リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

旅の空から~トリエステ(イタリア)

2023年11月19日 | 日々の風の吹くまま
11月7日(火曜日)。🌧☁⛈。アドリア海のどん詰まりは雨。少し風もあって、悪名高きボーラの季節が始まっているらしい。ここまで来ると温暖な地中海気候も冷えてしまうと見えるな。でも、今日のツアーはあまりバスを降りなくてもいいそうだから、キャビンに備え付けてある雨傘を持って出発。

トリエステはイタリアだけど、ご多分に漏れず地中海、アドリア海の交通の要衝と言う立地のせいで波乱に揉まれ続けて来たところ。第2次世界大戦の後で、ウィンストン・チャーチルが「ヨーロッパ大陸に鉄のカーテンが降ろされた」と言った、その鉄のカーテンの南の端がトリエステ。冷戦時代に「東側」のユーゴスラヴィアに属していたスロヴェニアはほんの目と鼻の先で、実際にスロヴェニアとの国境までは東へわずか8キロ、クロアチアまでも南へ30キロと言う近さだから、周辺の国と共に同じ征服者に支配されて来た歴史を経て近代国家として「国境」を確定しようとすればそりゃあ揉めるだろうな。地の利と言う言葉があるけど、この辺りは地の不運と言うべきなのかもしれないな。(北緯49度線に沿ってまっすく線を引いて南と北に分けてさしてけんかもせずにいるアメリカとカナダは特異なケースなのかもしれない。)

雨の中をバスに乗って丘の上の聖ユストゥス大聖堂(サンジュストマルティエーレ大聖堂)へ。外にローマ時代の審判所の遺構があって、その向こうはサンジュスト城塞(別名トリエステ城)。このあたりの大聖堂も質実剛健なロマネスク様式が多いようだけど、中に入って見るとバロック調の軽やかな装飾が盛りだくさん。実際には200年の間に別々に建てられた2つの聖堂をつないでひとつにしたんだそうで、床は古いモザイクが残っているし、アーチ型の柱廊は何となくアルハンブラの柱廊を思わせてエキゾチック。聖堂から出て来た頃には晴れ間が出ていて、今度は街の北側の丘の頂上にあって船から見えていた不思議な建物「モンテグリサ寺院」へ。三角形を積み上げたようなモダンと言うのか未来的と言うのか何とも奇妙な建物で、冷戦時代に東西の平和と友好のシンボルとして建てられたんだそうな。この丘からの眺めは絶好で、海に突き出たミラマーレ城や停泊中のシルバームーン号が見えたし、遠くにはウクライナに侵攻したプーチンの所有と言う疑いでイタリア政府が新興財閥から差し押さえたものの、維持費が嵩んで頭を抱えているという3本マストのヨット「シェヘラザード号」。




サンジュストマルティエーレ大聖堂


モンテグリサ寺院

私たちの船

プーチンの船?

トリエステの街並みはこの2つの丘の間にあって、中心地に並ぶ建物はハプスブルグ朝時代の名残りか、端正な品格があるという印象.。派手さはないけど華やかさの片鱗があったて、何だかおすましした貴婦人のような感じ。ええ?と思ったのはバイク専用の路上駐車ゾーン。白線で区切られた枠にバイクがお行儀よくずらりと並んでいたのでびっくり。駐車の標識(P)にはバイクと自転車のアイコン。道路の反対側は概ね自動車の路上駐車場になっているようで、四輪車と二輪車が平和に共存している感じかな。何となくヨーロッパらしい感じでいじゃないの。



こんなところにもスシ屋・・・

旅の空から~ザダール(クロアチア)

2023年11月19日 | 日々の風の吹くまま
11月6日(月曜日)。☁⛅。起き出してカーテンを開けたら、近づいて来る島影の上に大きな朝焼け雲。まずまずの天気になりそう。乗っている船がだんだん港に近づいて行くのを見ていると、旅の空の下と言うこともあるのか、郷愁に似た感情だったり哲学的な気分だったりと、とにかくいろんな思いが湧いて来るから不思議。



バルカン半島の歴史については高校の世界史の教科書で習ったことと、ユーゴスラヴィア連邦の解体の過程で戦乱が続いたことくらいしか知らなくて、今回のクルーズでも唯一名前さえ初耳の未知数100%の寄港地。そのザダールと言う小さな町(人口75,000人)にいったい何があるんだろうと思っていたら、これが紀元前9世紀に始まって、1991年に今のクロアチアになるまで、ローマ帝国、ビザンチン帝国、カロリング帝国、クロアチア王国、ヴェネツィア共和国、ハプルブルグ王朝、オーストリア帝国、ナポレオン支配下のイタリア、オーストリア・ハンガリー帝国、スロベニア、クロアチア、セルビアの各王国、イタリア王国、ユーゴスラヴィア連邦が入れ代わり立ち代わり支配して来て、ヴェニスとアドリア海を隔てて対峙するほど繁栄した時期があったというから、まさにアドリア海とバルカン半島の覇権をめぐる歴史の教科書。

小さい町と言うことで2時間の旧市街のウォーキングツアーを選んだのは大正解。クルーズ船ターミナルからバスに乗って、まずはウォーターフロントの公園へ。Monument to the Sun(太陽への記念碑)という直径22メートルのソーラーパネルがあって、夜になると日のある間に吸収した太陽エネルギーを電気に変えて光のショーを繰り広げるそうで、「上を歩いても大丈夫」と言われてみんな何かおっかなびっくり。ただのアートじゃなくて、実際にウォーターフロント一帯で必要な電力の半分を発電しているというから賢い。すぐ近くから不思議な音色の音楽が聞こえていて、街頭ミュージシャンでもいるのかと思ったら、Sea Organ(海のオルガン)。海面に向かって降りる階段のところにずらりと穴が開いていて、アドリア海の風が石の舗装の下に埋められたオルガンのパイプに吹き込んで、舗装のあちこちに空いている穴から絶妙な自然の音楽が流れて来るという仕組み。じっとたたずんで、何とも幻想的なメロディに包まれてうっとり。





旧市街は公園から少し歩いたところで、ローマ時代のフォーラムの遺跡があって、それを見下ろすようにプレロマネスク様式の聖ドナトゥス教会で背中合わせにどっしりしたロマネスク様式の聖アナスタシア大聖堂。周辺の広場にはカフェが並び、石畳の道路の両側にはおしゃれなブティック。途中に「MAGURO」と言う名前のスシ屋があったのにはびっくり仰天。アドリア海の魚のスシはどんな味かな。最後に1066年に建てられたという聖マリア教会。ベネディクト派の修道院で、大戦中はイタリア領だったために連合軍の爆撃で破壊され、戦後に再建したもの。2階と3階はザダールのかっての繁栄を示す金銀の装飾品のコレクションの展示ルームで、グループが見学している間、ワタシはそっと抜け出して1階に駆け戻って、ギフトショップで修道院の尼さんたちが作ったおみやげをゲット。店番をしていた尼さんが英語で「日本の方ですか?アリガトウ。知っている日本語はこれだけですけど」。へえ、日本の観光客も来るんだろうな。ワタシもフヴァラヴァム(クロアチア語で「ありがとう」)と返したら、やさしくにっこり微笑んで「神様のお恵みがありますように」。ザダールはほんとに素晴らしい発見だった。フヴァラヴァム!


聖ドナトゥス教会

聖アナスタシア大聖堂

ザダールの街角にも・・・

聖マリア教会