”GENGHIS KHAN ”by DSCHINGHIS KHAN
モーニング娘の妹分、みたいな存在のベリーズ工房ってグループがいるんだけど、そのコたちの新曲が、昔、あれは20年以上前だっけ、ディスコ・ブームのおりに流行った”ジンギスカン”だ。
”ジン、ジン、ジンギスカ~ン♪”とかいうロシア民謡まがいのメロディを、土木工事みたいなリズムと下品なユーモアで処理した曲である。
あの曲、リアルタイムで聞いたときもずいぶんくだらない唄だなあと辟易したんだが、今、改めてベリーズ工房の唄で聴いてみるとやっぱり愚劣な曲というほかはなく、なぜあんなものをわざわざリメイクしたのか、その理由が分からない。
あんな曲が意外にいまどきの連中には受けるのかな、と思っていたら、売る側が期待したほどは売れていないようだと言う情報が入って来た。なにをやりたかったのかね、あそこの事務所は。
しかしあの曲、なんでロシア風メロディで”ジンギスカン”なのかが分からない。西欧人の感覚ではモンゴルはロシアの一部なんだろうか?なんて正面から不思議がるのもアホらしいんだが、ちょっと調べてみると、原曲を歌っているのはドイツ出身のグループで、グループの名称そのものがジンギスカン。ますます意味分からず。もう、考えるのも嫌になって来るが。
さらに、このジンギスカンなるグループの他のレパートリーのタイトルがムチャクチャである事実も気になってきた。
「さらばマダガスカル」「サムライ」「イスラエル」「栄光のローマ」「めざせモスクワ」「インカ帝国」「哀愁のピストレーロ」「闘牛士の死にオーレ!」などなど。なんじゃこれは。これらはいったい、どのような曲であるのか。どれも全然知らないんだが、聴いてみたいような聴きたくないような。
まあ、「サムライ」は中華風の曲という解説文も見つかったので、他の曲もそのレベルの底の浅い”ワールドもの”ぶりであって、さほど深刻に受け取るほどのものではなかろうと想像はつくのだが。
でも、この辺で我が好奇心はほんのちょっとムズムズしてくるのだ。ともかくほのかにワールドミュージックの匂いがしてきたのだから。
しかも、裏町歌謡愛好家としては認知せざるを得ない、猥雑な庶民のエネルギーとか、その種の匂いである。そのインチキ臭さ、アナーキィなデタラメさ加減の向こうから漂ってくる、救いようのない聖凡人たちの実もフタもない日々の祈りのエコーである。
なおかつ、ジンギスカンのメンバーもドイツ人ばかりではなく、ハンガリー人やオランダ人、さらには南アフリカ人までも在籍しているというカラフルな民族構成であったようだ。なんだったんだ、こいつらは?
この辺り全部含めてこのジンギスカンなるグループ、あれこれ受け狙いの乱痴気騒ぎを重ねた結果の偶然として、当時の東西冷戦構造やら植民地対宗主国の構図やら、いろいろ絡まりあった非常にややこしい伏魔殿としてのヨーロッパの戯画になっていたと取ってよいのではないか。
などと思いつき、あれこれ検索をかけるものの、ダンス・ミュージックのグループ、”ジンギスカン”に関しては、その方面の分析や、あるいはそのための資料には出会えず、ただ「アルバム全曲外れなし!ぜ~んぶゴキゲンなダンスサウンド!」なんて浮ついた惹き句に出会うのみ。
うん、まあ、私のようなウワゴト言いつつディスコ音楽の周辺を嗅ぎまわる、なんてのはヤボもいいところなんだろうなあ。
そもそもどのようなものが音楽としての存在意義を持つか、なんてつまらない事を言う気もないが、”ジンギスカン”のやっていたあの騒がしいだけの曲は、聴いているだけでも、ただひたすら苦痛だ、というんでは、やはり勘弁してもらうより仕方がないだろう。
でもねえ、なんか心の底で気になるものがないでもないのよなあ。なんかあるのかも知れないよねえ、あのバカ騒ぎの底には。