ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

補正予算凍結

2009年09月19日 | ITS
民主党は不必要な補正予算を凍結し数兆円を捻出するとしているが、250億円の支出を計画しているITS路側機の設置はどうなるのだろうか。
この計画が補正予算なのかどうかも知らないのだが、私は全く執行する価値のない予算だと思う。

先日のエントリーでは、「もうETCなんて使わないんでしょ?」というスタンスでこれを批判したが、本質はそこにはない。
このシステムに250億円をかけるに値する「交通事故防止」の実効がないのだ。

おそらく、補正予算凍結の査定に対して
「交通事故防止に役立つ」「世界で最も進んだ」「日本が誇る」ITSの推進である、と官僚は説明するのだろう。安全を言われると反論しにくい。

しかし、その実態がとんでもないものであることを私はこのブログでずっと言い続けている。
・DSRC路車間通信の交通事故防止に対する寄与は極めて限定的である
・しかし、首都高速参宮橋での実証実験の結果を恣意的に加工し、実効ありと宣伝してる。はっきりいって「ねつ造」に近い。
・国民アンケートでも肯定的、といっているが「ないよりはあった方がいい」というレベルの回答を肯定にカウントするような、これまた恣意的なもの。

ETCとそのセットアップや機器の利権に関する話は結構皆さん大好きで、よく引き合いに出されるが、そんなことはもう忘れた方がいい。ETCや料金所システムはほぼ普及が終わりつつある。
利権はすでにそこから派生する次のステップへ移行しようとしている。それがITS車載器であり、ITS路側機なのだ。これが本当に交通事故死減少に寄与するなら、(たとえ利権がからんでいたって)250億円の執行に私は異論はない。

どう考えてもこれには実効がないのだ。

250億円は大きな数字だ。
民主党には「交通安全」「IT」の美名に惑わされず、しっかりその内容を理解し、判断してほしい。

森永卓郎氏の高速道路無料化論

2009年09月19日 | 高速道路
日経BPのWEBサイトに高速道路無料に関する森永卓郎氏のご意見が掲載されている。

料金所で働く収受員の人たちを暴力団員に例える無神経さにはあきれるが、それ以上におどろいたのは高速道路渋滞に関するこのくだり。
1000円無料政策期間に自分で高速を走ったということで、こう言っている。

「だが、地方はそうではなかった。わたしはずいぶんと各地を走り回ったが、どこもがらがらだったのである。この目で見たから間違いはない。」

渋滞の懸念について、だれも地方のことなんて云っていない。盆休み期間中には地方でもそこそこは混んだはずだが、そこまで渋滞していたら首都圏は完全にマヒしていただろう。「この目で見たから間違いない」なんていわなくたって、だれもそれには異論はないよ。

もともと渋滞がある道路の渋滞がさらに悪化すると懸念しているのだ。普通の人は。
こんな関係ない話を持ち出してこの問題を片づける神経は理解できない。

環境についても、高速道路は一般道路よりも燃費がいい、といしかいってないけど、無料化による通行量の増加の中身をどう考えているのだろうか?
通行量の増加は以下の3つに分けて考えなくてはいけない。
a.一般道からのシフト(環境にプラス)
b.公共交通機関からシフト(環境にマイナス)
c.新たに創出される通行(環境にマイナス)

この人はaのことしか言っていない。

最後に、公共交通機関からのシフトをどうするか、について「これは次元の違う問題であり、論点を混同してはならない」と簡単に片付けているけど、どう次元がちがって、なんで同時に議論するべきではないのかがまるでわからない。
多分、フェリー会社の経営が成り立たなくなる、というレベルの事しか頭にないのだろうが、鉄道などのCO2排出で有利な移動手段からのシフトは同じテーブルで得失を検討するべき案件だろう。

山崎養世氏 日本列島快走論

2009年09月17日 | 高速道路
山崎養世氏の高速道路無料化「日本列島快走論」をゆっくり読んでみて驚いた。

このWEBサイトに掲載されている内容はおそらく6年ほど前にかかれたものなのだ。
道路公団がまだ存在し、日本の総理大臣は小泉さん。だから、高速道路の渋滞の30%は料金所に起因する、というのは間違っていない。
ちゃんと読めば、「2003年11月の衆議院選挙において民主党のマニフェストに採用されました」とか、小泉首相が掲げる「道路4公団の民営化について」などの表記があるので、気が付くべきだったのだが、まさかそんな古新聞のような内容をそのまま掲載しているとは夢にも思わなかった。
恣意的にやっているのだろうか?上記のページの下の方にあるWhat's Newは更新されている。

ETCの普及で、料金所渋滞は2007年にはほぼ消滅している。
しかし、山崎氏は最近でも「渋滞の原因の30%は料金所にあると言われている」と発言しているようだ。
(8月17日の報道ステーション)
実際に私はそのテレビを見ておらず伝聞なのだが、9月13日付西日本新聞にもそう発言された、という記事が載っているので事実なのだろう。

わざと言っているとしたら悪質だし、料金所渋滞の現状を知らないとしたら、その程度の知識でよくもまあ高速道路について語れるもんだな、と思う。

どちらにしても私はこの人を信用できない。

これってマジ?民主党高速道路無料化発案者の見解

2009年09月13日 | 高速道路
お恥ずかしいことに今日までしらなかったが、民主党が公約に掲げる高速道路無料化はシンクタンク「山崎養世(やすよ)事務所」(東京)代表、山崎養世氏の発案であるという。

同氏のWEBページ 日本列島快走論のページ

Q&Aを読んでみたが、ちょっとどうなのかな?と思う内容がある。

渋滞の原因の30%は料金所だ、といっているが、何年前の話をしているのだろう?私の記憶が正しければ、30%はETC普及前の数字じゃないかと思うのだが。
ETCにより料金所渋滞はほぼ解消し、今の渋滞はサグや合流、出口渋滞によるものが主体のはずだ。現在「料金所で渋滞」というケース、例えば永福料金所などは合流に起因する。私の勘違いだろうか?

料金所がなければ出入り口を作りやすくなり、地域経済が活性化する、といっているが、出入り口を作ること自体、周辺道路の再整備が必要でそれに料金所以上の大きなお金がかかることを忘れていないか?生活道路化ということで短区間の利用がかなり増加するだろうが、出口をよほど整備しないと渋滞の原因になる。
出入り口を増やすこと自体は私は基本的に賛成だが、無料化しなければできないものではないだろう。

また、サービスエリアやパーキングエリアを民間に開放することで地方に新たなビジネスが生まれる、というが、従来国道沿いのビジネスが崩壊しプラマイゼロになるのではないのか?その地域へ落ちるお金の総量がなぜ増加するのかの説明がない。
インターチェンジは宿場町のように栄える、というけど、給油所・モーテルとファーストフードくらいのものではないか?少なくとも欧米の無料高速道路におけるインターチェンジ周辺はその程度のものだ。

さらに、高速道路が公共交通機関へ及ぼす影響とCO2排出量の関係についても「パークアンドライドを推進する」とか、「モーダルシフトを進める」というような今まで散々言われてきてできなかったような話に始終していて、明快な答えは示されていない。また、高速道路が無料化すれば地方への移住者が増え、したがって鉄道需要も増加する、というロジックはどう考えてもこじつけだ。

論旨のすべてがダメだというつもりはないけど、基本的なところで疑問が残る内容だと思うのだが。

高速道路無料の裏側

2009年09月04日 | 高速道路
政権交代で誰もが高速道路は無料になると思っているが、どうやらそうでもないようなのだ。
私も「段階的に無料化を行い、2年後には首都高速、阪神高速以外は無料になる」と聞いていたが、どうやら民主党は「そんなことは言ってない」というスタンスらしい。
J-CAST NEWS記事
この記事の中で本当にびっくりしたのは次の下りだ。

----引用----
馬淵議員はこう釈明した。
「有料になる高速道路がどこかは、地域の人にとって重要だから、具体的な路線名まで選挙前に明確にするのはどうか、という判断が(党内で)働いたのかもしれません」
---ここまで----

要は、「ある区間は無料にすることができないことは分かっていたが、その区間を利用する人が投票しなくなるから隠していた」と言っているのだ。

コンプライアンス上こんなやり方が許されるとは到底思えない。
もしこれが広告なら完全にJAROやら公取から排除命令を受けている。

民主党はきちんとした説明をするべきだと思う。

この期に及んでITS車載器普及をいうスマートウェイ

2009年09月02日 | ITS
この期に及んでもスマートウェイはITS車載器を推進するらしい。

去る8月28日、スマートウェイは連絡会を行い、250億円の予算を計上し全国の高速道路に1000基のDSRC路側機を設置すると発表し、あわせて車載器メーカーやカーメーカーに「ITS車載器」の普及拡大を要請した。
2010年春から首都高、阪神高速で情報提供を開始し、10年度中に本格サービス開始を開始する。また、サービス開始後5年間で「ITS車載器」1000万台の普及を計画しているとのことだ。

本気か?

政権交代をうけ、すでにETCの売れ行きは激減している。2年後には無料化といっているんだから当然だろう。
ITS車載器は通常のETCよりも高くなる。一方で、肝心のそれによる運転サポートの内容は「交通情報」であるが、果たして対価を払う価値のあるものになるかは依然として不透明だ。

スマートウェイは絵空事で仕事を進めているのではないか。今の状況下で、ETC、しかも高額商品が本当に1000万台も普及すると思っているのだろうか?
せいぜいトヨタがお付き合いでレクサスに標準装備して終わりになるのが関の山じゃないのか?

それともまさか「ETCがなくなってもITS機能だけで車載器の需要は存在する」と思っているのだろうか?

どうも本気らしい。
同日付けで、ETCセットアップ業者に対してITS車載器セットアップ事業者募集の案内がでている。

実際のところは、メーカーに専用路側機・車載器を開発させてしまった都合止められない、というのが本音なんじゃないか?
頭のいい人たちが、今後高速道路無料化でDSRCがどうなるか予測できないわけがない。

要するに、なにがなんでも路側機一基2500万円x1000基は設置したい、だから民主党に口出しされる前に後戻りできないとこまで進めたい、ということじゃないの?