知人の日記で”冠二郎のバイキング”が話題になっていて、私は思わずニタニタしてしまったのである。
演歌界の無冠の帝王、冠二郎が、もはや名も忘れた、深夜の、あまり誰も見ていない感じのバラエティ番組の”今月の唄”かなんかのコーナーで、出したばかりの曲、”バイキング”を唄っているのを見て、なんじゃこりゃと呆れ、その挙句にすっかりファンになってしまったのはいつの事だったか。もしかしたら、もう20年くらい経っているのかも知れない。
曲のイントロのリズムに乗って、そのご面相の、あまり人相が良いとは言いがたい側面を、まるで誇示するかのように客席に自信満々突き出して、「いつも男はバイキング~♪」とか、妙な発想のリズム演歌を歌い上げる、その強力なキャラ設定は、積み上げた暑苦しさを突き抜けて、いっそ爽やかにさえ感ずる居直りぶりで、なんか可笑しくなってしまったのだ。
その、カッチリとスプレーで固められているのであろう、不自然に跳ね上がった七三分けの前髪と共に、変なもの好きな我が感性をビビッと刺激してくれた。そうかあ、このところ、名を聞かなかったけど、長の年月を過ごし、いまだに”バイキング”はイチオシ曲なのか。
「良いぞ、男冠!」と、こいつも名も覚えていない、マイナーな歌謡番組の公開録画で、冠二郎にかけられていた(男からの)声援を真似して声をかけたくなってくる、堂々の勘違いな男っぷりである。
などと、いくら言い張っても、実物の冠二郎に遭遇していない人には、何のことか分からないだろうなあ。ああ、もどかしい。取りえず世の中にはまだまだ、注目に値する人はいます。と、中途半端に結ぶしかない。