”Beautiful Life”by Zion
パラレルワールドもののSFめくが、もし別の偶然が積み重なっていたら、この歌手はこの路線を行っていなかったのでは、なんて空想してみるときがある。
新人歌手というのかどうか微妙な存在の韓国の歌手、Zion嬢の、ヒット曲”スーパーマン”を含む今年出たミニアルバム、”ビューティフル・ライフ”は、ピンクを基調にした、カラフルでリカちゃんチックなデザインのジャケに収められ、男たちばかりでなく若い女の子たちの共感も呼びたいのかな、とも想像させられる作りである。
音の方は小股の切れ上がったZionのパワフルな歌声が炸裂した小気味よい仕上がりになっている。ミニアルバムゆえ全7曲ながら、R&B調のバラードばかりが並べられ、歌手としてのアピールのしどころもきっちり計算済みといったところだ。
ところが。彼女はいかにも”ブラックミュージック好き”的なフェイクを織り交ぜながら熱唱を繰り広げているのだが、その底にあんまり”黒っぽい”という感触もないみたいな感じも受けるのである。
では何があるのか、と言えば、それは演歌なのではないか。
ワタクシ感じるのだが、Zion嬢のソウルフルなシャウトの芯の部分には、ド演歌の魂が横たわっている。彼女は濃厚な演歌魂のDNAを抱えてこの世に生を受けており、本来、ド演歌の歌い手として名をなすべき人だったのではないか。それもかなり男前な。日本だったら大漁旗をバックに「男の~船出はよ~♪」とか男歌を歌い上げていたんではないか。
まあ、私にはそう聞こえる、というだけの話、なんの証拠も提示は出来ないのだが。が、そう思いつつ彼女の歌を聴くと、演歌と二重映しになったソウルミュージックという、なんともアンバランスなバランスの上に成立しているZionの歌世界、なんともワールドミュージック的な輝きを楽しめる一枚としてスキモノ諸氏には推薦申し上げたい気分なのである。
ところで、先に新人と言えるのかどうかなどと書いたが。Zionは実は3年前にフルアルバムをリリースしているのである。で、今回のこのミニアルバムには、新曲の”スーパーマン”ほか一曲に、3年前に出たアルバムからピックアップした5曲を加えた、半端というか手抜きとも言える代物なのである。私のようにデビューアルバムを持っている者にはシングル盤としての価値しかない。(つまり、デビュー・アルバムはそれほどまでに売れなかったと解釈していいのだろう)
妙な視点からではあるがZionのファンである私としては、今度出る(出ると期待する)2ndアルバムこそ、きっちり手のかかったものであることを期待するばかりである。