ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

一年経過

2005年07月31日 | ITS
このブログを開設して1年が経過した。
さすがに最近は「ITSの経済効果XX兆円」という論調を見かけなくなった。
決してこのブログに啓蒙効果があったという事ではなく、市場の実態をみれば誰でもわかる、ということであろう。

しかし、今だに疑問の残る公共投資や実態の伴わない民活事業への期待が関連団体の報告書に見られる。

特に以下の点についてはまだまだ「疑う」必要があると思うので、もうしばらくはこのブログも続けていきたい。

公共事業系
・スマートプレート
・通信による道路安全情報提供を、路側表示整備よりも優先させること
・スマートICをETCと無理矢理結びつけ、住民の利便よりもETC普及を優先すること
・ETC普及の補助金のやり方

民間事業系
・いわゆる「テレマティクス」という市場
・DSRCサービス利用


最近メディアを騒がしている天下り、談合問題については、ETC・DSRCに関連しても疑わしい部分は沢山ある。
しかし、これは一個人が無責任に「疑う」ような内容では無い。議論を散漫にしないように敢えて踏み込まないことにしよう。

スマートウェイ推進会議

2005年07月26日 | ITS
7月22日にスマートウェイ推進会議が開催された。

議事次第や当日のプレゼンテーションは国交省ITSホームページに公開されている。
資料一括ダウンロード(8.2MB)

資料番号6 (社)土木学会・実践的ITS 研究特別委員会がまとめた
「道を使いこなすITS へ(中間レポート)(案)」~シーズ指向から公益指向への転換~

というレポートには、総論としては良いことが書いてある。
シーズ指向から公益指向への転換、という主旨には賛同できる。現在のITSは、IT、通信、先端技術といった幻のような消費者ニーズを追いかけて無理矢理民活を導き出そうとし、結果として出口のない迷路にはまっている。

しかし、残念ながら各論レベルでは従来路線の踏襲でしかなく、今ひとつ歯切れが悪い。

おいおい詳細を検討していこう。

オーストラリア

2005年07月25日 | ITS
この一週間オーストラリアに出張に行っていて全くアップロード出来なかった。
ホテルにLAN接続はあったのだが、1分間50円という、殆ど冗談のような金額なのでやめた。

土曜の夕方に帰ってきたのだが、関東地方をおそった地震で成田空港で4時間も足止めされてしまった。

さて、オーストラリアはITS的には殆どいうべき事はない。
主にブリスベンにいたのだが、国土が広く人口がすくないため渋滞問題はなく、一部の有料道路では電子徴収が行われていたが、この国におけるインフラ整備のなかでのITSのプライオリティはあまり高くないと思う。

歩行者をはねて負傷させることより、カンガルーをはねて運転者が負傷する可能性のほうが遙かに高いため、世界中で社会の敵として追放された四駆用のブルバーがオーストラリアでは依然として市民権を得ている。

カンガルーをはねるとフロントガラスを割って車内に飛び込んでくるらしい。そのとき、カンガルーが生きていると、その強力な脚としっぽで乗員を傷つけ、また運転操作を阻害する。
従って、ちょっと残酷な話だが、ブルバーはカンガルーを即死させたほうが良く、へたに保護機能のある樹脂製のブルバーは好まれないらしい。

実際、町中で数えてみたがSUV系のクルマの過半数がアルミや鉄のブルバーをつけていた。

参宮橋社会実験

2005年07月13日 | ITS
参宮橋社会実験の報告内容を入手した。

まず、間違いを訂正しておく。
以前の記事で、ビーコン付きのクルマは商業車を入れればパーセンテージは一桁の下の方だろう、と書いたが、実際は10%とのこと。当然ビーコン付きは高級乗用車が多いため、休日・夜間でその%は上がる。また、右車線走行車で10%超、左車線走行車が7-8%とのことだ。

実験実施期間は3月1日から5月31日までの92日間。
期間中の4月27日に、渋滞末尾情報板がカーブ手前に設置された。
但しカーブ手前路面の赤い縞模様がいつから施されたかは言及無いため不明。

サービス前後の比較として、2004年10月15日から11月12日の間の28日間と、本実験の92日間のデータが掲載されている。
期間に三倍以上の差があるにもかかわらず、「導入前」で30件あった事故が「導入後」では14件に減っている。日数を掛け合わせれば、実に1/7に減少したことになる。

これだけを示されれば、ものすごい効果である。

しかし、単純に疑問に思うことは、何故ビーコン装着車が10%しかないのに1/7になるのか、ということだ。
さらに内容をよく見ると、カーブ先に低速車、事故車が存在せず、ビーコン装着車にも警告が出ない状態で発生した事故、つまりは今回の実験とは無関係な事故も19件から8件に減少している。これも日数で計算すれば1/7である。

ここから想像できることは、事故の減少に寄与したのはビーコン表示ではなく、その他の要因があるのではないか、例えば赤い路面警告のような路側警告表示が効を奏したのではないか、ということだ。不思議なことに報告書はその部分にまったく触れていない。

もちろん、ビーコン装着車への好影響は否定しない。直後の渋滞情報が、警告音とともにナビ画面に表示されるのだから、事故防止に寄与するのは当然である。対象車両及びその後続車の安全性が向上したことは明らかだ。先日も書いたとおり、実験するまでもなく当たり前だと思うが、決してそれを無意味だというつもりはない。

しかし、今回のこの実験の結果をもって、「効果があることは証明されたので(基本的には)本格導入する」という結論に至っているのは大いに疑問である。

何故10%のクルマ(とその後続車)にしか恩恵がない安全設備に公共投資をする必要があるのか?
今回の実験でも、路車間通信よりも路側表示の方が安全に寄与したのではないのか。
そっちを整備するのがまず先なのではないのか。

日産のITSプロジェクト

2005年07月11日 | ITS
7月9日の日刊自動車トップで、日産の神奈川でのITS実験プロジェクトが取り上げられている。

日産の実験は既に情報があるとおりプローブによる経路誘導だが、興味を引いたのは「低コスト通信手法開発」による「常時プローブ情報発信」ということ。

日産は神奈川を中心に、承諾を得た1万台のユーザーから一定時間毎に現在位置、車速、時刻などの情報を受信、センターで分析し、リアルタイムに近い渋滞情報を把握、最短時間ルートをナビゲートする、としている。

この記事にもあるとおり、現在既に実用化されているホンダのインターナビは、リアルタイムではない。通信時に一括で情報を蓄積し、分析して予測している。一定時間毎のリアルタイムは、いうまでもなく通信コストがかさむことがネックである。

具体的な方法には触れていないが、日産、NTTドコモ、松下電産、ザナヴィのプロジェクトは「常時発信してもコスト的に耐える通信手法を開発し、07年末までに実用化を検証する」とのこと。

そんな手法が開発できれば、クルマのプローブなんて狭い世界にとどまらず、もっと大きなビジネスチャンスがあると思うが。

参宮橋社会実験の結果はどうなの?

2005年07月10日 | ITS
参宮橋社会実験の第二回検討会が6月24日にあったようだが、その後なにも聞こえてこない。
ネットを色々検索しても、検討会の様子や、結論はまったく入手できなかった。

そもそも、私はこの実験にはかなり疑問点が多いと思っていた。

まず、見通しの悪いカーブ先の情報を手前に流せば、安全性は向上するに決まっている。
しかし、それを提供する手段は光ビーコンであり、装着している車両は極めて少ない。
その、極めて少ない車両のなかからモニターを選んで、意見聴取をしたのだろう。はたして純粋に何人集まったか知りたい物だが。

モニターから、見通しのわるいカーブ先の情報が提供されることに対して、ネガティブなコメントが出るわけがない。
そんなの、実験なんかするまでもなく全く当たり前のことである。

一方で、この実験で実際に事故が減る訳はない。なぜなら、光ビーコン付きナビの装着車は極めて少ないからだ。
もし、事故が減ったとか、カーブへの進入速度が落ちたなどの発表がされるとすれば、それは別の理由-カーブの手前の路面に設置された、注意を喚起する赤いストライプ状の凹凸-によるものだ。

結果、この実験からは絶対に「新しい発見」はない。「試すまでもなく判っていること」を、敢えて実施し、なんかしらのアドバルーンにするという意味しかないはずだ。

そういう意味から、なんかしらのプレス発表があってもいい頃だと思う。そして、その内容が「従って路車間通信は事故軽減に有効なのだ」というようなふざけたものだったら徹底的に批判しようと待ちかまえているのだが。

国交省は先月、財務省から無駄な道路関連の実験を指摘されたばかりだから、ちょっと引いているのかもしれない。

モバHOが離陸しないわけ

2005年07月07日 | ITS
モバHOが苦戦している。
契約者数は発表されていない。当面発表しないということらしいが、おそらく市場にインパクトがあるような少なさなのだろう。3年で200万人という目標に対して未だ1万人程度という噂もあるが、なにしろ公表しないんだからわからない。

一方でアメリカでは、サテライトラジオが完全に離陸した。
XMは400万人、シリウスも140万人の契約者を獲得し、既に損益分岐点を通過した模様だ。
市場はまだまだ拡大している。しかし、両者ともここに至るまでは資金不足という苦労があったのも事実である。

2006年2月追記:2005年度もXM・シリウスとも依然赤字とのこと。契約者は増えたが、コンテンツのコストがかさんでいるらしい。

北米のサテライトラジオは正のスパイラルに入ったわけだが、モバHOはどうなのだろうか?
私は1月の当ブログ記事「東京オートサロン」で、多分駄目だろうと予測した。
この見方は今も変わっていない。

映像コンテンツは、無料の地デジ1セグに勝てないだろう。
音楽コンテンツにしか可能性がないと思う。しかし、北米と我が国の市場環境の差を考えると、厳しいだろう。

北米は移動距離が長く、走行中にFM局を切り替える必要性が生じる。またジャンル別放送に慣れ親しんでいるため、その都度好みの局を選択しなければならない。好みのコンテンツをいつでもCDクオリティで聴けるということにとても価値があるのだ。
一方で、我が国のドライバーは通常の生活圏ではいつものFM局で間に合うし、何故かジャンル別放送というものにあまり需要がない。

さらに、北米のサテライトラジオの音質はCDクオリティーだが、モバHOはどうなのだろうか。
かなり重要なポイントだと思うが、同社のWEBサイトには明確な説明がない。(ということは?)
唯一、Q&Aに以下の記載があった。

-----------------------------------
音楽放送を楽しみにしておりますが、その音質について教えて下さい。大体どの程度の音質が期待できますか?FM放送、AM放送と比較して頂けると判りやすいのですが。

-デジタルとアナログの違いもあるので一概にはいえないのですが、ノイズが入らない分いいというご意見をいただいていますよ。
-----------------------------------

要は、ノイズのないラジオ放送だというのだ。使えるバンドの容量とチャンネルの数から、音質が犠牲(64kbps)になっているようだが、有料コンテンツである以上、これでは消費者も触手が動かないだろう。

事故多発交差点

2005年07月06日 | ITS
日本損害保険協会のWEBサイトに、事故多発交差点情報というコーナーがある。
我が家から至近距離の交差点があって驚いた。

その交差点では、自転車の巻き込み事故が多いと書かれている。
しかし、交差点自体にそれを防止しようと言う積極的な工夫は見受けられない。

右折矢印信号はあるが、短いので皆争うように突っ込んでくる。また、左折は横断者と交差する。
大型店舗があるので、横断者が多く、当然自転車の巻き込みのような事故が多発するのだろう。

これをみて考えさせられるのは、参宮橋実験だ。

保険協会に言われるまでもなく、危険箇所はすでに判っているのだ。
それが判っているなら、これらの危険箇所に対して「いまできる範囲」での安全向上施策を知恵を絞り、徹底的に実行するのが行政だろう。

いつ実現するか判らない路車間通信の実験なんか、遙かその後の話だと思う。



ボーダフォンはどうなる?

2005年07月06日 | ITS
ボーダフォンは「悪しきグローバル化により、日本の消費者のニーズをつかめずに3G端末で大失敗、社長を更迭し日本市場に明るい新社長を迎えて反撃する」という事だったけど、それが「着ぐるみケイタイ」だとしたら、もう将来は暗いね。

確かに短期間で話題性のある商品ということで仕方なかったのかもしれないけど、あまりに安直だ。
持ち物というのは、多かれ少なかれその持ち主を表現する。特にクルマやケイタイという商品はこの傾向が強い。

果たしてケイタイがチーズやタイヤだということにいったい何のメッセージがあるのだろうか。
合コンの一発芸程度のバリューしかないと思うが。

ITS EXPO

2005年07月05日 | ITS
ITS EXPOがそろそろ始まる。

正直いって、あまり盛り上がっていないようだ。ITS視察、探検ツアーの半日コースが中止になっているが、参加者が集まらないということだろう。

愛・地球博の会期に併せて名古屋で行われるこの行事、本来は「愛・地球博自体がITS万博だ」という期待のもとに計画されていたんだと思うが、残念ながら愛・地球博は冷凍マンモス博になってしまった。

会期に同期して万博会場や名古屋周辺で行われる各種のイベント内容はこちら

名古屋でDSRC駐車場自動決済の実験

2005年07月04日 | ITS
JARI(日本自動車研究所)はITS自動決済システムの実証実験を実施する。

対象は名古屋周辺、期間は愛・地球博会期に同期し2005年6月30日(木)~9月25日(日)。但し、年末まで延長の可能性があるそうだ。

現在モニターを募集している。定員400人で、期間終了後に5000円のカー用品商品券がもらえる。興味ある方は是非。

これはDSRCによる駐車場自動決済の実験である。
このブログで一貫して「ありえねぇ」といってきているDSRCサービス利用という奴だ。

ありえないDSRCサービスの中でも、ドライブスルーやガソリンスタンドに比べ、駐車場は局地的には可能性が無いとは言えない。
有料駐車場を毎日のように利用するユーザーにとっては、間違いなく便利である。
しかし、月に数回しか利用しない大半のユーザーが、そのために機器を購入するとは考えにくい。

さらに大きな問題は事業者側のモチベーションだろう。既に駐車場は無人化されており、これによるコスト低減メリットは現金管理だけだ。一方で、おそらくクレジット手数料分、コストアップとなるのだろう。

この実験では、機器を無料で装着し、さらに5000円の謝礼がでて、また想像だが駐車場側も無料で設備を設置してもらっているのだろうが、今後市場経済の中でビジネスとして成立させようと思うと、相当ハードルが高い。

携帯電話の音楽プレーヤー化に関して思うこと

2005年07月01日 | ITS
携帯の音楽プレーヤー化については以前書いたが、車載機器との連携ということを真剣に考えると、いろいろ問題が見えてきた。

携帯に限らず、i-podをはじめとする携帯プレーヤーの普及は自動車業界の想定を越えたスピードで進んだ。結果として、現在の車はこうした携帯機器への対応が不十分である。
標準のカーオーディオにAUX入力端子が付いているケースは極めて少なく、カーオーディオから音を出す場合にはユーザーはFMトランスミッターなどを使う必要がある。当然、音質は劣化する。

おそらく、今後出てくる新型車には、AUX端子の装備が進むのではないか?

しかし、単にAUX端子だけの問題でもない。仮に携帯が音楽プレーヤー化した場合、当然それを車のスピーカーから聞くというニーズが顕在化する。携帯というものは、みんながいつでも持っている物だ。車で聞けない方が不合理だ。
車にAUX入力機能があれば、とりあえずは解決する。しかし、音楽を聴いている最中に着信したらどうなるのか?

普通に考えれば、(応答するのなら)自動的にハンズフリーに切り替わるべきであろう。
しかし、そこまで車側は考えているのだろうか?単純なAUXでは対応できない。また、こうした使い勝手は携帯側の仕様にも依存するのだろうが、携帯メーカーとカーメーカーの連携はとれているのだろうか?