”Johann Sebastian Bach - Notenbuchlein”
by Koen Plaetinck
クラシック畑のマリンバ奏者が、バッハの作った”無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ”とか”無伴奏チェロ組曲”なんてあたりをマリンバのソロで吹き込んだ一枚。 昨年のクリスマスに買ったのだった。そして年を越し、いまでも何かと言えば手元に置いて鳴らしてしまっている。
愛聴盤とかいうより、この音をボリューム抑え気味にして流しておくのが快いのだ。シンと心が静かになって、自分の意識の深いところにある小部屋へ降りてゆく、みたいな感じが気に入っている。
マレットを持って木片を叩くマリンバという楽器の演奏上の特性からか、幾分演奏のタッチがフラットになっていて、若干のテクノっぽさを醸し出している。その一方、木片から発生する音故の、どこか暖かでユーモラスな感触が楽しくもある。
聴いているこちらの頭の中に浮かんでくるイメージは、人目に触れるのを厭い、人里離れた廃屋に住まいする伝説の妖精属小人目に属する生き物が、律儀にバッハを奏でる姿か。
信じられないくらい冷え込む夜が続くこんな冬は、この木片の歌うバッハが、凍り付いた空気を突いて夜の中に広がってゆくのが見えるように思える。