC2.0にはそのほかの利点があるのか?ということだけど、それはこの記事の後半部分の歯切れの悪さを見ればよく分かる。
高速道路の電波ビーコンが来年廃止され、ETC2.0に一本化されるのは事実。電波ビーコンの情報がとても貴重だと思ってる人はETC2.0にすればいいけど、
実際それほどのものではないでしょ。おおむね道路にある掲示板と同じ情報しかでないから。というか、あの高速略図を運転中に見るのは無理。

商業施設での決済利用について最後に言及されているが、この20年間実証実験ばかり。本当にニーズがあるならとっくに実用化されてるはず。
最後の一言が示唆に富んでいる。「正直、昨今はスマホがあれば何でもできてしまう」。そうなんです。

ETC2.0は圏央道での割引があり、常用する人は高い分の元が取れるけど、それ以外の人にとっては高いだけでまったく意味がない。


広東省仏山(佛山)市順徳 日本人会

2020年06月13日 | 中国生活

このエントリーは広東省仏山(佛山)市順徳在住、もしくは今後在住予定の日本人の方に向けてのものです。
順徳日本人会のホームページは以前ありましたが現在はメンテナンスが止まっており、ネットでの情報は限られています。検索でたどり着いた方向けに情報発信をいたします。

 

1.順徳について
中国の住みやすい都市ベストテンなどに入る、治安のいいい街です。中国では美食(広東料理)の街としても知られています。家電(美的等)、養魚等が主要産業。

2.日本人居住区
大半の人が大良の新世界アパートに居住しています。新世界ホテルが経営する同じく区画のアパートです(サービスアパートではありません)。徒歩5分圏内ちゃんとした和食屋とスーパーがあります。観光地清輝園の向かい側なので土日は人出が多い場所です。

3.日本人会
日本人会があります。
定期的な会食は年に数回で、特に会費などもない緩い集まりです。知り合いを作っておくと便利なので赴任されたら参加された方がいいと思います。

盛んな活動はゴルフです。順徳区の均安にある均安ゴルフクラブ(車で40分)で毎週末土日にスタート枠を確保しており、幹事が車の乗り合い含めメールやWechatで取りまとめてます。一人でも気軽に参加可能です。

詳細情報をご希望の方は日本人会にお繋ぎしますのでこのブログのコメント欄にご一報ください。


現在の中国の日常

2020年05月06日 | 中国生活

どうもブログ更新が滞ってる。別に忙しいわけではないんだけど。

2月20日から中国に戻っている。知人からは中国にいるということでよく心配の声をかけてもらうのだが、実は戻ってから今に至るまで何の不安も不便もなく生活している。

私の住んでいる広東省仏山市は人口600万人。東京都の半分くらい。
累計感染者は90人、現在治療中は4人。この4人はもうずっと変わらないからおそらくは生命維持状態なのだと思う。
死者はゼロ。要するに、ここにいる限り感染するリスクはまったくない。殆どの中国の都市で同じような状況だと思う。

その日常はどうかというと、部分的にはまだ日本より厳しいかもしれない。
外出規制は全くないが、検温はアパートの出入り、会社出社時、商店の入り口で必ず実施している。

商店はマスク無しでは入場できない。アパートのエレベータや商店のドア等は30分おきに消毒。
飲食店はすべて開放されているが、映画館やジムはまだ営業許可がでていない。

観光業は再開しているが、観光地は入場制限がありかつまだ感染が怖いという理由から人出は決して多くない。

製造業は現時点では全て正常稼働しているが、肝心の輸出先の経済がストップしているから仕事が減っている状態。なのでリストラは発生しているが、おおむね経済はもとに戻りつつある。

問題は国際間の人の移動。

中国は徹底した防疫で抑え込んだ。感染者数がすくなく免疫もできていない。だから他国からの流入に弱い。
韓国も同じような状況。なのでおそらく中韓の交流はほどなく始まるだろうがその他の国からの入国はできずこれは当面続くだろう。
現在日本人の入国は事実上できない。

中国にいる日本人駐在員は一旦出国したら入国できないので海外に出ることができない。任期がきても後任者が来れないので任期延長。
まさに缶詰状態になっている。私は駐在員ではなく自らの意思でここで働いているわけだが、日本に帰れない状況は同じ。

まあ、日本に帰れないということ以外は生活になんの支障もない。おそらく日本もあと1ヶ月もすればこんな感じになるだろう。
その後は国際間の人的交流をどうするかが最大の問題になると思う。


コロナウイルス マスクは有効か?

2020年01月30日 | 中国生活

中国在住者(現在一時帰国中)としてはコロナウイルスは大事件。

これから中国に戻るに当たり、自衛、他衛の感染を広げない策を講じる必要があります。
まずすぐに思いつくのはマスクなので調べてみました。
(既存情報コピペの「調べてみましたサイト」ではございませんので最後までお付き合いください)

1.マスクの目の粗さ
マスクはフィルターです。ということは目の粗さがポイントになります。
マスクで防ぎたいものは主に3つ。花粉、PM2.5、ウイルスでしょう。これらはそれぞれ大きさが違います。

1)花粉 一番大きく、直径40㎛(マイクロメートル、ミクロンと同じだ)
2)PM2.5  PMは空気中を漂う粒子状物質。2.5はその中で健康被害が大きい直径2.5㎛のもの
3)ウイルス 最も小さい。0.1㎛前後

つまり、花粉とウイルスでは400倍の違いがあります。花粉がバスケットボールなら、ウイルスは仁丹くらい。PM2.5はゴルフボールくらいかな?イメージとしてはそんなもんでしょう。

花粉専用マスクではウイルスは全くザルです。PM2.5対応マスクでもウイルスはらくらく通過します。
少なくともウイルス対応(0.1㎛補足99%などの表記)がないと意味がありません。

2.飛沫感染
ただし、ウイルスはそれ自体で空中に浮遊するものと、咳くしゃみで唾液の粒(飛沫)の中に入って浮遊するものがあります。
ウイルスは裸で空気中に漂ってると割と短時間で死んでしまいます。種類によるけど数時間。
今回のコロナウイルスは水がないと死んでしまうようです。
むしろ警戒が必要なのは濃厚接触(面談など)での飛沫です。
飛沫の大きさはいろいろ。大きいので5㎛程度、小さい(エアロゾル状態)でも0.5㎛程度あるので、普通に売られているウイルス対応不織布マスクで防げます。
また、飛沫は大きさにもよりますがそんなに遠くまで飛びません。2-10m程度。
人の少ない屋外でマスクをする意味はないでしょう。

3.マスクの種類
1)N95
N95はアメリカの規格で、0.3㎛を95%遮断するものです。この試験はフィルター性能だけでなく横漏れまで含めて95%遮断なので、縁が完全に顔に密着するようにできています。
このマスクがウイルス対策としては最適です。

2)N95相当
N95はアメリカ認証を取る必要があるので、そこまでしていないけどN95並みの性能を有したマスクが市販されています。N95相当と表記はできないので性能で判断するしかありません。たいてい0.1㎛補足99%などの表記があります。ただし通常はフィルターの性能であり、横漏れは考慮されていません。
すべての縁が顔に密着していない限り必ず横漏れします。

3)サージカルマスク
これは医師が自分の唾液飛沫を患者にかけないためのマスクで、医療従事者がしているものです。
飛沫は5㎛なので、通常はPM2.5対応程度のフィルターです。
サージカルマスクには基準がないので製品の性能表示を見ないとわかりませんが、いずれにしても浮遊状態のウイルス吸入を防止するものではありません。
(ただし前述のとおり、コロナウイルスはウイルス単体での空気感染はないといわれています。)

3.では何を買えばいいのか?
N95相当品といっても横漏れがあるので空中浮遊のウイルスを完全に防ぐことはできません。ほぼ完全に防ぐためにはN95ですが、これはかなり息苦しく長時間つけ続けるのは苦痛です。

サージカルマスクは自分を防御するというよりは自分からの発散を防ぐものです。
当然それも伝染病拡散防止には非常に有益なことです。面談や会議などの濃厚接触時は自分を含めその場にいる全員が装着することでリスクが軽減します。

N95以外は完全に自分を防御することはできませんが、N95相当のフィルターのマスクであればある程度の効果はあるでしょう。

なので、ここでの結論は人がいる場所では0.1㎛補足99%の「ウイルス対応」を謳うマスクをし、特にリスクの高い人混みや閉鎖空間ではできる限り鼻やあごを密着させること、としておきます。

4.消毒
実効という意味ではマスクより消毒です。
空気中を浮遊するウイルスは短時間で死滅しますが、物に付着していると寿命が延びます。
これらを触り、手から口、鼻、目に入ることのリスクの方が高いのです。
携帯消毒液でのこまめな手洗いと、口、鼻、目に触らないことが重要です。
またマスクは口、鼻に手が触れないという効果もあります。

5.目からの感染
マスクをしても防げないのが目からの感染です。ゴーグルをすれば完璧ですが、眼鏡でもしてないよりはマシでしょう。顔に密着するスポーツタイプの眼鏡やサングラスなど気休めかもしれませんがしないよりはした方がいいのではないでしょうか。あとは、目をこする前に手先の消毒です。

以上、特に専門家ではないので間違いがあるかもしれません。コメント欄でご指摘いただけると幸いです。


中国信用スコアに関する誤解

2019年12月18日 | 中国生活

中国は監視社会となり、行動がすべて信用スコア化されて政府によるコントロールが行われている、という論調の記事を国内外でよく見かける。
日本と比較すればここが監視社会であることについて否定するものではないが、それらの記事には誤りに基づいた物が多い。
大まかに言って中国の信用ランクは3種類あるのだが、それらを混同して中国の社会スコアを論じているものが多いのでここにまとめてみる。

なお、本件に関しては中国IT系ライターの山谷剛史氏が多方面に正しい内容の記事を寄稿されている

1.芝麻信用

典型的な例は中国大手IT企業アリババが運営する信用スコア「芝麻信用」(ごま信用、セサミ信用、ジーマ信用等、読み方は定まっていない)に関するもの。

これはアリババの決済プラットフォーム「支付宝」(ALIPAY、アリペイ)を使う人が希望することでスコア付けされるようになる。
実名登録、車所有、クレカ保有、支払い履歴等から判定され、スコアが高いとアリババ系の各種サービスでデポジット免除などの優遇を受けることができる。
一方で、支払い遅延やレンタル返却遅延などがあるとマイナスされるが、特に手数が低い事による罰則はない。

特典もその程度だし、仮に低くても実際に生活に害が及ぶわけではないから、ほとんどの中国人はこのスコアはたいして気にしていない。

2.社会信用体系

これは中国政府が管理する個人情報。ランク付けというよりブラックリストと言ったほうが正しい。
どんな国家であろうと、個人の犯罪歴はデータベース化されている。それに加え中国では税金未納、借金踏み倒し等金銭に関わる問題から、公共交通機関での妨害行為、そしてもちろん反社会的行為をすべて一元管理しようとしている。
これが点数管理されているのかはわからないし、何点以下は飛行機に乗れない等の基準があるのかわからないが、例えば飛行機の中で暴れた前歴が有る人が一年間飛行機に乗れない等の処置は実際に行っている。

いずれにしても借金踏み倒しや税金未納等よほどの金額でなければ生活の制限を受けることはなく、(実際に移動制限が課せられる人はごくわずか)一般人がこれを気にして生活しているということはまったくない。

3.地方政府によるもの

蘇州など全国12都市で試験的に行われている個人ランク付け。納税状況、交通違反、近所とのトラブル、寄付や慈善行為などで個人を評価するもの。高得点者は公共サービスでの優遇があるが、低ランク者へのペナルティは現時点ではない。民度アップが目的だと思われる。

4.まとめ

中国では国家による国民のランク付けが行われており、税金未払いや交通違反等のマイナス行為をすると移動制限等の罰則が課せられる、というのは不正確。
さらにこうした国家による評価付けに対して異議を申し立てないのは儒教による影響であるとした海外記事があったが、それは考えすぎ。
単に現時点の社会スコアは特に気にする必要もない内容である、ということが最大の理由。

それに加え、長く共産党が一党支配している中国においては政府(党)に個人情報を握られていることが当たり前であり、お上に逆らって良いことはないということを誰もがよく知っている。さらに鈍化しつつあるとはいえ未だに経済成長を続けており、国民は国に大きな不満を持っていないことも個人情報を国家に渡すことに抵抗を感じていない理由だとおもう。


デジタルラジオi-dioがやっぱりidiotだった件

2019年11月07日 | 中国生活

6月にエフエム東京のデジタルラジオ放送i-dioの闇について書いたが、やはり事実はそのとおりだったようだ。エフエム東京は10月8日、正式に事業撤退を表明した。

立ち上がり時点で当ブログも含め、ほとんどの人が成功するとはとても思えない、と考えていた。なぜそのような事業にエフエム東京は邁進してしまったのか?

このデジタル放送はV-Low帯という電波帯域を使っている。この帯域はテレビ放送のデジタル化によって空いた「空き地」。
電波帯域の利用は総務省が管理している。テレビのデジタル化にあたっては、従来のテレビが使えなくなるなどの経済的負担を家計にもたらしたことから、「空いた帯域を有効利用する」ことは国家政策としての大命題になっていた。

総務省はマルチメディア放送に関して様々な絵を描き官民の検討会なども行われたようだが、移動体通信の3G,4Gという進化に対し一方通行の放送にメリットがあるわけもなく、実際にはほとんど活用されていない。
結果としてアナログ停波に対する批判を交わすために、だれも否定できない「安全、安心」に振り分けたのだが、例えば交通安全ということでトヨタが始めた「ITSコネクト」に関して言えばITSコネクト協議会のHPはもう一年以上、会員名簿改訂以外のニュースリリースがない。

マルチメディアということでは携帯端末向けマルチメディア放送ということでDOCOMOがNOTTVという事業を行ったが、これも見事に失敗している。
モバHOという携帯向け衛星放送がすでに失敗に終わり、かつ事業スタート前にはアメリカで同様の事業を進めたMediaFloというサービスが撤退を決めるという、最初から誰がどう考えても成功する見込みがない事業だった。

DOCOMOという巨大企業にとってはこの失敗は大した痛手ではないだろう。これはどう見ても総務省に対する「お付き合い」だ。お付き合いという意味ではトヨタの「ITSコネクト」もそうだろう。

これらの失敗を知っててどうしてエフエム東京はデジタル放送に投資をしたのだろうか?
DOCOMOと同様に国策に協力したということなのだろうか?

これは大いに疑問が残る。今、ラジオ放送局は楽な商売ではない。とても大きな投資ができる状況ではなかったはずだ。総務省との兼ね合いがなかったとは言えないだろうが、監督官庁に対するお付き合いとしてはその代償が大きすぎる。
もしかしたら経営者は放送事業の将来にたいする大勝負だと考えたかもしれないし、災害ラジオの需要を取り込んで事業の柱にしようと考えたのかもしれない。

とはいってもこれは無謀だったし、少なくとも一般コンシューマー向け事業が成立しないことは誰の目にも明らかだった。


なぜ止められなかったのだろう。


上海高島屋、やっと撤退

2019年06月25日 | 中国生活

このブログで何回も「一刻も早く撤退するべきだ」と書いてきた上海高島屋がやっと撤退する。
日経新聞記事リンク

記事は会員登録ないと読めないが
「開業(2013年)直前に中国全土で大規模な反日デモが起きるなど、想定通りの売り上げを確保できなかった」というのは単なる言い訳。
過去記事でも繰り返し指摘しているように立地選定を誤ったのが最大の原因だろう。誇張なしに「お客より店員のほうが多いデパート」だった。

ただ、上海の百貨店事業は完全に飽和状態にあり、もし最高の立地で始めてたとしても「日本ブランドでござい」だけでは成立していなかったと思う。

撤退は正しい判断だと思うが、なぜその決断にこんなに時間(7年)をかけてしまったのか?オープン1年くらいで無理だと判断できなかったのか?少なくとも傍観者である在留邦人は全員そう見ていた。

こうした判断は中国企業は速い。だめだと思うとすぐ撤退する。高島屋は無駄な出血を続けてしまったということになる。


大塚家具、中国ビジネスモデルが見えない

2019年03月31日 | 中国生活

中国の家具大手居然之家(イージーホーム)が大塚家具への投資を行い、大塚家具は中国とのビジネスで活路を見出すというが、これはどうしてもピンと来ない。実際は居然之家の上場前という事情からまずは同社が中国系の出資先を紹介したということだが、これもなにかそれ以上の事情があるように感じる。

大塚久美子社長は中国市場に対して「いままで日本の家具の中国への輸出はほとんどされていない。このチャンスをいかす」、また居然之家側は「裕福層への日本製高級家具の販売(含むEC)を狙う」ということだが、そんなマーケットは本当にあるのか?
マーケットがあればすでに誰かがやっているだろう。

1.「大塚の家具」を買う中国人がいるのか?
そもそも日本においてすら高級家具といえば欧州ブランドであり、日本製ではない。高級家具ブランドといって思い浮かぶのはカッシーナとかアルフレックスとかであり日本ブランド名は思い浮かばない。

中国裕福層がもとめるのは高価な木材を使用した中国伝統家具か、日本と同じようにやはり欧州の家具ということになるだろう。

さらに言えば、中国にも欧州の数百万するようなリビングセットを買う超裕福層はいるが、決して多くない。リビングセットは車と違い超高級品かどうかは見た目ではわからない。さらに、街を乗り回すものではない。富を誇示するお金の使い方としては効率が悪いので、「普通の」お金持ちは見た目が豪華な中国製の家具を選ぶだろう。相当な粋人でなければ輸入家具にお金をかけない。

そもそも大塚家具にはほとんどPB商品はなく、要するに「大きな街の家具屋」だ。自社プライベート商品がない小売商が海外に出ていって成功するためには「海外にも通用する小売ブランド」がなくてはならない。例えば百貨店ブランドなど。しかし大塚ブランドは海外では無名だ。

2.中国のインテリア関連市場
もう一つの懸念は、中国の内装市場の特殊性。
提携先の居然之家は内装関連の総合ワンストップショッピングを標榜する大型小売店。中国で新たに家を買うと内装工事がまったくされてないマンションの部屋を買うということになる。床材も厨房器具もトイレもついてない。それをターゲットにしてる業態だ。

自分で住む場合は予算内で自分の好みの内装に仕上げるが、すべての内装工事をしなくてはいけないので家具への支出は制限される。
投資用に購入する場合でも賃貸するためやはりすべての内装、家具をそろえることになる。中国ではマンション賃貸は家具付きが普通。当然、特に高額な家具セットを導入することはない。
したがって、高額なリビングセットというものはこれらを超越した一軒家をもつ超裕福層しかターゲットにならない。

3.ニトリの状況
現在中国で日本の家具としてはニトリが店舗を展開しているが出店ペースは落ち、売上公表もなくかなり苦戦しているように見える。とくに家具が売れているというイメージはなく、売れるのはその他雑貨関連だろう。

筆者が中国のニトリを訪問した時に気になったことは、日本で売られてるものをそのまま販売していたこと。ソファやダイニングセットなどは中国人からすると小さすぎ、奇妙にすら感じる。また中国人にとっては日本のダイニングの椅子は低すぎる。こうした部分のローカライズができなければ海外市場に参入する資格はない。
大塚家具も、日本の家具をそのまま中国に売ろうとしたら確実に失敗する。

4.残された可能性
どうにも将来の絵が描けない居然之家とのコラボレーション。唯一筆者が考えられる可能性は裕福層向け和室内装およびその家具販売だと思う。
最近結構和風インテリアが流行っている。ニッチなマーケットではあるが、その程度しか思い浮かばない。

大塚家具+中国市場はマーケティング的に導き出された生き残り戦略ではなく、単にいま投資に意欲的なのは中国しかいない、という事情からのもの。前途は多難だ。


中国に焼餃子はない?

2018年12月08日 | 中国生活
日本では、通常以下のように信じられているようです。

「中国には焼餃子ほとんどなく、焼餃子は日本独特のもの。中国は茹餃子であり、焼餃子は茹餃子の残り物を温めるために鍋で焼いたもので鍋貼と呼ばれるが、あまり一般的ではない」
事実、WIKIPEDIAでも概ねそのようなことが書かれています。

しかし、ここ広東省佛山では焼餃子はごく普通に飲茶系レストランのメニューにあります。
会社の中国人にきいても、「普通のメニューだよ」ということで、実際私の家の近くの中華系ファーストフード(カフェテリア式)店内のポスターには、当店人気メニューの第三位に焼餃子(煎餃)がランクインしてました。

なので、最初は焼餃子という食べ物は日本からの逆輸入で最近流行してきたのかな?などと思っていました。
そこで中国の検索サイト「百度」で調べたところ、以下のようなことがわかりました。

まず、焼く餃子の言い方には「鍋貼」と「煎餃」の2つがあります。(なお、広東では「鍋貼」という言い方はほとんど見たことがなく、「煎餃」です。)
百度をみると「鍋貼」も「煎餃」も「中国の点心(この手の小吃の総称)である」として
鍋貼=是中国著名的伝統小吃(中国の有名な伝統的小吃)
煎餃=中国北方地区特色伝統小吃之一(中国北方地区の特色伝統的小吃の一つ)
ときちんと項目だてて紹介されており、また中国のクックパッドのようなサイトでも「鍋貼」も「煎餃」もたくさんでてくるので、やはり「ほとんど食べられていない」ということはないようです。

また、「残り物を焼くのが焼餃子」に関しては、百度の鍋貼の記事中「北宋時代、宋太祖が料理人が余った餃子を鍋で焼いているのをみて、とても匂いが良いので食べたら美味しかった、料理人に料理の名前を聞いたら答えられないので、宋太祖は鍋に貼り付けたから鍋貼だ、とした」という言い伝えがあることが紹介されていますが、家庭で残り物の茹餃子を焼くという記載は見当たりませんでした。

次に、百度によれば「鍋貼」と「煎餃」は当の中国人でも区別していない人が多いが、実は違うものだそうです
曰く、「煎餃」は茹でてから焼く、もしくは焼いてから茹でるが、「鍋貼」は茹でないとのこと。
具体的には「煎餃」は前もって茹でる、もしくは同じ鍋の中でまずたっぷりの水で茹でてから水分を飛ばして焼く。一方「鍋貼」は焼く際に多少の水か料理酒を入れるが、基本は焼くだけとのこと。

東北地方で主食代わりに食べられている「餃子」は日本で言う「水餃子」(茹、蒸餃子)であり、また中国の常識として餃子といえばこちらを指すことは間違いありません。
また、中国で煎餃が一般的になったことの背景には日本からの逆輸入食文化という一面も確実にあると思います。しかし、現在の状況からは焼餃子は日本独特のもので中国にはないのだ、というのはもはや都市伝説に近いような気がします。

中国ローカル自動車メーカーの状況

2018年11月22日 | 中国生活
2018年広州モーターショーを見てきた。
平日だったせいか、さほどの混雑もなく見ることができたが、中国の展示会場はバカでかく非常に疲れた。
また、これは中国に限らずアジア圏はどこもそうだが、モーターショーは個人ユーザーとの商談の場であり、マジに車を買う気で来ている来場者に売る気満々のセールスマンが群がるという、日本のモーターショーとはまるで違う状況。

一番人気が高いのはドイツ車のブース。BMW、ベンツ、アウディ、VW、どのブランドも中国企業との合弁による現地生産。特にベンツ、アウディ、BMWのブースはかなり混雑していた。続いてはトヨタ、ホンダの日系。中国ローカルブランドの展示ブースはほとんど人がいない状況。また、現代、KIAの韓国ブランドも閑散としてたのが印象的。

広州等沿岸の裕福な地域では純ローカルブランドは「田舎の人の車」という感覚が強く、車を買うお金があるなら日系、欧系ブランドを選ぶという人が多いのでローカルブランドのブースが閑散としていることは驚くに値しない。しかし内陸部では依然として安いローカルブランドが主流でありマーケット規模も非常に大きいので、こうしたブランドもまだまだ生き残っていける。
しかし、10年先を考えると相当淘汰されるのではないかと思う。

ローカルブランドも決して馬鹿にできない。ローカルブランドで最も売れている車の一つにHAVAL H6がある。
これは長城汽車のSUVブランド哈弗が出している中型SUVだが、車格、作り、内装と10万元(160万円)そこそこという価格は相当に魅力的だ。とくにHAVALはローカルブランドとしては高品質という評判で、故障しないのであれば日用使いなら私もこの車で十分だと思う。

もう一つ、そしてここからが今回の本題なのだが、ローカルブランドが展開する新ブランドに注目したい。

前述のとおり、一汽、東風、長城、北汽、吉利、広汽、BYD、奇瑞といったローカルブランドとそのロゴには「田舎の人の車」というイメージが定着してしまっている。
そこで中国各社は新ブランドの開拓に乗り出している。
先の長城によるHAVALブランドの切り離しもそうだし、上海汽車はすでにブランド展開をしている。
また欧州のブランド買収によるブランド化としてはMGブランド(上汽)やボルグヴァルド(福田汽車)の例があるがこれはそれほど成功してはいない。
当ブログ記事「ボルグヴァルドというドイツメーカーの謎

むしろ成功している、または成功しそうなのはスタイリッシュなデザインとハイテク機能を売りに若者向けにイメージを振った新ブランドだ。
代表的なのはLynk&Co.。(写真)
これは吉利汽車とボルボによる合弁ブランドだが、ボルボ自体吉利傘下なので実質吉利といっていいだろう。
ただ、Lynk&Coの場合は欧州ボルボの人材がかなりの主導権をもって車・ブランド作りをしているように感じる。いわば、日本で企画設計されるLenoboのThinkpadのような感じ。
車の名前というよりはファッションブランドのようなその名前と、非常にスタイリッシュな外観、内装。さらにコネクテッドによるライフスタイル提案と、かなりのレベルに仕上がっている。
広州モーターショーでも若い人を中心にブースは賑わっていた。
あとは、長城のWEYブランド。これもデザインにこだわったハイクラスのSUVに特化している。

欧系、日系と合弁をしているローカル企業はそれらの車作り、品質管理手法を学び自社ブランドの車のレベルもここ数年でかなり進歩している。
中国ローカル車というとデザイン100%コピーとか、衝突試験をしたら★一個だった、などの笑い話的イメージが未だにあると思うがそれはもう10年前のことで今は相当に進化している。

私が中国に来た2012年、中国ブランドのアンドロイドスマホは全く購入対象外、HTC、モトローラ、ソニエリあたりが選択肢だった。それからわずか6年。いまやHTC、モトローラ、ソニーは跡形もなく、当時は歩歩高ブランドだったOPPOやまだ端末に参入したばかりだったHUAWEIが今や市場を独占している。そしてこれらは性能、品質的にも非常に優れており、海外にも進出している。

スマホより遥かに複雑な車の世界でこれが直ちに起きるとは言わないが、この先10年を考えるとなにが起きるかわからない。EVや自動運転を視野に入れ無くてはならないがそうしたハイテク分野でも中国は侮れない。
日本メーカーが走り続ければ絶対に追いつかれることはないが、イノベーションを怠ったら危ない。

Borgward(ボルグヴァルド)という独カーメーカーの謎

2018年07月31日 | 中国生活


先日運転中に前に止まったSUVに「BORGWARD」というエンブレムがついていた。ポルシェカイエン的なフォルムで決して悪くないスタイルなのだが、あまり見かけない車。
ちょっと気になったので調べてみたらその背後にはかなり面白い話が隠れていた。

ボルグヴァルドはドイツに実存したカーメーカー。1950年代後半にイザベラというヒット車を出し年間100万台を生産するまでになったがその後が続かず、1961年に資金難で倒産している。

そこから半世紀の時が流れ、2015年のジュネーブショーにおいて創業者の孫によるそのブランド復活がアナウンスされる。本社はシュトゥットガルト。企画、デザイン、設計、販売を行い。生産は中国企業が行うとのこと。そしてなんとそのわずか半年後にはSUV BX-7が発表される。翌16年にまず中国で販売が開始された。
iPhoneもアメリカのアップルの商品だが生産は中国であることを考えると、車の世界でもこうしたビジネスモデルもありえない話ではない。


しかし、実態は全く違っていた。


この話の主役はドイツ人ボルグヴァルド氏ではない。中国の自動車メーカー福田汽車なのだ。
新生BORGWARDは生産を中国で行っているだけではない。そのほとんどの資金が福田汽車から出ている。実質中国の会社であると言っても差し支えない。

福田汽車は北京汽車グループの中堅カーメーカー。大型トラックではそれなりの地位を持っているが乗用車ではいまだヒット車を出していない。
大型トラックはダイムラーとの合弁で事業をしており、ドイツ自動車業界との縁はある。
乗用車事業を発展させたい福田汽車としては、海外ブランドが活用できれば大きなアドバンテージとなる。実際MGやローバーというブランドはすでに中国企業が買って使っている。

福田汽車はおそらくダイムラー人脈をつかってボルグヴァルド氏と話をつけブランドを手に入れたのだろう。中国企業は金ならいくらでもある。ここでキーとなるのはダイムラーの北アジアと中国生産事業を仕切っていたバルキャー氏。彼はダイムラーを退職後新生BORGWARDのCEOに就任している。氏はその前にはスマートの事業のトップだった。
(余談だが筆者はバルキャー氏を個人的に知っている。彼に関していい思い出は一つもない)

ひとつ不思議なことが有る。新生BORGWARDは2015年のジュネーブモーターショーで設立がアナウンスされた。それ以前には会社は存在せず企業活動をしている可能性はゼロである。
その会社がなぜ一年もしないうちに新車を世に出せたのだろうか?通常新車の開発は企画から最短で4年かかる。なのに、プラットフォームからなにからゼロスタートの会社がそんな短期間で新車を開発できるはずがない。

その答えは簡単だ。新生BORGWARDが設立される以前からこの車の開発は進められていたのだ。誰が? そう、福田汽車。
福田汽車は、むしろ新型車の「販売戦略」としてBORGWARDブランドを買ったというべきだろう。会社設立後多少ドイツ系人材が入ってある程度軌道修正はされたかもしれないが、一年でできることは限られる。実質BORGWARDというバッジをつけた福田汽車製乗用車だ。
シュトゥットガルトの本社でどの程度の設計関連オペレーションが行われているかは知る由もないが、彼らのHPではエンジニアの募集は行っていないことからドイツにはR&Dはないのではないかと思われる。

実際、中国におけるBORGWARDの販売戦術は露骨にドイツを強調している。ブランドの中国名は宝沃。BMWが宝馬、VOLVOが沃尔沃。そこから1字づつとった中国名は相当にあざとい。
販売店でも、宝沃はドイツの会社であり、ドイツのブランドだということを最大のセールスポイントにしているらしい。いわく、1919年創業のドイツ4大メーカーの一つ、など。
中国におけるドイツブランド信仰心は極めて高い。

しかし、中国の消費者も馬鹿ではない。2018年6月のBORGWARD(宝沃)の販売台数は3車種合わせて3000台。概ね月販2000~4000台程度で推移しているようだ。これは中国の自動車販売からするとほとんどゴミのような数字。
同様のビジネスモデルを採用した例がQOROS(观致)。奇瑞汽車とイスラエル企業の合弁であたかも欧州車であるかのようにプロモーションを行っているが、現時点での累積赤字は1000億円近いとの話もある。

やはり所詮はブランドを買っただけのエセドイツ車であることが見抜かれている、ということだ。
BORGWARDブランドの本格的な復活はないだろう。なお、バルキャー氏はつい最近退任した。沈む船から逃げるネズミ、といっては言い過ぎかな。

(中国サイト知乎の記事を参考にしています。中国語が分かる人はかなり面白いので一読をおすすめします)

ETC2.0 また1万円助成キャンペーン

2018年03月27日 | 中国生活
NEXCO東日本は外環道の三郷南-高谷の開通を記念して2018年4月1日からETC2.0の助成キャンペーン(1万円)を実施する。

外環道の区間開通とETC2.0の関係はよくわからないが、わかっていることはETC2.0に関してはITS車載器と言われていた頃から一貫して各道路会社によって何からの助成キャンペーンが行われているということ。
そして、よくわからないのは助成金をだしてまで普及させ無くてはならないのか、ということ。

この記事も面白いことが書いてある。
筆者のかたは正直に「圏央道を使う人以外は通常ETCとの価格差は埋められない」とおっしゃっている。これは絶対にそのとおりだ。
その上でモニターキャンペーンを使えばその差がなくなる、とおっしゃっている。

引用
「実のところETC2.0の普及は、それほど伸びていません。高速道路を利用するクルマの16%程度というのが現状です。そのため、普及のための助成キャンペーンが不定期ですが、毎年のように行われています。」

価格に見合う魅力・メリットを消費者が感じないから普及しないのであって、それならもうやめにするのが普通。価格差を補填してまで普及させるという考え方は理解に苦しむ。

この東日本の計画では5000台=5000万円。この費用は通行料から捻出されているということをわすれてはならない。

NIO(上海蔚来汽車)EVの衝撃

2018年03月07日 | 中国生活
日本では殆ど知られておらず、ニュースにもなっていないが中国のベンチャーEVメーカー上海蔚来汽車(ブランド名NIO)が昨12月に発表した7人乗りSUV「ES8」が凄い。
NIO ES8 企業website
日本語のソースは殆どないが、レスポンスの記事をリンクしておく。

実車を見てきたが、スタイリングに中国車的な破綻はなく、おそらく欧州デザイナーの手によるものだろう。
驚くべき内容はその装備。航続500kmのEVで、0-100km4.4秒、リンク先にあるようにニュルでも速い。自動運転系はレベル2相当。スマートスピーカーのような仕組みで音声で車両のエンタメ、ナビ、空調等をコントロールできる。電動シート、電動テールゲート、感応ポップアップ式ドアハンドル、携帯無線充電、等ハイテク電子装備は思いつくものは全部ついている。助手席がロングスライドしオットマンがついてファーストクラスシートのようになるのも面白い。サスペンションは車高調整可能なエアサス、また電池を3分で交換するステーションも設置されるという。
車両価格は45万元~55万元(7-800万円)と決して安くはないが、テスラXは1000万円超。また中国ではドイツ車のSUVがこの程度の価格なので、高性能EVとしては装備を考えると相当割安な価格だといえる。
中国ではすでに2万台が予約販売されている。
特にEVはナンバー規制対象外なので、上海や北京ですぐ登録可能、加えて10万元近いナンバー取得費用がかからない、ということも大きいのだろうが、それを抜きにしても誰もが欲しくなるような車であることは間違いない。

このメーカー、まだ創業3年ながら世界中から人材を集めドイツ、英国、カリフォルニアにも開発拠点を持っている。どう考えても中国の自動車産業出身者だけの力でこれだけの車を作ることはできないし、3年という短期間で車を商品化できたというのも時間をお金で買った(=経験者を世界中から集めた)からだろう。実際、NIOアメリカのCEOはCISCOのCTOを務めていた女性。

私が中国に来た2012年当時、まだ中国ローカルブランドのスマホは購入対象品ではなく、iPhone、サムソン、ソニー、モトローラ、台湾HTC等が選択肢だった。それが今、Huawei,OPPO,VIVO,小米といったローカルメーカーが性能、品質、商品性において急成長し、iPhoneとギャラクシー以外は駆逐されてしまった。実際私もHuaweiの上級モデルを満足して使っている。

これと同じことがいずれ車にも起きる可能性はあると以前予言した。しかしそれにはまだ相当の時間がかかるので日本メーカーはスマホの二の舞いとならないようにすべきだろうし、日本の自動車産業にはその力があると信じていた。

しかし、今私はNIOで本当に衝撃を受けた。それは中国メーカーのスピードだ。まさかここまで完成度が高い商品を出してくるとは思わなかった。

NIOの品質、信頼性はまだ未知数だ。創業3年ということで彼らには過去の失敗の蓄積がない。商品の信頼性を決めるのは失敗の蓄積によって築かれたスペックなのだ。
NIOは人材引き抜きでカーメーカーのノウハウをかなり手に入れているとは思うが、実際の商品は世に出して見ないとなにが起きるかわからない。そのために事前に耐久試験を行うのだが、創業3年ということは量産相当の試作車両ができてから発売までの間はせいぜい1年程度しかかなっただろう。しかも初めての商品。おそらくはかなりの信頼性に関わる不具合がでるだろう。

しかし、だからといって「ほらみたことか、中国企業なんかダメだ」といって安心してると危ない。これは物理的な時間があればいずれ改善される問題なのだ。

日本では中国製=低品質という既成概念がある。実際まだ多くの商品でそれは事実なのだが、先進企業は相当なレベルになっている事をしっかり認識するべきだ。
スマホや家電の失敗を車で繰り返すことは絶対にあってはならない。

日本は中国に負けているのか

2017年08月09日 | 中国生活
先日に引き続き。
報道やSNSで中国のトンデモな話が飛び交っている。それをもって、中国はトンデモな国だという印象を持つひとは多い。
前職の職場で単身赴任してた同僚の奥さんがまさにこれで、不潔、危険、中国人は嫌いといって3年間一回も中国に来なかった。

しかし、日本の報道が流すネタは中国のLINEやツイッター相当のSNSで拡散しているものから拾ったもので、中国でもトンデモだから拡散している。
例えていえば「日本のコンビニ店員はみな暑くなるとアイスクリームのケースで昼寝をする」と思われてしまうようなものだ。

こちらで暮らしているとわかるが、たしかに人の迷惑をしてもされても気にしない性格とか、衛生観念とか日本に比べればかなり問題があることは事実だが、日常で不快になるような場面はいうほど多くない。
前にも書いたとおり、こうしたネガティブな固定概念を持っていることで敵を過小評価し実力を見失うおそれがある。

ITやスマホをベースにした新ビジネスがどんどん現れ、消えていき、生き残るものはとんでもない成長をする。
この変化のスピードは恐ろしく早い。一年たったら別世界のようになっている。シェア自転車、外食宅配など、本当にあっという間に広まった。

以前のエントリーでは、これに対する事実認識が甘いことに危機感を表明したが、もう一つ日本の問題が有る。

この新事業へのチェレンジ精神という面ではアメリカに似ているように感じていた。
当然、新事業にチャレンジするのは若いエリート層。彼らもしくは彼らの周りの友人達は少なからずアメリカ留学をしている。
この辺にも最近の中国のスピード感ある変化の理由があるのではないか。

一方、日本の若者からはどんどん海外志向がなくなっていることは最近の種々の調査でも明らか。
その理由が、言葉が通じないし海外は危険、というのも悲しいんだけど、これには大きな危機感を持っている。
※アメリカの海外留学生数 日本人1.9万人 中国人32.9万人。人口差以上の差。しかも中国は14億人いるとはいえ日本と生活レベルが同じ(かそれ以上)人の数で言えば数億人。

もう、本当にこのまま内向きな風潮が続けば日本という島国だけのクローズな市場で生きていくしかなくなる。
お金が有るうちは良いが、いずれ人口が減り、年金や医療保険負担が重くのしかかることは間違いないのだ。

日本と中国、うさぎとかめ

2017年07月31日 | 中国生活
すでに5年以上中国にいるが、この5年間の中国の変化はものすごい物がある。
最近日本のニュースでも報じられているが、スマホを使った決済とその周辺サービスに象徴されるITビジネスのスピード感には驚くばかりだ。
例えばシェア自転車。本格的に登場したのは去年の5月頃だっと思う。それが一年足らずでものすごい台数となり、すでに大手の海外進出も始まった。

2大大手のひとつofoはもともと北京大学の構内で学生が始めたもの。個人の自転車を供出すれば無料で会員になれ、構内どこでもシャア自転車にのれるというものだったが、学生起業からあっという間に中国では知らないものはないブランドになった。

スマホにしても、華為(ファーウェイ)やOPPO,VIVOといったブランドがSONYはおろか、中国ではiPhoneを凌駕しつつある。
(iPhoneは見た目の新モデル投入をしなかったのが痛い。依然としてiPhoneブランドは中国では強いので8が十分良ければまた盛り返すだろう)
私が中国に来た時点では、華為は移動体通信機器では相当な力を持っていたものの携帯電話ではまだ中華スマホの一つという程度の認識だった。それが数年で品質、性能ともトップレベルに達している。

一方、日本での一般的な認識はどうだろうか?
中国の携帯?爆発しない?個人情報を抜かれるんじゃない?という程度の話から先に進んでいない。
SONYのEXPERIAほぼ事実上中国市場から撤退となったのも、安い中華スマホに負けたとか、反日で売れなくなった程度の認識で思考で止まってしまっているように思う。

私は非常に強い危機感を持っている。
中国製品が日本製品より品質レベルで優れているとは思っていない。一般的に言えば、まだ全然追いついていない。
シェア自転車だって、最初のうちはアプリのバグやサーバーエラーで使えないことがしょっちゅうあった。
しかし、新ビジネスに対する発想ではすでに負けている部分が多いし、一部の企業は品質レベルもかなりのところに来ている。

そうした中で、一般的な日本人の感覚では未だに10年前の中国製品を引き合いに出して中国なんか敵じゃない、ということで危機感が感じられない。
実際まだ中国製品にはトンデモな物はあるんだけど、すごいものも有る。トンデモだけがことさらに報道されSNSで拡散するから、全部がそうだと思ってしまっても不思議ではない。

いや、日本の技術者にも企画者にもそうした危機感を持っている人は少なくないんだとおもう。
しかし、日本と中国で決定的に差がある事がある。
それはリスク管理だ。日本は失敗を許さないリスク管理をする。中国はリスク管理に対する認識が甘い。
80点ならGOだ、とよく言われたが、今の日本はなんだか不寛容になってきていて、99点でも残り1点取れない理由をとことん説明しないと通らない、という感じ。

中国は五分五分ならやってみるか、的な考えを持つ人が多い。当然失敗もあるし不良も多発するけど、ヒットもでる。
これは金が余っているかどうかということにも関係するので一概に国民性とは言えないかもしれないが、今の日本で画期的な新商品や新サービスはなかなか出てこないだろう。

おとぎ話のうさぎは亀を甘く見て昼寝をして負けてしまった。
日本は昼寝はしていない。むしろ残業しているんだけど、亀がシェア自転車をスイスイ漕いでいる間も100点取るために立ち止まっているように見える。