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保育条件が子どもの発達に与える影響

2011-02-15 22:25:03 | 教育・子ども

先進国の保育者配置基準

保育条件が保育の質に与える影響

欧米の保育園で日本に比べてはるかに高い水準の保育者配置がなされています。そのもっとも大きな理由の一つは、保育者の配置状況が子どもの発連にきわめて大きな影響を与えることを明らかにした「保育の質」研究が蓄積されてきたからです。
 そこで、保育の人的条件と保育の質の関連を明らかにした代表的研究としてよく引用される、アメリカの全国規模の調査結果を紹介してみたいと思います。(ロップ他『保育センターの子どもたち-保育園全国調査最終レポート』

この調査は、保育の基準の中でも保育者にかかわる次の三つの条件に焦点を当て、それが「保育の質」に与える影響を調べたものです。
 ①一クラスの子ども数 
 ②保育者と子どもの比率
 ③保育者の資格

 「保育の質」については主として次の三種類のデータを使って、比較が行われました。
 A観察による担任保育者の行動分析
 B保育園での観察による子どもの行動の分析
 C入園した直後と、その半年後の二回行われた知能テスト(言葉の理解力と図形・空間認識の
   二種類のテスト)の得点変化

クラス規模が小さいと落ち着いて活動に集中できる

次に、子どもの行動を観察した結果、クラス規模によるちがいが認められたのは、クラス規模が小さければ小さいほど、「考えたり工夫する行動」と「協力する行動(他の大人や子どもからの働きかけに対して積極的に応える行動)」が増え、「課題的活動への不参加」「めあてのない行動」が減っています。また図にはありませんが、子ども同士の言い争いやけんかも、クラス人数が少ないほど減っていました。つまり、クラスの人数が多くなると、クラスに落ち着きがなくなり子どもの集中度が低下し、子どもの自発的な工夫や協力も減少する傾向が表れたのです。

 

さらに、知能テストの結果にもクラス規模によるちがいが表れました(図7・8)。保育を半年受けた後に行ったテストの結果は、ことばの理解力を調べるテストでも、図形・空間認知を調べるテストでも、クラス規模の小さい子どもたちのほうが得点の上昇が大きかったのです。


 そして、テストの得点上昇の「原因」を分析した結果、「クラス規模の小さいことが自動的に子どもの得点を上昇させるのではなく、(図形・空間認知のテストの場合は)子どもたちが能動的で、何かに熱中している時間の長いクラスで生じること」「(ことばの理解のテストの場合は)子どもと多くの時間保育者がかかわっているクラスで大きな得点上昇が生じることが明らかになった」と述べています。

 つまり、「子どもが集中して活動に取り組める落ち着いたクラス」と、「子どもと言葉で豊かにやりとりしている保育者」が、テスト結果に直接影響しているのです。そしてこの二つの保育の質の図8知能テスト(図形・空間認知)の得点上昇 図7知能テスト(言葉の理解)の得点上昇要素を確保するうえでクラス規模が大きいのは、大きな妨害要因になってしまうのです。

(紹介しませんでしたが、保育者の資格・専門性もこの二つの要素に大きな影響を与えることが確かめられています)。
 この結果を受け、報告書は少なくとも「クラス16~18人に保育者2人」という配置基準の法制化を早急に実現すべきと提言しています。

 これまで述べてきたように、カリキュラムや保育園の人間関係の質なども、子どもの集中度や協力行動、あるいは保育者の子どもへのかかわり方に大きく影響しているのです。しかし、そういうさまざまな要因の影響があるにもかかわらず、クラス規模の大小によって、A~Cいずれの指標においても一貫して明白はちがいが表れたということは、「人的条件」が子どもの発達におよぼす影響の大きさを物語るものです。
いまの日本の最低基準の抜本的な改善、これは私たち大人の子どもに対する責任ではないでしょうか。(大宮勇雄ー保育の質を高めるより)