ITSを疑う

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タイヤ・ホイール通販大手のオートウェイ、粗悪品(中国製?)販売の疑いで社長らを逮捕

2019年11月14日 | 雑記

タイヤ・ホイールの通販大手「オートウェイ」(福岡)が粗悪アルミホイールを販売したとして逮捕された。

タイヤ・ホイール通販大手のオートウェイ、粗悪品販売の疑いで社長らを逮捕

本件に関して特に内部情報を持っているわけではない。これから書く内容は完全に私の憶測であることをお断りしておく。

報道内容では『粗悪なホイールに安全基準を満たしていることを証明する「JWL」マークを偽装表示して販売した』とされている。
しかし同社は偽装について否定している。
私の経験からも、おそらくオートウェイが意図的にJWLマークを偽装表示したということはないだろう。粗悪品を販売した責任は問われるべきだが、「偽装表示で逮捕」は無理があるように感じる。

まず、JWLについて。これは日本の国交省が定めたアルミホイールの安全基準で、JISで定められた試験(主に負荷耐久試験と衝撃試験)に合格したホイールに刻印することができる。
ただしこれはあくまで自己認証であり、公的機関での証明を取る必要はない。メーカーが自ら試験を行い、合格すればマークを付けることができる。
これが刻印されているホイールであれば特段の証明なしに車検を通す事ができる。

ここでポイントとなるのは、オートウェイはメーカーではなく販売業者であるということ。
単純にメーカーから定番品を仕入れただけなのであれば、販売業者に偽装の責任はない。もちろん粗悪品を見抜けなかったという責任はあるが。

しかし、オートウェイがメーカーに専用品を発注していたとするとちょっと話が違ってくる。
オートウェイは販売者ではなく、メーカーに製造を委託した製造者ということになる。その場合はJWL試験に本当に合格しているのか、また実際の量産品は試験品と同じ品質であるのかについての責任をとらなければならない。

今回のホイールがどういうものなのかわからないが実際のところ前者と後者の区別は曖昧なのだ。アルミホイールの金型は案外安いのでメーカーはお客の要望による専用品を作ることが多い。それはお客に対するOEM供給なのだが、お客の立場からすればメーカーから仕入れただけで、製造委託してホイールを製造したという認識にはならない。

そもそも日本で販売するホイールはJWL規格品であることが前提となる。オートウェイもその前提でメーカーに発注しているだろう。
あえて合格しないホイールを作らせ、それにJWLを刻印するということにインセンティブはないと私は思う。

オートウェイはJWL規格ということで発注した。しかしおそらくJWL試験に立ち会っていないだろう。試験に立ち会わない限り試験結果の偽造は見抜けない。場合によっては試験成績書の確認もしてないかもしれない。
もしくは、試験品と量産品でアルミの材質変更や熱処理工程の省略等が行われていたとしても、実物を試験しない限り見抜けない。

さて、真の問題はここから。

中国の激安アルミホイールについてるJWLマークなんておまじないのようなもの、というのは業界では知られた事実。
専業のオートウェイがそれを知らないはずはない。JWL試験をしたら合格しない可能性があることはうすうすは知っていたのではないか、という憶測ができる。
であれば、積極的に偽装してないとしても責任は免れない。

ホイールは重要保安部品。なぜそんないい加減な事ができるのか?
実際には粗悪ホイールで事故が発生したという話はあまり聞いたことがない。通常走行であればJWL基準を下回っていても問題ないのだ。
でも高速道路での落下物乗り上げや縁石乗り上げ等では破損する恐れがある。事故でホイールが破損し車がコントロールできずに事故を大きくしてしまうことは十分にあり得る。
しかしそうしたケースでは最初の事故が問題とされ、それで破損したホイールの責任は問われることがない。

そんなことで現実的にはJWL規格を下回るホイールを販売しても大きなリスクはない、ということなのだろうが、とんだツケが回ってきてしまったようだ。
いずれにしても中国でものを作る場合はよほど注意しないといけない。(と中国の工場にいる私が言っております)


デジタルラジオi-dioがやっぱりidiotだった件

2019年11月07日 | 中国生活

6月にエフエム東京のデジタルラジオ放送i-dioの闇について書いたが、やはり事実はそのとおりだったようだ。エフエム東京は10月8日、正式に事業撤退を表明した。

立ち上がり時点で当ブログも含め、ほとんどの人が成功するとはとても思えない、と考えていた。なぜそのような事業にエフエム東京は邁進してしまったのか?

このデジタル放送はV-Low帯という電波帯域を使っている。この帯域はテレビ放送のデジタル化によって空いた「空き地」。
電波帯域の利用は総務省が管理している。テレビのデジタル化にあたっては、従来のテレビが使えなくなるなどの経済的負担を家計にもたらしたことから、「空いた帯域を有効利用する」ことは国家政策としての大命題になっていた。

総務省はマルチメディア放送に関して様々な絵を描き官民の検討会なども行われたようだが、移動体通信の3G,4Gという進化に対し一方通行の放送にメリットがあるわけもなく、実際にはほとんど活用されていない。
結果としてアナログ停波に対する批判を交わすために、だれも否定できない「安全、安心」に振り分けたのだが、例えば交通安全ということでトヨタが始めた「ITSコネクト」に関して言えばITSコネクト協議会のHPはもう一年以上、会員名簿改訂以外のニュースリリースがない。

マルチメディアということでは携帯端末向けマルチメディア放送ということでDOCOMOがNOTTVという事業を行ったが、これも見事に失敗している。
モバHOという携帯向け衛星放送がすでに失敗に終わり、かつ事業スタート前にはアメリカで同様の事業を進めたMediaFloというサービスが撤退を決めるという、最初から誰がどう考えても成功する見込みがない事業だった。

DOCOMOという巨大企業にとってはこの失敗は大した痛手ではないだろう。これはどう見ても総務省に対する「お付き合い」だ。お付き合いという意味ではトヨタの「ITSコネクト」もそうだろう。

これらの失敗を知っててどうしてエフエム東京はデジタル放送に投資をしたのだろうか?
DOCOMOと同様に国策に協力したということなのだろうか?

これは大いに疑問が残る。今、ラジオ放送局は楽な商売ではない。とても大きな投資ができる状況ではなかったはずだ。総務省との兼ね合いがなかったとは言えないだろうが、監督官庁に対するお付き合いとしてはその代償が大きすぎる。
もしかしたら経営者は放送事業の将来にたいする大勝負だと考えたかもしれないし、災害ラジオの需要を取り込んで事業の柱にしようと考えたのかもしれない。

とはいってもこれは無謀だったし、少なくとも一般コンシューマー向け事業が成立しないことは誰の目にも明らかだった。


なぜ止められなかったのだろう。