ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

自動運転にまつわる様々な誤解

2015年10月29日 | 自動運転
東京モーターショーで日系各社が自動運転についてアナウンスをしている。トヨタ、日産が2020年までに高速道路での自動運転車を発売するというような発表もあり、Googleやドイツ車に対して日本のカーメーカーも負けていない、といような報道も目にする。

しかし、実際高速道路での自動運転は今ある技術で実現可能なのだ。なぜなら信号も交差点もない自動車専用道路だから。
Googleがやっている一般道での自動運転とは条件が全くに異なる。信号、交差点があり、自転車も走り、子供も飛び出すような環境下での難易度ははるかに高い。

実際、自動運転には大きな壁が二つある。一つはこの一般道での自動運転。
もう一つはドライバーがいらない完全自動運転。
完全自動運転の場合は事故の責任は自動車メーカーが負わなければならない。
自動車メーカーが何十万台も販売する車両のリスクを担保するとしたら、制御は目いっぱい安全に振るしかない。自動運転車は絶対にぶつからない車であっても、ぶつけられない車ではない。追突事故を除いては、必ずなんらかの過失割合が生じる。
例えば、絶対に止まれない目の前に子供が飛び出した場合でも、子供が飛び出す可能性を予見して徐行するべきだったということになる。
ということは自動車会社の立場なら自動車専用道以外を完全自動運転で運行しろと言われたら常時徐行しかできない。

これは一例で、実際の交通はリスクを運転者が自ら担保しながら見込み運転をすることである程度の円滑性を保っている。自動会社はそれができないから、一般道での完全自動運転は交通流を相当阻害することになる。

自動運転のハードルは法整備だとする報道が多いが、そんな単純な話ではない。法は事故があったらメーカー責任としか言わないだろうし、その前提でリスクを背負うメーカーはいない。

もしかしたら2020年にはロボットタクシーを走らせると言っているDeNAは敢えてリスクテイカーとなる覚悟なのかもしれないが、メーカー責任で事故が起きた場合の大変さをまだ知らないだけなのではないか。

バーなしETCゲート実験

2015年10月29日 | ITS
国交省は埼玉で遮断バー無しETCの実験を行うと発表した。これに関してはどういう勘違いなのか、ほとんどのメディアが渋滞対策だと報道したが、バー付きETCで渋滞したという話は聞いたことがない。そう思っていたら高速道路に造形の深いモータージャーナリスト清水草一氏も同じ疑問を持ったようで乗りものニュースできっちり解説していた。国交省はそんなことを言っておらず、最初に言い出したメディアの勘違いらしい。

この記事の中で清水氏はバーなしETCについて、わざわざ費用を投じて変更することに懐疑的な意見を述べられている。

しかしこれは私の見解は多少異なる。

そもそもETCは100km/h程度までなら課金情報の読み取りには全く問題ない。バーは読み取りのために速度を落とすのが目的ではなく、安全と不正通行防止のために設けられた。特に道路会社は過去偽造ハイウェイカードで相当痛い目をみている。その根本的原因は他国に比べ高い通行料にあるのだが、いずれにしても日本の高速道路は他国のようなバー無しにして違法通行はカメラで取り締まるという方法を取らなかった。
これについてはこのブログで何回か指摘した。ノンストップにするならバーをなくす。バーを閉めるなら入り口出口に設置して一台一台通過されるような仕組みにしないとこれは構造的に追突事故を起こすのは明らかだ。故意に突破する連中はわかってやるので止まらない。むしろ挿し忘れのような過失の場合、びっくりして急ブレーキをかけ、後続車が追突するというような事が起きる。実際かなり起きていて、首相の護衛車も最近追突をしている。

なので、バーなしにした方がいいという議論は当然あったと思う。そこにETC2.0を絡ませようとしたのだろう。少なくとも最初はETC2.0ならバー無し料金所通過ができる、という構想があったと想像する。なぜなら今年のはじめのメディア報道ではETC2.0の利点として挙げられていた。
しかし、それはどう考えても無理。2.0以外の車の侵入を防ぐことなんてできないから、通常ETCでも当然課金するしかない。ということは全然ETC2.0 専用ではない。
といことでETC2.0の売り物にするという考え方は消え、ETC全体としてバー無しを検討することになったのだと想像する。

ETC利用が9割を超えているから、ゲートを車線の真ん中に持ってくる、そして改造にあたり車線を広くし、バー無しにする。これは安全な通行を考えれば明らかに改善となる。バーを無くしたほうが事故は減る。また、制限速度を設けても通過速度は速くなるので、側面に接触した場合の事故を考えれば車線を拡張することが望ましい。
費用対効果を精査する必要があるが、間違っていないと思う。

問題は違反通行者。実験では入り口だけなのでここを突破しても出口で引っかかってしまうが、将来全面的になくすとしたら不正通行対策が必要になる。
私はオービスのようにカメラで違反者に通知書を送ればいいと思う。過失の違反者救済のため、すぐ支払えは罰金なしとし、延滞金を幾何級数的に大きくする。延滞金がある程度の額に達した違反者に対しては人件費をかけて回収するか、刑事罰が適用されるように法律を整備する。そんなことでやれるのではないか。車両差し押さえとか、継続車検が取れないようにするという手段もある。

白タク解禁 上海の事情「滴滴打車」

2015年10月22日 | ITS
今日の読売新聞は安倍首相が「地域限定で個人がタクシー営業することを解禁することも検討する」と語ったと報じた
観光地や過疎地などタクシーの供給が追い付かない地域に限定ということなので、Uberのようなビジネスを認めるということではなさそうだ。

Uberは現在世界50か国で事業を展開している。中国でもビジネスが始まったが、それよりも一般に使われているのが適適出行の個人タクシーサービスだ。これとて始まったのはつい最近なのだが、中国ではこうした新ビジネスの浸透は驚くほど速い。

適適はもともとタクシーの配車スマホアプリなのだが、それに加えて個人タクシーサービス(専車とよんでいる)が追加された。大衆車、中級車、ミニバン、高級車の4クラスから好みの車を選び、行先を入力(登録地か、入力。入力は予測表示されるのでスムースに行える)。すると現在地の地図とその周辺で走行中の車、目的地までの予想料金が表示される。中級車で通常のタクシーの5割増し程度。もともとのタクシー価格自体安いので通常タクシーより高くても問題ない。少なくとも今までの経験ではきれいな高級車が来る。

運転手が反応すると車名、ナンバーと到着予測時間が表示され、その車がこちらに向かってくる状況が地図に表示される。運転手から電話がかかってきて実際にいる場所を伝えなければならないが、運転手側にもこちらのGPS位置情報が届いているので「XXの前に立ってる」程度でいい。

車に乗るとすでに運転手のスマホでは目的地までのナビ誘導が自動的にセットされている。念のため目的地を口頭で伝えるだけでいい。個人の車なのでメーターはないが、ソフトのGPS機能で走行距離が計算される。

ここまでは多分Uberと同じだと思う。実際アイコンもUberに似ていて中国お得意のパクリの一種ではある。しかしUberより優れているのは支払もソフトでできること。中国ではネット決済の「支付宝」が広く普及しており、適適のアプリから自動的に清算される。
通常のタクシーも基本は同じような仕組みで呼び出せる。タクシーは現金払いも可能。
中国はスマホの普及率が非常に高いのでこうしたサービスがあっという間に広まる。こうした分野では日本は後進国のように思える。おそらく冒頭の安倍首相のコメントがあっても、ここまでの白タク個人サービスの解禁はないだろう。

白タク個人タクシーはそのサービスの質と事故があった場合の対応が問題となる。
Uberにしても適適にしても、降車後運転手を評価するボタンがあり、問題がある運転手は資格停止にする等の対応で一定のサービスを担保している。また事故等の対応は運営会社が行う。適適は実際上海では市当局からタクシー営業許可をもらっている。(国家方針と異なり議論になっているようだが)

配車アプリが簡単便利になり多くの市民が使うようになってから、上海市内では流しのタクシーを捕まえるのが非常に難しくなっている。市はその問題に対し、スマホを使えない老人向けの専用タクシースタンドを設けるといっているが、中国語ができない我々外国人にとっては結構深刻な問題になってきている。

ITSコネクトとは

2015年10月20日 | ITS
トヨタは10月にマイナーチェンジしたクラウンにITSコネクトを搭載した。でもこれって何?と思われる方も多いだろう。

ここで話はテレビ放送の地デジ化にさかのぼる。2012年にTV放送用アナログ波は停止され、地デジに完全移行した。
これにより従来使われていたアナログTV放送用周波数帯域が空地となったのだが、この貴重な有限資源である周波数帯域はなんとしても国民に納得してもらえる有効活用をすることが政府(総務省)としては必要だった。
本来は移動体通信に振り分けるべきだったのだが、外資の参入を嫌がった日本の放送局が総務省に掛け合い、まずは760MHzを高度交通システム(ITS)に割り当てられた。この760MHzは主にトヨタがITSを進めていくことになるのだが、これはいわばトヨタの企業献金のようなものだ。
そして、携帯端末向けデジタル放送にも周波数が割り当てられることになり、これはDOCOMOとKDDI+クアルコムが争うことになる。ここも外資に渡しなくない政府の意向が働いてDOCOMOになったという人が多いが、私の見方はちょっと違う。クアルコムはすでにその時点でデジタル放送であるMediaFloをほぼ諦めていた。多分、勝ちにいかなかったのだと思う。結果としてこの帯域はDOCOMOのものとなり、NOTTVがスタートするわけだがこれは御存知の通り全く改善の余地がない赤字事業となり、もはや風前の灯状態。これをしてDOCOMOにマーケティングセンスが無いというような論調があるが、これとて国策への協力のようなもので、多分DOCOMOも赤字は折り込み済みなのかもしれない。
いずれにしても外資に周波数を渡したくない、かつ国民に説明がつくような事業でアナログ空き地を埋めたい総務省がこれには大きく関与していて、その中心にいたのは例のジャニーズ有名スターのお父さんだという話もある。

ITSコネクトに話を戻す。

これもNOTTVと同じような話だと私は思っている。
クラウンに装備されたけど、これは路車間通信、車々間通信でなければ機能しない。つまりは道路や他の車に通信機が装備されていなければ何もできない。現時点愛知県に実験的な路側機があるようだが、一般的な普及はまったくしていない。クラウンへの装備も、卵と鶏の話で車に装備しなければインフラ整備も始まらないので、価格弾性の低い高級車から付けてみました、といことにすぎない。

ではこの先未来があるのかというと、これは大いに疑問なのだ。
見通しの悪い交差点から飛び出す車は車両装備のレーダーやカメラでは捕捉できない。したがって完全な安全運転支援、ひいては自動運転を目指すためには通信が必要だという議論がある。これは確かにそのとおりかもしれないが、果たして日本中の見通しの悪い交差点に路側発信機設置するのか?あるは私道や駐車場などから飛び出す場合はどうするのか?そして自転車や歩行者にも通信機をもたせるのか?車々間通信にしても、それなりに装着が進まないと使いものにならないだろう。

飛び出す車や自転車を完全に捕捉できるなら安全運転支援として価値があるが、設備が整っている、もしくは通信機を持っている相手だけを捕捉するというような状況では安全運転の参考情報とはなってもそれに完全に頼ることはできない。

いずれ、IoTな時代が来て路上を動く全てのものがネットに繋がる世界が来るのかもしれないが、それは相当先のこと。その時に果たして760MHzなのかというのもよくわからない。
どちらにしても安全運転支援の主役はレーダ、カメラといった車両自律機器で、760MHzのITSコネクトは極めて限定的かつ補助的なものでしかないだろう。さらに言えば、DSRCとの関係をどうするのかもよくわからない。

これもNOTTVと同じくトヨタが国策に協力したのだと私は思う。しかしそれに付き合わなくてはならない電機メーカーはたまったもんじゃないよね。

トヨタ、2016年から日米で全車に通信機能搭載、って本当?

2015年10月19日 | ITS
10月17日、日経新聞はトヨタが2016年から日米で販売する全車種400万台に通信機能を搭載すると報じた。
すでにAUと回線拡大の話し合いに入ったとしている。

しかし、この報道、他社のフォローがない。また、どうにも筆者には引っかかるものがある。

記事はいう。13年時点ですでに70万台の車が通信機能を搭載しており、それは年間12900円で提供されれている。16年以降標準搭載した車でも一定の利用料が必要になる見通しで料金体系は今後詰める、としている。

しかし、ユーザーにとっての利便という意味で何ができるかこの記事に書かれていることは
・故障を予測しドライバーに点検を呼びかける
・ドライバーの運転パターンを分析し、省エネドライブなどを提案する
・人が連絡しなくても緊急車両の手配を依頼できる

これにお金を払うユーザーがどれだけいるのか。年間1万3千円は払わないだろう。

書いてある通り、通信機能を装備した「コネクテッドカー」からはカーメーカーが様々な情報を得ることができ、また将来の自動運転にとっては必要なることであることは間違いないが、それは全く現在のユーザー利便とは関係ない。

可能性としては、全車に通信モジュールを装備してしまい希望するユーザーは有償でサービスを受けることができるという仕組みだろう。一般的にアメリカで行われているのは、最初の一年は無料提供し継続を希望する場合に有償とするというやり方。多分国内で展開する場合はそれしかできない。しかし、全車に通信モジュールを装備するというコストをトヨタが容認するとは私には到底思えない。
有償ユーザーからの年会費で黒字化させるという成功例は唯一GMであるが、これがそう簡単に日本になじむとは思えない。よほどの勝算がなければできないが、T-Conenctだって決してうまくいっているように見えない中、これはかなり難しい話なのではないか。

知られざる醤油の危険性

2015年10月17日 | インチキ・疑似科学
日本人が大好きなラーメンやそばには醤油という調味料が使われているのをご存知だろうか?
寿司を食べるときにつけたりもするのでご存じの方もあると思うが、殆どの日本人が知らず知らずのうちの毎日摂取している。
ところが、この醤油という調味料はわずかコップ一杯で大人が死亡することもある非常に危険な物質なのだ。大人でコップ一杯ということは幼児などはよほど気をつけなければならない。

しかし、厚生労働省などは「少量であれば人体への影響はない」などと言ってこの有害物質を一向に規制しない。コップ一杯で死亡する劇薬にちかい調味料がラーメン一人前に大さじ2-3杯程度は含まれている。少量だから良いという理屈が通用するわけがない。

そもそもこの醤油という調味料は自然界に存在せず、人工的に作られたものだ。大豆等に人為的に菌を付着させカビを発生させてから微生物を介在させるという複雑な製法により大企業で大量生産されている。そもそもこうした大量生産が始まったのは明治以降で、決して長い歴史を持っているわけではなく現時点で深刻な健康被害が出てないからといって将来何が起こるかは誰にもわからない。

キッコーマンという会社はまるで化学工場のような大工場で醤油を生産する大手であるが、驚くべきことにこの会社は2013年、安倍総理が海外視察にでかけた際に同行し更には430万円もの寄付をしているのだ。現安倍政権下にある厚生労働省が醤油を規制しない理由もこの辺にある可能性が高い。

さらに、このキッコーマンという会社は新聞・テレビに相当量の宣伝を出しているためか、マスコミも醤油の危険性をまったく報道しない。

政府もマスコミも、自身の利益のためにコップ一杯で死に至る危険な調味料が日常使われていることを見て見ぬふりをしているのだ。政府もマスコミも信用出来ないのであれば、自分の命は自分で守るしかない。

・この続きは有料メルマガで。(嘘)
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・・・食の安全なんて、大抵はこんなはなしです。

『がんの3分の1は、CTスキャンが原因』35歳から54歳までの男女で調査 の嘘

2015年10月09日 | インチキ・疑似科学
CTスキャン と 癌リスク で検索すると
「『がんの3分の1は、CTスキャンが原因』35歳から54歳までの男女で調査」
というタイトルのブログが最初にヒットする。これは結構拡散しているようで、私のFBにもシェアで回ってきた。

これはどう考えてもトンデモだろう。CTスキャンを禁止するだけで癌は2/3に減少することになる。
ということでちょっと調べてみたら以下の通り。

このサイトが引用している元サイトの、さらに元となっている英文サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20008689?dopt=Abstract

要約すると
・米国では年間約70百万人がCTスキャンを受けている。
 approximately 70 million scans annually.

・国家研究機関による「放射線の生体に対する影響」レポートをベースに試算すると、
 2007年に米国で行われたCTスキャンに起因して発生する可能性がある癌は約29000件。(CTスキャンに対して0.04%)

・その予想させる癌の3分の1は35歳から54歳で受けたCTスキャンに起因する一方、15%が18歳未満でスキャンを受けたケース。また66%は女性。
One-third of the projected cancers were due to scans performed at the ages of 35 to 54 years compared with 15% due to scans performed at ages younger than 18 years, and 66% were in females.

実は、このサイトが引用しているがん情報サイト「Cancer information japan」には以下のように正しい訳文が記載されている。
「(CTスキャン由来と)推定されたがんの3分の1は、35~54歳の人に対して実施されるCTスキャンを原因としていた」

それを誤解か曲解し「『がんの3分の1は、CTスキャンが原因』35歳から54歳までの男女で調査」というタイトルで掲載しているわけだが、これが結果としてデマの拡散になっている。これを信じてCTスキャンを拒否し、病気の発見を遅らせ、手遅れになる人が出てくるかもしれない。

常識で考えておかしいことは大抵間違っている。安易な拡散はやめましょう。

東京オリンピックまでに自動運転車が東京を走り回る?

2015年10月07日 | 自動運転
安倍総理大臣は10月4日、京都で行われた科学技術に関する国際会議で参加者に「2020年の東京には、自動運転車がきっと走り回っています。皆さんは自動運転車で動き回ることができるでしょう」と発言した。
そして10月6日にはトヨタが2020年までに自動運転を実現する、という方針を明らかにした。

この2つのニュースタイトルをみて、オリンピックまでには自動運転が相当なレベルで実現されるのだろうと思った人は多いと思う。総理大臣と世界のトヨタがほぼ時を同じくして2020年までに自動運転を実現するといったのだから当然だ。

しかしきちんと中身をみると、両者の言っていることは天と地の差があるのだ。

トヨタの発表は「高速道路限定」となっている。
実は高速道路限定であれば自動運転は決してむずかしくない。なぜなら自動車専用道路だからだ。
言及はされてないが、専用レーンであればなおさら簡単だ。追尾式のクルーズコントロール、車線キープ装置、自動ブレーキがあればそれで良い。
専用レーンでない場合は追い越しや割り込みで入ってくる車への対応があるので難易度は上がる。今回の発表では追い越しもできるとあるので専用レーン限定ではないのだろう。
非自動運転車との混流は結構難しい。自動運転車はヒューマンエラーがない分、有人運転よりはるかに安全なのだが、例えば故意に直前に割り込んで急ブレーキをかけられたらどうなるか。追突を防げるかどうかはブレーキ性能だけが頼りになる。

完全自動車運転(レベル5,乗車する人に運転の責任がない)の場合、事故の対応はすべてカーメーカーが行わなければならない。果たしてメーカーとしてそのリスクを負えるかといえば、多分負えない。したがってトヨタのいう2020年の高速道路限定の自動運転もレベル3~4(事故に対しては運転者が責任を負う)相当のものになる。
自動運転は技術的には相当なレベルに達しているが、ごくわずかでも事故のおそれがあり、それを運転者に転嫁(言い方が悪いが、実際はそうだ)できないのであればメーカーは手を出さない。

一方、安倍総理大臣の発言、「東京を走り回る」はどう考えても高速道路限定ではない。また、「皆さんは自動運転車で動き回る」はレベル5のロボットタクシーのことだ。
これはどう考えてもありえない。トヨタですら高速限定のレベル3~4だと言っているのに。
だれが安倍氏にレクチャーしたのかわからないが、タクシーという意味では多分できたとしても特定のオリンピック会場と最寄りの駅あたりを結ぶ専用レーン走行の「地上版ゆりかもめ」のようなものになるだろう。

限界集落とロボットタクシーは別の話だろう

2015年10月07日 | 自動運転
しばらくエントリーをできなかったが、自動運転に関する幾つかの話題についてアップデートしておく。

東京オリンピックまでにロボットタクシーを実現するというDeNA・ZMP合弁会社の動きとして、政府との共同プロジェクトにより来年から藤沢市で実証実験が行われる。
50名のモニターを募集し、住宅街とショッピングセンターの3キロの特定路線を運行する。ロボットタクシーと言っても係員が2名乗車する。
ENGAGET 日本版 

上記のENGAGETの記事に限らず、WEB上で見受けられる論調は
・ロボットタクシーは限界集落に暮らす老人への福音
・大きな問題は法規制
という感じだ。小泉政務官も同席した記者会見ではこの限界集落問題がロボットタクシーの主要な存在意義のように語られている

しかし私はなんとなく引っかかるものがある。

確かに自動運転は自分で運転できなくなった、もしくはできない人々の自由なモビリティを確保するという意味が非常に大きい。
しかし今回の実証実験は住宅地とSCの往復に限定される。それならSCが有人の巡回バスを出せばいいのだが、ビジネス的に成立しないのだろう。
特にこの実証実験、50人のモニターに対して専用車両2台、一台に係員が2名乗車。バックアップ車両2台を用意する。50人に対して車4台、係員4人が配備される訳で相当な費用がかかる。
有人タクシーのほうがはるかに安いが、もちろんこれは実験だからしかたがない。ではその延長にある完全ロボットタクシーならビジネス的に成立するのか?

完全自動運転のロボットタクシーが走り回る世界が実現すれば、その運行は集中管理されて実車率を極限までたかめ、かつ運転手の人件費がかからにということから現在の有人タクシーよりも相当コストが低減される。これは疑いようがない。
車を所有するより経費負担が小さく、かつdoor to doorで駐車の手間もなければ車を保有する意味は全くなくなるので、将来自動車はすべてロボットタクシー、要は公共交通機関になる。この世界は相当時間がかかるがいずれ実現する。

しかしそうなったとしても限界集落への送迎は実車率を落とすのでコスト割れになる。専用車を集落に配置する必要があるかもしれない。
公共交通機関という観点から全体で薄めることになるのだろうが、運転手の人件費分は削減できるものの、それでも赤字バスの運行とかわりない。

ロボットタクシーが運転できない人々に自由なモビリティをもたらす福音であることは全く疑問の余地はないが、それと限界集落は別の問題なのだと思う。