ITSを疑う

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車の価格は2030年には5分の1になる?

2020年11月11日 | 自動運転

日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は11月10日、第22回「世界経営者会議」において、「2030年に自動車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と述べた。
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要約すれば、
1.カーメーカーがハードウェアで勝負する時代は終わり、ソフトが重要になる。
2.使う部品は専門のメーカーに任せることになる。専門メーカーがシェアを取ればコストが下がる
3.今はバッテリーの価格が高いから車の価格も高い。しかしEVのバッテリー価格は技術革新でまだまだ下がる
4.2030年にはEVのシェアが50%を超える。その頃には車の価格も5分の1くらいになる。

なぜバッテリー価格が下がると車全体の価格が5分の1になるのかさっぱりわからない。駆動及び駆動制御は車の根幹ではあるがあくまで一部だ。
現実的には「2030年時点でEVはガソリン車並の価格程度まで下がる可能性がある」くらいのことだろう。

永守会長は現在カーメーカーが部品を作っていると思っているのだろうか?カーメーカーが作っているのはエンジンと骨格、板金パネル位のものでその他の部品はすべて専門のメーカーが作っている。その部品メーカーも相当な努力でコスト低減を重ねており、簡単にコストが下がるわけがない。言い間違いであると信じたい。

ただし、そうは言っても今後車の価格が劇的に下がる可能性がないわけではない。
それをもたらすのはEVではなく、自動運転だ。

自動運転は先進技術が必要だからむしろコストが上がるのでは?と思うかもしれない。なぜコストが下がるのか?

そのポイントは車という商品のポジショニングが根本から変わる可能性にある。それはどういうことか?

現在の車は人間が運転することを前提に作られている。自動運転の車には要らない物がついている。もちろんハンドルやアクセルと言った操縦装置が要らなくなるが、話はもう少し複雑なのだ。
わかりやすい話が最高速度。自動運転車は速度違反をしないから、制限最高速度を超える性能を保つ必要がない。自動運転車はカーブの手前で安全な速度まで減速するから、コーナリング性能等を考える必要もない。自動運転車は原則ぶつからない車だから、衝突安全を考えなくてもいい。
人間が運転しないから、乗り心地や騒音以外の「官能性能」、加速感とかハンドリングとか、は一切考慮しなくていい。

そして、もう一段階進むと車は輸送機器になる。
自動運転車は呼べば来る、好きなところで降りていい。自家用車よりはるかに便利なので自家用車を持つという発想がなくなるかもしれない。
そうなると車という商品は公共財のようなものになる。ブランドやスタイルには誰も関心を持たなくなる。電車やバスと同じ。

そうなるとメーカーとしても差別化の意味がなるなる。すべての車を同じにして大量生産し徹底的にコストを下げる方向になる。部品の共通化、大量生産化が進み、また差別化に使われていた装飾的な部品のコストも不要になる。

そこまで行けば5分の1も夢ではないかもしれない。
そんな世界は私は嫌だけど。