ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

2012年度・年間CDベスト10

2012-12-27 09:45:42 | 年間ベストCD10選

 1)O.K.Boe A I - Kawatip Thidadin (Thailand)
 2)Ben Buraya Ciplak Geldim - Nil Karaibrahimgil (Turkey)
 3)Guzo - Samuel Yirga(Ethiopia)
 4)No Sudden Movements - Gaiser Presents Void (Germany)
 5)Sou Hrostao Akoma Ena Klama - Peggy Zina (Greece)
 6)MJK - Haifa (Lebanon)
 7)L'ombra Della Sera (Italy)
 8)Purely - Lily Chan (Hong Kong)
 9)Tortadur - Nazarkhan (Uzbekistan)
 10)Mukimukimanmansu (Korea)


 さて、年に一度のお楽しみ、私版・年間ベストCDの発表であります。え。お前のベストなんか楽しみにしてない?いや、私が楽しみにしてるの。
 毎度お馴染み選考基準は、今年発表された新作盤のうちから選び、だが盤が外国から入ってくる時間差も考慮し、一年くらいの誤差はお許し願う、また製作年度のよくわからない盤に関しては、選者の都合の良いような解釈をさせていただく、ということになっております。
 付記・アフリカに関しては、アナログ・アフリカに代表される過去の音源発掘に相変わらず夢中で、新録はろくに聴いていない。アフリカは思い出ならずや。というのも困るけどな。

 1)まあ、要するにこの子のこのジャケ写真を、我が年間ベストCD発表のアタマに掲げたかった、今年の思い入れはそれだけでね。
 いいじゃありませんか、タイの土俗ポップス・モーラムを歌う、おしゃれな女子大生歌手ってのは。歌声もサウンドもポップで新鮮で爽やかで可愛くて素敵だ。こういうのを一位にしたいね、アイドル好きのワールドものファンとしては。
 
 2)トルコの新感覚派女性歌手とのことで。でも当方が気に入ってしまったのは、彼女の音楽の向こうから、60年代ポップス、それもなんだか日本のGSみたいな感触が伝わってきたからなのであって。こちらの勘違いなんだろうけどさ。

 3)エチオピアのピアニスト。エチオピア音楽でジャズ・ピアノを決めてくれるのだけれど、ともかくその徹頭徹尾、ドス黒いノリで、ゴリゴリに迫るズージャ魂に惚れた。そのバンドマン臭さがカッコいいんだ、とにかく。

 4)ジャケが入っていたビニール袋に貼ってあった「Made in Germany」の文字がかっこよくて仕方がない。まあ、たんなる商標なんだけど。
 ドイツのテクノの名人が発表したアンビエントな一発。
 凍りつくベルリンの街の大気を貫き、闇の中に木霊する電子音が鋭利なメスみたいに煌く。

 5)ギリシャ歌謡のライカを、ヒット曲に一つもまぐれで出ないかしら?ってなノリのナウい(というほどナウくはない)バッキングで婀娜っぽく歌う。
 この辺に漂う哀愁、当方のテーマとしております”港々の歌謡曲”の世界に、非常に似つかわしい匂いを漂わせてくれていると思う。

 6)この盤、エロいダンスポップ盤というのが定番の評価みたいだけど、私みたいに少年の日の夢にいまだ生きている者には、なにやらSFっぽい世界だなあ、と聴こえる。打ち込みのマシンもペラペラな材質で出来上がった安物のおもちゃみたいな手触りで、空中に浮かんでいる。そこに立ち込める、ピンク色の夜霧みたいなハイファの唄声。その非現実的な美しさが素敵だ。

 7)この盤限りの覆面バンドが演ずるのは、70年代イタリアのテレビで放映されていた三流SF映画への音によるオマージュ。サウンドも当然、確信を持って過去の亡霊、70年代のイタリア・プログレの再現に徹している。
 アナログシンセやらムーグやらのレトロな電子楽器が夜霧のような音幕を巡らせ、リードギター代わりのテラミンが地下室の中で悲鳴を上げる。この淫靡な美意識に、夜はますます深い。
 
 8)懐かしいあの”返還”前の日々。リリィが歌うのは、香港がまだまだ素敵だった頃の歌だよ。まるで風に吹かれて飛び去っていった思い出みたいに響く、淡く透き通ったサウンドと歌声の行先に、帰れる場所があるみたいに思えてくる。どこかにきっと。

 9)この歌い手が祖母の法事の席にやって来て歌ってくれたことは、よく覚えている。なんてエピソードがあってもいいような気もする。あるわけがないにしても。
 それは子供の頃、祖母の背中に負われて聴いた遠い日の子守唄のような、あるいは高熱にうかされて布団の中で寝汗にまみれながら見た奇怪な悪夢の中で鳴り響いていた歌にも似ている。
 彼女は遠くウズベクの地で砂嵐に吹かれながら、我々はこの東の小島で、時のはじめから同じ歌を歌ってきた同胞なのだ。

 10)実は、これをベスト1に選ぶって行き方もあったんだけど、そこまでの度胸はありませんでした。
 ギター&民俗パーカッションの、韓国の女の子二人による笑いと狂気のユニット。韓国の民族音楽やロックやフォークがユーモアとヒステリーの狭間を、溶け合わぬままの塊で漂流している。
 実は彼女等の演奏、めちゃくちゃをやっているのかと思っていたのだが、イントロでトチり、何度も同じ演奏をやり直すライブ映像を見、これはすべてアレンジされたものを演奏しているのだと知り、ますます頭を抱えた。
 ああ、やっぱり一位にしておくべきだったかな。このヒリヒリする違和感が大好きだ。



年間ベストCD10選・2011

2011-12-26 06:04:51 | 年間ベストCD10選

1)Dilara・Bu Fasulye 7,5 Lira / Ankarali Ayse Dincer (TURKEY)
2)Hal Layle Ma Fi Noum / Najiwa Karam (LEBANON)
3)Avancer / Zia (KOREA)
4)Kon Tee Tur Kid Tueng / Earn The Star (THAILAND)
5)寄付 / 秀蘭瑪雅 (TAIWAN)
6)Opou Agapas Ke Opou Gis / Maria Anamaterou (GREECE)
7)la Giuong / Nhu Quynh (VIETNAM)
8)Sozyaslarim... / Deniz Seki (TURKEY)
9)Bent Aboi / Mashael (SAUDI ARABIA)
10)Tell My Sister / Kate & Anna McGarrigle (CANADA)

 という訳で、毎年末恒例の年間ベスト10であります。例年通り、昨年の新録盤および、我が国に入ってくる時間差を考慮しまして若干の一昨年盤より選んでおります。
 今年はすっきりと「これが俺の年間ベスト1だ」と言い切れるものに出会えなかったことが残念。例えばこれまで挙げて来たチベットの女性シンガーソングライターであるとか韓国の少女トロット演歌のように、「恐れ入ったか!」と挙げられるものが欲しかったなあ。
 また、トラッドやトロット演歌あたり、すごいのが出てくるんじゃないかと期待していたんだけれど、意外に盛り上がらなかった感じだ。まあ、こちらのアンテナに引っかからなかっただけなのかも知れないけど。
 その一方、例の震災でなんか鬱屈してしまった心に、なぜか妙に響いたトルコ歌謡でありまして、2011年はやたらトルコものばかり聴いていたなんて事情もあり、我が音楽ライフにも、それなりの影は落ちたと申せましょうか。

 1)アンカラリなるトルコのローカルポップスなんだそうですが、詳細はまだ知りません。ともかくドンツクドンツクとパワフルに脈打つリズム、呪文のようなプリミティブなメロディがワイルドにコール&レスポンスされ、キーボードやギターが奇天烈なフレーズを連発しながら歌声をはやし立てる、この猥雑な楽しさ。非常にアインラ・オモウラ度の高い音楽で血が騒ぎます。
 2)上に続いて猥雑合戦ですが。彼女のような高名な歌手が、このような泥臭い音で勝負してくれる、そこが嬉しいですね。
 3)大都会ソウルの黄昏時を漂う孤独の影を歌う。この情感過多とも言える切々たるバラードこそ、実はあのポンチャク・ミュージックと裏表の構造となっていると思うのです。
 4)都会派っぽく洗練されてはいても、やはり”タイの演歌”ことルークトゥンであります。この切々たる情感の流れ、裏町歌謡の血は脈々と息ずいております。
 5)3,4,5と3作続けてしまいました、懐念歌謡シリーズ。これはほぼ全曲、スロー物でありまして、いやが上にも慕情をかき立てます。雨の高雄に涙の基龍、今も心に優しく浮かぶ。ああ台北の灯よいつまでも。
 6)今日の感覚で古雅な楽曲を。クールな手つきがかっこいいです。
 7)ベトナム民歌の今日的展開は、歌手ニュ・クィンにとってもはや、ひとつの美学として完成されているのでしょう。
 8)黒のムードがかっこいい。
 9)地の底から湧きいでたような怪奇なリズムをバックに、清純な声を凛と響かせる。こんな人もいるのか。清楚にしてミステリアス。深いねえ。
 10)カナダのベテラン・シンガー・ソングライター姉妹のためのメモリアル盤であり、ファンだった者にはたまらなく切ない唄たちの記憶。




2010’年間ベストCD10選

2010-12-27 01:07:32 | 年間ベストCD10選
1)”Rainbow” by Moon Bora (korea)
2)”Ctrl Alt Delete” by Free the Robots (USA)
3)”Shangaan Electro”
;New Wave Dance Music From South Africa (South Africa)
4)”My Room in the Trees” by The Innocence Mission (USA)
5)”315360” by Kim Yoon Ah (Korea)
6)”Assume Crash Position” by Konono No1 (Congo)
7)”Air Chall:Lost” by Rachel Walker (Scotland)
8)”Mektubumu Buldun Mu?” by Goksel (Turkey)
9)”Fair Ladies” by Fair Ladies (Thailand)
10)”he Mbira Music of Golden Nhamo” (Zimbabwe)

 毎度!!!一年の締めくくり、年間ベストCD10選であります。
 形としましては、今年発売された全世界の盤の中から選ぶが、昨年の作品も我が国に入ってくる時差(?)を考慮して選考の対象とする。製作年度の分からない盤は、こちらの都合の良いように解釈させてもらう。
 また、昨年まであった”一国一枚、一ジャンル一枚”なる縛りのうち、一国一枚の枠は廃止しました。一ジャンル一枚は変わらず。だってこれを廃止しちゃうと半分以上がトロット演歌になりかねないから。
 今年は、テクノやエレクトリコとか呼ばれる音楽にどんどん興味が出てきたり、囁き声系の北米女性フォークに惹かれたり、いろいろ我が音楽観に変化の出た年であり、気が付けば思い入れているはずのタンゴやロシアのポップスをろくに聴いていなかったり。後年、振り返ったら過渡期のベストとなるのかも知れない。

1)猥雑さの勝利だ。こんなものを一位にしてしまった自分が恥かしくてならない。性急に打ち込まれる機械のリズムに乗って、うんざりするくらいにベタなド歌謡曲のメロディがロリ声で歌い飛ばされて行く。この刹那的快楽のミもフタもなさに、韓国の人々が覗き込んでいる時代の深淵を垣間見た気がする
2)アメリカの黒人DJが作った音楽をここに置く日が来るとは思わなかったが。興味を持ち始めたエレクトロニクス・ポップから。戦前のプラハのユダヤ人街の地下室で封印されたはずの人造人間ゴーレムが、どこをどう流れたか今日のアメリカ西海岸の黒人街で目を覚ました、みたいなグロテスク劇。重苦しいビートに乗って飛び交う電子音や生弾きの楽器が形成するカオスに感性をねじ伏せられる快感・・・
3)どう説明したらいいのか分からん。ともかく、ここまで素っ頓狂な音楽が、まだ今日のアフリカから生まれ出てくるという事実だけでも嬉しいよね。
4)生まれたての朝の空気みたいに、ウソみたいにピュアなアメリカの女性フォーク・ミュージック。ほんとかよ?と呟きつつ朝の空気を深呼吸。
5)キム・ヨナじゃないよ、キム・ユナだよ。韓国のロックバンド、紫雨林(ジャウリム)のボーカリストの3作目のソロアルバム。シンと澄んだ世界に一筋、電子音が響き、ユナの神秘的な声が関節の狂った子守唄みたいな節を歌い上げる。現代社会がバタバタと裏返って昔話になって行くみたい。歌詞内容が凄く知りたい。
6)もうこの先は何もありません、みたいな世界の果てまで飛んで行ってしまった電子ムビラ集団。なにやら壮絶なミニマル・ミュージックとなって来た。
7)スコットランドのベテラン・トラッド歌手による、諸行無常歌集。切ないようっと涙しつつ聴く、何度も聴く。もう帰らぬ親しかった人たちを想いながら。
8)どうやら現地の懐メロ企画盤みたいなのだが、いかなるジャンルの懐メロやら、とにかくアラブっぽさより我が日本の昔の歌謡曲を想起させる不思議な曲調が並ぶ。アジア大陸を横に貫く一筋の血の回廊など、幻想は広がる。
9)タイのアイドル・ポップス。デビュー作にして、このデュオのアンニュイ感はどうだ。人影のなくなった、夏の終わりの海辺。ジャズいギターを聴きながら落ちる夕日を眺めていたら、ちょっぴり切なくなって・・・なんてけだるい感傷の流れが妙に心に残りました。しかし、夏の終わりったってタイの海岸物語ですからね。湘南とは違うはずなのに、この音だ。
10)民俗音楽っぽいものは苦手としているんだけど、この幻の親指ピアノ弾きのソロ・プレイには魅了されてしまった。キンコンカンコンと織り上げて行く音の曼荼羅が、いつの間にか壮大な宇宙観と化して、実にスリリング。彼の残した録音が、どうやらこれだけであるらしいのが残念でならない。



2009年度年間ベストCD10選

2009-12-28 04:00:44 | 年間ベストCD10選


1) Tugan Tel by Alsou (Russia-Tatarstan)
2) Nacerdine Hora (Algeria)
3) Doagh by Maria McCool (Ireland)
4) Iumiere (Scotland)
5) Adi Yok by Azeri Gunel (Turkey-Azerbaycan)
6) t'Minne by Threeality (Netherrland)
7) 加那 by 城南海 (Japan)
8) 1st by Lee Na Young (korea)
9) Tres Tres Fort by Staff Benda Bilili (Congo)
10) Perd Pakka Tuu by Look-Pad Pinchanok (Thailand)


 というわけで、我が2009年度年間ベストアルバムの発表であります。
 シバリとしては例年の如く、一国一枚、あるいは一ジャンル一枚、といった規則がもうけてあります。
 また、原則的には2009年に発表された新録音盤の中から選ぶ。ただし海外から入ってくる時差(?)を考慮して一部2008年度盤も可とする、という事で。


 1)ロシアのかってのアイドル歌手、アルスーが、結婚&出産に伴う休業を終えてカムバック後、発表したのが、このアルバム。すべて彼女の故郷であるウラル山脈のふもと、タタール地方の民謡ベースの音楽が繰り広げられている。言語もすべてタタール語かバシキール語を使用。民族問題に手を焼いているロシア国内でよくぞこんなものをと驚かされる。
 盤をスタートさせると一挙にあたりは中央アジア一色。大都会で華やかな流行歌手として過ごして来た自らの足元を改めて見つめ直した作ということか。音の向こうから吹き付けてくる春色の”再生”の息吹が眩しい。
 なお、このアルバムの収益金はすべてタタール自治共和国の孤児たちを援助する基金に寄付されているそうだ(写真)

 2)昔の安いスパイ映画の主人公みたいなグラサン男が素っ頓狂なスットコ・リズムに乗せてドスの効いた声で凄む。北アフリカのやさぐれダンスミュージック群はいまだ正体不明ながら、今年もやっぱり惹かれてしまった。

 3)アイルランドのトラッド歌手が、実に自由な感性で渋い民謡からポップスまでを纏め上げ、唄心一つで地深く根ついた”アイルランドの新しい唄本”を編み出してしまった、その鮮やかさに。

 4)スコットランドの女性トラッド歌手二人が新たに組んだデュオのデビュー作。上質のクリームを舐めたみたいな滑らかさと奥深さを秘めた二人の素晴らしいハーモニーに、気分は晩秋のハイランドへ。

 5)トルコで活躍するアゼルバイジャン出身の女性歌手。中央アジアから東地中海へ連なるエキゾティックの上にエキゾティック乗せて~♪みたいな華麗な音楽地図を可憐な美声でコロコロと歌ってみせる。その存在だけでも血が騒ぎます。

 6)オランダが昔、強力な海運国家として繁栄の頂に合った16世紀に出されていた歌本からの復刻曲を中心として、当時の国際国家としてのオランダの興隆を音楽によって再現している。大きく脈を打っていたオランダの心臓と送り出していた血の熱さ、世界中からやって来ていた人々と物資の賑わいが、女性トリオのパワフルな歌声で鮮やかに蘇る。

 7)奄美民謡のコブシ一発で世界音楽を読み直してやろうという意気を買いまして期待点こみで。すいません、ファンなモノで。
 いやいや、こうして聴き返して行くと、”地球礁に打ち寄せる潮の轟き”が聴こえてくるようで、これにも血が騒ぎます。

 8)韓国のトロット演歌界が満を持して世に送り出した、テクノ演歌最前線のヒロイン、イ・ナヨンの感性溢れる歌声弾けるデビュー盤。
 とはいえ、素直に万人が「カッコいい!」と感心するような”最先端の音”になっているでもなし、やっぱり韓国ローカルの独特のエレクトリック・ポップでしかないこと。いやいや、そこが素敵なんですがね。

 9)コンゴの不良ハンディキャッパーたちがぶっ飛んだ感性で切り開いたアフリカ音楽の新しい地平。もう一つ元気のなかった今年のアフリカ音楽界における、非常に大きな収穫だった。

 10)タイものでは、これとターイ・オラタイ女史のモーラム集とどちらを入れようかと迷ったんですが、大歌手の傑作と評価の高い作品と、新人アイドル演歌歌手のちょっと素敵な一枚だったら後者を選ぶのがこのブログの価値観でしょう、ということで。

 なんか大切な一枚を忘れているような気がしてならないんだが、まあ、勝負は時の運ということで。
 余談としてするしかない話なんですが、実はこのベスト10、一位をミャンマーのポーイーセンの”テューリーピューデンニャ”にする気でいた。ずっとその気でいたんだけれど、決定の前にちょっとネットで調べてみたらこのアルバム、2007年度作品らしいことが分ってきた。「一年くらいの誤差は認める」のがここのルールなんであって、このアルバムだけ2年遅れの特例を設けるのが納得できなくて。まあ、私一人で選んでいるのだし、どうしようとかまやしないといえばそうなんだけど、だからこそ、こだわらねばならん、とも思えて。
 さて、そんなところで。



2008年・再発CDベスト10

2009-01-10 03:45:47 | 年間ベストCD10選

 昨年末、2008年度のワールドもの新作CDベスト10など発表したけど、それに続く企画として、2008年度に出た再発盤のベストなど選んでみました。実は、某所からの依頼に応えて、選んでみただけなんだけどね。どこかで正式発表されているのを見かけたら、「ああこれか」と思ってください。
 まあ、これは、「去年、結構インパクトを感じたんで年間ベストに入れたかったんだけどアナログ時代に出たもののCD再発では選ぶわけにも行かず」なんて、悔しい思いをしたものを並べてみただけなんですがね。
 これだって”2008年に出会ったアルバムなんだから2008年のアルバム”とか居直って年間ベストに入れちゃう手もあったんだけど、ここは穏便に行っておきました。では。いざ。

 
1) CONGO 70, RUMBA ROCK by Various Artists (Congo)
2) LAS CANCIONES DE SUS PELICULAS by Carlos Gardel (Argentina)
3) AFRICAN SCREAM CONTEST by Various Artists (Benin & Togo)
4) DER MONCH VON SALZBURG by Barengasslin (Deutschland)
5) CHAABI BY NIGHT VOL.2 by Various Artists (Morocco)
6) AU NOM DE TOUS LES MIENS by Lounes Matoub (Algeria)
7) ドラム・ドラム・ドラム by 小山ルミ (Japan)
8) SOUL MESSAGES FROM DIMONA by Various Artists (Israel?)
9) SHARON SINGS VALERA by sharon cuneta (Philippines)
10) 続歌謡曲番外地 -恋のコマンドby Various Artists (Japan)

1) CONGO 70, RUMBA ROCK by Various Artists
 アフリカへ逆輸入されたアフロ・キューバン音楽がアフリカ的洗練を経て生まれ変わった結果生まれたコンゴリーズ・ルンバ。日本で言うところのリンガラ・ポップスだが、この音楽もまた、ロック世代の台頭に揺れ動いた。
 その記録であるこの盤、”ルンバ・ロック”が最初の炎を上げた70年代の現場アフリカの熱狂を伝えて、聞く者の血をも熱くさせる。
2) LAS CANCIONES DE SUS PELICULAS by Carlos Gardel
 戦前、それまでダンスの伴奏音楽としか認知されていなかったタンゴに、声楽としての可能性を切り開いた歌謡タンゴの父ガルデルの、映画出演時の歌唱を集めたアルバムがCDとして世に出た。まさに”歌う映画スター”の面目躍如たるところであろう、「スタジオ録音よりも良い」という声もある。
3) African Scream Contest by Various Artists
  <Raw & Psychedelic Afro Beat From Benin & Togo 70's>
 70年代の西アフリカで燃え上がっていたファンク・ミュージック。アフリカ風に捻じ曲げられた、さまざまにユニークな表現が沸き立っていたそのシーンの貴重な記録。
4) DER MONCH VON SALZBURG by Barengasslin
 1980年のドイツに人知れず(?)咲いていた中欧トラッドの傑作が、今回のCD化により、世界中のスキモノたちの元にも届けられる事となった。
 典雅な古楽系の唄と演奏は、まさにドイツらしい気品に溢れた逸品である。
5) CHAABI BY NIGHT VOL.2 by Various Artists
 モロッコ在住のベルベル人による大衆唄”シャアビ”は、同じマグレブ世界の住人であるアラブ系のそれよりも、より騒々しくアフリカ的なトランス感覚を秘めた魅力がある。
 そんなシャアビの快演&怪演が押し込まれた、ビックリ箱みたいな4枚組。
6) AU NOM DE TOUS LES MIENS by Lounes Matoub
 アルジェリアのボブ・ディラン、だそうな。アルジェリアやヨーロッパに住む、北アフリカ原住の小数民族カビール人の生活と文化のために、ときに政治的、社会的な題材をカビール語で歌い続け、98年に射殺されてしまう彼の、晩年の作品集。
7) ドラム・ドラム・ドラム by 小山ルミ
 2007年から08年にかけて、ベンチャーズ集、ビートルズ集、ロックンロール集とさまざまある小山ルミのアルバムが続々と陽の目を見た。そのどれもが素晴らしいが代表として、発売当時テープでしか発売されなかったというたまらないエピソード込みで、これを挙げたい。
8) Soul Messages From Dimona by Various Artists
 ブラック・モスレムというのはお馴染みだが、これはブラック・ヘブライなる連中のバンドである。
 そのような思想や立場があると初めて知ったが、これは、”黒いユダヤ人”を標榜する彼らがアメリカを離れ、流れ着いたイスラエルの地で放ち続けた奇妙なファンク・ミュージックの記録。
9) Sharon Sings Valera by sharon cuneta
 フィリピンのタガログ語ポップスの秀作。同国の名作曲家、レイ・ヴァレラ作品集で、流麗な旋律、華麗な歌唱が非在の桃源郷へと誘う。
10) 続歌謡曲番外地 -恋のコマンドby Various Artists
 いわゆる日本の脇道ポップス発掘盤だが、キャンディーズのバッタもんグループとしてマニアの心をくすぐった、”ラブ・ウインクス”に焦点を当ててくれた、それが泣けたのさっ。

2008年度ベストアルバム10選

2008-12-27 04:03:36 | 年間ベストCD10選


”DHARMA FLOWER(花香飄来時)” by Yangjin Lamu


1) DHARMA FLOWER by Yangjin Lamu (Tibet)
2) NAPULITANATA by Eddy Napoli (Italy)
3) ABIDAT R'MA SORBA (Morocco)
4) YIN HTEL KA POE by Poe Ei San (Myanma)
5) ENTA MEEN by Dana (Lebanon)
6) Про лето by Бьянка(Russia)
7) 海風海涌海茫茫 by 張美玲 (Malaysia)
8) SHAKE AWAY/OJO DE CULEBRA by Lila Downs (USA-Mexico)
9) 新疆名歌 by 黒鴨子 (china-Shinjang Uyghur )
10) LAGOS STORI PLENTI -Urban Sounds From Nigeria (Nigeria)

 さて、今年も年末恒例の年間ベスト10を、という事で。選考対象は2007~2008にかけて製作されたアルバムのうちから。制作年代のはっきりしないものは、こちらの都合で勝手に解釈させていただいた。

 1)チベットの女性シンガー・ソングライターが、同じ敬虔なる仏教徒の国のタイへ出かけて、現地の民俗音楽楽団をバックに吹き込んだ仏教ポップスの傑作。まことありがたきは御仏の織りなす人との縁と申すべきか。
 プロモーション・ビデオの中で、南国の陽の下、タイの寺院の黄金の仏像に向かい、深々と頭を垂れて合掌するYangjinの姿が印象的だった。
 彼女の書く、シンプルを通り越してプリミティヴとも言いたい蒼古のイメージ溢れる楽曲が、タイの民族楽器群の神秘な響きと絶妙のハーモニーを奏で、忘れられない一作となった。

 2)南イタリアの民族派シンガーがナポリの大衆音楽100年の歴史に挑んだ快作。と言っても大げさな芸術作品ではなく、あくまでも人懐こい暖かい手触りが魅力だ。ラストの”マリア・マリ”の、まさに気のおけないコーラスの楽しさには、南部イタリアの太陽の輝きを一杯含んだ果実を一かじり、みたいな幸福感がある。

 3)2008年も音楽的に最注目ポイントは、変わらず北アフリカはベルベル人の音楽だった。ここで展開されているのは狩りの際、獲物を追い立てるための音楽として発達したものだそうな。
 その歌声の鋭い響きと力強いリズムの凶暴な爆走には、こんなに生命力に溢れた音楽がまだこの地球に生き残っていたのかと驚かされる。

 4)ともかく奇々怪々なる構造を誇るミャンマーの大衆音楽なのだが、異文化に育った者たる我々に理解可能か否か、なんて逡巡はすっ飛ばして、理屈抜きにその楽しさの中に引きずり込んでくれたポーイーセンの諸作品だった。こいつはその最新作。さて次回はどんなカラフルな夢を見せてくれるか。

 5)レバノンのお色気アイドルポップス。堅苦しい一面もあるアラブポップスの殻を、その軽薄なフットワークで蹴り破ってくれた。

 6)”夏について”by ビヤンカ。”ロシア民謡R&B”がトレードマークの彼女だったが、デビュー作に続くこのアルバムでは、土俗ファンク風ロシア民謡、みたいな独特の境地を開き、そいつは相当に刺激的な代物だったのだ。

 7)弾けるエレキギターの響きと、どすこいパワフルな張美玲の歌声。チャチャチャのリズムに乗ってうねるド演歌のコブシ。
 東南アジアの華人ポップスは相変らず元気だ。その雑食性のいかがわしい響きは、南国の中華街の猥雑なざわめきを伝えて来る。今回はそれに加えて、南の海の潮の香りも。

 8)2008年、一番驚かされたのは、この盤だったかも知れない。どちらかと言えば文芸の薫り高く、メキシコの土俗と今日を生きる己の感性との間で引き裂かれた自我を掘り下げる作業をして来たリラ・ダウンズが、今作、思い切りポップにはじけてみせたのだから。

 9)中国の人気女性コーラスグループが、新疆自治区のウイグル民族の民歌ばかりを取り上げたアルバム。
 ともかくウイグル民族がその内に、かくも可憐な美しいメロディを持っていることに感嘆させられ、そして次には、このような作品集をウイグル人自身の歌声で聞けるアルバムが存在しない事実と、その裏に存在するその理由を思い、複雑な気分に。
 中国政府に死産させられた東トルキスタン共和国の幻の独立記念日には、このアルバムの歌の数々を思い起こそう。

 10)アフリカ一騒々しい都会ではないかと思うナイジェリアの首都ラゴスの、ストリート・ミュージック集。かの喧騒の街の今日を伝える。
 ここで聴かれる、アフリカ風に変形してしまったラップやらヒップホップからはいつか、新しい何かが芽を吹くのだろうか。かってアフリカに先祖がえりをしたアフロ・キューバン系音楽が、新しいアフリカン・ポップスを発生させる種子となったように。

2007年度ベストアルバム10選

2008-01-21 01:38:58 | 年間ベストCD10選


1) BNAT REGGADA by Chaba Wafae (Morocco)
2) HIGHWAY TO HASSAKE by Omar Souleyman (Syria)
3) MGODRO GORI by Mikidache (Comores)
4) Девушкины песни by ПЕЛАГЕЯ(Russia)
5) SEMALAM by Sean Chazi (Malaysia)
6) 1ST ALBUM by On Hee Jung (韓国)
7) MUJIZAT ITU NYATA by Joy Tobing (Indonesia)
8) KOO BOON KOO BUAD 2 by Waipoj&Tossapol&Sriprai (Thailand)
9) BARAJANDO by Hernan Genovese (Argentina)
10) WALID TOUFIC 2007 by Walid Toufic (Lebanon)

1)昨年に続いて、またもレッガーダを一位に選んでしまった。ともかくこの堂々のアホさ加減には敬意を表するよりない。ヴォコーダーによるロボット風コブシ・ヴォーカルをヒラヒラと宙に舞わせつつ、あくまでも能天気に前のめりに一本調子の突撃をするさまは、韓国のポンチャク・ミュージックなどを連想してみたり。バッカだねえ、とはもちろんこの場合は褒め言葉。

2)世界中のどこへ行ってもアホな人はいる。もちろんシリアにもいる。うん、まあそういう事だ。大いに笑わされ、乗らせてもらいました。

3)アジア文化とアフリカ文化交錯するインド洋音楽の逸品。マダガスカル島の北に位置する小島コモロの、潮風吹き抜ける粋な島歌集。世界の路地裏における密かな楽しみ、みたいな裏通りの祝祭感覚に心ときめく。

4)ロシアの民族性を生かしたロックという方向で、なかなかの完成度と思う。もっとも、ネットにいくつか上がっている映像など見ると、ライブではさらに土俗性の匂う感じでやっているようで、そいつを音盤上でも披露して欲しいものです。

5)ある人のいわく、「マレーシアのナット・キング・コール」と。この一言で分かる人には分かるね。南国の伊達男、オシャレでクールなポップスを決めてくれた。

6)若くかわいい女の子たちによるディスコアレンジのトロット演歌の展開、というこの奇妙なブームがもっと燃え盛るのを、おおいに期待するものであります。ピリピリと唐辛子系の辛口刺激が快い。

7)以前より妙に気になっているロハニ・ミュージック。要するにインドネシア語によるゴスペルなんだが・・・なかなか言葉で説明の難しい不思議な魅力がある。ともかくあくまでも澄み切り、そしてパワフルなトビン嬢の歌声にすっかり魅了されてしまった。

8)毎度お馴染み、タイの仏教ポップス、”レー”である。今回は2大スター・プラス1による、お楽しみ演芸大会と言った風情。冒頭の語りでは、タイ語が分からない者にもどう考えても漫才としか受け取れないおどけたやり取りにのけぞる。宗教ポップスとか言うより、これは法事の後の宴会のようなものかと。

9)新人タンゴ歌手のデビュー盤なんだが、やってる事は古色蒼然。地味にギター伴奏でガルデル気取りの古典を歌い、後ろ向きの美学に酔い痴れる。そんな芸風が主流派を成しているかと想像されるアルゼンチン・タンゴのヴォーカル世界、その病み具合が美しい。

10)レバノンの重量級アラブポップス。棍棒で一撃!みたいなぶっとい迫力に圧倒される。


 と言うわけで。遅くなりましたが、昨年のベスト10など選んでみました。入れたかったけどはみ出てしまったもの、大量にあり。心残りではあるけれど、まあ仕方ないや。
 一国(あるいは一ジャンル)一枚、という”縛り”を設けました。また、制作年度は2007年のもの、一部2006年産品も”誤差の範囲内”として認める、制作年度の分からないものに関してはテキトーにやらせていただく、と言うことで。
 とにかく最近は怠惰なリスナーと化してしまっているので、購入したものの”未聴コーナー”に放り込んだままの気になる盤が溢れかえっている次第で、後で見直せば「何でアレを入れなかったのか?」と後悔するハメになる可能性も大なんだけど、この辺で一区切りつけておかないとベストそのものを発表しそこなうんで。

2006年間ベストアルバム10選

2007-01-20 04:37:30 | 年間ベストCD10選


1)La Nouvelle Generation Du Reggada / Various Artists(MOROCCO)
2) ”出家コンビ”/ Tossapon Himapan & Waipat Phetsupan (TAILAND)
3)Tangos De Siempre / Osvaldo Peredo (ARGENTINA)
4)Hiya Al Ayam / George Wassouf (LEBANON)
5)Diwan 2 / Rachid Taha (ALGERIA)
6)Studio Cameroon / Sally Nyolo and the Original Bands of Yaounde (CAMEROON)
7)Isla Del Encanto / Enrique Chia (PUERTO RICO)
8)New Faust / Little Tragedies (RUSSIA)
9)ジーネープエナネキンティヤー/ソーサーダトン(MYANMAR)
10)Love Always Finds a Reason / Noyuni (韓国)


1)まだまだ未知の面白い音楽はある。Reggadaとはモロッコ土着の祝祭音楽らしいのだが、ともかくかの地独特のトランス系のビートと、非常に泥臭い絡みようを見せる電子音楽の要素が、実に痛快な破壊力で迫る。ボコーダー処理によってボーカルにイスラミックなメリスマをかけるという奇矯なアイディアには、やられました。砂漠から掘り起こされた千年前のロボットがコーランを読み上げているみたいな。これは凄いや(写真)
2)タイトルをタイ語で書きたかったのだが。以前より惹かれていたタイの仏教系ポップスである”レー”の大物二人の共演盤。かの音楽の大衆娯楽の側面が浮き彫りになっているのが興味深い。
3)下町のタンゴ・バーで地味に歌い続けて来た老歌手の渋過ぎるデビュー盤。臆面もなく繰り出される懐メロタンゴの数々に、アルゼンチン庶民の喜怒哀楽が染み付いているかのようだ。
4)アラブ・ポップスの理想系。ドクドクと脈打つリズムに乗って炸裂するしわがれ声の迫力がたまりません。
5)フランス在住のアラブ民衆の感情の代弁者として独自の音楽を展開して来たアラブ・ポップスの風雲児による、アラブ世界回帰盤。さまざまなものが見えてくる。
6)カメルーンの伝統音楽を思い切り遊んで見せた、楽しい一作だった。
7)この盤の国籍表示がこれで良いのか議論の分かれるところだろうが、カリブ海音楽の一方の雄プエルトリコの、美しいメロディー集。切ないです。
8)ロシアのハード・プログレバンドが思い切り叩きつける、暗くて深いヨーロッパの闇の世界。
9)ミャンマーの仏教音楽とか。不可思議な天然プログレとも言いたいかの地の大衆音楽が描く清浄なる祈りの世界が新鮮だった。
10)いかにも清楚なアイドル風に見えるジャケと、それを思い切り裏切る泥臭くえげつないディスコ仕立てのトロット演歌の世界。この身もふたもなさが逆に痛快!




2005年CD年間ベスト10

2005-12-28 04:41:12 | 年間ベストCD10選


1) CONGOTRONICS by Konono No1 (Congo)
2) CEASEFIRE by Emmanuel Jal & Abdel Gadir Salim (Sudan)
3) LA BONNE AVENTURE by L'attirail (France)
4) CUADROS TANGUEROS by Pablo Agri Sexteto (Argentina)
5) KEMBALI MENEINTAIMU by Mayang (Indonesia)
6) SON DE MADERA by Los Orquestas Del Dia (Mexico)
7) SMOKIN' CLASSICS by Smoky Greenwell (USA)
8) SILVER NOTES by Christy Sheridan (Ireland)
9) ZELVOULA by Gramoun Lele (Reunion)
10) RUBY WITH TATOU BAND by Ruby (Egypt)

 まあ、定番の企画ではありますが、我が”ワールドミュージック年間ベスト10”など並べてみました。

 とりあえず2005年のベストとしておきますが、もしかしたら何年も前の作品が混じっているやも知れません。まあ、その辺は「俺が聴いたのは今年なんだからしょうがないじゃないか」と居直っておきます。というか、そもそも資料不足で制作年代の分からないものもありまして。10位の奴なんかレコード会社名らしきもの以外、ジャケに書いてあるのはすべてアラビア文字なんだから、どうにもなりゃしません。

 いくつかの作品については、すでにこのブログでコメント済みですが・・・1位は、以前から噂のみ伝わって来ていたけどやっと音そのものに出会え、即、喝采!アフリカの路上より世界の最先端に突き刺さった一発は痛快の一言でした。
 2位も同じくアフリカ勢。スーダンのラップですが、民俗調のバックトラックともども、アフリカの大河の流れを想起させる雄大なスイング感(?)で持って行かれました。
 3位は「架空の共産圏サウンド」なる擬似非ワールドミュージックのアイディアが、まず傑作!あとは余計な意味付けなど企まずに、虚構の世界の馬鹿げた冒険を楽しもう。
 4位。弦楽6重奏によるタンゴの幻想世界。こんな風雅な音世界もまた、この世界にはありうるのだな、という・・・歌ものタンゴの古典、「想いの届く日」のインスト版の美しさに、しばし陶然でありました。
 5位。インドネシア・ポップス界に孤高の位置を占める中堅女性歌手による都会派ポップスなのだけれど、作品の中ほどに収められたジャワ旋律の古典がすべてを「それでは収まらない何か」へと強力な求心力を持って押し上げている。崇高なる仕上がり。にもかかわらず、ポップス。
 6位。これは私にはまったく未知だったメキシコのローカル・ポップスなのだけれど、ヨーロッパより流入したラテンの要素とアフリカより連れて来られた黒人音楽の激突の瞬間のヒリヒリした感触がいまだ鮮烈に息ずいているようで、その生々しさにドギマギ。
 7位。多言は無用。メチャクチャかっこ良いブルース・ハーモニカです。ブルースへの愛情、再燃でした。
 8位。マンドリンとバンジョーによって、美しいアイリッシュ・トラッドのメロディを慈しむように奏でる。ただそれだけ。いや、それ以外、何が必要と言うのだ。桃源郷の音楽です。
 9位。インド洋の果て、マダガスカル島に寄り添うように浮かぶ小国、レユニオンの、その成り立ち、大いに興味深いローカル・ポップス。旅先でふと立ち寄った田舎の祭りみたいな素朴な手触りがいとおしいです。
 10位。詳細を知らないのですが、なんでもエジプトのアイドル歌手とのことです。アラブ・ポップスの伝統的要素とテクノやドラムン・ベース音との混交。そしてその狭間に響く、クネクネと官能的なルビー嬢の歌声。ひたすら妖しい世界です。


 以上、訳の分からない盤ばかり並べまして恐縮ですが、皆さんがこれらの音に何かの気まぐれからでも接するきっかけになってくれたらと祈りつつ。
 (冒頭に掲げたのは第10位のルビー嬢のアルバムのジャケ写真です)