ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

神尾 寿氏 「カーナビの進化を考える」のなんだかなぁ

2006年06月25日 | ITS
レスポンスに、神尾 寿氏の「アンプラグド:カーナビの進化を考える-その1」が掲載された。

著書「自動車ITS革命」など、ITS推進の立場をとる氏であり、クルマと通信の関係では決して否定的な記事を書くわけにはいかないのだろうが、それにしても、と思う。
まずはレスポンスのリンク先文書を読んでください。

まず、氏のいう「取り巻く市場環境」で「純正カーナビを中心に進むテレマティクスサービス」「Bluetooth携帯電話の増加」は明らかに事実と反する。
G-BOOK、CARWINGSともにメーカーにとって「やめるにやめられない」重荷となっていることは公然の秘密だろう。
それを、この期に及んで「進化が始まっている」と表現されているのはどうかと思う。

また、Bluetooth携帯電話の増加という兆候がまったく見ることが出来ないのは、DOCOMOの夏モデルでもよくわかる。

さらにいえば、今回取材しているパイオニアはAirNaviという通信型ナビで失敗し、今回のサーバーナビで「HDDを取り外し、自宅のPCで通信する」という苦肉の策を持ち出してきている。(個人的にはだれがそんな面倒なことをするか、と思うが。)

これが、パイオニアのコメント
「カーナビの可能性を広げるために、通信連携を抜きでは考えられないが、ネットとの"繋がり方"では様々な方法論が考えられる」
という微妙な表現に現れている。

これは、大人の言い方にすれば
「ナビの通信連携は差別化のためにあきらめる事はしないが、クルマに通信機器を持ち込むのは無理だった」ということである。

その流れを無視するかのように「パイオニアのサイバーナビもテレマティクス型を視野に入れている」とまでおっしゃるのは、相当に思い入れが強いのか、とぼけているのか、私にはよくわからない。

ETC 普及加速「官」も潤う?

2006年06月25日 | ITS
本日(25日)日経朝刊の「エコノ探偵団」に、ETCで誰が得をしているのか?という内容の記事が掲載されている。

要約すれば、
・ETCの値段も下がり、割引もあるので消費者にとってはお得になってきた。
・しかし、どうも普及にともなってORSEも儲けているように思われる。
 ORSE=旧建設省設置の財団法人
・ORSEは黒字で、天下り役員がいる。

まあ、読者受けしそうな内容ではあるが、問題の本質にはまるで到達していない。

先に結論を言えば、ETCで誰も得なんてしていない。高い買い物をした日本が損をしたのだ。

まず、消費者にとっては高速料金が安くなって得をしたように思われるが、そもそも高すぎる料金が少しではあるが是正された、と思うべきで、まだ損をしている。

次にORSEだが、ORSE自体は黒字でもETC普及のために政府が使っている補助金を考慮に入れれば大赤字だ。

小売店は儲けているかもしれない。
政府の助成金という外部支出のインセンティブをもらい、廃止になったORSEへの上納金500円を消費者に還元しない業者もいるらしい。
逆に言えば、ETCは公共的な商品であり流通業者のマージンというような販売コストをかけるべきものではない。つまり、その分消費者が損をしている。

根本的な問題は、「ETCの商業サービス利用」が進めば「民活で普及が促進」されるいう、ほとんど実現性のない話を鵜呑みにして、コストの高いオーバースペックなハード・ソフトを採用してしまったことにあるのだ。

DCMXについて

2006年06月24日 | モバイル・ウエアラブル
最近また忙しくなり、頻繁に更新できないので、週末にまとめて書こう。

前回、電子マネーの話をしたついでに、ドコモのDCMXについて。

DCMXのシンボルマークって、なんであんなバブル期のゴルフ場を思わせるアナクロな奴にしちゃったんだろう?
ブランドイメージには相当こだわったというが、(「かっこいいカードがほしかった」デザインにこだわるDCMX:ITメディア記事)ロゴとシンボルマークのイメージがあまりに乖離している。

それと、TVCM。KAT-TUN赤西が「デザートくいたくね?」とかいうといきなりお店が現れるが、一体なにが言いたいのだろう?ケータイのようにどこでも使える、というようなイメージを視聴者にあたえるが、使えるお店は全国にたったの3万軒しかない。

利用者が増えなければ、対応レジの設置も進まないだろうから、ある程度は普及優先で仕掛けをしていくのはわかるが、それにしてもミスリーディングなCMだと思う。

電子マネーは本当に離陸するのか?

2006年06月24日 | ITS
新聞記事などでは、Edyやスイカ、idといった電子マネーの普及は疑う余地のない事柄のように扱われている。
実はこれが気に入らない。生活者の自然な感覚として、そんなに大騒ぎするマーケットのように思えないのだ。

実際、日経にこんな表現があった。
「小銭を持たなくてもすむ、ということで、電子マネーは急速に利用を拡大している」

これって本当なのか?いま、Edyやスイカがあれば小銭をもたなくてすむのか?
絶対にそんなことはない。
単純に、電子マネーの方が圧倒的に便利、もしくは電子マネーしか使えないケースで利用が拡大されているだけだろう。

今、スイカの改札利用率は50%程度まで来ているらしい。
山手線の通勤時間で見れば、70-80%の利用客はスイカ型定期だと思う。
つまり、朝夕の時間帯の利用客は大多数、スイカを持っている。

しかし、キオスクでスイカが頻繁に使われている、という状況はまったく見ることができない。発表によれば、キオスクでの利用率は10%という。私はキオスクを通りかかったり、利用するたびに周囲を見ているが、とても10%には達していないように感じる。
あれだけTVCMを繰り返し、かつ過半数の利用者が使おうと思えば使える状況でもこの程度の利用率ということは、実はさほどニーズがない、と見たほうが正しいのではないだろうか。

5月5日の当ブログのエントリーで、貨幣(コイン)流通量が減少したのは電子マネーの普及によるものだ、という日経記事を疑ったが、日銀発表の2006年5月の貨幣流通量は案の定3月に比べて増加している。

モバイルスイカは今年の契約目標100万件に対してまだ10万に届いていないと思われる。また、DOCOMOのクレジット型お財布ケータイDCMXは契約がいきなり15万件というが、実態は新規契約時に「無料なので入会しておきましょう」という勧誘の成果だろう。DCMXの知名度や、利用可能店舗(全国で3万軒)からみて、消費者の積極的な反応とは思えない。

ノンストップで通過できるという、圧倒的な利便性をもつETCですら、あれだけ普及に苦労したのだ。

いずれにしても、消費者はマスメディアがいうほど電子マネーに関心をもっているように感じられないのだ。

スマートプレートはICチップに落ち着く?

2006年06月16日 | ITS
いままでずっと批判してきたスマートプレートだが、どうやら電池を内蔵しないICチップで実施する方向で調整に入っているようだ。

電池を内蔵しないということは、FELICAのように数センチまで近づかなければ読み取れない。
路側に設置した読み取り機で通行する車両の情報を読み取るという、「ハイテクNシステム」構想はあきらめた、ということらしい。

この流れの背後には、やはり電池内蔵のスマートプレートは実現のハードルが高すぎた、ということがあると思う。
ナンバープレート自体が数千円し、その上車検ごとに電池を交換しなければならず、それらは車両所有者負担となる。
さらに、プライバシー問題や国家管理強化に対する反感などがからむと、どう考えても世論の説得は不可能だ。

しかし、それでは一体何に使うのだろう。
車検などの業務の効率化、というが、プライバシー問題から収納するデータは車両の情報だけのようだ。さほど行政手続が楽になるとは思えない。しかも車検時だけ、ということは使うのはクルマの一生で4-5回だ。その為にICチップを埋め込む必要なんてあるのか?

また、偽造防止効果もあるというが、受信機を近づけない限り真偽がわからないとしたら、ほとんどその意味はないだろう。

いろいろハードルが高いので妥協策が出てきた、という感じだが、結果何のためにやるのかさっぱりわからなくなってしまっているのではないか。はっきりいって、やめたほうがいい。

首都・阪神高速ETC義務化記事のなぞ

2006年06月15日 | 高速道路
前回、高速道路各社の決算について書いたが、今朝の日経でそれに関連した記事が掲載されていた。
日経WEB
このインターネット版では省略されているが、紙面ではこの内容に続いて「ETC利用が計画を下回り、割引が少なかったために決算は計画を大幅に上回る黒字となった」とある。

非常にわかりにくい話だ。

ETCを使う人が少なかったから、割引をせずにすみ、決算は黒字となった。
しかしETCを使う人が少ないのは大問題なので、義務化を視野に入れて検討する。

なんの予備知識もなく読むと、この会社は利益を出すのがそんなに嫌なのか?と感じる。

実際は、ETC利用が100%になれば、料金収受費用が劇的に下がり、さらに距離別料金制を導入することで利用率も上がり、収益性が飛躍的に向上する、というゴールを前提にしている話だ。

まあ、それはわかるのだが、その為に「ICタグ利用の簡易タイプETCを廉価で貸し出す」なんて話も出てきてしまっている。

さらに本気で料金所の省人化をすすめたいなら、バー付きゲート方式は採用できない。ゲートがあがらない場合の処置は人間がするわけだから。
さらにいえば、出口は一車線のところが多く、ここをバー付きゲートにして読み取り不良や期限切れのクルマがつっかえたらそれだけで渋滞になる。
ということで、多分ゲート無しで、カメラ管理という選択しかないだろう。

結局、ここで気がつくことは他の国が採用している簡易な方式に近づく、ということだ。

最初からそうしておけばよかったのにね。

高速道路会社各社黒字決算

2006年06月13日 | 高速道路
6月にはいって、クールビスということでネクタイから開放された。
ネクタイをするとどんな男でもしまって見える、などという意見もあるようだが、私は逆になんであんな布を首からぶら下げなければならないのか不思議でしょうがない。
もし宇宙人が存在するなら、地球におりたっての最初の質問になるだろう。

だからといって、単にネクタイ取っただけだと「健康診断の待合室」みたいになっちゃうから、わたしらオヤジ達は十分気をつけなくちゃならない。

去年の総選挙では、クールビスを提唱した自民小泉一派がネクタイをはずし、反小泉派や民主党は小泉に迎合したくない、という気持ちから、ネクタイを外さなかった。

結果、猛暑の中でもネクタイとスーツを脱がずにブラウン管に登場した反小泉派や民主党は「旧主・反改革」のイメージを増長してしまったのではないか、と思う。

今年も民主党はクールビスに距離を置いているようだが、それって「何でも反対」の一種だろう。それにもまして、逆にイメージ戦略上ネガティブだということになぜ気がつかないのだろう。

それはともかく。

民営化後の高速道路会社3社の決算は揃って黒字だったとのこと。
Sankei Web

これについては、ETCの関連など面白い裏がありそうだが、まだコメントつけるほど分析してないのでとりあえず紹介だけ。

ドコモの夏モデルはブルートゥース対応なし

2006年06月08日 | モバイル・ウエアラブル
ドコモの携帯新製品は、おサイフケータイ対応はしているがブルートゥース(以下BT)は内蔵していないようだ。

ようだ、というのも変な話だが、BTという機能自体がドコモのWEBサイトのスペックの中で語られていないので、どのモデルについているのかすらよくわからない。
これは、BTに一番積極的なボーダフォンですら同様で、WEBサイトの機能一覧のアイコンにBTの表示はない。

日本の消費者にとって、どうやらBTはまるで興味の対象とならない装備のようだ。

しかし、これはITS関連・特にテレマティクス関連にとっては大きな打撃だろう。特にドコモの夏モデルでの不採用は深刻な逆風だ。

BTでハンズフリーというのは、日本を除く全世界でごくごく一般的になってきている。日本のITSやテレマティクス関係者も、携帯にBTが内蔵されるのは規定路線だと考えていただろう。携帯にBTが内蔵されれば、いちいち接続する手間なしに車に通信環境を導入できる。これが車+通信の追い風になるはずだった。

テレマティクスの前途は、さらに険しくなってきてしまったようだ。


車載ワンセグチューナー

2006年06月05日 | 雑記
原田工業さんの車載ワンセグチューナー「パウルスTU-1」は、発売が8月下旬に延期されてますね。まあ、いろいろあるんでしょうがきっちり完成させて発売してください。

車載ワンセグでリードしている三洋さんも車載チューナーの商品化は視野に入っているような感じだし、秋には各社商品が出揃うことになるのでしょうか。

モバイルキャストとF1のスポンサー

2006年06月04日 | 雑記
ITS関連企業モバイルキャストがFIチーム「ウイリアムズ」のスポンサーになっている。

同社はITS関連といいながら、最近の業態はBLUETOOTHアダプターなどの販売が中心だ。
そもそもはサードパーティーテレマティクスプロバイダーを標榜して起業、現在もアウディジャパンのテレマティクスを受託しているが、この事業にこれ以上の拡大はないだろう。
今年の初めには、マーク・パンサーを起用して携帯用BTアダプターのTVコマーシャルをやっていた。

この商品でTVコマーシャルといのも疑問だったのだが、F1のスポンサーというのはTVCM以上に金がかかる。

BTアダプターやヘッドセット自体、海外に行けば商品は山ほど存在し、その多くは中国で製造されている。わが国の携帯にBTが標準装備されるようになれば、そうした製品などが大量に流れ込むだろう。
BTアダプターという商品それ自身には、性能や見た目で差別化する要素はない。ということはブランドだけが商品力を左右することになる。

そういう意味で、同社が日本市場でのシェアを維持するためにブランド構築に注力するのはマーケティング的には正解だ。

しかし、日本におけるコンシューマー向けBT商品の市場規模を考えると、はたしてF1のスポンサーというのは本当に合理的な選択なのだろうか?

レイトンハウスやフットワーク(どちらもその後倒産)を思い出してしまうのは私だけではないと思う。