ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ゴルフ人口、減少の一途

2019年07月26日 | ゴルフ

2017年レジャー白書によれば日本のゴルフ人口は550万人。ピーク時から比べると実に1/3になっているという。しかも現在のコア人口は60代~70代なので、この先も減少は避けられないだろう。

ゴルフに限らず、スキー等お金のかかるスポーツの人口は減少している。主たる理由は若い世代の可処分所得減少によるものであることは間違いない。

若い世代がゴルフに参入しないのは、その金銭負担が高い障害になっている。道具だけでも10万円以上、プレイ費、交通代、練習台等を考えたら簡単に始めることができないのは明白だ。

それ以上に障害となっていることにゴルフはすぐに上手くならない、というのがあると思う。
最初のうちはコースを走り回り150も叩いてちっとも面白くない。むしろ苦行だと思う。迷惑がかからない程度まで上達しても、100を切るまでにはまだかなり時間がかかる。
ゴルフはスキーや団体スポーツと違い、個人の成績がスコアで厳然と示される。友人や同行者より10打も悪ければやっぱり面白くない。

ということでやめてしまう人はかなり多い。中古でもお下がりでも自分のクラブをもって始めた人全員を分母にすると、一度でも100を切る人は3割、90を切る人は更にそのうちの3割、とも言われている。

我々昭和サラリーマンは、そんな状況でも会社のコンペとか、接待ゴルフとか、上司との付き合いとか、頑張ってゴルフを続けなければならない環境にあった。だから恥をかかないように練習もしたし、結果たまに100を切れるくらいから面白くなってくる。

今はそうした圧力はないので、仮に経済的な制約がないとしても多くの人は面白くなる前にやめてしまうのではないか。
また、ゴルフのプレイ代はかなりリーズナブルになってきているが、それでも家族をないがしろにして実質休日をほぼ一日費やす、というのも今の時代にはマッチしていない。

どう見ても、この先ゴルフがまた勢いを取り戻すとは考えられないし、ゴルフ場が絶望的に供給過多になるのも間違いない。
しかし、日本のゴルフ場はそもそも会員システムだったので、簡単には廃業できない。独立系ではかなりのゴルフ場が赤字経営となっているはずだ。これからもっと厳しくなる。

個人的には、サービスは簡素化しスループレイで拘束時間を短くし、服装やらなんかやらも難しいことは言わない、カジュアルな方向にしていかないと将来はないと思う。


杞憂に終わりそうなEVの静音(歩行者事故)問題

2019年07月16日 | ITS

私も以前のエントリーでEVの静音による危険性と日本の行政の対応の遅さを批判したことが有る。
結果として2016年に法制化がされ、2018年以降の新型車、2020年以降は継続販売車も「車両接近警報装置」の装着が義務化された。日本初のEV、i-MiEV発売から実に10年近く経過している。

それだけ熟考を重ねた法改正であるが、皮肉なことにどうやら静音であるEVによる歩行者との接触事故はほとんど問題になるレベルでは発生していないようだ。
日本で話題になることもないし、イギリスではDepartment for Transport(運輸省に相当)から以下の報告書が出されている。

Assessing the perceived safety risk from quiet electric and hybrid vehicles to vision-impaired pedestrians
(視覚障害の歩行者に対する静音EV,ハイブリッド車によるリスクの評価)

要点だけをいえば
・EVとエンジン車で歩行者との衝突事故の発生率に差はない。
・EVの総事故に占める歩行者との衝突事故の比率はエンジン車より高いが、主にシティコミューターであるからと推定。
・徐行(7-8km/h)時ではEVはエンジン車より音がしない(マイナス1dB)だが、20km/hを超えるとロードノイズによりEVとエンジン車の差はなくなる。(日本の法規も警報音発生は20kmまで)

つまり、EVが音がしないゆえに歩行者が気が付かない状況というのは徐行時に限られ、徐行なので重大事故に発展しない、ということなのだろう。

さらに報告書の指摘では、最近のエンジン車は静音化が進んでいるため徐行時でもEVと騒音に差がないものもあり、今後さらにエンジン車の騒音が改善されるのであればこの問題はEV特有のものではなくなる、としている。

この報告書はイギリスのものであり、おそらく市街地における人/車、自転車/車の混交は日本より少ないと思われるが、前述の通り日本においても社会問題になるレベルにはなっていない。なので、おそらくEVの静音に起因する歩行者事故というのは当初心配されたレベルではない、ということのようだ。

但し、少なからず問題は有る。EVは加速時でも音がしないため、徐行から加速に移った際にそれに気が付かなかった歩行者をはねる危険性が有る。なので法制化が必要であったことは間違いない。また人車混交でも徐行をしない安全意識の低いドライバーであれば車の種類に限らず危険であり、これはEVがどうこうというより人車分離というインフラの問題だろう。




日本の論調はほとんどトンチンカンなので中国のキャッシュレスと日本のキャッシュレスに関する考察をまとめておく

2019年07月11日 | モバイル・ウエアラブル

もう多くの人はご存知だと思うが、中国ではスマホQRコードによるキャッシュレスがこの数年で急成長しているわけで、ハイテクにからきし弱くやっとスマホを使い始めた日本の50代駐在員のおじさんたちもほとんどキャッシュレスマンになっている。多分日本にいたらコンビニでスイカも使わないような人たちなんだけどね。

これに対する日本のメディアや評論家、有識者の論調は判で押したように以下のポイントに集約されているんだけど、これがまあトンチンカン。

【よくある論調A】 中国でキャッシュレスが急速に発展したが日本では不要な理由

1.中国は偽札が多く、貨幣に対する信頼がないからキャッシュレスが急速に広まった。

2.中国はスリや強盗が多く、現金を持ち歩くのが危険

3.日本のようにコンビニにATMがなく、現金を引き出すのが不便

4.日本では以上のような不便がないからキャッシュレスは必要ない

正直なところ店舗決済に限れば利便性は現金にまさるものはないわけですよ。すべての商店で使えるし、お釣りはお店が計算して渡してくれる。
スマホを忘れても大丈夫だし、電波やバッテリーの心配もない。キャッシュレスは「財布忘れても大丈夫」だけど現金は「スマホ忘れても大丈夫」。どっちもどっちだ。

ではなぜ中国で急速に発展したのか?上記の1~3は、実は在住者の生活感からは全くピンとこないんですね。
確かに偽札は有るけど決して頻繁に遭遇するわけではないし、スリは確かに日本より多いけどそれも理由ではない。スリが怖いのは現金よりパスポートやカードでしょ。
ATMは町中なら銀行が沢山あるからむしろ日本より探しやすいかもね。違う銀行でおろしても手数料取られないし。

急速に発展した理由はまったく違う理由なんです。微信、支付宝という2つのキャッシュレス決済プラットフォームが通販決済、自転車、モバイルバッテリ、マッサージ等のシェア、自動販売機、タクシーの配車から支払い、レストランの予約、注文から支払い、高速道路支払い、駐車場、出前の支払い等、すべての生活の場面で利用できるから。
こればっかりはここで生活してみないとわからないでしょう。

はっきりいって店でのレジ支払いはその生活の中の一部分でしかないんです。おそらく、日本の論調はそれを実感として理解できていないし、XXPAYが乱立するのもそこがわかってないから。
乱立するXXPAYは間違いなくどれも発展せずに終わるし、便利どころか消費者にとっては面倒なものでしかない。ポイントカードと同じ感じだよね。あれ、ビックカメラはポイントカード持ってたっけ?ってなもんで。

【よくある論調B】 日本ではQRコードは普及しない、もしくはフェリカのほうが優れている

1.せっかちな日本人はスマホでソフトを立ち上げる手間を容認しない。まだレジで混乱する。

2.すでに交通カード系フェリカが先行しており、決済スピードやセキュリティはこの方が優れている。

まず、QRコードは手間がかかるというのは実はそうでもない。ホーム画面のショートカットから指紋認証であればあっという間。(実際中国人もかなりせっかちだよ)
レジでも混乱はある程度たてば問題なくなる。実際中国ではすでに確実に現金払いやカード(PINインプットとサイン)のほうが時間がかかる。但し、店によってアプリとその操作が違うんであれば確かにそのとおり。あれ、これはどこ押すんだっけ?ってなっちゃう。だから乱立XXPAYはだめなんです。

交通カード先行は確かに事実だし、決済スピードも速い。でも小売店への機器導入が進んでいないのも事実。交通系カード事業者が腹をくくって読み取りレジをばらまけば間違いなく日本はフェリカのキャッシュレス国になるけど、どうやら交通系の各社さんにはその気がないようで。(これ本気でやったら相当なビジネスチャンスだとおもうんだけどね)
さらに言えば、それをしたところでレジ支払い以外への拡張が期待できない。繰り返すけど、キャッシュレスはレジだけの問題ではないんです。

QRコードならパソコン画面から支払いできるが、フェリカはできない。シェア自転車全部にフェリカリーダーを付けることもできない。読み取り機器投資がある以上は完全な生活に溶け込むエコシステムの構築はできない。

中国のキャッシュレスは生活のすべての局面にシームレスに入り込んでいる、という視点がないとまるでトンチンカンな議論になっちゃう。


高速道路からの道の駅への一時退出「賢い料金」利用状況

2019年07月09日 | ITS

コメント欄で情報いただいたので、国交省が6月28日にリリースした報道発表資料(PFDへのリンク)を貼っておく。

高速道路からの一時退出を可能とする「賢い料金」の実施について

高速道路にはSA,PAの間隔が25キロ以上離れている箇所が約100区間存在し、国交省では過労運転防止や給油の利便性向上の観点から追加料金なしに道の駅への一時退出を可能とする施策を進めている。その試行の検証報告だ。

さて、これだけ読むと大変結構な話に見える。しかし、何故かこの施策の恩恵にあずかれるのはETC2.0装着車に限定されているのだ。

SA,PAの間隔が25キロ以上離れているのは道路会社の責任であり、それが「良好な運転環境の実現(資料からの抜粋)を阻害」するのであれば、当然すべての車両を対象とするべきではないのか。この報道発表資料には、ETC2.0に限定する理由はどこにも書かれていない。

ETC2.0は通常ETCより1-2万円高額だ。最近はメーカー標準装備が2.0になりつつあることから徐々に増えてはいるが、それでもまだ圧倒的に通常ETC装着車が多い。大型車(トラック)においては、ETC2.0に対して料金優遇(大口割引率関連の優遇)を行ったことから買い替えが進みかなりの装着率になっているが、乗用車ではおそらく10%程度だろう。

資料を見ても、平日の利用は圧倒的に大型車が多い。まあ、多いと言ってももっとも利用が多い道の駅で日当たり38.9台(大型+小型)。時間あたりすれば3台程度でとても活発に利用されているとは思えない。休日は観光の乗用車が多くなるが、一部を除けばそれでも日当たり10台程度。

対象をETC2.0に限定しているから利用が拡大しないのは明らかだろう。とても「賢い料金」となのるようなものではない。

ETC2.0の当初の触れ込みでは、2.0は通行経路が記録されるからこうしたことが実現できるのだ、といっていたが、それは実は嘘。ETC2.0は個人情報保護の観点からエンジンを切るとその前後の位置情報は破棄される。だから道の駅に立ち寄ったという情報は残らない。実際は道の駅にポストを設置し、それで判定している。このポストは通常ETCでも通過情報を判定できるから、単に「わざとETC2.0に限定している」だけなのだ。

なぜ国交省はそんな事をするのか?

ETC2.0は国交省が鳴り物入りで推進してきた「ITS施策」の目玉だが、なかなか普及しない。実際に価格が高いだけで利用者にはほとんどメリットが無いので普及しないのも当然なのだ。しかしETC2.0は走行経路の情報が手に入るため、国交省としては普及させることで交通ビッグデータを収集したい。その中で考え出されたのが、この優遇策なのだ。

報道資料にふくまれるアンケートもこの設問でネガティブな回答になるわけはない。便利だと思って利用したユーザーは便利だと言うに決まってる。典型的な手前味噌アンケートだ。アンケートをとるべきは通常ETC装着ユーザーへの利用意向だろう。

繰り返すが、目的が「良好な運転環境の実現」であるならすべての利用者に開放するべし。