ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

フェリカとDSRC(再)

2004年11月30日 | ITS
DSRCの商業利用については、その消費者ニーズが希薄であるという立場で実現しないと繰り返し主張してきたが、神尾氏は「自動車ITS革命」の中でおさいふケータイとの競合に勝てないという意味で実現性に疑問を投げかけている。
フェリカがDSRCの脅威になるという話は私も10月1日の記事で言及したが、その難しさがさらに浮き彫りにされた。

氏のあげた最も説得力のある理由は、対応する機器の普及速度の違いである。携帯は1-2年で機種変更されることから、数年先にはフェリカ付きが市場の主流を占める事になると見られている。

一方、現在のETCはほとんどがDSRC商業決済に対応していない。順調に事が運んだとしても、ETCにDSRCが標準で装備されるまでまだ2年以上はかかるだろう。
そして新車購入を契機にETCを装着したユーザーは次のETCを装着するまで(=次の新車に買い換えるまで)に平均で7年かかる。

つまり、数年後には殆どの消費者がキャッシュレス決済機能付き携帯を所有するが、殆どのETCがDSRC付きになるには10年近くかかってしまう。

更に、事業者側が設置する読みとり機の価格もフェリカなら5万円で設置可能であり、大きな差がある。

DSRCのフェリカに対する使い勝手面での優位性は、(通行料・駐車料のようなノンストップで決済できるケースを除けば)窓を開けて携帯をかざさなくても良いということだけであり、とても太刀打ちできるとは思えない。

事業者が業務効率化や集客をねらってキャッシュレス決済を導入しようと考えたときにどちらを選ぶかは自明である。結果としておさいふケータイがデファクトスタンダードとなったら、もはやDSRCにチャンスはないと思う。

まあ、これらもキャッシュレス決済のニーズがどこまであるかという根本的な問題がクリアされなくてはならないが。

自動車ITS革命

2004年11月29日 | ITS
神尾 寿氏の「自動車ITS革命」を購入した。(税込み2100円はちと高い)
いずれクルマが情報通信化されるのは規定路線である、とする氏の考え方とこのブログのスタンスは基本的に相容れないものがあるが、各論ベースでは「なるほど」と思わせることが随所に見られる。
おいおい紹介していきたい。

とりあえずざっと目を通して一番強く感じたことは、何が今後の「クルマの情報通信化」を牽引するドライバーとなるのかが明快でないということである。
第一世代は失敗し、第二世代も無料のホンダ以外はうまくいっていない自動車メーカーのテレマティクスに関し、その失敗要因のついて様々な分析をされているが、わたしには単にテレマティクスで提供されるコンテンツが「消費者にとって金を払ってまで手に入れる価値がない」ものなのだ、としか思えない。
これは、通信速度・料金やコンテンツの洗練度の問題ではなく、本質的な問題なのだと思う。
車の中での必要な情報はすでにラジオ・テレビとナビゲーションでほぼ充足されているのだ。

三菱商事のDSRC事業はかなりヤバイ

2004年11月26日 | ITS
三菱商事は22日、ITS事業を行う子会社ITS事業企画(株)(IBA)の活動に関するプレスリリースを行った。

このプレスリリースを見る限りに置いては、いったい何のサービスをしようとしているのかさっぱり判らない。駐車場のゲート通過はわかるが、KFCのドライブスルーを使うと携帯にお得な情報メールが送られる(トホホなことにキャッシュレス決済には対応してない)ことが何故ITSなのだろうか。というか、お得な情報メールがこの会社の商売なのか?
プレスリリースにある「正に未来のクルマ社会のあり方の最先端を示す」とはとても思えない内容だ。

更にいえば、このプレスリリースの文章、ちょっとヤバイ。表現が微妙に香ばしい。
「御自宅の駐車場に止めるが如く」「運転が苦手とおっしゃる女性の方々や」

表現はともかく、ただ駐車券の受け取りがなくなるだけでそれはオーバーじゃないの?

この子会社IBAのウェブサイトもある。
資本金4億でITに関連した会社のウェブサイトにしては庶民的なイメージのこのサイトを見る限りにおいては、この会社が一年後にも存在することをお祈りするばかりである。

DSRCを事業化するということで始めたものの、今のところ三菱関連企業である丸ビルやKFCがなんとか話についてきてくれているだけ、という感じ。
しかも、そのサービス内容とは、
「丸ビル駐車場でノンストップ支払い。但し丸の内カードを作ってください」
「KFCからお得な情報をメールで配信。月会費250円。」
「これらのサービスを受けるために、専用のETC機器を買って下さい」

だれがフライドチキンの情報をお金出して買うかね。そもそも顧客囲い込みのために来店情報をKFCがキャッチしたくてDSRCを使うんでしょ?何故それに顧客が会費を払う必要があるのかね。
これがビジネスモデルとして成立すると本気で思っているなら絶望的だし、こんな低レベルのサービスしか提供できない段階でプレスリリースする三菱商事の気がしれない。

月に一回利用するかしないかという施設で、財布を出す手間がなくなるというだけのメリットに、消費者が投資をするわけがない。考えるまでもない話だ。

まあ、悪いことはいわないから、DSRCの商業利用を検討している人はさっさと撤退した方がいいと忠告しておきたい。
顧客にとってのベネフィットはほとんどないし、企業側の来店促進やCRMメリットもかなり限定されている。

スマートウェイ推進会議(続き)

2004年11月25日 | ITS
スマートウェイ推進会議の第1回の作業部会報告について、もう少し続けよう。国土交通省ITSトップページ

2007年のITSサービスということで、(1)安全、(2)環境、(3)利便をあげている。

安全が最初にくるのは極めて正しい。この前の世界ITS会議でも、欧米の来賓のスピーチはほとんどITSの安全への寄与が大部分を占めていた。
車というのは移動手段であり、よく考えるとそうした生活手段に生命にかかわる危険が存在すること自体、前近代的である。それを極小化することは、当然の成り行きだ。そしてそれは常識的な運転がなされている限りにおいてはカーメーカーと道路管理者の責任である。

それと、車を通信で結ぶことを混同しているのが、今のITSなのではないか。事故を減らすことは車のASV化や更なる道路整備で可能だろう。そのために通信機能が必要かもしれない。必要なら使えばいい。たとえば、ETC機器を活用してDSRCで道路情報を流せるなら、そうすればいい。流さないよりはいいだろう。

今回の報告書「2007年ITSサービス」では、こうした安全走行支援情報提供を「新方式VICS」で行うと書かれている。新方式VICSが何かは明確になっていないが、おそらくはETC機器によるDSRC通信を意識しているのだろう。

しかし、なぜ路側表示の充実ではだめなのかという議論はされたのか?
ローテクで実施していないことはハイテクを導入しても実施されない。
たとえば帳簿で顧客管理をしない商店に高価なCRMシステムをいれても意味がない。

スマートウェイ協議会提言と12兆円

2004年11月24日 | ITS
引き続きスマートウェイ推進会議作業部会から。リンク

今回の作業部会の前提として、スマートウェイ協議会提言というものが存在する。こちら
今年の8月5日に発表されたものであるが、これを読むと現在のITS関連市場はすでに12兆円に達しているそうだ。ITSを推進したい人たちはXX兆円が大好きである。

以下、引用。

「現在のITS市場規模は、カーナビやVICS・ETCに関連する機器などの情報提供分野で約6兆円、光ファイバーやCCTVカメラなどのインフラ分野で約5兆円、地図ソフトウェア、コンテンツなどのサービス分野で約1兆円と試算されている。全てのITS関連サービスや関連機器、インフラの整備などを累計すると、既に市場規模は12兆円規模にも上っている。」

しかし、実感として本当にすでに12兆円の市場って存在するのか?
たとえば、もっとも値段が張り需要も高い車載ナビゲーション機器ですら年間需要は300万台x20万円としても6000億円。まあ、上に振れても1兆円未満だろう。
ナビゲーション機器の10倍以上の市場がすでにあるといわれても、いったいどこにあるのか、という感じだ。

もし仮に道路インフラなどに使っているとすれば、別の意味で大問題である。12兆円といえば国民一人あたり10万円。そんな大きな税金が道路のカメラなんかに使われているということか?

スマートウェイ推進会議作業部会

2004年11月23日 | ITS
スマートウェイ推進会議は去る11月12日、第1回の作業部会を開催した。(フレーム表示なのでITSホームページトップから入ってください。)

この部会はITSセカンドステージに向けた推進会議からだされた提言を実現するための具体的方策を協議することを目的としており、12日の第一回会議の資料が掲載されている。

当然ながら今まで路線を継承しているが、掲載のPDFファイルで面白いことに気が付いた。ETC(DSRC)の商業利用に関してかなりトーンダウンしている。依然「さまざまな決済のキャッシュレスサービス」という表現は所々に残るものの、ガソリンスタンドやコンビニの決済という文言はない。
具体的な記載は唯一「平成19年をめどに公共駐車場で一部サービスを開始(予定)」と、ずいぶん弱気な言及にとどまっている。

ここへきてやっと現実を直視し始めたのだろうか。

この部会資料についてはもう少し見ていこう。

ノキアの新スマートフォンで思う事

2004年11月17日 | ITS
ノキアの新しいGSM携帯7710は、OSにシンビアンを採用し、モバイルテレビ、データ対応FMラジオ、ウェブプラウザ、MP3プレーヤー機能が搭載されている。
ソニーの新モバイルゲーム機PSPも、AV,通信機能が充実しており、何でこれで電話がかけれないのか不思議なくらいだ。

何故「ITSを疑う」が最近携帯、とくにスマートフォンやこうしたマルチメディアフォンについて言及しているのか?その理由は以下の通りである。

おそらく、最終的に携帯はAV情報端末になるんだと思う。そうなったら、果たして車から持ち出せない車載機器に総合情報通信機能を持たせる事にどれほどの意味があるのだろうか。

二通りのシナリオがある。
一つは自動車電話が通った道。かつては携帯電話が重く、バッテリーの持ちも悪かったため自動車電話に意味があったが、今ではまるで意味がない。車から降りたら使えない移動体通信なんて、全く魅力がない。

もう一つは、オーディオ。どんなに携帯オーディオが普及しようが、カーオーディオの需要は無くなる事はないだろう。その理由は、音楽とラジオ放送が運転中の最大のエンターテイメントであることと、車内という空間で高品質の音を楽しめるという事。

どちらをとるか、あるいは折衷的な道をたどるのか。

ナビゲーションに関してはこのままさらに進化を続けて、オーディオのように成熟するだろう。
しかし、インターネット接続などの通信機能については、結局車載機器にその機能を持たせる意味があまり無いのではないか、と思っている。

KENWOODの新世代ナビ、何故老人福祉?

2004年11月16日 | ITS
ケンウッドはWindows AutomotiveをOSに搭載した市販向け次世代ネットワークカーマルチメディアシステムを商品化した。

プレスリリース

カーマルチメディアシステム、ホームオーディオ、パソコンとのネットワーキングによる新しい「インテリジェントエンターテイメントシステム」として2年越しの大規模開発プロジェクトを展開し、長年培ってきた独自技術を具現化することによって自社ナビシステムのコアを商品化したという。
商品の特徴はHDDとDVD双方を持ち、AV機能に優れる事と、Windows Automotiveによるインターネットやホームサーバー等への柔軟なネットワーク接続といったあたりか。

しかし、立ち上がりを老人福祉施設の送迎車に的を絞るというマーケティング戦略については、なんとも不思議な感じがする。

i、Robotをみて

2004年11月15日 | ITS
出張から帰ってきました。

機内の映画でi-Robotを見た。2035年を想定しているが、主人公(ウィル・スミス)が電話を使うシーンでは耳にかけるブルートゥースのイヤフォーンセットのような物を使っていた。電話機本体がすべて内蔵されているのか、子機の様な使い方なのか分からないが、メール機能などを考えれば、子機のような考え方だと思う。だいたい電話機自体があんなに小さくなったらすぐ紛失して困る。

ワイヤレス子機の様な感じでイヤフォンセットが端末に組み込まれるとすると、電話機本体の形状や、通話時の持ちやすさはあまり関係無くなってくる。やはり携帯端末はスマートフォンのような方向に行くんじゃないかと改めて思った。

今回出張中にシンガポールでもタイでもイヤフォンマイクで話をしている人を多く見かけた。実際、あるビルの入り口で、ガードマンの様な人物から呼び止められたのかと思ったら、実はハンズフリーで電話中だった。慣れるまでは気持ちのいい物ではないね。

シンガポールERPのICカード

2004年11月12日 | ITS
シンガポールのERPで使用するカードはリチャージャブルのICカード。

クレジットカード方式を採用したETCは、チャージ不足による通過トラブルはないが、新たなクレジットカードをつくるという手間がかかる。それに比べれば、手軽である。
シンガポールのERPはゲートがなく、仮にチャージ不足で通過した場合はあとで罰金が課せされる仕組みになっている。

バンコックのスカイトレイン

2004年11月11日 | ITS
バンコックの渋滞緩和策として、公共交通の整備が進められている。
昨日、バンコックで初めてスカイトレインに乗ってみた。

スカイトレインは高架鉄道で、2路線ある。これに加えてつい最近地下鉄が開通し、まだまだ疎ではあるがバンコックにも公共交通網ができあがりつつある。

しかし、この暑い国でかなりの上空まで階段を登るのは辛い。プラットフォームにつくと汗が噴き出す。
また、運賃が高い。初乗り運賃こそ25円だが、5-6駅先までいくと80円。バンコックからアユタヤまで約80キロをエアコン付きの高速バスで100円程度でいける事を考えると、かなり割高である。
また、タクシーと比べても半額程度という感じ。
それ故か、スカイトレインにのると白人が目に付く。
裕福な人しか乗らないということか。
今の価格を考えると、もし渋滞が緩和したらタクシーの方がリーズナブルな選択の様な気がする。

バンコック式ITS

2004年11月09日 | ITS
さてバンコックであるが、交通統制の最先端国家シンガポールから、いきなりここへ来ての格差はすごい。これでもマニラなどよりは数段オーガナイズされているのだろうが。

ここに駐在している訳ではないので、あくまで第一印象だが、この国の渋滞回避策は、どうやら右折をさせないとことのようだ。右折が出来ない代わりに、Uターンが出来る場所が決まっていて、そこから引き返さなくてはならない。

一つには、タイはメイン通り+ソイ(枝道)という考え方で道が造られており、左右のソイは連携していないので十字路が少ないという理由もある。一方、ソイは隣のメイン通りのソイとつながらず、行き止まりになることが多い。つまり、街は碁盤の目ではなく、魚の骨をばらまいたようになっている。これが渋滞に拍車をかける。
果たしてこのUターンシステムが渋滞を軽減しているのかどうかは分からない。しかし遠回りをする分トラフィックが増えている事は間違いない。

もう一つ、一回に車を沢山通すことで渋滞対策をしているような気もする。朝晩は警官が主要な交差点で信号と関係なく、混んでいるトラフィックをどんどん通す。そのかわりいったん止まると5分以上動かない。
これが本当に渋滞を軽減しているのかは分からないが、毎日の経験に基づいている以上、正しいのだろう。人間が現場でコントロールするのは究極のインテリジェントトラフィックシステムかもしれない。

シンガポールERP画像

2004年11月09日 | ITS
何とか画像を取り込みました。
昨日書いたシンガポールのERP車載器です。

先週たまたまスマートフォンについて書いたが、今回会ったシンガポールのビジネスパートナー4人のうち若い2人がスマートフォンを使っていた。何故スマートフォンを使うかときいたら、単純に、携帯とPDA両方持つより一つが良い、という。やはり携帯はスマートフォンの方向に行くと、私は思う。

シンガポールのETC

2004年11月08日 | ITS
シンガポールからアップするつもりが、PCが不調に陥り、結局今はバンコックに来てます。

さて、先週の木曜深夜にシンガポール中心地のホテルにチェックインしようとしたらオーバブックでセントーサ島の姉妹ホテルに行ってくれと事。他に選択肢がないので来てみてびっくり。高級リゾートホテルで、とても仕事で滞在する場所ではない。ビーチフロントで朝食を取ってから仕事というのは、なんとも微妙。

シンガポール版ETCのEPR(Electrical Road Pricing)について。
車載器は無償支給だそうだ。車を登録すると送られてくるとのこと。またマレーシアから入る車は入国管理所で貸してくれるそうだ。何故なら、シンガポールではEPRがついていないと事実上走行ができない。中心地への流入チャージや高速料金(朝限定)の支払い方法がEPRだけだからである。

ETCも、この方法が正解だったのではないか、と思う。今の方式では、年に数回しか高速を使わない車は絶対に装着しない。結局有人ゲートを廃止できないし、100%装着にならなければ、安全関連の路車間通信も無理だろう。車載器がついている人だけに安全情報を送るというのは問題がある。

(機器の写真をとったんですが、ノートブックがPCカードを認識しないのでアップできず。ドライバーの競合問題だと思い1時間格闘したけど断念。これがおそらく原因で今度はIEを開くとハングするようになり、今日また格闘したなんとかアップロードできました。)