怪しい燃費グッズについては過去に何回か書いている。
2021年8月のエントリー「また出てきた燃費グッズ」
この記事では直接商品名を表示せず”直訳すれば「広告の力」”と表現したが、このたび消費者庁から措置命令がでたのでもう隠す必要はないだろう。
AdPowerだ。
『同庁が表示の根拠となる資料の提出を求めたところ、両社からデータの提出はあったが、車の状態など試験環境が同一ではなかったとして、「合理的根拠が認められない」と判断した。』
要するに提出された試験結果は製品の効果か測定誤差かが不明である、ということ。
これに対し同社は
「深くおわびし、再発防止に努めたい」とコメントした。
現在同社のHPにおける表現は「静電気抑制放電効果により、エンジンへ吸入される空気の流れを変化させます。」と変更されており、燃費や馬力が改善するという表現が削除された。
実際に効果がある商品を開発するとか、販売を中止するということではなく、表現を変えることが再発防止策らしい。
この商品、21年8月のエントリーにある通り疑似科学でおなじみのゲルマニウムを含むテープをエアクリーナーボックス内に貼ることで静電気抑制し、空気の流れを良くすることでエンジンの燃焼効率を上げる、という仕組みになっている。
東海大学で試験を行い、静電気除去による空気の流れの改善が確認された、としている。
この試験結果が製品の効果なのか測定誤差なのかは筆者は判断できない。
しかし、それ以前の問題がこの製品にはあるのだ。
それは「エアクリーナーボックス内の空気の流れを良くすることで燃焼効率が上がる」という部分。
エンジンが回るとエンジンはエアクリーナーを経由して掃除機のように勢いよく空気を吸い込む。
エアクリーナーはエンジン内に入る空気のごみをとるフィルターで、当然ながらそれ自身が空気の流れを阻害している。その阻害量(圧力損失)は静電気による空気流量阻害とはけた違いに大きい。
カーメーカーのエンジン設計はそれを計算してエンジン内に必要十分な空気が送り込まれるように吸気システムを設計する。ある程度エアクリーナーが詰まったところで性能には影響しない程度のマージンを取っていることは言うまでもない。もし空気の流れをさらに良くすれば燃費が向上するなら、カーメーカーはもっと大きな吸気ダクトやエアクリーナーをつけるだろう。
そうしないのはすでに十分な空気流入が確保されているということに他ならない。
カーメーカーが燃費改善に費やすリソース(時間、人、金)は厖大なものがあり、かつてカーメーカーにいた身としては「そんなに間抜けじゃないぜ」といいたい。
しかしこの商品、アマゾンなどの評価は結構高い。その仕組みは上記のブログエントリーに詳しく書いた。
「パワーが上がるので軽くアクセル踏んだだけで加速する」というおまじないが実際に燃費を向上させているだけなのだが、この効果があるからオカルト燃費グッズが後を絶たずに現れることになる。
最近の車にはACC=アダプティブクルーズコントロールが付いている。これはドライバーがアクセル操作をしない。
アドパワーさんが製品に自信をもっているなら是非ACC使用下での燃費比較試験を実施してほしい。
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