ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

高速1000円の効果

2009年03月29日 | 高速道路
この週末の高速道路利用車については、前年比では増加したものの言われていたようなゴールデンウィーク並みの混雑はなかった、ということのようだ。

おそらくは事前に渋滞について喧伝されていたので様子を見た消費者が多いのだろう。
高速道路料金で得する数千円と渋滞で損する3-4時間をはかりにかければ、時間をとるひとも多い。

また、面白いのは交通量はそれなりに増加したがSAの売上にあまり貢献していない、という新聞記事が多いことだ。増加したのは「節約志向」の消費者なので、あまり施設にお金を落とさない、もしくは渋滞が喧伝されていたので食べ物を準備して高速にのった、というような仮説が考えられる。

さて、これからどうなるのだろうか。

私はこの1000円施策がどこまで「巣ごもり消費」の人たちを外にひっぱり出せるのか、とても興味を持っている。
巣ごもり消費は単にお金を節約するために家でテレビを見ている、というような単純な話ではない。ブロードバンドの普及が「家にいても退屈ではない」という状況を生んでいるのだ。インターネットや携帯通信は、暇つぶし市場に強力に割り込んできた。無料で手に入る動画を見るだけで一日かかってしまうこともあるだろう。それ以外にも無料もしくは廉価で手に入る娯楽がたくさんある。

特にこうした巣ごもりは若い世代が中心になっている。
彼らは車を持っていないので、高速道路1000円施策はあまり関係ないかもしれない。高速が1000円なら車を買おうか、とまではいかないだろう。

来週からゴールデンウィークにかけての人出がどうなるのかが気になる。

高速道路1000円スタート

2009年03月28日 | 高速道路
今日から高速道路1000円乗り放題が始まったが、メディアが期待したほど?下りの大きな渋滞は発生していないようだ。
1000円走り放題を使う人は当然遠くへ行くわけで、早朝から出発しているのだろう。
あるいは、渋滞の様子見ということで今週の行楽は見送った人も多いかもしれない。
さらに、首都圏で近場へ行く場合は1000円走り放題の恩恵があまり受けられないので、渋滞を警戒して近場への行楽を控えてた人も多いと思う。

高速道路1000円は景気対策に一定の効果があると期待しているのだが、実際にどの程度車が動き、どの程度地方経済にお金を落とすのか興味がある。
先週のアクアラインの通行量純増は1万台強/日だったらしいが、これは意外に小さな数字に感じた。

夜の上り渋滞がどうなるのかが気になる。

ITS車載器はこれで終わったのではないか

2009年03月18日 | ITS
前のエントリーで指摘したとおり、ETCは品薄となり国交省はETC助成の期間延長を示唆した。そりゃそうだろう。
もともと1000円乗り放題でETCは売れていたのだから。
これで、いままで何らかの理由でためらっていた人たちの車にもETCが装着されることになる。

デザインがいいからとか、性能がいいからと言ってETCを買い替える人はいない。
逆にクルマを買い替える時に外して付け替える人も多いと思う。

一方、ETCが使っている通信方式であるDSRCを利用して安全運転支援をするというのがスマートウェイの構想で、そのためには情報をナビ画面などに表示できる専用の機器(ITS車載器)が必要となる。
今後、ETCはこの機能を付与したITS車載器に変わっていくというのがスマートウェイの描いている絵なのだろうが、ここまでETCが普及してしまっては、もはや絶望的だ。
安全運転支援という付加価値でETCの買い替えが発生するとは到底思えない。
(2008年には市販されるといわれていた)ITS車載器は結局実現せずに終わってしまうのではないか?

車載器が普及しなければインフラ整備も意味がない。
この手詰まりの解消はほとんど不可能に思える。

パイオニアと三菱電機がナビで提携か

2009年03月15日 | ITS
読売新聞(リンクはyahoo)はパイオニアと三菱電機がカーナビで提携と報じた。

パイオニアは経営資源をカーエレクトロニクスに集中させたばかりだ。
そのコアビジネスでの他社との提携ということは、かなり切羽詰まった決断だろう。

国内ではパイオニアは市販トップブランド。一方の三菱電機はOEM主体のメーカーで、この提携は相互補完ではある。さらに、両者はすでに一部で提携を行っている関係にある。

市販ナビに明るい未来はない。市販カーエアコンやカーオーディオと同じように、いずれは消えるビジネスであることは間違いない。

三菱電機にしても、次世代ナビの開発費と現在のOEMビジネスの規模を考えると他社との提携はありえる選択肢なのだろう。

この件はこれ以上の情報がないので、この辺にしておきます。

いまETCの助成は必要か?

2009年03月06日 | ITS
ETCによる高速道路1000円乗り放題政策のおかげでETCが売れている。各社ETCの生産は目一杯らしい。

そんな中で、高速道路交流推進財団はETC車載器新規導入助成を行う。

なぜこの状況でまた5250円の助成をする必要があるのだろうか?
このままでは、欲しくても品薄になってしまうように思うんだが。
(3月15日追記:やはりカーショップで売り切れが発生している)

あと、前にやった時と同様「2年以上2回以上の分割販売に限定する」というのもよくわからない。今、ETCって実売1万円位でしょ?

これはなにか深い理由があるのだろうか?

日経エレクトロニクス Tech-On! の記事から

2009年03月01日 | ITS
前回のエントリーにねこ氏から以下の情報をいただいた。
日経エレクトロニクスの記事「ITSにお金を払えますか?」

このブログが言い続けていることをA4一枚にまとめたような内容となっている。
極めて的確な記事だと思う。
ITSに関しては表面をなぜたような賛同記事が多い中、筆者の清水直茂氏には敬服する。

大きくいえば論点は2つ。
まずは官に船頭が多すぎる点。
国土交通省道路局(旧建設省)の「スマートウェイ」,同省自動車交通局(旧運輸省)の「ASV」,警察庁の「DSSS」,経済産業省の「ユビキタスITS」がそれぞれ異なる通信方式で覇権争いをしているように見える。

次に、消費者は安全には金を払わない、ということ。
まあ、これは一般論として確かにその通りなのだが、エアバッグやABSといった実効のある安全装置に対しては消費者はそのコストアップを受け入れてきた。結局は(少なくとも今の)ITSが提供する安全に対価を払うほどの価値がない、ということだと思う。

参宮橋実験に話を戻す。

スマートウェイは今回の大規模実験を「参宮橋実験における成果」の延長線としている。
しかし、どうしても理解できないことがある。
参宮橋実験が成功であったというのなら、なぜそれを首都高速の危険カーブで実用化していかないのか?実験が成功と評価されてもう3年がたつが、その他の危険カーブすべてに設置する、という話は聞かない。

実験はビーコン式のVICSで行われたが、これをDSRCに発展させたいということか?

なぜ?

ビーコン対応のナビゲーションは総走行車両の10%にしか装着されていないから?
でも成果があったんでしょ?
「10%でも、それらのクルマが通行速度のペースメーカーのような働きをして効果を生んだ」というのが正式見解のはずだが。

つまりはこういうことだろう。

1.VICSは警察庁系のインフラで、参宮橋ではこれを使うしか選択肢がなかった。でも国交省はETCに採用したDSRCを使いたい。
VICSを活用した形での拡大はそれを阻害する。

2.参宮橋で本当に効果があったのが路車間通信ではなく、路面補修や路側表示の改善であったことを関係者は本音では承知している。

いつも言うことだが、ゴールは事故を減らすことなんじゃないか。

最後に、清水氏の記事はこう締めくくる。
「ITSに関わる多くのエンジニアはこうした課題を百も承知。うんざりしながらも,歯を食いしばって開発を進めているのは,そこに将来の夢があるからだと思います。」
これもまさにその通りだろう。
交通事故死者を減らしたい、という夢を追いかけている技術者がたくさんいるのだ。
それを支援するのが国の仕事のはずなのだが、それがどうもかみ合わない。