夕食を食べながらだったので油断をして、ついうっかりテレビで加藤登紀子の青春記というか、ダンナとの思い出物語などを見てしまう。まあ、昔からこのヒトは嫌いです。彼女をお好きな方はこの先を読まないでいただきたい。
で、番組の冒頭、彼女が自分の店で”百万本のバラ”をボサノバのリズムで歌うのが映し出され、「ロシアのヒット曲をボサノバでって、どういう感性だ。たとえオリジナルがボサノバで歌われていたとしたってボサノバのアレンジでは歌うべきではないのに」と呆れたのだが、そう、ここでチャンエルを変えておけば良かったのだろう。
まあ、内容は紹介するようなものではないです。歌手稼業をやっているさなかに、学生運動の委員長だかなんだかをやっている男と出会い、恋愛関係に。やがてダンナは首相官邸への突入を試みて逮捕され。
(ここで首をかしげてしまったのだが、官邸に突入して、それで何をどうする気でいたのだろうか?結局、タイホされて終わりだろう。理由を問えばおそらくややこしい闘争論理が延々と返って来るんだろうけど、その内実は安いヒロイズムだけじゃないのかなあ)
続きだが。そしてダンナは逮捕されムショ送りとなり、彼女は自分が妊娠しているのに気付く。
もうさあ、絵に描いたような世界ですわね。私は若い頃、ワンランク社会意識の高い東大生歌手でございました。学生運動の闘士と恋愛関係でございました。しかもペーペーの活動家じゃないぞ、委員長だぞ。一般社会の因習に閉じ込められた考え方はしないので、好きな時に子供とかも生んでしまうぞ。
昔、早川義夫氏が、加藤登紀子の臭い臭いステージに辟易して野次を飛ばした思い出など書いておられたけど、もう、その種の臭さが臆面もなく場面に充満する。
新宿ゴールデン街(だよね。出ると思った、この場所)に昔馴染みの飲み屋をたずねると、かっての名物女主人はもう亡くなっていたけれど、彼女とダンナの昔の馴染みと言う客が”偶然”居合わせる。しかも彼は”在日”のヒトである。もう、どこまでもどこまでも絵に描いたような”定番”の連発。
昔のサヨクのヒトの格好の酒の肴、みたいな話ですな。「俺も若い頃は、権力と戦ったもんだ」なんて言ってねえ。彼女はその夢の具現化のごとき一幕芝居を演じて見せる。そんな彼女を「オトキさん」とか呼んで(ゾワ^_^;)良い調子に酔っ払える種族の愛玩物として。
私はもちろん、そんな人種ではないんで、その一幕芝居に「臭い」と顔をしかめる権利がある。
そして彼女はダンナとの思い出の場所である京都なども訪ね、かっての学生運動の”闘志”連中とエリート臭フンプンたる”思い出話”に興ずるのである。いいけどさあ、”同窓会”なんか勝手にやってれば。ただ、テレビなんかで臆面もなく全国中継するなっていうんだよなあ。
それにしても、そこで語られる亡きダンナの肖像ってのが、昔のサヨクの典型なんだけど、それはつまり、ゴリゴリの”昔の日本の男”なんだよねえ。「お前らは余計な事を考えず、俺の言う事を聞いていればいいんだ」言いたいことは要するにこれだけね。
私としては、自分がウヨクもサヨクもまったく信じる気になれない理由を再確認させていただきました。同じ人種じゃねえか、あいつら。右も左も。
というわけで。まあ、今回の文章の音楽的な結論としては、「”百万本のバラ”をボサノバにアレンジして歌うな」これです。