ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

高速道路割引拡大

2009年06月20日 | 高速道路
NEXCO3社は高速道路ETC割引適用の拡大を発表した。
新聞報道では「拡大」といっているが、実際には制限緩和に近い。
いままでの通勤割引や平日昼間割引では、100kmを超えて走行すると全く割引を受けられなかったが、今後は100km相当分は割り引くという。
また、平日昼間割引の回数制限をなくすという。

この制限を回避するため、いったん出てまた入るとか、ETCカードを二枚使うなんて「生活の知恵」が行われてきたこと自体異常であり、100km制限については最初からこうしておくべきだったと私は思っている。

総選挙が近づくなか、民主党の高速道路無料化政策に対抗すためには現行のETC割引に対する不満をできる限り解消しておこうという政府の要請が裏にあるように思える。

しかし、この割引制度をどうしてこんなに複雑にする必要があるのだろう。平日と土日、都市部とその他、時間帯、走行距離で条件が組み合わされ、この内容をすべてあたまにいれておくことは不可能に近い。
実態として、高速道路料金はETCの出口を通ってみなけりゃわからない「鮨屋のカウンター」状態になっている。まあ、予想よりびっくりするほど高いということがないのが幸いであるが。

交通量が少ない時間帯、箇所について割引を行うことで高速道路の利用を促進し、交通量の平準化を図るという趣旨はわかるんだけど、なんかパッチあての繰り返しのように見える。

矢印式信号機のあやうさ

2009年06月07日 | 雑記
先週、茅ヶ崎で信号無視をした少年の直進車が右折車と接触し、歩道にいた3人の看護士が亡くなるという不幸な事故が起きた。

あるTV局のニュースでは、この交差点が矢印式交差点であり、事故発生時は赤信号+右折矢印であったとし、これを図解しながら「判りづらいのでは」と言いたいのか、言いたくないのか、いまいち煮え切らないような解説をしていた。

右折矢印式(正しくは右折分離式)信号はいわゆる右直事故の防止に極めて有効であり、わかりにくさが事故を誘発しているとは思えない。
今回の問題は単純な信号無視だ。

しかし、もうひとつこの報道内容で気になったのは、矢印式信号はテレビが解説をしなければならないほどに一般の認知が低いことだと思う。

さらに、これは私は大問題だと思っているのだが、矢印信号が青であれば多くの場合歩行者信号は赤になっているのだが、それは特に国として定められた規則ではなく、例外がたくさんあるということだ。
以下はwikipedia「矢印式信号機」より

-ここから
矢印信号が出ている間、対向車線や歩行者は赤信号である、とする情報が一部に存在する(十字路で直進、右折、左折がすべて点灯するパターンの説明など)が、都道府県によって矢印信号の運用は異なるので注意が必要である。例として、東京都目黒区の上大崎交差点では歩行者用信号が青のまま左折矢印が表示される。
-ここまで

今日確認したが、山手通り富ヶ谷交差点外回りも左折・直進の青矢印が出ている状態で歩行者信号は青のままだった。

矢印青は無条件に進んでOK,と思っているドライバーは多い。
なんでこんな重大なことをきちんと決められないのだろうか?都道府県で信号機の運用が異なっていいはずがないだろう。
私の経験では、欧州の青矢印信号の場合歩行者信号は100%赤だったと記憶している。

通信でクルマのモニターに歩行者の情報を送るなんてことよりも、この辺の基本をきちんとしてほしい。そんなの100年早い。
「信号は所轄が違うから」なんて全く言い訳にならないのだ。

急発進防止装置

2009年06月06日 | ITS
自動車用品製造販売のサン自動車工業が急発進防止装置を発売する。

最近、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故が多発している。これはドライバーの高齢化によるものと言われており、実際に報道を見る限り事故の運転者はシニアドライバーのケースが多い。
しかし実際には免許取りたての若年層でも発生率は高く、近年の若者のクルマ離れにより、運転頻度低下や未熟ということもあるのだろう。

首都高速における平成19年度の死亡事故は19件。20人の方がなくなっている。このうち5人が2輪車。
一方でペダル踏み間違えによる死傷者数は全国で1万人以上。死亡者の数字はわからなかったが、高速道路のDSRCで路車間通信なんかやるより、こちらの対応が先だと思うのだが、どうなんだろう。

冒頭で紹介したとおり、これに対応する商品が発売された。
フルスロットルを抑制する装置でありちょっと乱暴に感じるが、車速検知や学習機能を備えているという。
そもそもこの装置をつけようというドライバーは通常運転で急発進はしないだろう。
滅多にはないだろうが、急坂での発進や踏切内など急発進で危険避難するケースをどうするかが気になる。(急坂は傾斜センサーで回避できそうだね)
これは確かに注目に値する商品だと思う。

本来はこうした制御こそ、国が研究補助し、カーメーカーを指導する分野ではないのだろうか。たとえばバックではフルスロットル出来ないようにするだけでも事故死者がかなり減るのではないか。
あるいは、ITS技術を使うならGPSの位置情報で道路外(駐車場など)ではフルスロットルを制御するなんて、カーメーカーなら今ある技術ですぐできる。
実際にGT-Rはサーキットではスピードリミッターが解除されるという、逆の制御をしている。

アメリカではヒラリークリントンが音頭を取ってSUVへのリヤビューカメラを法制化しようという動きがある。年間100人以上の子供が車庫でなくなっている米国では、これはかなり有効だろう。

一方で我が国のITSは何をしているのだろうか。

ハッキリ言ってスマートウェイでどれだけ事故死者が減るのか。高速道路における認知遅れに起因する事故死は我が国の交通事故死者の何パーセントか?おそらく数パーセントだ。

ITSに関連した政策は交通事故死低減への実効性よりも、通信を使ったハイテクなシステムを世界で一番最初に実用化することの方が優先されているように感じられて仕方がない。

ITSのインフラ

2009年06月06日 | ITS
占いの類は1mmも信じないが、プレゼンとか英語スピーチのある朝、でかけに「今日一番悪い運勢はごめんなさい~、みずがめ座のあなた。大事な場面で言葉が出なくて大失敗。」とか言われるとかなりへこむ。謝るくらいならやるなよ、と思う。
「でも大丈夫、ラッキーアイテムはピンクのセカンドバッグ」っていわれてもねぇ。

富士キメラ総研は「2009年版ITS関連市場の現状と将来展望」で、「国が働きかけないとITSサービスは普及しない」と指摘している。そして、それは以前から指摘されていたことだ、とも言っている。
しかし、この会社、2006年版では「DSRC車載器では、高速道路に限定されず一般道や商業施設で利用できるため、市場拡大が期待できる。」とし、2008年には本格的な普及が始まる、といっていたのだ。

自社の予測がはずれたのは国のインフラ整備が進まないからだ、と言っているように見える。

これは全然違うだろう。そもそも商業施設での利用が夢物語で、そこに全くユーザーニーズが存在していないのだ。
当ブログ2005年12月16日エントリー

一昨日だったか、日刊自動車新聞にETCの大きな記事が出ていた。
今後ETCに路車間通信による安全運転支援機能を取り入れたITS車載器がでてくるが、国交省の5.8GhzDSRCと総務省の700MhzアナログTV波空き地の二つの方式についての整合性が取られていないことから未だに不透明である、というような結論だった。

まあ、それは事実だろうが、問題の核心はインフラではない。
路車間通信が本当に必要なら、VICSビーコンはもう少し違った展開をしていたはずだ。ビーコンは通信速度(情報量)に問題があるから使えなかった、という人もいるけど、そうじゃないだろう。
インターネットはブロードバンドがあるから普及したのではなく、インターネットがあるからブロードバンドが普及したわけで、それは逆なのだ。

そもそものニーズが本当に存在しているのか、ということをよく考えた方がい。