南斗屋のブログ

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搭乗者傷害保険で新判例

2007年06月06日 | 未分類
 先週、搭乗者傷害保険について、最高裁の新判例がでました(平成19年5月29日最高裁判決)。

 問題になった事案は、高速道路で自損事故を起こし、車外に避難したあと、後続車にひかれ死亡した場合、被害者の遺族は、被害者がかけていた搭乗者傷害保険を、請求できるのかというものです。

 搭乗者傷害保険というのは"事故を起こした車に搭乗していたときに、傷害を負った場合に支払われる保険"です。
 搭乗者傷害保険を請求できる典型的なケースは、自分の車に乗っていて、乗ったまま自損事故を起こし、傷害を負った(又は死亡した)という場合です。

 最高裁で問題となったのは、被害者が自損事故を起こしたけれども、その後、車外に出てしまって、そこで他の車にひかれ死亡してしまったので、それが「搭乗中」といえるのかどうかということです。

 最高裁は、このような場合も搭乗者傷害保険が支払われると判断しました。

 私が書くよりもマスコミで書かれたものの方がわかりやすいかと思いますので、読売新聞の記事を引用いたします。

 自損事故で避難中ひかれ死亡、最高裁が保険金の支払い命令

高速道路で自損事故を起こし、路肩に避難しようとした際に後続車両にひかれて死亡した男性の遺族が、自動車保険の搭乗者死亡保険金を受け取れるかどうかが争われた裁判の上告審判決が29日、最高裁第3小法廷であった。

上田豊三裁判長(退官、藤田宙靖裁判官が代読)は「男性は危険を避けるためにやむを得ず車外に出てひかれたもので、乗車中の事故が原因で死亡したと解釈できる」と述べ、保険金を受け取れないとした2審判決を破棄。損害保険ジャパン(東京都)に保険金1000万円の支払いを命じた。同社の敗訴が確定した。

判決によると、この男性は2002年、東北縦貫自動車道で乗用車を運転中、中央分離帯にぶつかる事故を起こし、路肩に避難するため車を降りて車線を横切った際、大型トラックにひかれて死亡した。

男性は「乗車中の事故により死亡した場合」に1000万円が支払われる保険に加入していたため、遺族が保険金の支払いを求めたが、同社は「乗車中の事故で死亡したとはいえない」として支払いを拒否した。

1審は保険金の支払いを命じたが、2審は同社の主張を認め、遺族側逆転敗訴を言い渡していた。

(2007年5月29日20時15分 読売新聞)

 ところで、報道内容よりもさらに詳細に判決内容を知りたい、判決を直接読みたいという場合は、どのようにしたらよいでしょう。

 数年前までは、一般の方にはなかなかお目にかかれない判例雑誌に載るのを待たなければいけませんでした。
 今では、最高裁はPDFファイルで判決の内容を明らかにしており、早ければ判決当日には見ることができます。
 最高裁で出される全ての判決が公開されているわけではりませんが、情報公開という意味では、この分野は劇的に変わりました。
 →最高裁のホームページによる最近の判例一覧

コメント (2)
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