ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0を取り巻く謎

2023年03月17日 | ITS

もう2年前だけど、俺たちの清水草一氏がベストカーで以下の記事を出されてました。

私が今までグダグダ書いてきたことがここにすべて書かれています。

 

“次世代”ETC2.0を取り巻く謎 利用者にメリットが薄いのになぜ普及? - 自動車情報誌「ベストカー」

“次世代”ETC2.0を取り巻く謎 利用者にメリットが薄いのになぜ普及? - 自動車情報誌「ベストカー」

“次世代”ETC2.0を取り巻く謎 利用者にメリットが薄いのになぜ普及? 近年ETC2.0が登場した。現在に至るまでメリットといえるものを利用者に提示しできていない。メリットも...

自動車情報誌「ベストカー」

 

 


ETC2.0 賢い料金(道の駅一時退出)はどうなっているのか

2022年08月27日 | ITS

圏央道特定区間の割引を除けばETC2.0のほぼ唯一のメリットとして4年ほど前に始まり、しきりに喧伝されていた(とはいえ知名度は低いが)賢い料金・道の駅一時退出制度

SA.PAが少ない高速道路区間全国23箇所のICで料金所をいったん出て道の駅により、1時間以内に再入場すれば追加料金が発生しないという制度だがその後どうなっているのだろうか。

気になって国土交通省のリリースを確認したが、令和元年6月のリリースで「一か所当たりの日当たり平均利用車数(平日)」は12台であることが報告されている。営業時間で1時間に1台。
これをもって成功とはいえないだろうがまだこの時点では始めたばかりなので仕方がない。
ところが令和2年3月のリリースでは利用台数の記載がすっぽりと抜けている。意図的なのかどうかはわからないが、前年比である程度の増加をしていたら当然成果として記載されるはずなので実態は推して知るべしだろう。なお、余談となるがアンケートの結果を受け再入場までの制限時間は1時間から3時間になり、その後なぜか2時間に短縮されている。

さて、そもそもこの制度には大きな疑問がある。

SAPAがすくない(間隔25㎞程度といっている)区間があるのは道路会社のせいであって、過労運転防止やサービス向上の観点から改善するのは当然のことだろう。それを、あたかもETC2.0のメリットのように取り扱っている。
いや、ETC2.0だからできるようになったのでは?と思われるかもしれない。じっさい、多くのメディアが勘違いしているとおもわれるが、実はまったくそんなことはない。
道の駅への立ち寄りを感知しているのは通常のETCと同じDSRC信号だ。

ではなぜETC2.0に限定されているのだろうか?
理由は単純で、1万円以上高いETC2.0車載器の普及促進なのだ。

多くのWEBメディアがこれに翼賛する記事を上げているのも興味深い。ETC2.0は必要ないなんて間違い、とか、ETC2.0はこんなにすごい、とか。ライターさんには良心がないのかね。
たとえばこれとか。


私見としては、ETC(2.0に限らず)装着車についてはすべてのICでの途中下車を2時間程度無条件で認めればいい。高速道路により素通りされてしまった地場の国道沿い商業施設への寄与になるだろう。配送車両などが拠点への荷物の積み下ろしに利用するかもしれないが、それはそれで構わないと思う。

この辺の詳細は当ブログでいままでさんざん書いてきているので、たとえばここらを参照ください。

文中平成を令和に修正 20220903


ETCXはどこにいくべきか?

2022年05月22日 | ITS

CarviewにETCXの記事がでた。2022年5月22日

ついに「おサイフカー」の時代へ。ETCXへの期待と不安【いまどき・これからの車学】

「おサイフカー」の時代は来ないと思う。

実際、ETCを高速道路以外の決済で使うという話は20年以上前のETC構想当初からあった。
その後、三菱商事系のITS事業企画という会社がIBAサービスという事業で駐車場、ドライブスルー等に展開したが、消滅している。
ETCの商業利用では最も親和性が高いということで駐車場のプロであるタイムズが事業継承したけど、それでもうまくいかなかった。

このETCXにしても、すでに事業開始後1年経過するが商業施設は一か所のみ。一年やってほぼ進展なし、という状況なのだ。

筆者は「ETCのように素通りできないのが問題点」というがそもそもドライブスルーもガソリンスタンドも素通りするもんじゃない。
素通りしないのなら、別にスマホキャッシュレスでも大した手間ではない。「素通りできないから需要がない」というのが正しい。

あと、クラウド化でETCXは運用側も大幅に費用を下げることができるとしているけど、クラウド化してもDSRC受信アンテナ設備はいるよね?
それが高いから普及の足かせになっているんじゃないの?設備費用をいったらスマホ決済には当然かなわない。

スマホキャッシュレスがなかった時代でもIBAはとん挫したわけで、今の状況を考えたらもっと難しいだろう。

前から何回も言ってるけど、ETCは有料道路料金支払い機に特化するべきでその他の商業利用なんて考えるのはすぐやめたほうが良い。
ETCXは非NEXCO・公社有料道路のETC化に特化してやっていくのが正解だとおもう。

 


トヨタ車DA標準装備の現状

2021年09月05日 | ITS

トヨタは2019年以降、DA(ディスプレイオーディオ)の標準装備化を進めている。
DAとは定義としては液晶画面が付いたカーオーディオをさすが、一般的にはスマホ連動機能をもち、CD.DVDプレーヤーが付属せず自身の音源はラジオだけ、というものが多い。

トヨタが標準装備しているDAはそれに加えてDCMが標準でついている。DCMは車載の通信機器で、トヨタのサービスに特化して通信が可能。

DAとスマホの連携にはアップルのCarplayやアンドロイドスマホのAndroid Autoが必要となるが、そのサービスを受けるためには別途33000円が必要だった。さすがにこれは評判が悪く、現在は標準装備となっている。

このトヨタのDA標準装備化は極めて評判が悪かったようだ。
中高年にはスマホ連動のハードルが高いし、スマホを使いこなしている人にとってもいちいちスマホを接続する面倒がある。スマホナビの地図案内には問題も多い。Googleはすれ違い出来ない対面通行路を平気で指定する。さらに車速連動しない等、やはり車載ナビよりは劣る。
筆者もandroid Auto対応の車にのっているので使ったことがあるが、やはり使い勝手はよくないとおもう。
さらにいえば、AndroidoAutoもCarPlayも、スマホと車で何か特別なことができる仕組みではなく、逆に安全のために車内でスマホを使えなくようにするデバイスであり、使えるアプリはほんの一握りだ。

しかしトヨタはこのDA標準装備を強気で進め、従来あった「オーディオレス」仕様をなくしてしまった。オーディオレス仕様とは、市販のナビを装着するユーザー向けのものだが、オーディオレスがないことに加え、このDAは外して市販ナビに交換することもできない。

市販ナビは実はディーラーにとっても大事な収益源であったことから、ディーラーからもかなり反発があったようだ。

車載ナビを求める人用に純正ナビユニットが別売されていて、どうやらこのDAには純正ナビユニットを付けたほうが良いらしい。まあ、液晶画面が最初からついている車だ、と思えばそれはそれで納得できる話かもしれない。

さて、トヨタはなぜDAの標準装備を強行したのだろうか?

 

一つには、純正のアドオンナビしかつかない=利益が社外に流出しない、という囲い込み。

そしてもう一つは冒頭にかいたDCMにある。DCM付き車=コネクテッドカー、といってもいいだろう。世の中では今後車はすべてコネクテッドになる、といわれている。
DCMがついているとトヨタは車両情報を受け取ることができる。車両の状況をメーカーが把握し、必要なサービスをご案内する、といえば聞こえはいいけどこれは完全なアフターセールス囲い込み策。結局のところ狙いはそこなのだ。

ではDCM付き車両、いわゆるコネクテッドカーのユーザーにとってのメリットとは何なのだろうか?
実はここがコネクテッドカーの弱点なのだ。リモートでドアロック解除とか、盗難時の追跡、事故発生時の自動通報等のメリットがあげられるが、正直どれもないと困るようなキラーコンテンツではない。なぜなら、どれ一つとっても日常使う機能ではないからだ。万が一に対する出費は相当な説得力がないとなかなかむずかしい。

要するに、ユーザーに対価を払ってもらうのは厳しいのならば標準でつけてしまえ、ということなのだ。コネクテッドに関するサービスは3年間無料、それ以降は年間使用料がかかる。

 


失敗してもまた始まるETCの商業利用 ETCXとは?

2021年08月03日 | ITS

ETCの高速道路料金支払い以外の利用、いわゆるETCの多目的利用については、もうずいぶんまえにITS事業企画という会社がチャレンジし見事玉砕している。これは当ブログで散々無理だろ、と指摘してきた結末です。
その後もこの話は出ては消えていたわけで、当ブログではETCは高速道路料金支払いに特化するべきだといってきてるのですが、まだぞろ商業利用を推進する事業体がでてきました。

昨年の今頃、中日本高速道路がケンタッキー・フライド・チキンのドライブスルーで実験を開始したETC多目的利用(一年前の当ブログ記事)がサービスにブランド名をつけ、立派なWEBページをつくり本格事業展開のようです。

その名もETCX

事業母体はETCソリューションズ。ソニー、名鉄、沖電気、三菱プレシジョン系からの出資会社。

今使っているETCでそのままキャッシュレスにはならず、指定クレカでの登録が必要。
かつ、現時点で使える施設は、伊豆半島の有料道路数か所と、鈴鹿PA内のスナック屋台、愛知県新城市のガソリンスタンド。以上。
これからどんどん増えるといってるけど、ここで明確に予言しておきます。この事業はとん挫します。実験で参加してたKFCがいなくなってることからもまあ、明らかでしょう。

その理由は過去記事で何回も説明していますが、もう一度簡単に説明しておきます。

1.キャッシュレスというだけで集客はできない。さらにいえば、この数年スマホキャッシュレスが拡大し、スマホがお財布になってきているのであえて車のETCで払う意味はほとんどない。

2.高速道路料金支払いのETCの最大のメリットはノンストップだけど、多目的利用にノンストップ対応サービスは駐車場以外存在しない。どうせ止まって商品の受け渡しがあるのなら車の機器で払う意味はさほどない。

3.ガソリンスタンドはセルフになってきており、どっちみち降りて機械で操作が必要。

4.これが最大の理由。店側の設備機器の価格が高い。ETCで支払いができるというメリットだけでは客数は増えないから投資回収できない。
駐車場はノンストップということでのユーザーメリットが比較的高いが、それでも普及しなかったということはいかに設備投資に見合うリターンがないかということの証明になってると思います。
(なお、駐車場に関しては商業施設利用割引対応が難しいことがノンストップ決済の妨げになっているという側面もあります)

投資をする小売り施設が増えなければ会員も増えない、会員がいなけりゃだれも設備投資しない。これを乗り越えるのが大変なんだけど、この事業に関してはどう贔屓目にみてもそれを超えることができるとは思えません。自分の行動範囲で月数回以上つかうような状況にならなければだれも会員登録なんてしない。そのためには加盟施設は相当数にならないとだめでしょ。
この「にわとりたまご」を打破するためには無料に近い形で決済機器を配るか、相当なインセンティブをつけて会員を募るしかないけど多分資金的に持たない。
でも、株主4社という船頭の多さが投資や撤退といった大きな経営判断を鈍らせる、というありがちなパターンになりそうです。

早めに見切りつけたほうが良いとおもいますよ。

 


2022に現行ETCが使えない?全然心配いりません!

2021年04月22日 | ITS

2022年に現行ETCが使えなくなる?という話がここにきてネット、YOUTUBEで流れているようです。
たいていは内容は正しいんですが、アクセスを稼ぐためかタイトルやサムネは「使えなくなる」「違法」と煽っているものが多く、困ったものです。

結論を先に言います。心配ありません。特に、ETC2.0への買い替えは全く意味がなく、お金の無駄使いになるだけです。(のぞく圏央道利用者)

ここから先は心配いらない理由の詳細説明になります。

1.使えなくなる対象のETCはごく少数、ETC1.0、2.0は無関係
  ネットで「調べ方」等が出てるけど、対象は20年近く前のデンソー製の一部くらい。現存してる機器はごくわずか。
2.使えないといっても、使える。
  電波法改正で2022年12月以降は猶予期間が過ぎて適法でなくなる、ということだが、それ以降もETCは通過できる。
3.現実的に摘発は行われない
  電波法違反といっても大出力の違法無線を故意に使うような悪質な話ではなく、現実的に摘発は行われないだろう。
  とはいえ国も違法状態を放置できないから、現在さらに猶予期間の延長(2022年12月から、「当面の間」へ)が検討されている。(新スプリアス移行延長のパブコメ募集
  

特に問題なのは、この機に乗じてETC2.0を普及させたい人たちがあえて勘違いを助長している、控えめに言っても放置していることです。
ETC2.0は、消費者にとって圏央道割引以外のメリットは皆無です(ありますが、ほぼ無価値です)。
圏央道を頻繁に使う人以外、高いお金を出して買う必要はありません。(個人の感想ですが)

蛇足ですが、ETCのセキュリティバージョンアップが行われており、旧規格のETCは2030年を目途に使えなくなるという話もあります。
これも1.0,2.0は関係ない話です。1.0でも数年前から対応機が出ており、一方2.0でも非対応機があります。1.0が使えなくなるということではありません。
さらに、本当に2030年を目途に古い規格を通行させなくなるとは思っていません。そんなことしたらセキュリティ問題を上回る混乱が生じるでしょう。なのでこの話はもうしばらく様子を見ればいいと思います。


ETC2.0、まだまだ諦めないドライブスルー決済

2020年08月03日 | ITS

中日本高速道路は沖電気工業、ソニーペイメントサービス、日本ケンタッキー・フライド・チキン、メイテツコムのとの共同でETCによるドライブスルー決済の施行を開始した。実施店舗は相模原中央店。

https://news.yahoo.co.jp/articles/559e8872b10ba9ebd4ecb0172ea33cfb37c2512f

なお、この試行は従来ETC、ETC2.0ともに対応する。

ETCによるドライブスルー決済はETCの立ち上がり時からすでに20年以上言われ続けているが普及していない。
なぜなのか?
簡単にいえば、さほどニーズがない、ということに尽きる。これについては私のブログの初期の記事で何回も言及している。そもそもドライブスルーなんて普通の人なら年に数回しか利用しないし、ETCだからといってノンストップで通過できるわけでもなく、メリットはキャッシュレスなことだけ。
今となってはキャッシュレスはPAYPAY等すでに普及している競合がたくさんある。

ここに来てコロナ影響でテイクアウトが増え、更にキャッシュレス決済需要が増加するということで多少の追い風ではあるが、スマホ系キャッシュレスが拡大しており後発の、しかも車に乗ってるときしか使えないETCのキャッシュレスに未来があるとは到底思えない。

今回の試行も期間中全商品一割引というインセンティブを付けているが、ETCとクレカの事前登録が必要、かつ事後にアンケート回答。

フライドチキンを常食している特殊な人以外はわざわざ参加しないだろう。

車に乗っているときしか使えないキャッシュレスは、「ノンストップ」という理由がなければ普及しない。
さらにこうした需要側の弱さに加え、ETC決済は企業側の設備投資金額の高さが足かせになっている
ノンストップで大きな利便があるはずの駐車場ですら普及は遅々としてすすまないのが現状なのだ。


ETCポータルサイトにしれっと嘘が書いてあるので

2020年05月12日 | ITS

世の中新コロでETCのことなんかどうでも良くなっちゃってるけど、このブログの本業のエントリーもたまにはしないとね。

ETC総合情報ポータルサイトではETC2.0の賢い料金(一時退出)について書かれている。→ここ

文章を貼り付けると以下の通り

「いままでは、一般道路の”道の駅”を利用するために高速道路をいったん降りると、もう一度高速道路に戻るときに、あらためて初乗り料金が必要でした。
車両ごとの経路情報を把握しているETC2.0では、もっと柔軟な料金設定「賢い料金」が可能になりました。
道の駅利用のための一時退出をしても、目的地まで高速道路を降りずに利用した場合と同じ料金で高速道路を継続利用できます。(20ヶ所限定)」

全国20箇所で、道の駅利用すれば高速を降りても継続料金でよろしい、ということなんだけど問題は赤字部分。

「車両ごとの経路情報を把握してるETC2.0」、これは本当。でも「可能になりました」は嘘。

どういうことか?
ETC2.0が把握してる経路情報はGPSによる移動軌跡。でもプライバシー保護のためエンジンオフで前後数キロの情報がクリアされるから道の駅では使えない。
では、どうやって道の駅に立ち寄ったかを把握しているかといえば、道の駅に設置されてるETC読み取りポスト。ETC情報を読み取ってるわけだからETC2.0である必要はない。
単にETC2.0だけが対象となるように規制しているだけ。

ということで、道の駅一時退出は通常ETCでも技術的には出来る。国交省がETC2.0普及のために意図的に2.0に限定しているんです。

なんでそんなことまでして2.0を普及させたいのか?ということは前に散々かいてきたので繰り返しませんが、道の駅立ち寄りが交通安全や地域経済振興を目的としているなら2.0への限定は即刻やめ、全ETCに開放するべきだ、と繰り返し言っておきます。

 


首都高速道路(株)、15億円つかってETC装着キャンペーン

2019年12月20日 | ITS

10月1日から、首都高速道路(株)によるETC, ETC2.0の助成キャンペーンが始まった。
いままで断続的に行われてきたものだから驚くに値しないと思いながら内容をみたらその規模に驚いた。

なんと、ETC2.0、通常ETCともに10000円の助成金。対象は10万台。
さらに加えて先着5万名には、ETC2.0で10000円、通常ETCでも5000円がクオカードでバックされる。

クオカード対象のETC:ETC2.0比率は不明だが、仮に全部ETC2.0と仮定して予算はなんと15億円、全部通常ETCだとしても12.5億円。

対象は東京、埼玉、神奈川、千葉の首都高速が存在する地域に住んでいる方。かつ、今までETCを付けておらず、初めてつける方が対象なのでETCからETC2.0への付替は適用外だけど、車を買い替え、ETCを移設しない(たいていの人はしないでしょう)場合は対象となる。

このキャンペーン、予算総額にもびっくりだが通常ETCであれば完全無料、ETC2.0でも先着5万人に入れば数千円で装着可能であるということ。

だったらもう首都高速道路(株)は通常ETCを希望者全員に無料で装着したらどうなのか。もしくは全国の高速道路会社で日本中を対象にしてもいい。
未装着車は多分まだ数百万台有ると思うけど、安いETCに限定し数百万台のボリュームをもって相見積もりをし徹底的に安く仕入れればいい。
そのうえで高速道路はETC装着車以外通行出来なくし、料金収受コストをさげてコスト低減すればいい。
そこまでやれば投資の効果が出るけど、このキャンペーンの15億円は無駄金に見える。

 


「高速道路途中下車」ETC2.0限定の愚

2019年10月04日 | ITS

まだ正式な発表はないが、一部報道機関で国交省がETC2.0に限定して、高速道路料金所を途中下車しても3時間以内に再入場すれば追加料金なしにする、という報道がなされた。
これはおそらく事前リークであり、その計画が存在するということだろう。

いわく、サービスエリア同士の間隔が25km以上離れている空白区間が約100区間も存在するため、利用者の利便を向上するべく実施する、また通常旅行客が通過してしまう途中の観光地等への経済効果を狙う、ということのようだ。

これについては何一つ否定しない。まったく結構なことだし、サービスエリア同士の間隔が25km以上離れているのは道路会社の責任なんだからむしろ途中下車無料は当たり前のことのように思う。

問題は、これをETC2.0に限定するということだ。ETC2.0は通常のETCより一万円以上高額。それをつけていないと適用しないというのはどういうことなのか?

いや、ETC2.0の機能で途中下車できるようになったんじゃないの?と思う人もいるかも知れない。事実、メディアはそう勘違いしているようにも思えるし、国交省も意図的に曖昧にしてるように感じる。しかし、それは事実ではない。インターチェンジ料金所の出入りは当たり前の話だが、通常のETCで管理できる。

単に、ETC2.0にしかその優遇を適用しない、ということなのだ

ではなぜそんなことをするのか?
理由は簡単、純粋なETC2.0の普及促進優遇措置だ。

前述のとおりETC2.0は通常ETCより一万円以上高い。しかしその価格差に見合うメリットがない。だから売れない。売れないからこの「途中下車」を普及促進策にするようだ。

では、なんでそんなに売りたいのか?
じつはETC2.0は装着した車の運行履歴を国が吸い上げている。プライバシー情報は隠されているということだが、いつどこを何キロで走ったかが国のサーバーにアップロードされるのだ。これを国は交通政策に活用すると言っている。それなら「その代償としての優遇」だとはっきり言ったらどうなのか?(これは意地悪な言い方で、それを言うと厄介なことになるので言えないのは理解している)

サービスエリアの問題にしても、地域活性化の問題にしてもとてもいい施策だと思う。しかし利用者の利便向上策をなぜ全ETCのうち10%しかないETC2.0に限定する必要があるのか? 地域活性策にしても、対象は多いほうが良いに決まってるのではないか?全ETCを対象にした施策であって当然なのではないか?

よく言われるETC利権という話には私は与したくないし、特段の不正があったとは思っていない。しかしここまで露骨にETC2.0普及策を強行するとなると、裏に何かがあるのではないか、と勘ぐられても仕方がないと思う。国交省はよく考えたほうが良い。

みなさん、この件SNSなどでの拡散を希望します。


カーナビ市場が死なない理由

2019年09月26日 | ITS

スマホナビの性能が向上し、事実上カーナビ同等の使い勝手になって来ている。それなのに我が国のカーナビ市場は一貫して対前年プラスで推移しており、2019年上半年でも対前年103%(JEITA)だという。なぜカーナビ市場は消滅しないのだろうか?

カーナビ市場というと一般的にはカーショップで販売されているカーナビを思い浮かべるかもしれないが、しかしこの市場はすっかり冷え込んでいる。実際市販ナビ国内大手メーカーの中でパイオニア、クラリオン、アルパイン、富士通テンは自力での生き残りができず外資などに経営体制が変更されている。
この理由はまさにスマホナビによるものだろう。ナビがついていない車にお金を出してナビをつけようという人はもはやいないのだ。

ではなぜカーナビ市場はそれでも拡大しているのか?

答えはメーカーでの標準装備が拡大しているということ。
次の疑問は、なぜこれだけスマホナビが普及しているにもかかわらずカーメーカーはナビゲーションを標準装備するのか、ということになる。

ナビゲーション機能のない液晶画面付きカーオーディオを「ディスプレイオーディオ」と呼ぶ。すでにもう6-7年前には登場しており、これにアップルの「Carplay」やアンドロイドの「AndroidAuto」という接続を使うことでスマホナビが車載画面で使える。当時はこれでカーナビは絶滅する、アップルが車のエンタメも支配する、というような論調が一般的だった。
しかし、2013年2月の当ブログ記事、「ディスプレイオーディオ(DA)の時代は来るのか?」でも予測した通り、いまだにディスプレイオーディオは決して一般的ではない。

それはこういうことだ。

安全性が重視されるようになり、リヤビューカメラの装備が一般的になってきた。リヤビューカメラには液晶画面が必須となる。したがって軽自動車をふくめ、ほとんどの車が液晶画面を標準で備えるようになった。さらに、この先車内の表示系をすぺて液晶にする「eコクピット」化も進むと予想される。

ナビ機能自体はハードウェア的には相当こなれてきており、液晶画面がすでについていればその(ハードウェアとしての)コストアップはたいしたことはない。
一方で、液晶画面がついているのにナビ機能がないと販売現場で非常に売りにくい。ユーザーは液晶画面にナビ機能を期待するし、スマホ連携機能があっても自動車営業マンにとっては説明は結構厄介なのだ。さらに未だにガラケーの人や、スマホでもアプリインストールなんかしない人はまだ沢山いる。ディーラーはナビ付きのほうが売りやすい。

なのでカーメーカーが敢えてナビ機能をはずしたディスプレイオーディオにするということは今後もないだろう。そういった車もでてくるだろうが、ディーラーオプションでナビユニットをつける前提になってるはずだ。
スマホナビを使いたいユーザーもいることから、将来はよっぽどの廉価仕様をのぞけば「スマホ連携機能もついたカーナビが標準装備」ということになるのではないか。


杞憂に終わりそうなEVの静音(歩行者事故)問題

2019年07月16日 | ITS

私も以前のエントリーでEVの静音による危険性と日本の行政の対応の遅さを批判したことが有る。
結果として2016年に法制化がされ、2018年以降の新型車、2020年以降は継続販売車も「車両接近警報装置」の装着が義務化された。日本初のEV、i-MiEV発売から実に10年近く経過している。

それだけ熟考を重ねた法改正であるが、皮肉なことにどうやら静音であるEVによる歩行者との接触事故はほとんど問題になるレベルでは発生していないようだ。
日本で話題になることもないし、イギリスではDepartment for Transport(運輸省に相当)から以下の報告書が出されている。

Assessing the perceived safety risk from quiet electric and hybrid vehicles to vision-impaired pedestrians
(視覚障害の歩行者に対する静音EV,ハイブリッド車によるリスクの評価)

要点だけをいえば
・EVとエンジン車で歩行者との衝突事故の発生率に差はない。
・EVの総事故に占める歩行者との衝突事故の比率はエンジン車より高いが、主にシティコミューターであるからと推定。
・徐行(7-8km/h)時ではEVはエンジン車より音がしない(マイナス1dB)だが、20km/hを超えるとロードノイズによりEVとエンジン車の差はなくなる。(日本の法規も警報音発生は20kmまで)

つまり、EVが音がしないゆえに歩行者が気が付かない状況というのは徐行時に限られ、徐行なので重大事故に発展しない、ということなのだろう。

さらに報告書の指摘では、最近のエンジン車は静音化が進んでいるため徐行時でもEVと騒音に差がないものもあり、今後さらにエンジン車の騒音が改善されるのであればこの問題はEV特有のものではなくなる、としている。

この報告書はイギリスのものであり、おそらく市街地における人/車、自転車/車の混交は日本より少ないと思われるが、前述の通り日本においても社会問題になるレベルにはなっていない。なので、おそらくEVの静音に起因する歩行者事故というのは当初心配されたレベルではない、ということのようだ。

但し、少なからず問題は有る。EVは加速時でも音がしないため、徐行から加速に移った際にそれに気が付かなかった歩行者をはねる危険性が有る。なので法制化が必要であったことは間違いない。また人車混交でも徐行をしない安全意識の低いドライバーであれば車の種類に限らず危険であり、これはEVがどうこうというより人車分離というインフラの問題だろう。




高速道路からの道の駅への一時退出「賢い料金」利用状況

2019年07月09日 | ITS

コメント欄で情報いただいたので、国交省が6月28日にリリースした報道発表資料(PFDへのリンク)を貼っておく。

高速道路からの一時退出を可能とする「賢い料金」の実施について

高速道路にはSA,PAの間隔が25キロ以上離れている箇所が約100区間存在し、国交省では過労運転防止や給油の利便性向上の観点から追加料金なしに道の駅への一時退出を可能とする施策を進めている。その試行の検証報告だ。

さて、これだけ読むと大変結構な話に見える。しかし、何故かこの施策の恩恵にあずかれるのはETC2.0装着車に限定されているのだ。

SA,PAの間隔が25キロ以上離れているのは道路会社の責任であり、それが「良好な運転環境の実現(資料からの抜粋)を阻害」するのであれば、当然すべての車両を対象とするべきではないのか。この報道発表資料には、ETC2.0に限定する理由はどこにも書かれていない。

ETC2.0は通常ETCより1-2万円高額だ。最近はメーカー標準装備が2.0になりつつあることから徐々に増えてはいるが、それでもまだ圧倒的に通常ETC装着車が多い。大型車(トラック)においては、ETC2.0に対して料金優遇(大口割引率関連の優遇)を行ったことから買い替えが進みかなりの装着率になっているが、乗用車ではおそらく10%程度だろう。

資料を見ても、平日の利用は圧倒的に大型車が多い。まあ、多いと言ってももっとも利用が多い道の駅で日当たり38.9台(大型+小型)。時間あたりすれば3台程度でとても活発に利用されているとは思えない。休日は観光の乗用車が多くなるが、一部を除けばそれでも日当たり10台程度。

対象をETC2.0に限定しているから利用が拡大しないのは明らかだろう。とても「賢い料金」となのるようなものではない。

ETC2.0の当初の触れ込みでは、2.0は通行経路が記録されるからこうしたことが実現できるのだ、といっていたが、それは実は嘘。ETC2.0は個人情報保護の観点からエンジンを切るとその前後の位置情報は破棄される。だから道の駅に立ち寄ったという情報は残らない。実際は道の駅にポストを設置し、それで判定している。このポストは通常ETCでも通過情報を判定できるから、単に「わざとETC2.0に限定している」だけなのだ。

なぜ国交省はそんな事をするのか?

ETC2.0は国交省が鳴り物入りで推進してきた「ITS施策」の目玉だが、なかなか普及しない。実際に価格が高いだけで利用者にはほとんどメリットが無いので普及しないのも当然なのだ。しかしETC2.0は走行経路の情報が手に入るため、国交省としては普及させることで交通ビッグデータを収集したい。その中で考え出されたのが、この優遇策なのだ。

報道資料にふくまれるアンケートもこの設問でネガティブな回答になるわけはない。便利だと思って利用したユーザーは便利だと言うに決まってる。典型的な手前味噌アンケートだ。アンケートをとるべきは通常ETC装着ユーザーへの利用意向だろう。

繰り返すが、目的が「良好な運転環境の実現」であるならすべての利用者に開放するべし。


なんと自分の車にETC2.0がついていた

2019年05月29日 | ITS

このブログはETC2.0について徹底的に批判をしてきている。
批判する以上は自ら使ってみるのがフェアな態度だろうが、7年前に中国転勤にともなって日本では車をもっていなかったためその機会はなかった。

今年1月にディーラー試乗車の程度がいい中古車を家内用に購入したのだが、先週末一時帰国し高速道路(中央高速)を走行し、初めてついていたETCが2.0であることに気がついた。まったく間抜けなものだ。

ということで、使用レポート。

通常ETCと異なる点は高速道路では交通情報がナビ画面に表示されるということ。
最初に近距離、その後遠方の交通情報が簡易地図で表される。

遠方の交通情報は情報量が多すぎて走行中に確認できるようなしろものではない。また、近距離の情報はほぼ同じものがビーコンでも提供される。この車にはビーコンもついていた。

ビーコンがついているならETC2.0の情報はいらない。しかしETC2.0はビーコンの代替と位置づけられているのでいずれなくなる。
であればETC2.0はつけておいて損はないか、というとそうも言えない。そもそもビーコンの情報も路側表示やハイウェイラジオに対してさほど価値があるものでもない。だからつけている人は多くない。

たまたま中央高速は集中工事で高井戸まで渋滞10キロ120分という異常事態だったが、その情報は路側表示で不足なく入手できた。
また、府中スマートICでおりて国道20号迂回が最適解だったが、これはスマホのGoogleマップが教えてくれた。ETC2.0はなにも教えてくれなかった。

ETC2.0固有の交通情報として前方故障車ありという表示がでたが、10km~15kmおきに設置されてるポスト通過時にしか表示されず、一体どのくらい先に故障車があるのかわからない。実際、忘れてしまうくらい先に故障車が止まっていた。これはFM多重VICSによるナビ画面地図上表示のほうが優れている。

さらに言えば、中央道集中工事に伴って渋滞区間で一般道迂回した場合はETC、現金利用ともに料金調整をしてるが、これはそもそもETC2.0で実現されるという謳い文句ではなかったのか?
実際には2.0でなくとも対応は可能なはずだと指摘してきたが、まさにそのとおりになっている。
リニューアル工事のお知らせページ。料金調整をクリックで調整内容が表示されます。

ということで、正直いってお金を払う価値のあるものではない。割引のある圏央道を日常利用する人以外は「まったく必要ない」と断言できる。

以下、蛇足。
府中スマートICの出口には特にETC専用などの表示はなく、非装着車でもそのまま降りることができる。理由は非装着車も料金所で先払いしているから。しかし、ETC以外も通行可能というような表示は一切ない。これはわかりにくい。そもそも出口に「スマート」という名前をつける意味はないのではないか。


滋賀の園児交通事故で考えた日本の信号のあり方

2019年05月09日 | ITS

滋賀で発生した保育園児の痛ましい交通事故は典型的な右折と直進車による「右直事故」
この危険性と、右折矢印信号(対向車を止めてから青にする)の必要性については以前からブログで表明している。

その前に言いたいこと。メディアの報道。保育園の管理に対する追求は言語道断だ。歩道にいて巻き込まれたのにあたかも責任を追求するようなことは絶対に許されない。
これは流石にSNSで批判が上がっていてほっとしている。
でも、悪いのは車とドライバーだ、と言い切るのもちょっとまってほしい。たしかにこの事故は直進車を確認しなかった右折車に大きな原因がある。直進車はおそらくどうしようもなかったし、私が運転していても同じことが起きただろう。一方の右折車にしても、ふと前方確認せずに曲がってしまうということはもちろん「あってはならない」ことだが、こうしたヒューマンエラーだってだれにでも起きうるということを自覚しなくてはならない。

さて、双方青の右直は運転者の技量と注意力に委ねられている。よくある事故は対向直進車の速度を見誤る、または影からでてくる単車を見落とす、というものだろうが、こうしたケースではヒューマンエラーが発生しやすい。

ヒューマンエラーに関し、池袋のブレーキ踏み間違いでも「認知能力が低下した老人の運転」の是非が問題となっているが、これはとても難しい。運転能力がどこまで低下してると危険かという判定は明確にできない。極論でハードルを上げるなら、免許取り立ての人は運転してはいけない、ということになる。

つまり、ヒューマンエラーは起きるものだ、という前提で物事をかんがえるべきだ。
そして、人命に関わるヒューマンエラー発生の危険性があるのであればできる限りのポカヨケをインフラに施すのが行政の役割だし、車両装備はカーメーカーの責任だと思う。

報道ではガードレールがないことを指摘している。たしかにそれも対策の一つであるがわたしはそれよりも事故発生自体を抑制する右折専用信号が先だと思う。
現場の写真からは右折は専用レーンとなっており、右折専用信号の設置はなんの問題もなく可能だ。

もちろん片側一車線の交差点など物理的に設置できない箇所はあるが、可能なところから設置を進めて行くべきではないか。

きちんとした裏付け資料があるわけではないが、感覚として今いる中国佛山順徳ではほとんどの交差点が左折(日本で言う右折)専用信号になっている。
また旅行で運転したアメリカ、ドイツ、オランダ、スペイン、オーストラリアなどでも右折(左折)が対向車と両方青で混交する交差点は少なかったように感じる。
これは右直だけでなく、右左折時の横断歩道でもいえる。海外では横断歩道の信号と車の信号が両方青にならない制御のほうが多いと感じる。

それに比べ、日本の交差点は両方青で右直車/人車混交が多すぎる。

カーメーカーはそれなりに自動ブレーキなどで進化を続けているが、すべての車に高度な安全装備がそなわるにはまだ長い年月が必要だ。
行政は今すぐできる信号機の見直しを行うべきではないか?

蛇足だが、日本にも矢印信号はある。しかしその法的定義は曖昧になっている。通常海外の矢印信号は相対する横断歩道は赤信号で歩行者と混交することはないのだが、日本ではそれがルール化されておらずまちまちなのだ。これも事故を助長しているように感じる。