ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

新東名が静かに開通

2012年04月14日 | 高速道路
本日、新東名が開通した。

この巨大プロジェクトは、意外なほど「無駄使い」という批判を受けることなく進行した。
多分、地震による物流動脈確保という大義名分になんとなく皆納得させられている、という感じだけど本当なのだろうか?

当面の完成形として、神奈川と愛知を結ぶのに4兆4000億円かかるという。渋滞解消という意味では最も重要な「厚木から先東京まで」つなぐのには多分あと1-2兆円が追加で必要だろう。

4兆円というともはや金銭感覚がなくなってしまうのだが、これはベトナムの国家予算の2倍。本当にそんなとんでもないお金をかけて東名高速を二重化する必要があったのか? 少子高齢化、若者の車離れなどで、この先交通量は増えない。

東海地震のバックアップというが、中央道だってある。というか、地震対策として4兆円をかけるべきは高速道路ではなく、まずは地震・津波から命を守る対策であるべし。東日本で亡くなった方は津波で流された。その後物流が分断され物資が届かなくて困ったのは事実だろうけど、津波被害の比ではない。

高速道路の整備は、渋滞のボトルネックとミッシング・リンクの解消を優先するべきだ。しかし、新東名は事故がなければ渋滞しない静岡県内。用地買収や住民運動対策など、大変だということはわかるが、圏央道、外環道を東名までつなげることのほうが静岡県内の複線化よりも重要だろう。

もう一回いうけど、これは国家戦略的に見て4兆4000億円に値するインフラだとはとても思えない。

NOTTVの状況について

2012年04月08日 | モバイル・ウエアラブル
4月から、いよいよ関係者注目の的であるmmbiのNOTTVが放送をスタートした。
ネットには批判的な意見が渦巻いている。NOTTVでぐぐると「NOTTV 失敗」というレコメンドが3つ目に出てくる。

モバHOが失敗した携帯端末向け放送事業、しかもたいしたコンテンツもないのに月額420円、対象端末はドコモだけで2つしかないという状況で、これからまだまだアンテナ設置に投資がかかるし、魅力あるコンテンツ作りにもお金がかかる。
サブスクライバー1000万人が損益分岐点と聞くと、非常に厳しい。

ブログやツイッターで、「NTTはマーケテイングセンスがない」などの意見が見られるが、これは全くの的外れだ。
NTTはそこまで愚かではない。

では、なぜこの「成功の見込みがほとんどない」事業にNTTは乗り出したのだろうか?

これは、私のブログの「このグログを検索する」窓に「マルチメディア放送」を入れていただくと、2010年夏頃からの記事でだいたいのことはわかる。(携帯版はなぜか検索機能がうまく働きません。PCから見てください)

要約すると
・地デジ化を進めた総務省としては、その大義名分であるアナログ周波数空き地の有効利用をすすめる必要があった。
・国民のコンセンサスを得るためには、ここに新しいデジタル放送で使う、というアイデアが出された。
 少なくとも、計画の初期段階ではそれにそこそこの需要があると思われていた。
・この事業について、NTT系のmmbiとKDDI+クアルコムのMediaFLOでコンペが行われた。
・結果、NTT系mmbiが選定された。この背景には政府は外資(クアルコム)を排除した、と見る向きもあるが、私は違うと思う。クアルコムはMediaFLO事業に見切りをつけていた。何としてもこの事業を進めたい総務省が、余裕のあるNTTに押し付けた、と見るべき。
・NTT内にも事業の成立性についてはかなりの疑問があったようだが、国策として受けた。その見返りに700mhzをもらったという話も聞くが、これは本当かどうかは分らない。
・国策がらみということに加え、すでに商社、広告代理店、メディア等からの出資がmmbiにされ、NTT単独の判断での撤退はできない状況となってしまった。
・実際、NTTから出向してNOTTVを任された人たちからは「少しでも可能性があればチャレンジするのだ」などというかなり悲愴なコメントが漏れていたらしい。

ということで、負け戦に向かって巨額の投資がこれからもなされるようだが、間違いなく無駄金になる。
これは結局のところ、消費者に跳ね返ってくるということを忘れてはならない。

もう一つ、アナログ空き地の大義名分にはITSも入っている。これも、「安全、交通事故防止」という旗印は誰からも批判されないので政府的には都合がいい。700Mhz帯を使って交差点事故防止の実験がやっと豊田市で始まったが、今進めている5.8GHz帯のITSスポットとの関係などは不透明だ。