あるSP盤研究家の方のブログを読んで、藤原義江の「出船の港」が捕鯨船の歌だと言うことを知り、あっそうだったのかといまさらながらに驚いた次第で。
なんて書いても、この歌や、そもそも藤原義江なんて歌手を知っている人が今やどれくらい残っているのやらと心配になってきますが、まあ、このまま行くよりしょうがない(笑)
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ドンとドンとドンと 波のり越して
一挺二挺三挺 八挺櫓で飛ばしゃ
サッとあがった 鯨の汐の
汐のあちらで 朝日はおどる
エッサエッサエッサ 押し切る腕は
見事黒がね その黒がねを
波はためそと ドンと突きあたる
ドンとドンとドンと ドンと突きあたる
風に帆綱を キリリと締めて
梶を廻せば 舳先はおどる
おどる舳先に 身を投げかけりゃ
夢は出船の 港へ戻る
(時雨音羽作詞・中山晋平作曲/昭和3年)
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なるほどなあ、こうして歌詞を改めて検証してみれば、どうみたって勇壮な捕鯨の歌です。子供の頃、もうその時点で十分懐メロだったこの曲を聴いた時には、そのあまり馴染みのないクラシックの歌唱法と「どんとどんとどんと」なんて奇矯とも感ぜられる歌いだしの歌詞の響きとで、「妙な歌だなあ」としか感じられなかったんだけど。
藤原義江といえば、戦前の浅草オペラ出身で、欧米でも人気を博し、帰国してからも藤原歌劇団など、日本のオペラの振興に尽くした人気テノール歌手ですね。その彼の大当たりの一枚がこれ、「出船の港」と言う次第で。
などと言っているけれど、もちろん彼のこと、詳しくなんて知りません。手元にある藤原義江の音源だって、戦前のタンゴを集めたCDセットの中の何曲しかない。本来、クラシック歌手の彼を、それだけであれこれ言うわけにも行かないんだけど。
その歌いっぷりというのも、いまや聞かれないタイプの、オヤジくさいなんて言っちゃ失礼だな、強力に”父性”を感じさせるものであります。
捕鯨を規制しようとする動きは、とうに国際的な潮流として固定してしまったかに見えます。
この動き、もともとは60年代、折から凄惨を極めつつあったベトナムにおける戦役から、各国市民たちのヒューマニスティックな視線をかわすためにアメリカが戦略的行動として煽ったのが起こりと聞くにつけても、また、保護されて増え過ぎた鯨たちの食餌の大量捕食により、生態系がすでに狂いつつあると聞くにつけても、納得できない思いを押さえられないのでありますが。
ここで唐突に昨日の記事への続きとなりますが、どうですかね、日本国民の皆さん、この「出船の港」を新しい日本の国歌として推奨したいんだが、私は。いや、本気で。