ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

EVについて真剣に考える

2024年03月10日 | 雑記

今年に入って「EVの急減速」が話題になっている。やはりEVはダメなのだろうか?
ここですこし突っ込んで考えてみたい。

「急減速」はまさに加速力が弱まっただけで、対前年での増加は続いていることを間違えないほうが良い。
この2年くらい急拡大したということでいまでもEVは増加している。

しかし、ここにきてEVよりも価格と使い勝手にまさるHEVが売れているのは事実であり、急拡大にブレーキがかかったという表現に誤りはない。

日本のインターネット世界には相当な数のアンチEV派が存在する。YahooニュースEVに関する記事には山のようにアンチのコメントが付く。
これは非常によくない状況だと言わざる得ない。
(なぜ日本のネット民にアンチEVが多いのか、という考察も興味深い分野だが、それは改めて)

先ず誤解してほしくないのは、私は決してEV 推進論者ではない。しいて言えば「反アンチEV」であり、その理由はアンチEVが日本の自動車産業、ひいては日本そのものを衰退に追い込むという危機感を持っているからだ。

 アンチEV派の主張は、「EVはまだ使い勝手が悪い商品である」、「EVはその実ガソリン車に比べてカーボン消費が大きい」、「燃える」「電池の処理が確立していない」といったあたりに集約される。それはどれも事実であることを認めよう。
そのうえでの懸念があるのだ。

EV はまだ使い勝手が悪い。走行距離、充電時間等。しかし、忘れてならないのはEV及びそのインフラはまだ発展途上製品だということ。
世界中で研究開発が進められている以上、今後個体電池等のバッテリー関連のブレイクスルーはいくらでも起こり、実用上不満のない製品になるのにそう長い時間がかかるとは思わないし、充電インフラの整備はガソリンスタンドよりはるかに簡単であり、その気になれば時間の問題だろう。
これはバッテリー発火問題しかり。

もう一つ、EV は実際にはエコではない、という意見があるが、これは試算によりいろいろ意見が分かれると思うが確かにEVは車両と電気の生産過程を考えればカーボンニュートラルではない。
しかし、これは「だからどうした」なのだ。世界中でEV化が進められており、いまさらそんなことを言ってもEV化の流れは止まらない。ここが重要。グローバルな視点では正論が通用する世界ではない。いくら日本が「EVは実際言うほど環境によくない」と主張したところで大きな流れを変えることはできない。

EVはその成長スピードが弱まり、その需要がHEVに流れている。これはHEV で世界トップのシェアと技術をもつトヨタを利している。
これは大変結構なことだ。しかし日本のアンチEV派が主張するように、EVは衰退しHEVが主流になる、トヨタ、ひいては日本の自動車産業一人勝ちになる、という考え方は極めて危険だと言わざる得ない。

当面トヨタはHEVで相当な利益を得ることになる。これはトヨタにとっては追い風になることは間違いない。しかし、それは将来のEV開発の十分な原資が確保できた、という意味だ。
じっさいトヨタはその辺を理解していると思う(理解していてほしい)

しかし、日本の世論がアンチEV(およびアンチEVになんとなく影響された大衆)によって「EVなんてだめだ」という方向になってしまうと、国内向け車両でEVが売れない、国内の充電インフラが進まない、つまりさらにEV後進国になってしまうだろう。事実すでに日本のEV普及はタイよりも遅れている。日本市場では中韓ブランド車は全く売れないから国産メーカーが魅力あるEVを発売するまで日本のEVシェアは拡大しない。(韓国ブランドにネガティブなイメージがあるのは世界で日本だけ)
日系メーカーも輸出向けにEVを出して進めていけばいいといえはその通りだが、足元の市場でネガティブだとなかなか進まないし、なにより部品サプライヤーといった裾野の拡大が遅れてしまう。
前述のタイですでにその危機が迫っている。タイはアジアのデトロイト、かつ日本メーカーの独壇場なのだが、中国EVメーカーに浸蝕され始めた。産業ごと中国に取られる可能性がある。中国メーカーが本格的にタイ生産をはじめたらアジア市場は完全に持っていかれる可能性が高い。

一般にネットのアンチEV派の人たちは多分に愛国的な人たちが多いように思うが、アンチEVの世論が逆に日本車の国際競争力を奪ってしまう可能性を考えたほうが良い。
中華EV?燃えるんでしょ(笑 で思考停止してはならない。彼らはかなりのスピードで進化している。

スマホでした失敗は日本の基幹産業である自動車では絶対避けなければならない。