goo blog サービス終了のお知らせ 

南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

民法703条の「利益の存する限度」の意味

2020年12月23日 | 地方自治体と法律
分かっていると思っても、いろいろ調べてみると全然分かってなかったことって、何年もやってても出てくるもんなんですね。

今回、そう思わされたのは、民法703条の「利益の存する限度」の意味。


不当利得返還請求において善意の受益者は、「利益の存する限度」で返還義務を負うというのが、民法703条に描いてあることなのですが、では「利益の存する限度」とは何ぞやということです。

地方自治体の法務を例にしていうと、計算を間違ったり、考え方を間違ったりして、ある給付を多く支払ってしまうってことがあります。このような過誤払いは、民法上の不当利得にあたり、自治体は返還請求権を行使できますが、ではその金額をいくらなのかという問題。
過誤払いが10万円として、自治体が請求したときには4万円しか残ってなかっとした場合、請求できるのは4万円なのか10万円なのかという問題です。

「利益の存する限度」って文言からすれば、当然4万円と思うではないですか。
でも、この考え方は間違い。

⇒金銭による利得は現存するものと推定される(判例)。
 金銭を生活費に充てた場合にも利得は現存するというのが判例である。

だそうなんですよ。
この判例知らなかったら、絶対答え間違いますよね。
やはりきちんと調べないと。カンだけでやってたら、人に正しいことは教えられないって、ホント骨身にしみました。

自治体関連での、最近の判例も押さえておきましょうか。
事例:県が元県議会議員で構成する団体に対して行った補助金の交付が違法な公金の支出であるとし、同団体の県に対する補助金相当額の不当利得返還義務が認められた事例
 では、その請求できるの範囲は?
⇒手元に残っている金額ではなく、過払いとなった金額全額の支払いを認めてた(東京高等裁判所平成18年9月26日判決・判例時報1959号21頁)。
“本件における「利益の存する限度」とは,たとえ被控訴人元議員会が既に本件各補助金を全部使用しているとしても,それは被控訴人元議員会の運営上必要な経費として使用されたものであるから,本件各補助金相当額全額であると解するのが相当である。”


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 和解事例1686から和解事例1690 | トップ | 和解事例1691から和解事例1695 »
最新の画像もっと見る