ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

一時退出可能な道の駅、そのびっくりする実態

2017年09月27日 | ITS
国交省はPA.SAのない高速道路区間において道の駅で休憩、給油などをするために一時退出しても継続走行とみなす施策を実施している。
現在3箇所で実験中だが、この結果から17箇所に拡大するという。
レスポンス記事

この記事中で、石井啓一国土交通省は「安全を確保すると共に労働生産性の向上を図るため、休憩施設の確保を行うことが重要」と述べている。
確かに長い区間休憩所がないのは過労運転防止の観点から問題だし、一般道に設置されている道の駅の活性化にもつながるので大変結構なことだ。

しかし、この裏にはとんでもない話が隠れている。

現在の3箇所も、拡大する17箇所もETC2.0限定なのだ。

では、現在の3箇所ではどの程度利用されているのだろうか。
ここに国交省の資料PDFがあるが驚くべき数字が書かれている。(コメ欄で情報提供頂きました)

三箇所のETC2.0による一時退出利用者は、一箇所あたりわずか平日15台/日、休日20台/日程度。
さらに資料には通常ETCの利用者(これは割引になっていないのだと思うが)はその10倍程度来場していることが書かれている。
この程度の利用者しかいないのになぜ17箇所もETC2.0に利用を限定するのか?実施には費用のかかるポスト設置が必要であり、費用対効果も怪しい。全く理解に苦しむ。

石井国交省のコメントを再度確認してほしい。この施策は安全と生産性向上のために行っているのだ。
であれば一台でも多くの車にそのメリットを提供するべきだろう。それがなぜETC2.0限定なのか?

理由は技術的なものではないだろう。道の駅の入り口に通信ポストを設置し割引を行っているが、それは通常ETCでも可能なはずだ。
その証拠に通常ETCの入場台数が集計されている。

これは明らかにETC2.0普及のために無理やりETC2.0にメリットを付加しているとしか考えられない。
一部にETC2.0にする理由は利用者の道の駅利用までの走行データを把握するためだ、という話があったが、それならETC2.0のデータだけを分析すればいいだけのことで通常ETCを排除する理由にはならない。

つまり、国交相のコメントが本当なら国交省は「安全よりもETC2.0の普及を優先している」ということになる。
こんなことでいいのか。

日本はEVシェアを官主導で進めるべき

2017年09月21日 | ITS
前のエントリーで、海外ではEVもしくは小型車のシェアリングが進んでいる事を書いた。
一方で日本政府の取り組みはIT総合戦略室のしたにあるシェアリングエコノミー促進室がまとめているようだが、特にカーシェアリングに特化してはいない。
EVをつかったカーシェアは自治体や観光地主導での実験的導入をまずは進めていくというような感じであり、なんとなく色物的な展開しか起きないような感じ。海外で急速に広がる可能性がある都市内のコミューターというようなカーシェアについての積極的な動きはない。

カーシェアではTIMESが先行しており、TIMESの時間貸し駐車場を基点に相当多くのポートが設置されているが、残念ながら返却は借りたポートに限られるため今ひとつ使い勝手が良くない。数キロ先の友人宅にいき、数時間過ごして戻るというケースでは実際の利用時間は20分程度でも支払いは数時間分になる。
ポートを跨いで返却できるようになれば実際の利用時間だけの支払いでよくなり利便性は格段に上がる。
さらに海外のカーシェアの多くはフリーフローとなっており合法な場所であればどこに駐車しても返却扱いになる。
言うまでもなくこれは非常に便利だ。

日本ではこのフリーフロー方式は難しい。路肩を含めた公共駐車場があまりなく、またパーキングメーターエリア以外は路上駐車が禁止されている。こうした事業を展開するなら事業者が土地を手配しポートを沢山作らなければならないが、多分それでは事業性の成立は困難だろう。

EVをつかったフリーフローのカーシェアは確実に都市部のモビリティを改善する。公共交通をつかったほうが早くて便利な部分は公共交通をつかい、それから先でシェアリングEVをつかうという形になれば走行する車両の総数を減らすことができる。
それ以上に我が国のEV及びそのシェアリングオペレーションビジネスを発展させ国際競争力を付けなければ、この先欧米はおろか中国にも負けてしまう。タクシー業界などからの反対は有るだろうが、産業構造は時代とともに変わって当たり前。

ビジネス自体はもちろん民間企業が自由競争の中で進めるべきだが、前述の通り日本の都市事情から駐車スペースに関しての行政の協力が絶対に必要になる。しかし、これが絶望的なのだ。規制緩和どころか、規制の拡大解釈とリスク回避でむしろ消極的であるようにみえる。
札幌に引き続きシェアバイクが進出を計画していた福岡は市が反対して頓挫しているいう話を聞いた。中国では増えすぎや迷惑駐車が増えて問題になっているが、それ以上に交通量の減少や無認可三輪車タクシー撲滅のメリットが大きいため、行政は台数規制はするものの専用駐車スペースの認可などはむしろ素早い対応をしている。

EVに関しても、先日経産相が「いきなりEVになるわけではない」という発言をされたが、今時ステーキだっていきなりでOKなんだから良く海外の動きを見てほしい。ハイブリッドで先行する日本のアドバンテージを温存したいという考え方も背後には有るのかもしれないが、フューチャーフォンで先行し結局スマホで完敗した過去が頭をよぎる。
繰り返すが、日本の都市構造は過密で民間だけの努力ではシェアリングビジネスの展開は限界がある。
EVの推進とシェアリングに対するインフラ整備を官主導で進めなければこの先海外にどんどん引き離されているように感じる。

日本人があまり知らないEVカーシェアリング

2017年09月19日 | ITS
EV(電気自動車)のシェアリングに関しては日本でも地域的な取り組みが始まっている。カーシェアリング最大手のTIMESも専用車両Ha:moで東京で進めているし、その他地方限定のサービスは結構出て行きいる。しかしこれが一般に浸透しているとまでは言えない。

一方、海外に目を向けるとEVに限定せず、小型車両でのカーシェアリングは欧州ではかなり盛んになり、生活に溶け込んでいる。
ダイムラー主導のcar2goがスマートをつかい先行で始めたが、VW,BMWも追従しさらにはその他の業者も出現している。概ね1分0.25ユーロというような価格設定。
1分0.25ユーロということは、一時間15ユーロ、2000円。何時間も借りたらレンタカーより高い。しかし、これらのカーシェアの特徴はエリア内ならどこでも乗り捨て可能ということにある。目的地に着いたら返却し課金終了。帰りは近くの空車を探して、ということなので都市内移動ならせいぜい10~20分の利用となり、数百円の負担で済む。出典がわからなくなってしまったが、どこかの街では若者の自動車保有率がかなり低下した、という。
乗り捨てに関しては、欧州の都市は路上駐車が認められており、パーキングメーター等で料金がかかる場合もカーシェア業者の契約でユーザーは支払う必要がない。また公園のような場所には無料駐車場が多く有る。

この方式、現在の日本の都市では実現不可能であることは言うまでもない。今でこそパーキングメーターが増えてきたが、美濃部都政時代は都内は一切駐車禁止だった。路上で乗り捨て可能な場所は限定される。
しかし、まだよく探せば交通の邪魔にならない路上駐車スペースは有ると思う。行政がシェアEV専用で増設しシェアEV普及を政策として進めていることができるのではないか。完全乗り捨てが普及の鍵となるのだ。

私が危惧するのは日本が遅れを取ることだ。いまの日本では都市構造・インフラの違いからこのサービスがピンと来ないし、この状況では国内での大発展はないだろう。足元の市場がこんな状況なのでとても海外にまで出ていくような業者は現れそうもない。

イタリアには4-5社が展開しているが、その中でまだ規模は小さいもののShear'nGoという業者が中国製の二人乗りミニEVを展開している。イタリアのベンチャーが中国から車を仕入れて始めたものかと思っていたら、実はイタリアの会社は90%中国資本で、かつシェアリングのオペレーションシステムも中国開発だった。中国でEVカーシェアリングを営む会社がイタリアに進出しているのだ。その会社は中国市場ではすでに一万台を稼働させている。

これ以外にも、シェアリング自転車ほど話題にはなっていないがシェアリングEVは中国でじわじわと増え続けている。上海でも白地に緑のEVCardというシェアリングEVが登場し、空港には大きな駐車専用スペースもできている。

こうしたシティコミューター的EVのシェアリングは間違いなく今後拡大するが、今のところ日本でグローバルプレーヤーとなる企業が現れていない。大手自動車会社はその力はあるが本格的に事業として海外展開する計画は今のところ聞こえてこない。

一方で中国では中小企業ですら海外に出ていっているのだ。今後は大手の参入も見込まれており、気がついたらスマホはVIVO,OPPOやHuawaiにマーケットを席巻されてしまった、という悪夢を繰り返さないようにしてほしい。

もう止まらないEVシフトと日本の対応

2017年09月18日 | ITS
先日、EVに関するエントリーをしたが、日本の立ち位置について補足しておく。
2017年8月25日 EV化で自動車メーカーは消滅するのか?

欧州各国に引き続き、中国も近い将来の全面EV化を示唆している。
中国の自動車マーケットは年間3000万台規模。日本の5倍という非常に大きい数字であり、これは今後の経済成長により更に増える。
この巨大な市場がEVに切り替わるとすると、産業構造の大変革になる。また、中国のこの発言は自国のEV産業の今後についてかなりの自信があるとみるべきだろう。
いずれにしても世界的に自動車市場はEV化に大きく舵をきった。

それに対し日本は、世界で初めて量産市販EVを世に出し、世界市場に存在するEVの台数シェアではまだ依然一位だと思うが、今後の見通しについては不透明な部分が多い。今後日本のカーメーカーは欧米に加え中国とも戦っていかなければならない。
いままでいろいろな分野で「世界に先駆けて開発」し、「気がついたら負けてしまう」パターンを見てきたので非常に心配だ。

前回のエントリーで、EVだからといって誰にでも作れるわけではない、車両制御をはじめとする長年のノウハウが必要だ、と書いた。
そういう意味では中国のローカルカーメーカーの実力はまだ低い。しかし年々向上しているのも事実。
非常に感覚的な話だが、品質と商品力に関して以前は日本車100に対して40~50レベルだったのが、80くらいまでは来ている。もともと中国の消費者は品質に対する要求レベルが高くないので、少なくとも中国国内向けでは十分な商品となりつつある。

そもそも中国は電気自転車がものすごく普及し、シェアバイクも一気に広まるような下地があり、事実シェアEVもかなりの台数が走り始めている。さらに中国は中央が命令すればなんでもできる。充電設備を作れ、と言えばあっという間にインフラ整備は終わるだろう。中国でのEV普及のネックは集合住宅での充電だが、これが解決すれば今後急速にEV化が進んでも不思議ではない。
それに加え、自国のEV産業に対する様々な優遇策を講じることは間違いなく、この巨大市場に日本メーカーが食い込んでいくのはかなり難しい。
中国はEVの中国生産に対して自国の電池、モーター、インバーターの採用を強制している。(このうちどれか一つは中国企業からの調達が必要)
それは明らかに技術流出を意味することから日本のカーメーカーは中国現地生産に消極的だったが、もはやそんなことは言っていられなり大手日系各社は中国生産の意向を表明している。

日本国内マーケットの拡大も我が国のEV発展には重要な意味を持つが、日本政府は将来のEV化について宣言はしておらず、また現在のEV優遇策も際立っているとはいえない。
日本の主要輸出品がエンジン付き自動車であり、また国内の自動車メーカーのうち現時点で純EVを販売しているのが2社しかない状況では積極的になれないだろう。また、日本は電力供給という面で問題を抱えている。もし車が全部EVに置き換わったら電力は確実に逼迫する。
そもそも化石燃料を燃やして作った電気で車を走らせるよりも、化石燃料を燃やして車を走らせたほうが効率がいい。石油石炭で発電している限りEVは全然クリーンじゃない。
それに対する世界の回答は原発や再生可能エネルギーなのだが、その選択肢は日本にはない。原発はもう絶対作れないし、地理的にも再生可能エネルギーで多くを賄えるようにはならない。
とは言え、政府は認識を改めるべきだ。大きなパラダイムシフトが迫っている。

私自身、近未来に車が全部EVになることは無理で当面は小排気量ターボのような低燃費エンジンが主流になると考えていた。しかし最近の欧州、中国の発表をみるに、これは予想以上の大変革が起きると想定するほうが妥当ではないか。
それに対し、日本の自動車産業及び日本政府は相当な改革をしないと家電や携帯電話などの二の舞いになってしまう恐れがある。

新型iPhone 中国で売れるか?

2017年09月13日 | モバイル・ウエアラブル
いままでiPhoneの新製品が出る度になんらかコメントしてきたので、当たるか当たらないかわからないけど今回も予想をしておきましょう。

中国ではiPhoneはある意味ドイツ車と同じでステータスの象徴として売れていた。それがiPhone5くらいからいっぱしの大人ならiPhoneくらい使ってないと、という程度になり、その後ステータス性は年々落ち込んでいるように感じる。
さらに国産スマホの品質/性能がここ数年で飛躍的に向上したことから、ハードウエアを評価してiPhoneを購入する人はあまり多くなく、むしろ、後述するが中国消費者の好みの機能が十分ではない部分もある。

まあそうは言ってもブランド力はまだあるので、ハイエンド機種であるiPhoneXに変える富裕層は多いだろう。
しかし、見た目が変わらない「マイナーチェンジ」にしか思えないiPhone8は新しいiPhone買ったぜ、という見栄の部分を全く刺激しないのであまり売れないと思う。これは中国だけではなく、他の地域でも程度の差はあれ言えるのではないか。6以降ずっとキープコンセプトとなっているが、これは疑問だ。
4から5へは長くなっただけだったし、5から6へのデザイン変更は私はむしろデザインが退屈になったと感じたが、それでも消費者は買い替えた。ここに至ってデザインを一新することが必要だったのではないか、と思う。

ハードウェアについては、iPhoneの電池容量はまだ不満があると思う。中国ではスマホ決済が進んでいるから夜まで電池が持つことが非常に重要になってくる。
また、いじっている最中は充電できない無線充電はあまり有難がれないかもしれない。
あとはデュアルSIMに対応していないのもマイナスポイントになると思う。国産スマホはほとんど対応している。
カメラ性能に関しては中国では自撮り性能が非常に重要な要素となるが、国産スマホもかなりのレベルまできており特にiPhoneを選ぶ理由はない。

華為、VIVO、OPPO、小米と言ったブランドの最近のハイエンドを使っている人たちは「いつかはiPhone」とは全く思っていない。すでにiPhoneは憧れ商品ではなくなっている。

ということで、高くて見てすぐ新商品だとわかるiPhoneXは立ち上がり品薄となるだろうが、8と8plusはさほど売れないと思う。

Mobikeのプロフィットモデル:利益はどこからもたらされるのか?

2017年09月12日 | ITS
今話題となっているシェアバイク。Mobikeは札幌でサービスを開始し、日本の企業も参入を表明しました。果たしてこのビジネス、本当にもうかるのでしょうか?中国語学習の一環として中国のQ&Aサイト「知乎」でのテンセント(騰訊科技)の投稿を翻訳しました。(今年の3月の記事。)
引用元 https://www.zhihu.com/question/49355450
摩拜单车的盈利模式和可持续利润来源是什么?
読みやすいように語彙についてはかなり意訳となっています。
翻訳責任は当方にあります。誤訳があればご指摘ください。

一日の稼働回数、故障率、再配置の費用などの変数が公式数字がないことから推定となっていて、正確は収益性についてはよくわかりませんが、少なくとも簡単に収益が上がるビジネスではないように思います。特に現在の中国大都市部に於いては2強(Mobike、ofo)の競争により供給過剰となっており、日当たり稼働率は低下していると思われます。
リンク先にはこれに対する回答として様々な試算が掲載されており、かなり知的な議論がなされているなと感心しました。

以下翻訳
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Mobikeのプロフィットモデル:利益はどこからもたらされるのか?

投資時期の後半に差し掛かっているものの、依然シェアサイクルは利益を生んでおらずむしろ厳しさを増してきている。業界はバブルであるとのレッテルを否定する事ができない中で、なんとか正常な発展に向かって進もうとしているが、実態としては完全にバルブ状態に依存している。

現時点では自転車の利用料が唯一の営業収入だが、我々の調査によれば現在平均的なシェアバイクの日当たり利用回数は2回/台まで落ち込んでいる。補助金が付いている場合を除けばシェアバイクの1回あたり使用料は0.5元~1元。まあ多く見積もって1台が一日に稼ぐ金額は2元だろう。
冬や雨の日には稼働率が下がることを考えれば一年で稼働する日数は270日程度。ここから推測する年間の1台あたり収入は500元前後だろう。
500元という金額はofoのスマートロックが付いていない自転車のコストと同等。現時点ではこの自転車の設計寿命は3年となっており、これによれば2年目、3年目は純利益が出ることになる。ここから見る限りシェアバイクは利益が出るビジネスに見える。
ofoの創始者である戴威はかつて、ofoは特定の地域ではその利益率は40%に達しており、おそらく今年中に黒字化するだろう、と語った。しかし事態はそれほど楽観的ではない。

この業界の人々が常に引用する計算式では、日当たり利用回数の低下を考慮しなければ自転車の故障が最終利益に直接の影響を与える。もし一台の原価が500元として、三台中一台が壊れて廃棄されてしまったとすると償却に必要な期間は半年延長されなければならない。
したがって仮にその故障、破損率が有る一定レベルでコントロールできるとし、また関連する運営コストを最低に押さえ込んだとしてもそれはシェアバイク事業の収益性に直接的影響をもたらす。

これに加え、入会時に徴収するデポジットがシェアバイク事業の重要な収益源とみなされているが、それには大きなリスクがあるため関連企業はとても慎重な見方をしている。
これは後述するとして、まずは上記の利益に関するリスクを見ていこう。

1)故障率の秘密
すでに30%まで達している?
Mobikeとofoが競争する中、両者の戦略の違いからその故障率は異なっている。Mobikeはその初代バージョンから「4年間メンテナンスフリー」を歌っていた。
Mobikeの設計思想は強度補強を中心になされており、ユーザーの利便、利用性を犠牲にすることもいとわない面が有る。しかしそれでもMobikeのCEO王晓峰が漏らしたところでは、上海地区では運営開始後4ヶ月時点での故障率は10%に達したという。
ofoの状況は大部異なる。最初のバージョンではofoは普通の自転車にちかい乗り心地、使い勝手の商品をユーザーに提供した。 自転車が完全な状態であれば、たしかにMobikeより優れていた。しかし、補強面の考慮が不足していたためにofoが非常に壊れやすかった。その後製品に補強を施したものの、企鹅智酷(テンセント系研究機関)の調査ではofo利用者の故障報告率は明らかにMobikeを上回っている。(ofo: 39.3% Mobike:26.2 %)
ofoは数字を公表していないのでその故障・破損率については諸説あるが、テンセントが複数の情報源から得た情報からは、同社の控えめな想定で20~30%、30%超もありうるとしている。
Mobike,ofoに加え、その他の勢力も故障率のトラブルに見舞われている。公共自転車とシェアバイクを同時に運営する永安行のCEO陶安平は公共自転車とシェアバイクの故障、破損率には大きな差があるという。訳注:公共自転車とは、行政が主導で設置した共用自転車。専用ポート返却。
公共自転車は公共施設の一環であり法律によって2000元以上の罰金が課せられることもあるため、公共自転車の破損はさほど深刻な状況ではない。大抵はちょっとした修理で済むが、シェアバイクはそうは行かない。
「我々の状況では、シェアバイクの破損率は公共自転車よりはるかに高い」陶安平は現在の永安行のシェアバイクの破損率はすでに10%に達しており、しかもこれは市場参入して間もない数字なのだ、と明かす。
更に深刻な事態が存在する。深センで公共自転車事業を展開する凡骑绿畅公司の総経理贾金涛曰く、シェアバイクは投入して一年後には破損問題が大爆発する可能性があるという。
ブレーキパッド摩耗によるブレーキ不良、スマートロックの電池切れ、こうした問題は短時間には簡単には発生しないが、一定時間を経過し自転車のダメージが一定段階を超えると集中して問題が発生する可能性がある。
一年を経過するとシェアバイク業界でのこの種の破損率の数字はおそらく10%を超えると見ている、という。ひとたび破損率が30%の水準を超えれば、仮に上記の推定を理想的な単一変数と仮定した場合、自転車のコスト回収期間は50%延長されることになる。
これら破損率の問題を考慮した後で考えると、ofoは今年中に利益が出るだろうと明言しているものの、Mobikeや永安行が利益が出るまでには後1年半程度かかるといっていることは我々の分析に一致する。

2)回収・配置換えに3元/台
シェアバイクの運営はときにとんでもない落とし穴にはまることが有る。シェアバイク運営は常にその回収業務がつきまとう。このプロセスには3つの工程がある。

第一に自転車を取りに行くこと。取りに行く人とトラックが必要となり、自転車の増加に合わせて人と車を増やさなければならないのは当然のことだ。以前深セン南山で発生した自転車回収事件では関係企業は半月に亘りその回収に囚われ、回収力不足の弊害を露呈した。

第二にメンテナンス。メンテナンスコストは自転車の設計、品質管理、投入される都市の人口やマナーに直接左右される。現在、急激に増加する修理要請はすでに産業チェーンにかなりの負担をもたらしており、一部都市では修理技師の高給与での奪い合いが発生している。

第三に自転車の再配置。
これら三つの工程はすべて人間が必要で、それは日ごとに段々と厳しさを増していく故障率の問題と関連しており、それにともなって負担も増加する。
しかし、回収問題は事業運営の一部分に過ぎない。Uberのようなカーシェアリングとは異なり、シェアバイク業界の運営にはオンライン、オフラインの運営が必要となる。特にオフライン時の運営コストはネット業界出身の会社にはその概念を理解するのが難しい。実際の運営にあたり、この負担はどの程度のものになるのか?オフラインの経営資源配分を例に取れば、自転車の投入量が増加すればオフライン業務への資源もそれに合わせて増加させなければならない事がわかった。シェアバイク運営会社の社員数ではその要求を満たすことはできず、一般的には外部委託の運送会社を起用することになる。

運送会社に近い業界人からの情報によれば、「シェアバイクの需要は非常に大きく、規模の経済も働くのでその配送料は比較的安くなる。しかしそれにしても一台の配送料には3元程度はかかる」
シェアバイクの日々の配置換えとその頻度、例えば朝晩通勤時の需要の偏在に対応するための配置換え等を考慮すると、そのコストは膨大なものになる。厄介なことは、自転車の配置を理想的なものにしようとすればするほど、それにかかるコストはより高いものになってしまうということなのだ。配置換えをすることでの自転車の利用料の増分が、果たして配置換え費用を賄えきれているかどうか、簡単には結論付ける事はできない。

それに加え、「科学的運用」のため普及が進むスマートロックもコスト増大圧力となっている。サプライチェーンの関係者によれば、現在のシェアバイクコストは300元から500元だが、スマートロックをつけることでコストは1000元近くまで上昇するという。現在Mobike
は全車にスマートロックとGPSを装備しており、ofoのスマートロック版は未だ限定的な試験状態だが、ofoの責任者は遅くとも今年の後半にはスマートロック版を大規模に展開すると言っている。
このコストはまた投資回収の期間を長くさせることになる。仮にスマートロック版自転車のコストが従来版の倍だと計算して、一年の投資回収期間は二年に、更に故障率で50%伸びるからコスト回収にはちょうど三年かかるということになる。
強調しておきたいことは、現時点では数値データが不足しているためこの計算は完全に科学的にではないが、大まかにいって利用料収益の他にシェアバイクが直面している運営経費の圧力はかなり重たい物があるといえよう。

加えて、その解決策がうまくいかない場合は利益増大が望めないことは言うまでもない。
シェアバイク運営会社とてもちろん黙ってみているわけではない。公共自転車企業の幹部が匿名を条件に語ったところによれば、シェアバイク運営会社はすでに公共自転車運営会社との協力関係を模索しているという。公共自転車というビジネスはすでに時代遅れとなっているが、彼らの長年の運営経験はシェアバイクビジネスに比べ豊富なものがある。
しかし、この種の協力関係はシェアバイク運営会社にとってある程度の助けにはなるが、正確な予測が難しいことには変わりはない。

デポジットとPPP(公的,私的資本提携)どちらがシェアバイクの未来となるのか。
儲けることがビジネスの目的でありシェアバイクも例外ではない。
会社の業務という面からみれば使用料がシェアバイクの唯一の収入源であるが、法律の専門家の中にはシェアバイク運営会社の収益原はそれだけではないと見るものもいる。
現在Mobikeとofoのユーザーは1000万人。Mobikeは299元、ofoは99元のデポジットをとっており両社の保有するデポジットは30億元と10億元規模である。当然、この莫大な資金については色々な想像が働いてしまう。
デポジットの返金に関して、テンセントの理解ではofoは即返金。銀行の処理時間にかかわらず最終的に返金払込は数分で完了する。一方Mobikeは随分と異なり、同社の最近の公式見解ではユーザーが返金申請をした後に返金が行われるまでには2−7営業日が必要であるとされている。この返金時間の差は各方面からMobikeのデポジットの取扱いに関する疑念を抱かせている。
中国政法大学知識産権研究センター特約研究員の李俊慧は最近の文章で原則的に銀行の振込はリアルタイムであり、Mobikeはデポジットを自社内で取り込んでいる可能性がある、と指摘した。こうした返金までにタイムラグを設けることにより、一時的にMobike社内に資金がプールされ同社はそれによる理財活動利益を得ることができる。

関連法規によれば支払われたデポジット及びその保証対象はリース行為で発生したものであり、企業はそれに手を付けてはならない。リース契約を解除した時にデポジットが返還されないと資金の違法専有問題に波及する。
おわかりの通り、もし関係する部門が監督を行わなければシェアバイク運営会社はデポジットから巨額の利益を得ることができ、自転車使用料収入なんて目じゃなくなる。しかし非常にセンシティブな事にとりわけ資金プールの問題は非合法資金集めとして追求される可能性が極めて高く、シェアバイク運営企業はそのリスクを避けるためすでに企業ポリシーで自己規制を行っている。Mobikeは先月末、招商銀行と協同で招商銀行がMobikeのデポジットを厳重に管理するとの声明を出した。Ofoも同様、デポジットは専用の口座で保管されており、投資などには使用できない仕組みになっていると表明している。
加え、政府による監督が徐々に始まっており、デポジット流用による収益獲得モデルは今後ほぼその継続余地がなくなっている。

一方、もう一つのシェアバイク企業にとっての利益獲得方法として、公共自転車と同様なPPPモデル(官民パートナーシップ)に向かうという手がある。この種の方式には色々な関連がある。同済大学の持続可能経済発展管理研究所長の诸大建は、通常は政府がサービスについての計画をするべきであり企業はサービスを提供し、消費者はサービスを受益するという。
こうしたモデルの中で政府は助成を行い、サービス提供者としての企業の利益獲得圧力を緩和する。これは決して荒唐無稽な話ではない。現在Mobike,ofoは経済資本によって運営されているが、シェアバイクに代表されるフリーフロー式は実際政府資本での検討射程距離に入ってきている。北京市房山区の政府が昨年10月10日に発表した情報によれば、房山区の燕山地区においてフリーフロー式シェアバイク類似公共自転車を投入するとしている。Mobikeやofo同様、このフリーフロー式自転車はQRコード読み取りで乗車でき、唯一違う所は白線で区切られた「バーチャル電子柵」の専用駐輪区域内に返却しなければならないことだ。
このプロジェクトに関して房山区政府が購買する自転車は北京途自在物联科技有限公司という企業である事が分かった。その企業のHPでは、スマートフリーフロー式自転車及び専用アプリ、運営用システムを自主開発し、QRコードスキャンで即座に乗車、返却可能、といっている。
これからも分かる通り、この企業はすでにフリーフロー式のシェアバイクに関し包括的な解決法案を政府向けに設計完了している。

房山区政府がこれを受け入れることで、シェアバイクの領域での経済資本と政府資本の融合が始まるかもしれない。陶安平はまた、こうした動きはほかでもすでにはっきり現れているという。「特に4線級以下の都市においては、投資コストの回収が難しい事を考えればインターネット企業はどこも参入に積極的にはなれないが、政府の介入が有るのであればその都市の要求を満たすことができます」
しかし、もし仮にこの方式が一部の地域で実現可能だとしても、まだ多くの地域が残されるし、あるいはそうしたことがMobikeやofoのような企業レベルで実現が可能かどうかは依然相当不確実だ。
しかし利益確保の見通しが困難な利用料モデルに比べ、低リスクなPPPモデルは十分魅力がある。唯一の問題は、このモデルの場合主導権は最初から企業側が掌握することができないということだ。
by @Bassy

駐車場シェアリング

2017年09月10日 | ITS
ETCの駐車場利用で調べていたら、ETC2.0普及促進研究会という任意研究活動団体のサイトを見つけた。主に三菱電機が中心となって進めているグループのようだ。

静岡の駐車場実験を主催しているようで、現在トップページでその情報を見ることが出来る。
しかし、私がそれ以上に興味を持ったのは一般住宅や農家の駐車スペースのシェアリング。

一般住宅で駐車ポートがあるが車を持たない家は多い。また農家には駐車スペースが空いている。(農村で駐車場需要があるケースは限られるだろうが)。これを駐車場として活用するというアイデアはとても面白い。しかしDSRCでの実現は難しそうだ。
研究会の提案は、料金収受や駐車時間管理などを無人で出来るETCポストの設置ということだが、もちろんネックは設置コストだろう。1台分、しかもいつも利用されるわけではない駐車場。月に1−2万円の収入があれば御の字だろうが、設置する機器のコストがそれに見合うだろうか。

コスト的に現実的なのはやはり前回エントリー同様、カメラと画像認識の組み合わせだと思う。
車が枠内に入ったらカメラ画像をサーバーに送り、クラウド側で画像認識とナンバー読み取りを行い、ユーザーのスマホに駐車開始の通知をする。出庫は画像認識で自動的にに処理でも、スマホからの出庫送信と画像の確認でも良い。
このような仕組みであれば駐車場側の設備投資はカメラと通信機器だけでかなり小さくて済む。

駐車場キャッシュレスの可能性とETC2.0

2017年09月10日 | ITS
ETC2.0関連のサイトには、この先ETC2.0で可能になるサービスとして駐車場のノンストップ決済が挙げられている。
しかし、この取組については以下のような障害がある。
まずは、商業施設利用時の料金割引をどう処理するか。精算機等を使わずに完全ノンストップにするためにはETCカードを持ち出し商業施設で精算時に提示し、請求金額を調整してもらう必要がある。技術的には大きな問題はないが、ETCカード持ち出しやシステム導入がネックになるだろう。商業施設側にコストが掛からない方法としてはETCカードの親カードで決済し、カード会社で照合、引き落としから割引くという方法もあるが、果たしてETCカードの親カードが常用支払い方法であるかどうかはわからず消費者にはあまり使い勝手は良くない。
次に、駐車場側の機器導入コスト。具体的な金額はわからないが結構なものだろう。費用対効果が明らかでないと駐車場側は導入しない。一般的にユーザーが駐車場を選ぶ基準は目的地との距離と値段であり、ノンストップ精算だから遠くてもいいと思う人はいない。

こうした状況から簡単には普及しないだろうということはETC側も理解しているようで、ETC2.0限定をやめてETCなら利用できるようにするらしいが、それでも私は実証実験や公共駐車場での利用にとどまると思う。
(なお、私は駐車場のETC利用拡大自体は大賛成。上記の制約がない空港や公共駐車場はどんどん進めてほしい。)

そこでちょっと考えたのが、ナンバー読み取りとスマホ連携でもっとうまい仕組みができないか、ということ。

日本でもナンバー読み取り式駐車場は増えているが、駐車券は発行され精算機で精算(割引処理を含む)、出口はノンストップというパターンが多い。

中国では入り口にチケット発行機がなくナンバー読み取りでバーが開き、出口で有人精算というパターンが多い。割引はチケット提示。

いずれの方式も出入り双方のノンストップは実現できていないが、これをスマホ連動させれば新しい展開があるのではないか。
専用ソフトとそれに連携する駐車場システムを構築する。それには料金収受システムも必要だから統一プラットフォームがある中国ではやりやすい。

ナンバー読み取りでノンストップ(読み取る時間は一旦停止)で入場。ナンバーとスマホの支払いプラットフォーム(中国で言えばアリペイやWeChatペイ)を紐付けて出口では自動精算。
商業施設での利用割引は施設用のソフトを作り、料金精算時にQRコード読み取りなどで一瞬で処理ができる。

これは技術的なハードルは高くないし、駐車場が負担するナンバー読取機はコスト的には大したことはない。
多分中国では近いうちに出て来るんじゃないかな。

【官製プローブ】ETC2.0に意味があるのか

2017年09月08日 | ITS
そもそも13年前にこのブログを始めた理由がETC2.0に対する疑問だった。
当時はそういった名前がなく、単にETCを高速料金収受以外に拡大し、その未来には数兆円のマーケットが有る、という話だったのだが、それに対して絶対にそんなことはないと感じ、始めたのがこのブログなのだ。

で、すでに15年近い月日が流れ、遅々としてすすまなかったETCのその他利用だが、ここにきてETC2.0という名前でゆっくりとでは有るが拡大してきている。しかし、それは単にETC車載器の世代交代によるものであり、消費者が正しくそのメリットを理解して高額なETC2.0を購入しているのかどうかは極めて疑わしい。

ETC2.0は、単に高速料金ノンストップ収受にとどまらず以下を実現すると言っている。
a.渋滞情報と最適ルート案内
b.高速道路以外での利用(駐車場、GS、ドライブスルー等)
c.安全運転支援(この先の渋滞、落下物注意等)
d.経路情報サービス(渋滞迂回ルート通行車への割引など)

これらをセールストークにしてETC2.0車載器は販売されており、消費者も漠然とした理解で購入しているという感じなのだが、実際にはこのa~dのメリットなんか殆ど無い。
aの渋滞と最適ルートについては民間の通信型ナビがあるし、スマホのGoogleマップでも用が足りる。というか、ポストを通過しないと受信しないETC2.0よりも常時アップデートされる携帯通信利用に分があるのは言うまでもない。
bはもう13年前からずっとやろうとして実現しない。まだ諦めずに公共駐車場でやろうとしているが、多分民間には拡大しない。
cに関して、事故防止に実効があったという話は一切聞こえてこない。ETC2.0はポストを通過しないと受信しない。路側電光掲示板をナビ画面に表示するような話。
dは実際に行われているが、これは単なるETC2.0を普及させたいがためのETC2.0優遇策。

このようにあまり意味がないとしか言いようがないETC2.0に関し、なぜ官は予算を使い優遇割引をしてまで普及を進めるのか?

今となっては、その理由は自前のプローブデータ収集という一点しかない。(15年前にはそんなこと全く言っていなかったが)
プローブデータ(wikiへのリンク)=実際に走行している車両の位置情報。これを元にデータ解析を行い交通情報を作成する。
国が自前のプローブ情報を収集したい、ということであれば、わざわざ高い2.0車載器を購入し走行データを無料で提供するユーザーに対して料金優遇をするということは理にかなっている。但しそれを正しく理解している消費者はほとんどいない。

最近のETC2.0に関するニュースで、鎌倉市内の観光渋滞改善のためにETC2.0の走行データを分析するとか、外国人のレンタカー事故防止のためにETC2.0の情報から危険箇所を割り出す、ということが言われている。
結構なことだが、まず第一にETC2.0が渋滞や事故を防止するといっているのではない。交通規制のための情報分析としてプローブデータを活用する、というだけこと。そして、これがもっと重要な事だが、そんなのは民間が先行している携帯通信利用のプローブ情報を購入すればいいだけの話ではないか、ということ。すでにトヨタ、日産、本田、パイオニア、Google等がその仕組を持っている。

民間から買ったほうが早いし安い。そこまでして官としてプローブ情報を自前で持ちたい理由があるのだろうか?
ポストを設置しそこを通過しなければ情報授受ができないETC2.0と携帯通信のどちらが理にかなっているかは自明だろう。

現在はプライバシーの問題からETC2.0の位置情報と車両は紐つけされていないが、将来的には国家セキュリティとして活用したいのか?
それとも単に、ここまでやってきたから撤退できない、ということなのか?

路側ポストに掛けた250億円は無駄なお金だったが、この先更に活用する意味はない。これはサンクコストと割り切ってきっぱり諦め、この先の投資はやめるべきだと思う。

なぜ日本人は現金払いが好きなのかPart2

2017年09月03日 | モバイル・ウエアラブル

7月11日エントリの続き。
本当に日本人は現金払いが好きなのか?私はそうではなく、様々な理由で現金が選ばれているだけだと考えている。
今回は日本人が現金払いをする理由としてネットで挙げられている言説を箇条書きに検証し、さらにキャッシュレスが普及しないことの仮説を幾つか上げてみる。

1.ATMがどこにでもあるから困らない
これはつい最近毎日新聞系のWEB記事で見つけたものだが、まあ積極的な理由には思えない。
キャッシュレスが進む中国でも都市部ではATMは簡単に見つけることができ、これが理由ではないだろう。
2.日本には偽札がないから現金で問題ない
中国の急速なキャッシュレス化を偽札が多いからだと断定しているメディアが多いが、これは間違い。
確かに百元札は受取時に判定チェックをするなど店側の手間はあるが、これがメインの理由ではないということは中国在住邦人が皆さんそう言っている。
さらにこれでは偽札問題がないユーロ圏でキャッシュレスが進んでいることが説明できない。
3.日本のお金はきれい
中国のお金は汚くて触るのもやだからキャッシュレスが進んだ、という説。確かに「その他のメリット」くらいには入るかもしれないが、もちろんメインの理由ではない。
また、先項同様ユーロ圏を説明できない。
4.日本は治安が良いから現金を持ち歩くことに不安がない
治安とキャッシュレスの相関を全世界で取ってみないと分からないが、少なくとも中国では強盗が怖いから現金を持たないという人はいないだろう。
5.セキュリティが心配
これは多分その通りだと思う。特にワイドショーなどで定期的に架空請求詐欺等が話題にされ、必要以上に恐れられているように思う。
6.使いすぎが心配
これは別に現金でも同じことで、普通の人は銀行残高を超えて消費しないように気をつけるだろう。
7.別に困らない
これが最大の理由だと思う。しかし、これは裏を返せばキャッシュレスの便利さを知らない、ということにつながる。

以下は私が考える日本でキャッシュレスが進まない理由。

1,クレカを小額決済に使わない
日本人は他人に迷惑をかける事(実際には他人から迷惑なやつだと思われること)を極端に嫌う。
今はクレカも小額はサインレスになったりしているが、以前はサインが必要で現金より時間がかかった。これは日本人的にはこんな小額なのに手間をかけさせ、後ろの人を待たせるという事になり、あまり好まれなかった。その習性から、クレカを日常的な買い物の決済に使うという習慣がない。
2.セキュリティリスクの過大評価
これは前出のもの。日常的にクレカ決済をしている人にとっては不正請求なんて極めて低い確率であることがわかっているが、あまり使わない日本人にとってはそのリスクが過大に評価されていると思われる。特に目に見えないリスクは気持ち悪いので過大に評価されるものだ。また、クレカの不正利用は補償されるということがあまり知られていない。
3.FeliCaの使い勝手が良くない
コンビニのキャッシュレス決済の中心はスイカ等交通カードだろう。しかし、プリペイドの場合買い物して残高が足りなくなり改札が通れないというのは最悪のことなので、積極的に買い物に使う人は少ないと思う。私もオートチャージにするまでは絶対に使わなかった。
オートチャージも特定クレカしか紐付けできないとか、かなり制約があり面倒。
中国のスマホ支払いは銀行デビットカードとの紐付けが簡単で、かつ銀行カードからの引き落としは瞬時に行われ、銀行は口座の出入金があるとリアルタイムで確認のショートメールを送ってくるため不正利用があるとすぐわかる仕組みになっている。この辺の使い勝手は雲泥の差。
4.おサイフケータイのスマホ未対応
これはあまり詳しくないのだが、DOCOMOのおサイフケータイのスマホ対応は2013年頃からなのではないか。最も痛かったのはiPhoneが対応していなかったこと。
5.対応店舗の少なさ
FeliCa支払い対応店舗は限られる。またクレカを使えない飲食店も多い。FeliCa対応レジが高額、かつ手数料掛かる割にそれに見合う集客効果がないことが原因だろう。
中国のスマホ支払いは、バーコードリーダーなのでさして高くないし個人商店ならQRコードの掲示だけで良いので費用なし、かつ手数料もほとんど無視できる額なので、店舗側の導入が急速に進んだという面もある。
これは鶏と卵の問題だが、キャッシュレスで生活が完結しない以上現金は必要で、現金を常に一定額持っているなら特にキャッシュレス支払いにこだわる必要もない。

私は日本人が特に他国の人に比べて現金が好きなわけではなく、キャッシュレス支払いの使い勝手の問題だと思う。

タイポ、変換ミス修正(2017.09.13)