”Pshenychne pereveslo”by Oxana Bilozir
ウクライナの民謡調ポップスの大物ということ。歌のお姉さん上がり風?の揺るがぬきっちりとした唄いっぷりで、民族色豊かなメロディを歌いついで行く。
しかし、東欧圏というか旧ソ連圏諸国のこの種の盤の製作者たち、もう少し伴奏に気を使わないか、と思わないでもないのよなあ。アップテンポの曲はどれも行進曲風の処理であったり、なんというか一本調子で音楽の陰影というものを考慮に入れていないのだ。いかにも、「党大会の会場に流せば景気がいいだろう」なんて価値観で音楽を学んできた人たちの仕事、という感じ。
まあでも、その辺の融通の利かなさというか石頭ぶりが、いかにも旧共産圏らしい異世界ぶりで逆に良い、という面白がりかたもあるのだから、マニアの感性もどういうものだか。まあ、私のことなのだが。
歌い上げられるウクライナの調べは、ロシアのものとは微妙に違うのだろうが、あのスラブの哀愁を濃厚に内に秘めた、これもまたマニアにはたまらないもの。暗闇の中に一筋灯す明かりのような、ほのかな希望や憧れを胸に秘め、広大な大地の永遠の苦悩や孤独を生きてきた人々の、静かな情熱が奥深くに力強く脈打っている。