ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

経皮毒の闇

2019年05月30日 | インチキ・疑似科学

もうずいぶん前のことだが、前職時代の一つ先輩が突然退職した。どちらかと言うと将来嘱望されてた人なので驚いたが、しばらくして呼び出された。
結局話しは米国系のMLM(アムウェイのような奴)の勧誘。実名出すのも何なので「新皮」としておこう。(これで分かる人はわかるでしょう)。どうやら奥様が結構成功したので夫婦で法人化して本格的にやろうということのようだった。

そこで色々説明を受けたんだけど、なぜあんなに優秀だった人がこんな事言うのか?と驚かされた。曰く、「今後電力、ガス等が自由化される。新皮もこのビジネスに参入する。上流メンバーになっておけばものすごい利益が手に入る」「これからはインターネット時代。新皮もネット販売を始める。下部会員がネット注文したものも上部会員にマージンが落ちるようになる」

私は、インターネット販売が主流になるということBtoCの方向なんだから中間マージンなんか取れなくなる方向なんじゃない?と言ったが、うやむやな答えしか返ってこなかった。

ちなみに現在の彼の動向は昔の同僚たちに聞いてもさっぱりわからない。

さて、その時の話ででてきたのは例の「羊水から石鹸の匂いがする」というやつ。これはMLM系の洗剤化粧品等を扱う人たちの常套句であり、それも知っていたので聞き流した。
この話は典型的な都市伝説で、実際の産婦人科医の証言は存在しない。(知り合いの親戚の産婦人科医が言ってた、という例のパターン)
要するに、洗髪したり体を洗ったりすると皮膚から化学成分が体内に浸透し、内臓などに貯まるいわゆる「経皮毒」という話。

経皮毒で検索するとたくさん闇が見つかる。実際Googleで「経皮毒」を検索すると真っ先に「日用洗剤に含まれる有害物質でがんなどの原因になる」と断言するコマーシャルサイトがでてくる。このような不安をあおって商売するサイトがメインだが、無邪気に信じてしまっている人たちは驚くほど多い。

皮膚を通過して体内に化学物質が浸透するということはほどんどない。化学物質を扱う時に手袋をするのは皮膚が荒れることを防ぐため。
また市販されている化粧品やトイレタリー製品にそんな危険があるわけがない。国の安全基準は相当に厳しい。

しかし、不安を煽る(商売にしてる)人たちの言うことはとても上手だ。

・成分を見てください。聞いたことがないような化学物質がたくさん書いてあります。(当然検証済みでむしろ体に良いものが入っている)
・人間が化学物質が入った石鹸を使い始めてからまだ数十年。いつ重大な病気が発症するかわかりません。(そんなこと言ったらなんでも危険)

一番狙われるのは小さいお子さんがいる女性。確かにそういう事を言われれば不安になるからこれはとても簡単な商売なのだ。
その販売促進は自然と不安を過激に煽ることになり、非常に闇が深いビジネス。「XXはがんに効く」というと薬事法違反だが「XXはがんになる」といっても違法ではない。

いずれにしても「経皮毒」は医学用語として存在しない。この言葉がでてきたら100%商売と思って間違いない。


なんと自分の車にETC2.0がついていた

2019年05月29日 | ITS

このブログはETC2.0について徹底的に批判をしてきている。
批判する以上は自ら使ってみるのがフェアな態度だろうが、7年前に中国転勤にともなって日本では車をもっていなかったためその機会はなかった。

今年1月にディーラー試乗車の程度がいい中古車を家内用に購入したのだが、先週末一時帰国し高速道路(中央高速)を走行し、初めてついていたETCが2.0であることに気がついた。まったく間抜けなものだ。

ということで、使用レポート。

通常ETCと異なる点は高速道路では交通情報がナビ画面に表示されるということ。
最初に近距離、その後遠方の交通情報が簡易地図で表される。

遠方の交通情報は情報量が多すぎて走行中に確認できるようなしろものではない。また、近距離の情報はほぼ同じものがビーコンでも提供される。この車にはビーコンもついていた。

ビーコンがついているならETC2.0の情報はいらない。しかしETC2.0はビーコンの代替と位置づけられているのでいずれなくなる。
であればETC2.0はつけておいて損はないか、というとそうも言えない。そもそもビーコンの情報も路側表示やハイウェイラジオに対してさほど価値があるものでもない。だからつけている人は多くない。

たまたま中央高速は集中工事で高井戸まで渋滞10キロ120分という異常事態だったが、その情報は路側表示で不足なく入手できた。
また、府中スマートICでおりて国道20号迂回が最適解だったが、これはスマホのGoogleマップが教えてくれた。ETC2.0はなにも教えてくれなかった。

ETC2.0固有の交通情報として前方故障車ありという表示がでたが、10km~15kmおきに設置されてるポスト通過時にしか表示されず、一体どのくらい先に故障車があるのかわからない。実際、忘れてしまうくらい先に故障車が止まっていた。これはFM多重VICSによるナビ画面地図上表示のほうが優れている。

さらに言えば、中央道集中工事に伴って渋滞区間で一般道迂回した場合はETC、現金利用ともに料金調整をしてるが、これはそもそもETC2.0で実現されるという謳い文句ではなかったのか?
実際には2.0でなくとも対応は可能なはずだと指摘してきたが、まさにそのとおりになっている。
リニューアル工事のお知らせページ。料金調整をクリックで調整内容が表示されます。

ということで、正直いってお金を払う価値のあるものではない。割引のある圏央道を日常利用する人以外は「まったく必要ない」と断言できる。

以下、蛇足。
府中スマートICの出口には特にETC専用などの表示はなく、非装着車でもそのまま降りることができる。理由は非装着車も料金所で先払いしているから。しかし、ETC以外も通行可能というような表示は一切ない。これはわかりにくい。そもそも出口に「スマート」という名前をつける意味はないのではないか。


i-dio amanekチャンネル放送休止

2019年05月16日 | モバイル・ウエアラブル

地デジ移行で空いた地上アナログテレビ周波数帯 (VHF-Low帯=99MHz~108MHz)を利用した新放送事業i-dio。VHF-High帯をつかって事業展開したNOTTVが撤退した2016年の時点でいまさら放送?お前バカ (idiot)なの?と言われるのをわかってて付けたような名前だけど、やはり相当に苦戦している。

地デジ移行の際には、アナログ周波数帯が空くのでそれを違うメディアに活用するというのが国の謳い文句だった。筆者には、NOTTVはドコモが、i-dioはFM東京がいやいや国策に協力したようにしか見えない。実際FM東京は最初から地方自治体の協力がなければ黒字化は難しいというコメントを出している。誰が考えてもうまくいくはずのないビジネスなのだ。

i-dio立ち上がりから放送されていた、災害時の車両誘導を目的としたamanekチャンネル。ホンダのテレマティクス、言い換えれば我が国のテレマティクスの第一人者であった今井氏が立ち上げたチャンネルであるが、さる4月21日をもって放送終了となった。今井氏の理念には敬服するが、事業化は厳しかった。

過去記事 V-Lowマルチメディア放送 i-dioとAmanek

i-dio自体、かなりきついはずだ。やはり単純に考えていまさら「放送」はあり得なかった、ということだろう。
また、地上アナログテレビ周波数帯については何一つ有効活用できていないということも国はどこかの時点できちんと説明する必要があるだろう。


滋賀の園児交通事故で考えた日本の信号のあり方

2019年05月09日 | ITS

滋賀で発生した保育園児の痛ましい交通事故は典型的な右折と直進車による「右直事故」
この危険性と、右折矢印信号(対向車を止めてから青にする)の必要性については以前からブログで表明している。

その前に言いたいこと。メディアの報道。保育園の管理に対する追求は言語道断だ。歩道にいて巻き込まれたのにあたかも責任を追求するようなことは絶対に許されない。
これは流石にSNSで批判が上がっていてほっとしている。
でも、悪いのは車とドライバーだ、と言い切るのもちょっとまってほしい。たしかにこの事故は直進車を確認しなかった右折車に大きな原因がある。直進車はおそらくどうしようもなかったし、私が運転していても同じことが起きただろう。一方の右折車にしても、ふと前方確認せずに曲がってしまうということはもちろん「あってはならない」ことだが、こうしたヒューマンエラーだってだれにでも起きうるということを自覚しなくてはならない。

さて、双方青の右直は運転者の技量と注意力に委ねられている。よくある事故は対向直進車の速度を見誤る、または影からでてくる単車を見落とす、というものだろうが、こうしたケースではヒューマンエラーが発生しやすい。

ヒューマンエラーに関し、池袋のブレーキ踏み間違いでも「認知能力が低下した老人の運転」の是非が問題となっているが、これはとても難しい。運転能力がどこまで低下してると危険かという判定は明確にできない。極論でハードルを上げるなら、免許取り立ての人は運転してはいけない、ということになる。

つまり、ヒューマンエラーは起きるものだ、という前提で物事をかんがえるべきだ。
そして、人命に関わるヒューマンエラー発生の危険性があるのであればできる限りのポカヨケをインフラに施すのが行政の役割だし、車両装備はカーメーカーの責任だと思う。

報道ではガードレールがないことを指摘している。たしかにそれも対策の一つであるがわたしはそれよりも事故発生自体を抑制する右折専用信号が先だと思う。
現場の写真からは右折は専用レーンとなっており、右折専用信号の設置はなんの問題もなく可能だ。

もちろん片側一車線の交差点など物理的に設置できない箇所はあるが、可能なところから設置を進めて行くべきではないか。

きちんとした裏付け資料があるわけではないが、感覚として今いる中国佛山順徳ではほとんどの交差点が左折(日本で言う右折)専用信号になっている。
また旅行で運転したアメリカ、ドイツ、オランダ、スペイン、オーストラリアなどでも右折(左折)が対向車と両方青で混交する交差点は少なかったように感じる。
これは右直だけでなく、右左折時の横断歩道でもいえる。海外では横断歩道の信号と車の信号が両方青にならない制御のほうが多いと感じる。

それに比べ、日本の交差点は両方青で右直車/人車混交が多すぎる。

カーメーカーはそれなりに自動ブレーキなどで進化を続けているが、すべての車に高度な安全装備がそなわるにはまだ長い年月が必要だ。
行政は今すぐできる信号機の見直しを行うべきではないか?

蛇足だが、日本にも矢印信号はある。しかしその法的定義は曖昧になっている。通常海外の矢印信号は相対する横断歩道は赤信号で歩行者と混交することはないのだが、日本ではそれがルール化されておらずまちまちなのだ。これも事故を助長しているように感じる。