ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

アップルCarPlayやGoogle Android Autoはなぜ普及しないのか

2019年02月14日 | ITS
スマホを車に接続するシステムとして、アップルからCarPlay, GoogleからAndroid Autoがリリースされて3年が経つ。
発表当時はあたかも画期的なものであるかのように受け止められ、一部のITライターによる「車のシステムがアップルやGoogleに乗っ取られる」というトンチンカンな記事も見受けられた。これについては当ブログでも全くそのようなものではないという趣旨のエントリーをしている。

そもそもCarPlayやAndroid Autoがつながるのは「車のシステム」ではなく単に「車のAVシステム」であり、車が乗っ取られることなどありえない。
さらに実は、CarPlayもAndroid Autoも「何かが出来るようになる」システムではなく、「何かを出来なくする」システムなのだ。

どういうことか?
スマホをそのままホルダーにさしてナビにすることは誰でもやっている。また、車両のオーディオとブルートゥースで接続してスマホの音楽を聞くことも多くなっている。
しかし、大画面化したとはいえスマホの画面を走行中にいじるのは運転の妨害になる。
そこで運転の妨害にならないようにアプリを改修した上で車両のディスプレイに表示するようにしたのがCarPlayやAndroid Autoなのだ。
運転の妨害になるようなコンテンツや操作は排除される。したがってメールやSNSの内容も文字では表示されず、音読のみとなるような工夫がされている。

結局のところ、車内で使えるスマホアプリはナビと音楽関係、ということになる。まあ実際運転中に使うのはその2つだけだろう。
実際、すでに3年が経つがそれら以外にキラーとなるようなコンテンツは出現していない。そういうコンテンツなんて物はないのか、マーケット的に旨味がないからアプリ制作側が動かないのか、おそらくはその両方だろう。

ナビと音楽であれば、前述のとおりスマホをホルダーに挿せば事足りる。BTで繋げば車のスピーカーから音が出る。SiriやGoogleアシスタントを使うことで音声操作も出来る。
逆にCarPlayやAndroid Autoをつかうと使用出来るアプリが制限されてしまう。CarPlayでは日本では評判の悪いアップルの地図しか使えない。また音楽ソフトはアップル、Google標準ソフト以外はSpotifyなどいくつかしか使えない。

CarPlayもAndroid Autoが開発された当初はスマホの画面は4インチ程度だったが、今は5-6インチとなっており車載液晶パネルとの差も縮まっている。
通常のユーザーはわざわざ車のAVシステムに接続する必要を感じないのではないか。

実際に私もAndroid Auto対応の車に買い替えたので試してみたが、やはり車載のナビ、オーディオに比べると使い勝手が良くないので結局は使わないと思うし、これ以上の進展も望めないのではないかと思う。

ETC2.0 従来型は使えなくなる、の嘘

2019年02月03日 | ITS
自動車関連WEBサイトの記事に、「ETC2.0はつけるべきか?将来従来型は使えなくなる」という趣旨のタイトルの記事をよく見かけるが、だまさせてはいけない。
典型的な例はこれなど。

これらの記事をみれば、かなり専門的な知識がない限り
「いずれ普通のETCが使えなくなるのであればETC2.0を買っておこう」と思ってしまうだろうが、それは事実ではない。
今販売されている普通(2.0ではない)のETCが将来使えなくなるということはないのだ。
少なくとも使えなくなるという理由では一万円以上高額なETC2.0を買う必要はない。

使えなくなるETCについては二つの違う話がある。
まずは、スプリアス問題。スプリアスとは設計上意図されていないが発生する電波で、2005年にそれの規制規格ができた。2007年以降すべてのETCはその規格を満足している。きわめて初期の一部メーカー製に非対応機が存在するが、ほとんどの人に関して関係ない。もちろん現在販売されているものには問題はない。これは2022年までに使えなくなるとアナウンスされている。

もう一つは新規に導入されたセキュリティ強化。
現在のETCにどんなセキュリティの問題があるのか具体的には情報を見つけることができなかったが、国交省は2017年にセキュリティのグレードアップを実施した。
現在販売されているETCは普通のETCも2.0もどちらもこの新規格に対応している。
これはETC2.0とは全く別の話なのだが、それを誤解する人は多いだろう。(国交省は意図的に誤解しやすい記事をライターに書かせているのでは、といったら邪推が過ぎるか?)

旧規格のETC,ETC2.0は2030年をめどに使えなくなるとアナウンスされている。まだ10年以上先の話なので、いまついているETCに関して慌てて何かをする必要はまったくない。

以下やや蛇足となるが。
スプリアス規制未対応品は2022年、新セキュリティ未対応品は2030年以降使えなくなるというが、これら旧規格のETCが本当に使えなくなるかは大いに怪しいと思っている。

未対応品であるか否かは製造番号やメーカーのWEBサイトを見ないとわからない。全く知らずにゲートを通ろうとする車両は決して少なくないだろう。今まで通れていたゲートがある日突然あかない、パニック、急ブレーキ。それが原因で追突事故などが発生する可能性は非常に高い。
未対応品であっても料金収受は可能であり、国交省や道路会社は事故発生とその責任のリスクを冒してまで使用できなくするだろうか?