ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

車は「走るスマートフォン」になんかならない

2018年02月07日 | ITS
このMonoistの記事のタイトルにも有るように、将来車はコネクテッド・カーとなり、走るスマートフォンになるのだ、という主張がある。

将来すべての車が通信でつながるということはありうる話だ。特に完全自動運転車はコネクテッドで管理されなければ成立しない。
だからといってコネクテッドだから車が消費者にとってのスマートフォンのようになるのか、というと非常に大きな疑問が残る。

コネクテッドカーの記事には、車両が通信でつながると新しいビジネスの可能性が生まれる、と必ず書かれているが、具体的なサービス内容については曖昧な表現になっていることが多い。この、「走るスマートフォン」という表現自体かなり曖昧だ。
この記事にある「スマートフォンが引き合いに出されるのは、使う人に合わせて自由にアプリを追加したり減らしたり、設定を変更したり、ソフトウェアのアップデートで性能を向上することなどを実現するためだ。」という文章が具体的に何を意味するのか、分かる人はいないだろう。

「走るスマートフォン」は車に乗ってるときしか使えないけど、「走らないスマートフォン」(要は、スマホ)は車に乗っていないときでも使える。どっちが有用かは言うまでもない。

車というのは移動手段でしかない。
消費者は移動手段に何の夢を求めるのか?と考えれば自ずと答えはわかる。必須となるのは音楽やニュース等の音情報と道案内。これらはすでに存在している。
レストランやホテル検索と予約なども有るだろうが、それはスマホでもできる。というか、実際のところそういうシチュエーションなんてめったにない。

すでにAppleのCarplay等、スマホ等の通信機器を車につなげることは可能になっている。しかしつながる相手はあくまで車のエンターテイメントシステムだけ。わかりやすく言えば車のモニターとスピーカーを借りているようなもので、これをコネクテッドとは言わない。それしかできないというよりは、それしかニーズがないということだと思う。
一方、今盛んに言われているコネクテッドカーは、その他の車のセンサー、制御系や故障診断系のシステムとつながる事を言っている。
それにより、運転状況により保険ランクを付けるとか、カーメーカーが故障分析をしたりECUを書き換えたりとか、スマホも使えないような緊急事態に自動的に救難信号を発進してくれるとか、盗難にあったときの追跡等ができるようになる。

しかしこれらは一部を除いてユーザーメリットではない。「走るスマートフォン」という表現にはかなり違和感がある。

自動運転やカーシェアの世界では車両管理や道路状況データ収集という意味でコネクテッドは必須となるだろうし、今でもコネクテッドカーがもたらす走行データは様々な分野で活用されている。
しかし、消費者目線でいえばコネクテッドカーにそれ以上の期待をする必要はない。