南斗屋のブログ

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バイクも「自動車」~自動車運転過失致死傷罪

2007年06月01日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回「自動車運転過失致死傷罪」の成立について書きましたが、名称が「自動車」と書いてあるから、バイクは入らないだろうと思う方が多いのではないだろうかと思います。
 
 しかし、バイクを運転していても「自動車運転過失致死傷罪」の適用があります。

 なぜかといいますと、法律上「自動車」には、バイクが入るからです。

 もう少し詳しく見ていきましょう。

 道路交通法上「自動車」というのは、次のように定義されています。

 「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって、原動機付自転車、自転車及び身体障害者用の車いす並びに歩行補助車その他の小型の車で政令で定めるもの以外のものをいう」(道路交通法2条1項9号)

 非常に法律用語らしい、いいまわしで、一読しただけでは何をいっているのか、さっぱりわからない文章の典型だと思います。

 この条文をかみくだくと
1 原動機を用いる→エンジンを使用する
2 レール又は架線によらないで運転する車(=電車)は除く
3 その他原付バイクなども除く
ということになりますので、中核は「原動機を用いる」だけで、あとは「自動車」にあてはまらないものを並べているだけということがわかります。

 バイクはエンジンで動きますから、「原動機を用いる」ということで、「自動車」の定義の中にはいってきますが、「自動車」ということになるわけです。

 このように、バイク運転の方にも「自動車運転過失致死傷罪」の適用があります(なお、法務省サイドの見解では原付バイクも同罪の適用があるということですが、道路交通法上の「自動車」の定義からは導き出せないので、私としては法務省の解釈に疑問があるのですが)。

 では、日常用語の意味での自動車を法律上はどう表すのかといいますと、
  「四輪以上の自動車」
という言い方をします。

 現に、危険運転致死傷罪という、業務上過失致死傷よりもはるかに法定刑の重い犯罪には、この表現が使われていました。 
 使われていました、と過去形で書きましたのは、この危険運転致死傷も今回の法律改正で、法律上の「自動車」、つまりバイクを含める形で改正されたからです。
 
 参考までに改正前の危険運転致死傷の条文を記しておきますので、興味のある方はお読みください(これも、いかにも難解な法律の条文でわかりにくいと思いますが)

(危険運転致死傷)
刑法 第208条の2

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。

2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。




コメント (3)
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