ブルーレイディスクの2010年度の販売はわずか1億枚。これはCDやDVDの販売枚数から見れば、極めて小さい数字だ。
実際、すでにブルーレイディスクは記憶媒体としては「負け」が決まったかのように言われている。
レコーダーやPCに付いてくるDVDプレーヤーの多くはブルーレイ対応。すでにこれだけ対応する機器が市場に出ているのにもかかわらず、なぜ不振に終わってしまうのか?
一番大きな理由はHDD、メモリー、クラウドストレージとの競合だろうが、もう一つ見逃せないのは映画や番組を保存するというニーズが希薄になってきている、ということだ。
所有するメリットは、その財に財産価値があれば貯蓄・投資となることやその財に記号的な何かがあれば、所有していることを対外的に示すことでの満足感を得られる、というのがある。
当然映画のコレクションに財産価値はないし、記号的な何かもない。
そもそも「記号的」な所有価値自体が希薄になってきている。ベンツを所有することで、優れた商品を持っているという自己満足感は依然としてあるが、「周囲の羨望を得られる」などという価値はもはや存在しない。
もっとも実際的な「所有」のメリットは「使いたい時になんの制約もなくすぐ使える」というだろう。
かつては、気に入った音楽を好きな時に聞くためにはレコードやテープ、映画はビデオテープが普及するまでは名画座での上演を待つしかなかった。
クラシックやJAZZファンなら、LPレコードを何百枚も持っているのは普通の事だったし、セルビデオや製品版のDVDが出始めたころはそれを蒐集するひとも多かった。
しかし、今や音楽や画像のネット配信で「観たい時に観る」ニーズは充足される。所有になんの意味もない。
そしてもう一つ、消費者がはっきりと気がついたことは、どんな名画であっても「何回も観る」ことなんてそうない、ということ。私もいくつかDVDの製品版タイトルを持っているが、繰り返し見ることなんてない。
テレビ番組だってそうだ。保存する意味のある番組なんてさほどない。
光学ディスクは、大容量ストレージメディアとしてはHDDに負け、可搬ストレージメディアとしてはUSBスティックやクラウドストレージに負け、製品版の流通形態でもネット配信に負けることになる。
光学ディスクの話はここまで。
車もこの道をたどる可能性がある。
ベンツやBMW、もしくはさらに趣味的な車を所有する満足は今後もあるだろうが、一般的な消費者にとっては車はモビリティの手段でしかない。
「使いたい時になんの制約もなくすぐ使える」車があれば、所有に意味はなくなる。
TIMESが始めたカーシェアは、都内であればたいてい徒歩圏内に車があり、ネットによる簡単な予約で15分200円で使える。まだ認知度が高くないようだが、これは首都圏の消費者にとってのパラダイムシフトとなる可能性がある。
それに伴い、ユーザーは車を買わない、いじらない、メンテナンスしないわけだから、伝統的なカーディーラーやアフターマーケットという業態は劇的な変化を強いられるだろう。