尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「ブリムストーン」、壮大な復讐の西部劇

2018年01月16日 22時38分12秒 |  〃  (新作外国映画)
 限定公開で19日までなのだが、「ブリムストーン」(BRIMSTONE)という映画が公開されている。(東京は新宿武蔵野館のみ。)19世紀アメリカの西部を舞台にした壮大な復讐劇で、2時間28分もあるけど時間を感じさせない面白さだった。記録の意味で簡単に書いておきたい。

 西部の寒村に住むリズは、年の離れた夫と二人で暮らすが、なぜか言葉を話せない。耳で聴きとることはできるようだが。そこの教会に牧師がやってきて、罪の恐ろしさを説くがリズは彼を見て恐怖にとらわれる。その後、リズは難産の女性を助けようとするが、母と子を共に救うことはできないとして母の命を優先することにした。その措置を「神に背く」とした牧師はリズを迫害する。

 この段階ではキリスト教をめぐる争いかと思うが、やがてもっと複雑で長い確執があることが判ってくる。第2章になると、砂漠を彷徨っていた少女が中国人に救われるが、鉱夫相手の娼館に売られる。やがて少女は娼婦として働かされるようになり、さまざまな苦労を重ねる。これが実はリズの前身。なぜ口が利けなくなったかが判る。さらに第3章では、オランダから来た母子が牧師と暮らす日々が描かれる。これがリズの子ども時代で、豚を飼いながら暮らしていたが、牧師と母の関係は悪く、牧師は少女こそ自分のために神が遣わした女性だと思うようになった。

 とにかく、どこまでも追ってくる牧師が恐ろしく、それにリズが多くの犠牲を払いながら立ち向かう。一応「西部劇」とも言えようが、オランダや多くの国の合作でヴェネツィア映画祭のコンペティションに出品された作品。監督はオランダのマルティンコールホーヴェンという人である。主演のリズは、ダコタ・ファニングで圧倒的に素晴らしい。最近は「ネオン・デーモン」などに出た妹のエル・ファニングの活躍が目立つが、姉も大活躍。もともと姉妹とも子役で「アイ・アム・サム」などで活躍した。役者としての度胸も十分で、今後大きく伸びそうな美女姉妹として要チェック。牧師はガイ・ピアース
 (ダコタ・ファニング)
 信仰の名のもとに、いかに支配欲が暴走していくか。男性中心社会で女性がいかに苦しめられてきたか。非常に恐ろしい物語なんだけど、アメリカ西部の自然描写が美しく、人間と自然を対比してしまう。特にラスト近くの雪中の襲撃シーンがすごい。ラストもビターな結末で、最後まで長さを感じさせずに物語に没頭してしまった。
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