リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

ここではみんな「メイド・イン・どこか他のところ」

2022年08月19日 | 日々の風の吹くまま
8月18日(木曜日)。🌤🌤。起床は9時。ゆうべは芝居から帰って来て2人ともしばらくコンピュータの前に座ってしまったので、オフィスを閉めたのが真夜中に近くて、その後でいつものようにカレシのココアとワタシのムッシュ・ヘネシーで寝しなのクォリティタイムなんてやっていたら、就寝は午前1時。目が覚めたら9時と言うことは、2人ともしっかり眠ったとと言うことだからいいけど、ルーフデッキやバルコニーの菜園に水遣りをしたり何ダリで、朝ご飯が終わったら、もうほぼ10時。「朝のレッスンがないから、いいじゃん」とカレシ。ま、そのあたりがリタイア暮らしのいいところだもんね。

きのうの芝居は3月末に終わったばかりのシーズンの2作目として上演して、大ヒットだったので先月から特別公演をしていたファレン・ティモテオ作・主演の『Made in Italy』。より良い暮らしを求めて1950年代にイタリアからアルバータ州に移住して来たサルヴァトーレと赤ん坊のときにイタリアから呼び寄せた息子のフランチェスコのアイデンティティを巡る葛藤がテーマだけど、ティモテオが父と息子の他に家族その他の登場人物すべてをひとりで演じるしっちゃかめっちゃかなコメディ。休憩を挟んでの2時間をドラマを演じて、歌って、踊っての出ずっぱりはものすごい肉体労働だなあ。でも、弱気な少年が一念発起してムキムキの若者になる過程で見せた肉体美はそれは見事なもので、女性観客から一斉に拍手が起こったくらい。

英語名前の歌手フランク・マーティンとしてピアノ弾きの従弟とクラブを渡り歩いていて、テレビのタレントショーに出演する機会を得たところで叔父が心臓発作で入院。家族全員が病室でテレビを見ていると聞いて、タレントショーのトリで登場して歌い始めたのはサイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』。途中でイタリア語で歌い始め、最後は英語とイタリア語になり、歌い終わって「名前はフランチェスコ・マンティーニです」。最後は毎週金曜日の午後6時半に食事に来ていたのが来なくなった息子を2年も待ち続けた老いた父サルヴァトーレが腕時計を見て「金曜日、午後6時半」。でも呼び鈴はならず、家族を象徴する大きなテーブルで今日もひとりで夕食・・・というところでピンポーン。サルヴァトーレがそろそろと立ち上がるところでライトが落ちて、一拍おいて大喝采。移民大国のカナダではアイデンティティを巡る世代間の葛藤は多くの家族が経験して来ていることで、だからこそ『Made in Italy』が大きな共感を呼んで、ヒットしたんだと思う。

先住民でなければ、カナダ人は世代を遡ればみんな「メイド・イン・どこか他のところ」から始まっているわけで、固有の「メイド・イン・カナダ」の民族を形成する途上にあると思いたいけど、昨今は民族だけじゃなくてジェンダーやら何やら、はては 個人の思考性にまでラベルを付けて細かく仕分けしないと人間と向き合えないらしい連中が跋扈しているから、まだ100年や200年はかかるんじゃないかな。かくいうワタシは、どうしてもしっくりしない文化的アイデンティティの押し付けに潰れそうになった経験から、ラベルを貼られたくないという気持が人一倍強いんじゃないかと思う。だからこそ、ふっと空を見上げて思いついた新しいファーストネームはありきたりの(どれも今いちしっくりしなかった)英語名前じゃなかったわけだけど、漢字を当てると日本語の名前として通るのは無意識ながらも自分のルーツを認識していたということだと思う。もう20年も前のことだけど、今では「メイド・イン・ジャパンのカナダ国籍のひとりの人間」という自分なりのアイデンティティがしっかり根を張って、雑草はますます世に蔓延って幸せ。



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