”Elegy Nouveau”by Yang Pa
そんなわけで。”韓国のロックな女の子たち”なるテーマが気になり出して、しばらく前からあれこれ盤をあたってみたりしているのだが、なに、そんなジャンルやら傾向やらが存在していると確信できる実態をつかんでいるでもなし、「こうだったら面白いだろな」なんて空想をしているだけである。
たとえばこのYang Pa(ヤンパと発音するんだろうか?)などは、韓国において”女の子がロックする道”を切り開いたパイオニアのひとり、なんて話を聞いたことがある。最近も、若手のミュージシャンを”舎弟”のノリで引き連れて”姐御”の貫禄十分でレコーディングした新譜を発表したみたいだが、まあ、それも恐れ多いんで当方は、ジャケ写真の出来の良い昨年出たこの盤でも聴いておきたい。
と、CDを回してみたんだけど、戸惑う部分も少なくなかった私なのでありました。歌は確かにうまいんだろうけど、どうも彼女、何をやりたいのかわからない。
彼女の場合、ロックというか「韓国歌謡にR&B要素を持ち込んだ人」との評価もあるわけなんだけど、日本でそんなポジションの人といったら、もうドロドロに黒っぽい歌唱で盤一枚塗りつぶすことになる。私も実は、そんな世界を期待していた。が、この盤に限って言えば、なのかもしれなけど、どうもいろいろな要素を入れ込みすぎているんじゃないのか。
曲により、軽いポップスっぽくなったり、突然タンゴ調が出てきたり、落ち着かないし、ゴージャスに盛り上がるバッキングにも馴染めない。それに乗せられてか時にスムーズに響きすぎる彼女の歌声も、何か屈託なさすぎて、こちらの心に引っかって来ない感じだ。
この盤において一押しらしい2曲目の「痛い」とか、5曲目「友人」みたいに本来の粘っこい黒さの歌声が堪能できるバラードものには聴かされてしまうのであって、この傾向のものを満載してくればきっと好きな盤になっていたであろうはずなのに、残念な気がする。(”痛い”を下に貼っておくんで、お試しを。こういう曲を歌ってくれればいいのに)
まあ、実力派がキャリアを重ねてくると、いろいろ脱線してみたくなるって事なんだろうか。
ここで先日、紹介したレディ・ジェーン嬢のことなど思うと、右も左もわからない駆け出しの歌手が、追い込まれた末にふと自覚もなしに歌ってしまった傑作、なんてドサクサ主義のロマンに私の興味はやっぱりむいているんだなあ、などと改めて思うのでありました。