”Milat”by Yonca Lodi
また出会ってしまいました、アナトリア発情念の女。こういうのって、なんかジャンル名があるんでしょうか、アラベスクのなんのと言う以外に。かの”怨歌”みたいなネーミングがなされていると楽しいんだが。
ともかくYonka女史が想いを込めて歌い上げるのが、まったくのド歌謡曲の世界なんで、妙に嬉しくなってしまったのですな、根っからの裏町歌謡曲派としては。
サウンド方面はそこはそれ、サズがビンビンとエキゾティックなフレーズをはさみ、パーカッションがツッツカトンとアラブ情緒をかもし出しますが、楽曲の骨格を成すのはザ・歌謡曲。アラブ歌謡、という匂いはメロディラインからはさほどしません。
この音楽の屋台骨たるメロディは、アジアの西から東まで、いや、ポスポラス海峡を乗り越えてヨーロッパの裏通りにだって平気で入り込んで、当たり前に誰かの鼻歌となってしまうであろう、”ベタな歌謡曲”の系譜の中央を歩むメロディなのですな。
もう、この歌なら八代亜紀だって、それから60過ぎて紅白に初出場した女性歌手がいたでしょ、あの人とかに歌わせても違和感ないし、ヨーロッパでも、たとえばミルバとかさあ、あの辺の化粧厚いオバハンひっぱり出して歌わせちゃってもいいわけじゃない。
そんなインターナショナルにベタな歌謡曲をYonca女史はいかにもトルコの歌手らしいテンションの高さで凛!と歌い上げます。セクシー光線も惜しむことなく。これを忘れちゃいかん。大衆音楽の真実ですから。
下のビデオクリップだって、恥かしいですよお。でも、御下劣系ワールドミュージックには、この種のベタな映像作品ってつき物なんですな。
いいなあ、このマイナー・キイのダルなメロディがのた打ち回るのを聴いていると、なんか血が騒ぎますよね、それも下品なほうの。
赤い灯青い灯が呼んでいますよ。安い涙と安い酒。人生負け犬の裏町酒場に人種や宗教や国境の垣根はないんですなあ。合言葉はただ、「分かっちゃいるけどやめられない」それだけだ。