ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

狂女の魂

2006-03-21 04:40:03 | 南アメリカ

 ”TANGO EN VIVO” by ADRIANA VARELA

 アルゼンチン・タンゴ界異形の歌手、アドリアーナ・ヴァレラのライブ盤である。

 突然聞かされたら、歌っているのが男か女か判断に迷う人もいるだろう。ドスの効いた低音で、心のうちの激情を叩きつけるように歌いかけてくるその迫力。なんだったらハードロックとかヘビメタとかそんな言葉も動員して、彼女の歌唱の破壊力を紹介してもかまわない気がしている。

 アドリア-ナの姐御肌のきっぷのいい歌いっぷりを楽しむなら、やはりこのライブ盤にすぐるものはないだろう。冒頭の「狂女の魂」で、もう一気に彼女の世界に持って行かれる。

 タンゴの世界で普通に歌われる色恋沙汰よりは、どちらかと言えば”人生”とか”定め”とかいう代物に戦いを挑むかのような彼女の歌世界は、ポルトガルのファドなども、ふと連想させる部分があるのだが、ただちょっと騒々し過ぎるかも知れない、ファドを引き合いに出すには。

 19世紀末、大西洋を望む南米1の港町として経済的繁栄を謳歌し、またさまざまな文化が混交していたブエノスアイレス。その荒っぽい植民都市の血の騒ぎの中から生まれた、猥雑なダンスミュ-ジック。発祥当時のそんなタンゴの息吹が、彼女の歌には今も生きている。

 まあしかし、おっかねーだろうなあ、アドリアーナがホステスとかやってる飲み屋で飲んだら(笑)