”The Rough Guide to the Music of Japan ”
イギリスのレコード会社が”The Rough Guide to the Music of ~”なんてワールドもののシリーズを大分前から出していますな。各国の大衆音楽の概要を紹介するって趣旨の、まあ旅の本の”地球の歩き方”シリーズみたいなものです。
私はもう欧米人によるワールドミュージックの紹介とかにあんまり興味がないので、この種のものには手を出していず、詳しいことは分からないのですが、かなりの数の盤が出ていて、もちろん、我が日本の音楽を紹介する盤も出ている次第で。
で、この盤がその”The Rough Guide to the Music of Japan ”であるわけです。
編集は日本の大衆音楽に詳しい、と定評のあるらしいイギリス人音楽ライターのポール・フィッシャー氏。1999年に、すでに同じく彼の編集で日本音楽の”ラフ・ガイド”は出ていて、これは第2弾、もしくは改訂版にあたるようです。
で・・・と今回、その内容を検めてみたのですがね。
1、は民謡の”熊本ハイヤ節”であり、また2、と3も今日的アレンジを加えられているものの、奄美と沖縄のそれぞれ民謡、4も沖縄民謡の巨匠ですな。それから9、が河内音頭、10、が筝曲、11、が雅楽、13、が小唄と、この辺が地道に日本の伝統音楽を押さえてある、まあ、盤におけるタテマエの部分と申しましょうか。15、の笠置シズ子、16、の都はるみもそれに加えてよいのかも知れない。
このように俯瞰的にさまざまな日本音楽の切片を並べ立てて何が分かるのかなあ?と疑問に思わないでもないのですが、まあ、このような企画ものにおいては仕方がないことなのかも知れません。
今回、どうかなあ?と首を傾げてしまったのは、それ以外の部分なのですな。下に全メニューを挙げてみましたが、これらの音楽、あなた、聴いたことがありますか?というか、これらのもの、日本の大衆のほとんどが聴いた事もないし、ジャンルとして愛好もしていない、聴かせてもおそらく”自分たちの音楽”としてピンとは来ないであろう代物である。
民謡のロック化を試みるグループ(2)、アイヌ音楽ネタのダブ・バンド(5)、アメリカ人とイギリス人による琉球音楽ユニット(6)、一部の人々からは絶対的な信仰を集めているらしいマニア好みのロックバンド(8)、僧侶による声明とギター奏者の共演(12)、浪曲師がアメリカで結成していた三味線入りブルーグラス・バンド(14)って、こりゃなんなのよ?でありますな。
(16)の都はるみだって、あんまり聴かれている曲じゃないでしょ、これは。なんでわざわざ、この曲が置かれる訳?
最後に収められている”渋さ知らズ”だって、”その種のセクトの支持者の玩弄物”って印象しかないんだけどなあ。ファンの方々には申し訳ないですが、いや、”輪”の外から眺めている私のような者には彼らへの評価、過大なものとしか感じられないんですよ。彼らの音楽、本当に日本を代表する物件といえましょうか?もちろん、普通の意味でのポピュラリティなんかありゃしませんよね。彼らを知ってる日本人と知らない日本人とでは、後者の方が圧倒的に多いのは言うまでもない。
というわけでこのアルバム、つまりは大昔、マルコ=ポーロが”東方における見聞”として並べ立てたデタラメにも相当するファンタジーでしかないのではないか。あるいは”日本通”の英国人、ポール・フィッシャー氏が勝手に夢見た”あるべき日本音楽”の姿。
いや、そういうものを作ったって、そりゃかまいませんがね。ただ、いやしくも”ラフ・ガイド”と銘打ったアルバムがこの内容って、いかがなものかと。
この分で行くと、各種ある外国音楽の紹介盤てのも、あんまり本気に受け取らない方が無事なんだろうなあ、とか思った次第であります。
★The Rough Guide to the Music of Japan 収録曲目
1. Ushibuka Haiya Bushi
2. Yagaefu
3. Subayado Bushi
4. Koza Renka
5. East of Kunashiri
6. Shinkaichi [Saru's Meditation Dub]
7. Asadoya Yunta
8. Ah Wakaranai
9. Kawachi No Ryu
10. Futatsu No Hensokyoku Sakura Sakura
11. Hyojo Netori
12. Gobai
13. Hara No Tatsutokya
14. Appalchian Shamisen
15. Tokyo Boogie Woogie
16. Yuhizaka
17. Tokyo Bushi
18. Akkan
19. Bonus Materials [CD-ROM Track][*]