NESTOR MARCONI
現役のアルゼンチン・タンゴのバンドネオン奏者としてはどうやら第一人者らしい、マルコ-ニ。その演奏には闇の中の秘儀なんて表現をしてしまいたくなる、神秘的な響きがある。
かの巨人(らしい)、アストル・ピアソラの作品などを聞くにつけても思うのだが、「唄もの」と比べ、今日の演奏のみのタンゴの、その迷宮的とも言いたい複雑さはどうだろう。
シンプルに過去へと遡行して行く歌手たちとは逆に、ひたすら「前衛」の道へと足を進める器楽奏者たち。
だが、多分同じことなのだろう。「現実に背を向ける」という意味においては。
マルコーニのアルバム、よく就寝前に聞く。瞑想的な演奏がもたらす、意識の底への奇妙な旅の感覚と共に、眠りの内に入って行くのが快いからだ。