南斗屋のブログ

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酒酔い運転と過失相殺

2008年10月17日 | 交通事故民事
「酒酔い運転で事故を起こされた場合、被害者は過失相殺されるべきでない」との主張が訴訟でされたケースがありますので、ご紹介します。

 被害者は死亡事故の遺族で、加害者は酒酔い運転で時速78キロ以上の高速度で走っていたというもの。
 もっとも、被害者は一時停止をしなければならず、優先関係からすると加害者の方が優先というケースでした。

 被害者側は、訴訟をおこし「酒酔い運転について原則として過失相殺すべきでない」と主張したのですが、裁判所はこの主張を認めませんでした。
(大阪地裁平成20年5月29日判決自保ジャーナル1751号)

「酒酔い運転について原則として過失相殺すべきでない旨の主張について検討するに、過失相殺の制度が不法行為によって発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づいていることに鑑みれば、酒酔い運転であるとの事をもって原則的に否定することは困難である。確かに、酒酔い運転は、悲惨かつ結果の重大な事故を招来することが多々あり、社会的にも強い批判がなされていることは理解できるものの、それも過失相殺率(過失割合)の修正要素の一つとして適切に考慮することで対応可能と言えるから、この点における原告らの上記主張採用することはできない。

 理由としては「過失相殺の制度が不法行為によって発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づいている」からということになるのでしょうが、なんだかわかったような、わからないような根拠づけです。

 結局、"酒酔い運転ということだけでは過失相殺なしというわけにはいきません。事故のもろもろの内容を考慮して過失相殺を決めます。"ということにほかならないのですが、こういう考え方が裁判所の主流です。

 2009年から刑事事件については、裁判員という一般の方の見方が入りますが、民事事件にはそのようなものは予定されておりません。

 民事事件にも一般の方が入れれば、裁判所の考えに影響を大きく及ぼせるかもしれませんが、そのようなもののない現状では、裁判所の考えは変わるとしても、ゆっくりとしかかわらないのが通常です。
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