南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき

2021年04月30日 | 地方自治体と法律
(死体の埋葬等を行う者がないときの自治体の責任)
 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の自治体がこれを行わなければなりません(墓埋法9条1項)。孤独死し、遺体の引取り手がいないときがあたります。
 近年、この数は増えており、”高齢化が進む横須賀市で「無縁遺骨」が急増”(旦木瑞穂・2019年12月東洋経済オンライン)によれば、大阪市がこの法律により火葬を行った件数は、2006年度1860件、2015年には2999件であるそうです。横須賀市では、2002年度までは年10件なかったものが、2005年には約20件、2014年には55件となったとのことです。

(埋葬等の費用の負担者)
 この費用はどのように負担されるるかというと、政令指定都市、中核市はその市が負担し、それ以外の市町村は都道府県が最終的には負担することになります。
 「最終的には」というのは、法令の規定からすると、以下のように複雑だからです。
① 死亡した方に遺留金銭(又は有価証券)があれば、そこから市町村が支払ってよい(墓埋法9条2項、行旅病人及び行旅死亡人取扱法11条)。
② ①で不足なときは、相続人の負担とする(同条)。
③ 相続人から弁償できなかった場合は、扶養義務者に負担させる(同条)。
④ それでも支払いを受けられなかったときは、市町村は、都道府県に費用負担を請求できる(政令指定都市、中核市は自己負担)(行旅病人死亡人等ノ引取及費用弁償ニ関スル件〔明治三十二年六月十七日勅令第二百七十七号〕)。
 いずれにせよ、死体の引取り手がいなければ、件数の増加は、自治体の財政の圧迫要因となることは間違いありません。

(横須賀市の事業)
 横須賀市では、エンディングプランサポートという事業を行っています(前記旦木記事でも紹介)。

なお、埋葬に隣接する問題として、故人の遺品をどのように管理・処理するかという問題があります。
この点について、総務省行政評価局は、令和2年3月「地方公共団体における遺品の管理に関する事例等」(遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書別冊)を公表しており、遺品管理に関する問題点の把握には参考になります。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 森長英三郎弁護士と1930年代... | トップ | 戦後すぐの修習生・新人弁護... »
最新の画像もっと見る