ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

パナソニックのスマート家電

2012年08月23日 | モバイル・ウエアラブル
パナソニックが、スマートフォンと連携する家電群を発表した。2014年度売上2000億円を目指すらしい。

事前に洗濯メニューを設定出来たり、洗剤の量がわかるとか、料理のレシピをスマホに登録してレンジ設定ができるとか、冷蔵庫の食材管理とか、エアコンの設定が外出先からできるとか。

こんなの必要か?
家電で日本メーカーが生き残るためにはスマート化だ、ということだろうが、企画者は家事をしたことがあるのだろうか?

洗濯機にしても、オーブンレンジにしても、メニューをいじることなんてほとんどない。大抵の場合、操作は決まっている。冷蔵庫の食材なんて、扉を開けて中身を確認する以上の高度な在庫管理が必要だとはとても思えない。

スマホを使って便利になるというよりも、かえって面倒でしかなく、到底普及しないだろう。全く生活者としての視点が欠落している。

しかも、対応するのはおサイフ携帯機能付きアンドロイドだけってのも驚き。

取り敢えずトレンドに乗ってスマホ連携、クラウド対応で作ってみました、出来ることはこんなもんです、でも制約あるから通信はNFCにしておきます、iPhoneの人は対象外だけどしょうがないね。

こんな志の低い商品企画をしていたら、いずれ日本の家電は消滅する。

ITSスポットサービスの利用者評価

2012年08月19日 | ITS
国交省は、ITSスポットの運用開始から一定期間が経過したということで、利用者からのアンケート調査を実施し、その内容を国土技術政策総合研究所のアニュアルレポートの中で発表した。(なぜかA41ページのPDFが1.5メガもあって、中国からだとなかなか開かない。)

書いてあることは以下のとおり。

700人のモニターに合計3回インタビューを実施した。
モニターは一般ドライバー、団体職員(商工会議所、トラック協会等)、バス・タクシー等の事業者、レンタカー利用者、行政関係者等。
サービス開始から間がなかったので、モニターの多くはサービスを経験していない。
具体的には700人のモニターの中で、ダイナミックルートガイダンスは153人、安全運転支援情報は192人しか経験していない。

そのうち、ダイナミックルートガイダンスについては非常に役立ったが20%、やや役立ったが51%。
安全運転支援情報は非常に役立ったが37%、やや役立ったが38%。

調査結果では、非常に役立ったとやや役立ったを合計し、概ね7割の肯定的回答が得られたと結論つけている。
一方で、この調査対象者をみるに、自腹を切って機器をつけている運転者はかなり少ないのではないか、と推察される。

ルートガイダンスにしても、安全運転支援にしても、この装備に対するトレードオフは存在しない。
例えば、この装備を使っている間はラジオを聞けないなどの条件は存在しない。プラスの要素しかないから肯定意見が過半を占めるのはまあ当然といえる。
しかし、実際の市場では「払った対価」というトレードオフがある。
実際に3万円のITSスポット対応ETCを自腹で装着したユーザーへの調査がどうなるのかが気になるところ。

調査の結論は、「7割が肯定しているのでサービスはOK。あとはこの調査を通して得られた評価を一般ドライバーに情報提供し、普及を進めるのだ」としている。
しかし「やや役立った」と回答した人が3万円を出費するとは考えにくい。
私には、この程度の肯定評価の商品が3万円で売れるのか、という事のほうが課題だと思う。

新東名にはVICSビーコンが設置されなかった

2012年08月15日 | ITS
国交省は、ビーコンVICSについて今後の整備は行わず、当面運用は継続するが路側機が老朽化しても更新しないとの発表をおこなった。
http://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/spot_dsrc/vics_info.html
実際、新東名にはビーコンが設置されていない。

しかし、これには疑問がある。

そもそもITSスポットは事故防止に有効というのが最大の設置理由だろう。
実際に国交省は首都高の参宮橋で行った実証実験で事故防止効果があった、とうたっている。
これについては欺瞞でしかない、というのは私の過去のエントリーで散々書いたのでそれをを参照頂きたいが、いずれにしても国交省的にはあくまで事故防止が最大の目的であるはずだ。

現在ビーコンVICSがついている車は、統計がないので詳細は解らないが百万台のオーダーで存在する事は間違いない。すでにそれだけ市場に存在するにも関わらず、新東名にビーコンを設置しないというのはどういうことなのだろうか。
ビーコンでは事故防止効果が低いというわけではない「はず」だ。なぜなら参宮橋実験はビーコンで行われており、それで「効果があった」と喧伝しているのだ。
DSRCのITSスポット対応の車載器をつけてる車なんていいとこ数万台しかなく、この先も急速な普及なんて全く望めないんだから、本来なら当面は新東名もVICSビーコン併設で行くのが筋だろう。

要は、目的は事故防止なんかじゃないのだ。
というか、もっと正確にいえばITSスポットに事故防止効果なんか大してないことを自認しているんだろう。
本当にこれが事故防止になると信じていれば、VICSビーコンを設置しないというのは良心が許さないはずだ。

既に始めてしまった、しかしまるで先が見えないDSRCのITSスポットを何とか形にしたい(もしくは、形にするべく役所はやるべきことはやったという実績作りをしたい)、ということだね。

ITSスポットの現状

2012年08月15日 | ITS
高速道路サービスエリアのITSスポットがすっかり荒廃しているという。
路面のITSスポット表示が剥がれてしまっているが、修復もされていないらしい。
ネットで検索しても、ITSスポットを利用した感想などの記事が見あたらず、利用者の評価はわからないのだが、前に書いたとおり普通の人はSAには休憩や買い物が目的でくるわけで、チマチマと車内でそのSAの情報なんか検索する前にサッサと車を停めて中に入る。
まあ、現実的には成立しないサービスなんだと思う。

ほとんど利用者がいないサービスに対して良質なコンテンツを提供し続けるのは相当しんどい仕事で、作成者のモチベーションも上がらないだろうし予算も削減される。結果、使う価値のないサービスだということでリピーターもいなくなる。そんな悪循環に陥るのが目に見えている。

ITSの本命は路面交通情報サービスだけど、これもネット上でいい話は見あたらなかった。

しかし、新東名はVICSを設置せず交通情報はITSスポットだけにしたらしい。これについては改めて。

湖南省長沙 白タクの領収書

2012年08月09日 | 上海生活
上海を襲った台風に影響で、上海に戻れず昨夜は湖南省長沙に宿泊。
ほとんど日本では知られていない地名だが、中国一の重機メーカー三一重工があり、それに関連する油圧機器や特殊自動車関連の産業が発達している。中国の地方都市の例に漏れず、長沙も高層ビルが立ち並ぶ大都市。

三一重工がある地域は西のはずれで、流しのタクシーは少ない。
そこで白タク(こちらでは黒車【黒タク】という)に頼らざる得ないのだが、白タクも領収書(発票)を発行してくれる。
なんと、センターコンソールにシガーライター電源で動く小さい専用プリンターが入っている。

中国の発票は税務署とつながっており、発行した業者は確実に課税されることから、偽発票というものも存在するらしい。
この白タクが発行する発票も本物かどうかは分からない。

物を買うとき、発票はいらないからもっとまけてくれ、という交渉をする人もいる。
タオバオなどのネット通販でも、出品者にメールで発票入らないといって値段交渉をすることもあるらしい。

ノルウェイの森

2012年08月08日 | 雑記
先日、映画「ノルウェイの森」をDVDで観た。
昔「風の歌を聴け」の映画版をみて大いにがっかりした経験があるのでこれも劇場で観る気はまったくなかったのだが、やはり日本にいるときよりは時間をもてあますことが多く、暇つぶしに観てみた。

村上春樹の作品に流れる空気を映像で再現することはできない。だから、「ノルウェイの森」にもそもそも期待していなかったが、松山ケンイチという役者自身がある程度その世界を再現していたように感じる。とはいえ、私には退屈な映画だった。

この映画をみて、まったく原作を思い出せなかった。ストーリーは直子という女の子が精神を病んでしまうことと、主人公が登場する女性とことごとくセックスをすること位しか、記憶にない。
実際一番記憶に残っているのは冒頭の、ハンブルグ空港へ着陸する飛行機から「ノルウェイの森」が流れるシーン。
そもそも私にとって村上春樹はその場その場のレトリックや言い回しを味わう環境音楽みたいなものなので、ストーリーはほとんど覚えていない。

それよりも、ちょっと驚いたのはこの小説が1987年、今から25年前に発刊されているということ。
赤と緑の「クリスマス装丁」2冊セットが大ブームになったのはもうそんなに昔のことだったのか。もっと最近のことのように思えて仕方がない。
しかし、調べてみると「羊3部作」「ハードボイルドワンダーランド」の次が「ノルウェイの森」で、村上の初期の作品なのだ。

青春が終わる頃のある時点、私の場合は1983年頃をもって過去の出来事が「昔のこと」と「最近のこと」に分かれる。
だから、「風の歌を聴け」と「ノルウェイの森」は私の中では大きな時間的な隔たりがあるように感じるのかもしれない。

中国語を学び始めて感じていること

2012年08月04日 | 上海生活
中国に来て、なんとか買い物やタクシーでの行き先指示はできるようになったがまだ一般会話は全くできない。
英語に関しては他国語を話しているという意識はあまりないのだが、中国語は「呪文をとなえて、発音が正しければ相手が理解してくれる」という状態。まだ私自身に「言葉を話している」という感覚は一切ない。

中国語と英語は文法の考え方が似ているし、また漢字文化を共有する我々にとっては漢字の意味を理解できるので、英語をある程度喋れる日本人に中国語は入りやすい。
しかしその先のアプローチは全く違う。

・英語は初めて出会った単語の意味は調べなくては分からないが、発音はできる。
・中国語は、初めて出会った単語でも大体意味がわかることがあるが、調べなければまったく発音できない。複雑な子音、母音の発音と、四声を間違えると全く通じない。

もっとも厄介なのが発音。
たとえば日本人は区別しない末尾の「ん」のNとNGは、何回聞いても同じにしか聞こえない。というか、鼻にかからないように意識して「ん」ということはとてもむずかしい。
日本人が日本語で安心という時の「ん」はNなんだそうだが、そういわれてもよくわからない。

折角中国にいるのだから簡単な会話力は身につけたいと思ってます。

新東名 開通後3ヶ月間の状況報告(NEXCO 中日本)

2012年08月04日 | 高速道路
NEXCO中日本は新東名の開通後3ヶ月間の状況を公表した。

これによれば、相当数のトラフィック、特に大型貨物が新東名に振り替わっていることがわかる。
対象区間を通過する車両が新しく走りやすい道を選ぶのは、まあいってみれば当たり前のことだろう。

この発表で気になる点は2つ。

まず、10キロを超える渋滞が3ヶ月間で5回しか発生しなかった、ということ。たいした成果のように思える。しかし前年同期の同区間10回を超える渋滞は50回程度。
9割減ったという見方も出来るが、ゴールデンウィークを挟んでの3ヶ月に50回しか渋滞しない「もともと大して渋滞しない路線」だとしか言いようがない。
大型連休の高速道路では10kmを超える渋滞は東名の他区間や中央、関越などで500回程度発生しているのだ。

渋滞緩和という観点からのみいえば、この区間の高速道路複線化のプライオリティが高かったとはとても思えない。

次に、第二東名の平均旅行時間が97km/hという点。制限速度100km/hを守って97km/hを達成することは至難の業だろう。おそらく実際の巡航速度は100km/hを超えている。
この道路の制限速度に関しては、100km/h規制を120km/hまたは130km/hにするべきだという議論があったが、これは見送られた。
というか、おそらくは120km/hにして仮にそれが原因で事故が発生した時の責任を誰も取りたくないのだろう。

しかし、現在の自動車の設計を考えると100km/hと120km/hに大きな安全上の差異はないように思うし、他国をみれば道路の走りやすさに応じて120km/h制限を採用している国のほうが圧倒的に多い。

実はここには他の理由もある。大型トラックの制限速度は80km/hで、さらに90km/hのリミッターがついている。
乗用車の制限速度が120km/hになると、大型トラックとの速度差が事故を誘発するのではないか、という危惧もあったようだ。
しかしこれも走行路線の厳格化などで対応は可能なのではないかと思う。

いずれにしても、制限速度論議が決着したのは今年の3月。どう考えても作ることありきで、本来一番重要である活用についての十分あな議論や準備がされていたとは思えない。