「ジャニーズ問題」2回目。「外部専門家チーム」の調査結果は、経営陣の責任を問い社長交代を求めるなど踏み込んだ対応を求めていた。それを受けて行われた9月7日のジャニーズ事務所の記者会見で、藤島ジュリー景子社長が退任して東山紀之氏が新社長に就任すると発表された。しかし、社名変更はしないなどの対応が疑問視されていて、CMへの所属俳優出演を取り止める会社も出ている。2回目はこの問題を「会社経営」の視点から考えたい。
(ジャニーズ事務所の記者会見)
ところで、2023年夏に突然マスコミで大問題になった会社はもう一つあった。中古車販売大手の「ビッグモーター」という会社である。保険金の不正請求に始まり、各地の店前の街路樹が不自然になくなっている(会社の土地でもないのに除草剤を撒いていたらしい)とか、保険会社大手の損保ジャパンとの不明朗な結びつきなど、いろいろと波及している。前者は警察が捜査に乗り出し、後者は金融庁がビッグモーター、損保ジャパンに立ち入り検査をする事態にまで発展している。
(ビッグモーターの記者会見)
この二つの会社の問題には共通点がある。一つは「同族経営」で、創業者一族が株を100%所有しているということだ。だから前の社長が退任して経営者が変わっても、会社の所有者は変わらない。創業者一族が経営の責任を担ってきて、長い間に「トップを誰も止められない」という経営風土が形成されてきたのだろう。確かに会社の成長期には、創業者の素早い経営判断が生かされた利点もあったのだと思う。しかし社会的に大きな存在になっても、「コンプライアンス」(法令順守)意識が薄く、人権問題への関心が低い。人権問題に対応する部署、あるいは外部の知恵を借りる仕組みも存在しない。そういう会社は多いのではないか。
もう一つ、こういう言い方は少し不適切かもしれないが、問題の内容が「商品に手を付ける」という点で共通していると思う。ビッグモーター社は故障車の修理時に、さらにわざと傷を付けて過大な保険金を請求していた。ゴルフボールで傷を付けている画像が拡散され、それに対し社長が「ゴルフに失礼」と言ったのも余りにズレていた。失礼なのはゴルフじゃなくて、傷を付けられた自動車の方だし、その所有者の「お客様」に対してだろう。一方のジャニー喜多川氏の場合、長期にわたって自社に属するタレント候補に性加害を繰り返していたとされる。これでは「組織犯罪としての性加害」とみなされてもやむを得ないのではないか。
もちろん所属タレント(候補)は「商品」ではなく、人間である。長年苦楽をともにする中で、芸能事務所関係者(マネージャーなど)と所属歌手、俳優などが恋愛関係になることは決して珍しくない。だから、同性間であれ、年齢差があれ、そこに「真実の愛」が発生しないとは言い切れない。だがジャニー氏の場合は、そういうものではない。これほど多くの「被害者」、それも問題発生時は「少年」だった人々が声を挙げるということは、単なる「性犯罪者」だったのだろう。
問題の性格から外部で行っても問題だが、その場合は「経営トップの個人犯罪」と言える。しかし、実際のところは素晴らしき業績を上げた芸能事務所は、「犯罪組織」という「裏の顔」を持っていた。そう言われてもやむを得ないだろう。その現実が何故長い間暴かれなかったのか。それは姉のメリー喜多川(藤島メリー泰子)副社長(2019年のジャニー氏没後は会長)の「隠ぺい」と「圧力」があったからだと思われる。(なお、「藤島」はメリー氏の夫である作家藤島泰輔氏の姓である。)
よくマスコミの「忖度」(そんたく)などと表現されるが、忖度は自ら相手におもねる場合である。最初に使われた森友学園問題は、国有地払い下げに関する「背任」事件だし、ジャニーズ事務所の場合は人気グループを多数抱えている「優越的地位」を利用した「独禁法違反」事件だ。それがはっきり判ったのは、SMAP解散後に事務所退所者が全然テレビなどに出なくなった時だった。次第にそうでもなくなってきたけれど、やっぱり芸能界はおかしいんだなと僕は思った。
ジャニーズ事務所ばかりでなく、事務所を変わった俳優、歌手が事実上「干される」(としか思えない)ケースはいっぱいある。また内容は違うが、数年前に問題化した吉本興業のケース(契約書もないままだった)など、その後どう改善されているのだろう。大手マスコミというが、日本の場合テレビ各局は新聞社の系列下にあり、ネットニュースだって大部分は新聞社の記事である。大手事務所が系列のテレビ局にタレントを出演させなければ、非常に困るだろう。ジャニーズ事務所や吉本興業は、事実上独占企業に近い。本来は公正取引委員会がもっと規制に乗り出すべき問題なんじゃないかと思う。
(ジャニーズ事務所の記者会見)
ところで、2023年夏に突然マスコミで大問題になった会社はもう一つあった。中古車販売大手の「ビッグモーター」という会社である。保険金の不正請求に始まり、各地の店前の街路樹が不自然になくなっている(会社の土地でもないのに除草剤を撒いていたらしい)とか、保険会社大手の損保ジャパンとの不明朗な結びつきなど、いろいろと波及している。前者は警察が捜査に乗り出し、後者は金融庁がビッグモーター、損保ジャパンに立ち入り検査をする事態にまで発展している。
(ビッグモーターの記者会見)
この二つの会社の問題には共通点がある。一つは「同族経営」で、創業者一族が株を100%所有しているということだ。だから前の社長が退任して経営者が変わっても、会社の所有者は変わらない。創業者一族が経営の責任を担ってきて、長い間に「トップを誰も止められない」という経営風土が形成されてきたのだろう。確かに会社の成長期には、創業者の素早い経営判断が生かされた利点もあったのだと思う。しかし社会的に大きな存在になっても、「コンプライアンス」(法令順守)意識が薄く、人権問題への関心が低い。人権問題に対応する部署、あるいは外部の知恵を借りる仕組みも存在しない。そういう会社は多いのではないか。
もう一つ、こういう言い方は少し不適切かもしれないが、問題の内容が「商品に手を付ける」という点で共通していると思う。ビッグモーター社は故障車の修理時に、さらにわざと傷を付けて過大な保険金を請求していた。ゴルフボールで傷を付けている画像が拡散され、それに対し社長が「ゴルフに失礼」と言ったのも余りにズレていた。失礼なのはゴルフじゃなくて、傷を付けられた自動車の方だし、その所有者の「お客様」に対してだろう。一方のジャニー喜多川氏の場合、長期にわたって自社に属するタレント候補に性加害を繰り返していたとされる。これでは「組織犯罪としての性加害」とみなされてもやむを得ないのではないか。
もちろん所属タレント(候補)は「商品」ではなく、人間である。長年苦楽をともにする中で、芸能事務所関係者(マネージャーなど)と所属歌手、俳優などが恋愛関係になることは決して珍しくない。だから、同性間であれ、年齢差があれ、そこに「真実の愛」が発生しないとは言い切れない。だがジャニー氏の場合は、そういうものではない。これほど多くの「被害者」、それも問題発生時は「少年」だった人々が声を挙げるということは、単なる「性犯罪者」だったのだろう。
問題の性格から外部で行っても問題だが、その場合は「経営トップの個人犯罪」と言える。しかし、実際のところは素晴らしき業績を上げた芸能事務所は、「犯罪組織」という「裏の顔」を持っていた。そう言われてもやむを得ないだろう。その現実が何故長い間暴かれなかったのか。それは姉のメリー喜多川(藤島メリー泰子)副社長(2019年のジャニー氏没後は会長)の「隠ぺい」と「圧力」があったからだと思われる。(なお、「藤島」はメリー氏の夫である作家藤島泰輔氏の姓である。)
よくマスコミの「忖度」(そんたく)などと表現されるが、忖度は自ら相手におもねる場合である。最初に使われた森友学園問題は、国有地払い下げに関する「背任」事件だし、ジャニーズ事務所の場合は人気グループを多数抱えている「優越的地位」を利用した「独禁法違反」事件だ。それがはっきり判ったのは、SMAP解散後に事務所退所者が全然テレビなどに出なくなった時だった。次第にそうでもなくなってきたけれど、やっぱり芸能界はおかしいんだなと僕は思った。
ジャニーズ事務所ばかりでなく、事務所を変わった俳優、歌手が事実上「干される」(としか思えない)ケースはいっぱいある。また内容は違うが、数年前に問題化した吉本興業のケース(契約書もないままだった)など、その後どう改善されているのだろう。大手マスコミというが、日本の場合テレビ各局は新聞社の系列下にあり、ネットニュースだって大部分は新聞社の記事である。大手事務所が系列のテレビ局にタレントを出演させなければ、非常に困るだろう。ジャニーズ事務所や吉本興業は、事実上独占企業に近い。本来は公正取引委員会がもっと規制に乗り出すべき問題なんじゃないかと思う。